【第三回】はじまりのまち

 学校の帰り道。久しぶりに顔を出した太陽が、道にたっぷり積もった雪をゆっくり溶かしていく。キラキラと光り輝やく風景も、雨とはまた違う雫の落ちる音も大好きだ。もちろん雪がひらひらと降り積もっていく光景も大好き。とっても綺麗でワクワクする。

「はあ。せっかく晴れたのにまた夜から雪なんだって」

 隣を歩くアオイちゃんが真っ白い息を口から目一杯吐き出す。アオイちゃんはこの町に転校してきて初めて出来た友達。雪国の女の子らしく肌が透き通るように白い。とっても女の子らしいのにスポーツだって得意という欲張りっぶり。本人曰く気にしているという寒さで赤くなるほっぺだって勿論可愛くてあざとくすら感じてしまう。

「聞いてる?」

「えっあっうん。私は雪好きだから楽しみだな!」

 ボーっとアオイちゃんの赤いほっぺと唇に見とれてしまっていた。私としたことが間抜けな顔を見られてしまった……。

「キリちゃんはここでの冬が初めてだからそんなことが言えるんだよ。あーあ、私も都会に住んでみたいなあ」

 そう言ってアオイちゃんは天を仰ぐ。きっと彼女の頭の中では理想のシティーライフが繰り広げられているのだろう。日曜日、電車に乗って映画を見に行って、お昼は雑誌で話題のパンケーキ屋さん。午後は駅前でショッピング。それに疲れたらオシャレなシアトル系のカフェでフラペチーノを飲む。残念ながらここにいてはどれも叶えることはできない。映画館はもちろんカフェなんて存在しない。駅と線路こそあるけど、ほとんど電車が走っているところは見たことがない。あるのは大量の雪と自然。こればかりは向こうに負ける気がしない。実際に私はここが気に入っている。こっちにないものが都会にはいっぱいあるが、都会にないものがこっちにだっていっぱいある。あ、向こうになくてこっちにあるもの――。

「はあ……」
 私はほとんど無意識でため息をついた。

「あー、また田舎者を馬鹿にしたでしょ」
 幸せそうに目を閉じていたアオイちゃんが頬を膨らませて私に言う。もちろんそんな事はない。ちょっと憂鬱になることを思い出してしまっただけ。

「違うよ。ほら……」

「ハイグレ祭のこと?」

 私が口に出すことを躊躇った言葉をアオイちゃんは一切の抵抗なく発した。私は返事の代わりにこくりと小さく頷く。

 私がこの町に引っ越してきたのは半年くらい前。ママの転勤が急に決まって住む家を探していたら、たまたまタイミング良くこの町が住民を募集していた。小学生の子どもがいる家庭なら土地も家もタダという破格の内容だった。田舎の町はあの手この手を使って若い人が欲しいからだってママが言ってた。過疎化問題というのが影響しているらしい。いざ引っ越してみると、知らない場所へと抱いていた私の漠然とした不安や戸惑いをこの町はあっさりとかき消してくれた。言葉や風習など初めてのことも多いけど、私はそれなりにこの町での新しい暮らしに馴染んでいる。学校ではあやとりの検定があったり、登り棒ののぼりっこ大会などがあって、クラスのみんなとても上手い。この前は神社でお神楽を見た。正義のヒーローが、剣で敵を倒すという単純なものだったけど面白かった。でも、今度のは――。



「そんなに深刻な顔しないで! 全然恥ずかしくなんてないよ。私ね今年はハイグレを新調したんだ〜」
 楽しそうに話すアオイちゃん。
「それじゃあ、おつやを食べたらまた学校でね! バイバイ!」
「うん。バイバイ……」

 最初は意味がわからくて戸惑っていた方言もある程度理解出来るようになった。屈託のない笑顔で手を振り、アオイちゃんは細い農道を軽やかに駆けて行った。
 対照的に私の足取りは重い。このままずっと綺麗な雪解けを眺めていたい。たぶん今日はおやつも喉を通りそうにない。





 家に着くとママが雪かきをしていた。ママも初めての田舎暮らしをそれなりに満喫しているみたい。
「おかえり」
 ママはスコップを地面に突き刺してタオルで顔を拭う。ホッとするゆったりとした温かい声。

「一応、準備はしておいたけど……本当に着るの?」
 まだ信じきれない様子でママが聞く。私は無言のまま小さく頷く。
「アオイちゃんのママに本当にアレを着るのかって聞いたら逆に驚かれちゃったわ。この町ではずっと続いてる伝統あるお祭りのようね」

 私たちが生まれる前から行われている由緒正しい伝統行事だって先生は言ってた。
 だから当たり前のように慣れちゃってみんな疑問にも思わないし、恥ずかしいという感情も生まれないのかな。

「嫌だったら休んでもいいのよ?」
 ママの言葉は暗闇に射す一筋の光のようだった。この町でママだけは私の心強い味方だ。でも私は首を横に振る。そう強く思えるだけで私は十分だった。
「みんな行くらしいし、とりあえず行ってみるよ」
 私は玄関の扉を開け家の中に入り、下駄箱の上に置いてあったバッグを握った。前の学校のマラソン大会だって嫌だったけど、頑張って練習に参加して、本番で完走した時は気持ち良かった。きっと今回も逃げずに頑張れば良いことがあるはず……。

「こんにちは〜!」
 元気で可愛らしい声が聞こえた。
「あら、こんにちは。 キリ〜、アオイちゃんが迎えに来てくれたわよ!」
 私はママに呼ばれる前に私は庭へ飛び出した。アオイちゃんはさっき別れたときの何も変わらない学校のジャージ姿で立っていた。ただ私はアオイちゃんが手ぶらな事に気付いた。
「あれ荷物は……?」
 私の質問に待っていましたと言わんばかりに、アオイちゃんは自慢気に答えてくれた。
「待ちきれなくて、下に着てきちゃった!」
 屈託のない笑顔。でも水泳の授業じゃないんだから……それにあの練習のどこに待ちきれないほどの魅力があるのだろうか……友達とプールに遊びに行った時やプールの授業すら更衣室で着替えていた私には理解できない行動だった。ハイグレ祭って一体……私は考えるのを諦めた。バッグをギュッと握りしめてママに手を振る。
「いってきます」
「い、いってらっしゃい」
 この地域の風習に慣れていないのはママも同じみたいだ。ママのぎこちない手の動きを確認して、アオイちゃんの奇行に驚いたのは私だけじゃないんだとわかって少しホッとした。
 学校へと向けて歩き出す。空は既に分厚い雲に覆われて、ぱらぱらと細かい雪が舞い始めていた。今朝、真冬のピークは去ったと天気予報士のお姉さんがテレビで言ってた。でも春はまだまだお預けのようだ。
 雪は好きだけどお祭りの日に雪が降るのは勘弁してほしいなあ。

「アオイおねーちゃん! キリおねーちゃん!」

 明るくてよく通る声に視界を地上に引き戻された。同じ小学校に通うハナちゃんが私たちへ向けて両手を振っていた。

「お待たせ」
 アオイちゃんが両腕を広げると、ハナちゃんは勢いよく彼女の胸に飛び込んでいった。まるで姉妹を見るような微笑ましい光景だ。ハナちゃんは私たちの4歳年下で小学校に入学したばかりのピッカピカの1年生。同じくこの町の1年生な私にもよく懐いてくれてる。

「2人ともおそーい! ハナずっと待ってたんだよ!」

 左手では私の右手を握り、右手ではアオイちゃんの左手を握る。ハナちゃんを中心として川の字で歩く。最近の私たちの定番の登校フォーメーション。お祭りに参加できるのは小学生からだから、私と一緒でハナちゃんも初めての練習だ。
 雪が降り落ちては濡れた道路に吸い込まれていく。お祭りの練習が終わる頃には積もっていそうだな。
 



 体育館の中にはすでに数人の生徒が集まっていた。
「お! ちゃんと来たな橘!」
 後ろから発せられた突然の大声に私は飛び上がって驚いてしまった。声の主は顔を見ないでもわかる。アイツだ。

「なーー」
「アンタ!! またキリちゃんのことからかってたわね!」
 振り返った時には中丸くんはカエデちゃんによって鉄拳制裁を受けて吹き飛んでいた。

「いってぇ〜……」
「ごめんね、昔からこういうヤツだから許してあげて」
「いててやめろよ!」
 カエデちゃんは中丸くんの頭を掴んで無理やりお辞儀をさせた。この2人は幼なじみで昔からこんな感じらしい。

「ほら、女子は早くステージ袖へ行きなさい! 男子が着替えられないでしょ!」

 練習を取り仕切っている原先生が手を叩きながら叫んだ。私たちは幕が降ろされたステージへ上がるため、体育館の脇にある扉から中へと入っていく。

 ステージの中ではすでに数人が着替え始めていた。学年は違っても運動会や学校祭も全学年で行うのでみんな顔なじみだ。私たちも壁際のスペースを確保して準備を始める。


「じゃーん!」

 早速アオイちゃんは真夏かと錯覚しそうな勢いでジャージを脱ぎ捨てて、新調したという真新しい青色の水着姿を披露した。この水着、スクール水着とは比べものにならいくらい角度が鋭い。スイミングスクールで着る競泳水着の切れ込みすら甘く感じさせる。この特殊な水着のことをこの地域では――。

「どう? 新しいハイグレ水着」

 そう、ハイグレ水着と呼ぶ。最初は戸惑ったが、おつやと一緒でこの地域独特の方言らしい。でも、今はそんなことはどうでもいい。ついに恐れていた時がやってきてしまったのだ。

「キリちゃんのハイグレ水着も見せて!」

 目を輝かせながらアオイちゃんが私を見つめている。瞳の輝きのひとつひとつが痛いくらいに突き刺さる。
 私は観念して観念して床に座って、恐る恐るバッグの中に畳まれて入っていたものを取り出す。

「おお……」

 オレンジ色の、ハイレグ水着……。

「うわ〜可愛い〜!」

 無地のオレンジ色の水着が可愛いのか……。眩しくて派手で……ちょっと……その……ダサいんじゃないかな。普通の水着じゃダメなのかなあ……色だって水玉や花柄の方が可愛いと思うし。

「ハナも! ハナも!」

「はいはい」
 ぴょんぴょんと跳び跳ねるハナちゃんに急かされて、アオイちゃんが彼女の巾着袋を開けてあげる。小さいが私たちのものと同じ形の黄色い水着が1着入っていた。

「わーい! はいぐれ! はいぐれ!」

 水着を抱きしめながらピョンピョンと跳び跳ねるハナちゃんの笑顔を見て、私の気分は一層重くなる。この場に私の味方は誰もいないことを改めて思い知る。

「キリちゃん?」

「ひゃい!!」

 突然後ろから名前を呼ばれ、ヘンテコな声を出てしまった。恥ずかしさを堪えて振り向くとカエデちゃんが心配そうに私の顔を覗き込んできた。

「やっぱり着るの……嫌?」

 そう私に聞くカエデちゃんは既に赤いハイレグ水着に着替え終えていた。長身でスレンダーな体型を際どい部分まで切れ込んだ水着が一層引き立てている。

「ううん。大丈夫だよ」
「そっか。良かった」
 バレバレの嘘をついた。カエデちゃんが突っ込まれなかったのは優しさなのかな。それと踏ん切りがつかない私に呆れているのかな。





 先週の帰りの会で私の楽しい田舎ライフは一変した。


 6時間目が終わって、私も含めた全員がランドセルを机の上に置き、もう秒読みとなった放課後を待ちわびていた。
「いよいよ『ハイグレ祭』が来週に迫ってきたわね」
 教壇に立つ先生の口から初めて聞く言葉が唐突に飛び出した。
 ハイグレ祭……聞き慣れないお祭りに私はワクワクしながら先生の話を聞いていた。

「本番と前日練習があるので、みんなハイグレを用意しておくのを忘れずにね」
「はいぐれ……」
 どうやら『はいぐれ』という道具を使うお祭りのようだ。太鼓や笛のようなものだろうか。
「ねえ、ハイグレ祭りって何をするの?」

 待ちきれず隣の机のカエデちゃんにこっそり聞いてみる。カエデちゃんは不思議そうに顔を曇らせた。

「……キリちゃんが住んでた所ってハイグレ祭やってないの?」

 私は当然のように頷く。

「やったこともないし、見たこともなければ聞いたこともないよ」

「ええええええ!?」

 カエデちゃんの悲鳴にこっちがビックリした。教室中の視線が私たちに注がれる。助けを求めて先生を見たら、先生もこっちも見ていた。
「どうしました?」
 落ち着いた声で先生が聞いてきた。
「えっと――」
「原先生! キリちゃんがハイグレ知らないって! ハイグレ祭も全く知らないって!」

 私の言葉をカエデちゃんが遮る。彼女の言葉に教室中が一気にザワついた。そんなこと言われたって知らないものは知らないし……。

「はい皆さん静かに! 橘さんはまだこちらに引っ越してきたばかりですから、知らないことも多いのは仕方ありません」
 パンパンと両手でみんなを静まらせてから、先生は私を庇ってくれた。原先生は若くて綺麗で、頼りになるから大好きだ。

「これから覚えていきましょうね。そうだ! 帰りの会が終わったら、去年のハイグレ祭のビデオがあるのでみんなで見ましょう」
 騒がしくなりかけた教室は再び落ち着いた。みんな私のために放課後にビデオを見ることに付き合ってくれるみたい。完璧な助け舟に私は無でを撫で下ろした。はいぐれという道具はお母さんに頼んで用意してもらおう。

「キリちゃん、頑張ろうね」
 視聴覚室に向かう途中、アオイちゃんが声をかけてくれた。

「うん。どんなお祭りなのか楽しみだな」
 5年生の教室は1階で、視聴覚室は3階にあるから、長い階段を上っていく。

「都会って本当にハイグレ祭やらないの?」
 数段上から、まだ信じられない様子のカエデちゃんが聞いてきた。

「本当にないよ」
 私は首を横に振る。

「すごく楽しいからキリちゃんも気にいると思うよ!」

 今度は信じてくれたみたいで、可愛い笑顔を弾けさせて、カエデちゃんは階段を駆け上がっていった。一体どんなことをするんだろう。
「みんなハイグレ祭が待ち遠しくて仕方ないんだよ。ほら、急ごう!」
 アオイちゃんに急かされ私たちも階段を登るスピードを上げた。

 視聴覚室にはホワイトボードの前に大きな液晶テレビとプレーヤーが設置されている。

 先生は棚に並ぶケースのひとつからディスクを取り出してセットする。しばらくしてテレビに文字が表示された。黒い背景に白地で去年の西暦と『ハイグレ祭』の文字が大きく書かれている。

 私はワクワクしながら映像が始まるのを待った。次の瞬間、目がくらむほど画面が真っ白になった。
 雪だ。
 去年の今頃もやっぱりたくさん積もっていたんだなとホッとっしたような気分になりながら、私はテレビの中に映るのはどこの風景なのか記憶を探っていた。まっすぐ続く細い道の右側は田んぼで、左側は林みたいだ。でもそんな景色はどこにでもある……どっかりと雪をかぶる針葉樹を見てピンときた。

 ここは神社だ。

 たぶん古ぼけた鳥居があって、その奥にちょっと大きめの広場があるはず。ずっと昔にこのあたりを治めていた人が祀られているって誰かが言ってたな

 神社の広場で行うということは結構本格的なお祭りなんだろうか。
 推理は的中した。テレビに鳥居映った! 私の胸は高鳴るばかりだ。

 鳥居をくぐって、しっかりと踏み固められた雪道を歩いて行くと、いよいよ広場が見えてきた。

『『『――グレ……イグレ……グレ……!』』』

 揃った掛け声のようなものをマイクが拾った。でもよく聞き取れない。

『『『……イグレ……ハイグレ……グレ……』』』

 カメラマンの人が広場に近づくにつれて声も鮮明になってきた。

「……はいぐれ?」

 そう聞こえた。そして、私の声は心の中だけに留まらず、思いのほか大きなつぶやきとなって教室に響き渡った。
 私はハッとして慌てて両手で口を押さえた。それから恐る恐る教室を見回す。
 でも誰も私のことなんて見ていなかった。声すら聞こえていないみたいだ。みんな食い入るようにテレビを見つめている。

 ちょっと拍子抜けしながら私もテレビに視線を戻す。

『『『ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!』』』

 画面には驚愕の映像が映し出されていた。

 全校生徒が人形を囲むようにして輪を作っている。いいや、重要なのはそこではない。生徒たち……見慣れた顔もある……そこにはまだ4年生の見慣れたクラスメイトたちも……アオイちゃんもカエデちゃんも、女の子も男の子もみんな競泳水着みたいな切れ込みの鋭い水着を着てコマネチをしている。色は結構種類はあるけれど、水着の形はみんな一緒だった。
 『はいぐれ』という言葉を掛け声にしてコマネチを繰り返している……もしかしてハイグレ祭のハイグレって――。

「いいですか橘さん。これがハイグレ祭です」
 原先生は当然のように言うが、私には訳がわからないことだらけだった。

 ――これって女の子の水着だよね……? なんで男子も着ているの……? 見ないようにと思っているのに視線が男子のアソコへと向かってしまう。自分たち女子にはない膨らみ……あれ……なんだか形が……太く大きくて真っ直ぐで、お風呂で見たお父さんのおちんちんとは全然違うような……。って違う! なんでこんな季節に外で水着なんてきてるの!? 風邪ひいちゃうよ! それとなんでコマネチなの……あんな恥ずかしい格好で恥ずかしいポーズをみんなの前でしたくない!

「あの……これって絶対に参加しないとダメなんですか……?」
 思考回路がフル回転しすぎて、思わず本音が出てしまった。私の言葉を聞いた先生の表情がみるみるうちに険しくなっていく。

「橘さんは参加したくない理由があるのですか?」
 先生の声は重く冷たかった。ギリギリ保っている笑顔が逆に怖い。さらに先生の後ろのテレビから延々と響く『ハイグレ』という声がさらに私を追い詰める。

「ええっと……」
 まさかみんなが笑顔で行っているポーズを恥ずかしいから嫌だなんて言える訳がない。

「ハイグレ水着でハイグレをするのが恥ずかしいから?」
 心を読んだように原先生に先手を打たれる。クラスメイト全員が先生の発した『恥ずかしい』というワードに反応して私へと向き直った。否定してもしなくても私は今、間違いなく大ピンチだ。

「全然恥ずかしくなんてないよ?」
 怒りと悲しみが入り交じった顔でアオイちゃんが反論してくる。

「私たちのハイグレ姿、そんな風に見えた……?」
 同じような表情でカエデちゃんも。

「そ、そんなこと……ないけど……ほら、私そのハイグレ? 持ってないしさ」
「持ってますよ」

「え?」

 なんで先生が即答するのか意味がわからなかった。なんで先生が私の水着事情を……? 間違ってもあんな過激な水着は……。

「学校指定の水着として購入してもらっていますから、きっとお家に帰ればあるはずですよ」
「え……」

 プールの授業は普通のスクール水着だったはず……お祭り専用の水着なの……? なんでそれを事前に買わせるの……? まさかあんな水着が家にあるなんて。

「なんだよ橘! 誰もお前のハイグレ水着姿なんて見ても嬉しくないから安心しろって!」
 クラスのお調子者の中丸くんがからかうように立ち上がって笑った。なんだか無性に腹が立つ。私だってアンタの女物の水着姿なんて見たくないわ。
「そんな言い方しなくても良いんじゃない!?」
 我慢できず私は立ち上がって応戦する。
「私たちだってアンタに見せるために着てるわけじゃないわよ!」
 カエデちゃんが加勢してくれた。負けん気が強いけどとっても優しいカエデちゃんは、転校してきたばかりの時、言葉や風習の違いに戸惑っていて男子からからかわれていた私を何度も助けてくれた。
「私たちがハイグレをするのはハイグレまお――」
「はいはい静かに! 中丸くんもそういう言い方はやめなさい」
 原先生が手をパンパン叩き、荒れた空気を吹き飛ばした。

「ハイグレ祭は神様に捧げる神聖なお祭りです。みんな頑張りましょうね!」

「「「はい!!」」」

 元気の良い揃った返事の中に私の声はなかった。






「――ちゃん……キリちゃん?」

 カエデちゃんに名前を呼ばれてハッと我に返った。オレンジの水着の肩紐を掴んでぶら下げたまま私はボーっと先週のことを思い出していた。

「あっごめん! ちょっと考え事してて……」

「そろそろ練習始まっちゃうよ?」

 辺りを見回すと、ほぼ全員が着替えを終えていた。みんなハイレグ水着一丁になって談笑している。

「はい! ハナちゃんのお着替え完了!」

 ハナちゃんもみんなに手伝ってもらって黄色のハイレグ水着姿になっていた。小学1年生用でも切れ込みは容赦なくエグい。

「わーい! はいぐれ! はいぐれ! はいぐれ!」
 ハナちゃんはガニ股になってハイグレポーズを行った。子供にはお遊戯みたいで楽しいみたいだ。お股のVラインに沿って腕を引き上げ、腰をクネクネと降る姿は確かに可愛いかもしれない。


「ダメよ、ハイグレポーズは先生の指示あるまで我慢ね」
「はーい」
 ハナちゃんは素直にアオイちゃんの言うことを聞き、うんと大きく開いていた股を閉じた。珍しいな。いつものハナちゃんならもっと駄々をこねると思ったけど……。
 子どもの思いがけない成長に感動していて、私はアオイちゃんの視線が自分へと向けられていることにずっと気づかなかった。カエデちゃんもこっちを見ている。いよいよ着替えの時間がやってきてしまったのか……。
 私は1度大きく深呼吸する。それから意を決してズボンを下ろした。

「うひゃああっ!?」

 勢い余ってパンツまで脱いでしまった……このハプニングにも動じず真剣に私を見つめる視線を感じ、慌てて誤魔化すように私はハイグレ水着を足に通した。右足、左足と水着の穴に通して引き上げる。水泳の授業で着るスクール水着と同じ要領だ。そうだ。スクール水着と同じだと思えばいいんだ。形も似てるし。このままジャージの上着を着たまま下から水着を這わせる。こうやって肩紐を通せば……よしっと。我ながら器用な技だと思う。

「う……」

 だけど現実はそんな簡単にはいかなかった。水着が思っていたよりかなりキツい。もしかして太った? いやいやいや、そんなはずは……これ、私が着ていたスクール水着よりも明らかに小さい気がする。いや間違いなく小さい! うん、私が悪いんじゃないもん。

「くっぐ……」

 ダメだ肩紐に腕を通せない。けど、これじゃまるで本当に私が……無理矢理引っ張ればイケるかな……でもこれ以上引っ張ると……焦れば焦るほど変な汗が出てきて水着がうまく動いてくれない。これは明日からダイエットしなくちゃだな。

「あひゃあ!?」

 これで何度目だ私……また恥ずかしい声を出してしまった。私が明日からの誓いを立てて気を緩めていた間に、誰かが水着を思い切り引っ張った。それだけじゃない、無理やり上着も脱がされる。犯人の姿を見ようにも脱がされているジャージが頭に被ってしまって真っ暗で何も見えない。とはいっても犯人の目星はだいたい付いているんだけど……。
 ジャージが頭から抜き取られ視界に現れたのはカエデちゃんとアオイちゃんだった。はい予想通り。

「とっても似合ってるよ!」
 両手をポンと重ねて目を輝かせるアオイちゃん。アカネちゃんも笑顔で私を見ている。自分の肩に視線を移すと、オレンジの肩紐がしっかりかけられていた。
 私は今、みんなと同じようにハイグレ水着を着ている。

「これが……ハイグレ……」

 体にぴっちりと貼り付いて締めける感覚。只でさえ控えめな胸にも生地が張り付いて小さいふたつの丘を形成している。その更に奥にはキュっと引き締められているアソコが見える。私は無意識のうちにお尻の食い込みを直そうと股布に手をかけた。その瞬間、イナズマのような衝撃が下半身でハジけて頭までを貫いた。

「ぐ……ああっ!」

 全身が痺れるような感覚に襲われながら、どうにか水着の手直しを完了させる。

「大丈夫?」
 私がずっと無言だったからかカエデちゃんが心配そうに聞いてくれた。
「うん。大丈夫」

 私は迷いなく即答する。気を使ってなんかじゃなく、本当に大丈夫だと思ったから。少しキツいけどハイグレの着心地は悪くはない。むしろスクール水着よりもすべすべで柔らかくて気持ちいいくらい。ハナちゃんが思わずハイグレをしてしまったのもわかる気がする。いや、やっぱりわからないや……。
 初体験の高揚感ですっかり忘れてしまっていたけど、そうだった……この後は私もハイグレを……。

 あのポーズをとることにはやっぱりまだ抵抗はあるかな。ハイグレ水着のように実際は悪くないのかもしれないけれど、アレをやるのは女子として純粋に恥ずかしい。間違いなく女子力は低くなりそう。
「ところで……」
「なに?」
 なんだか色んなことを考えて少し冷静になってきた私はひとつ疑問に思っていたことを聞いて見る。
「これってハイグレじゃなくてハイレグって言うんじゃないの?」
 私の質問にアオイちゃんとカエデちゃんはポカンと口を開けて顔を見合わす。
「ハイグレだよね?」
「ハイグレだね」
「ハイグレかあ」
 なるほど。この町の方言ではハイグレなのか。それなら仕方ない。

「女子も着替え終わりましたね。集合の時間ですよ」

 垂れ幕の下から先生の顔がにゅっと現れた。ステージをゆっくり見回して私たちの着替えが終わっていることを確認している。いよいよ運命の時間だ。他の子たちに続いて私たちもステージから降りていく。

 すでに男子たちは整列して女子たちを待っていた。もちろん私たちとお揃いのハイグレ水着姿で。
 女子にも負けないカラフルな水着を身に纏っている男子たち。私たちとの違いは全く膨らみのない平らな胸元と、逆にもっこりと盛り上がった股間……本来ならないはずの何かがある。男子のなかに中丸くんの姿を見つける。真っ赤なハイグレ水着を着て談笑している。カエデちゃんとお揃いの色だな。偶然なんだろうけど。女子用の水着なんてことはモチロン、無防備に膨らむアソコなんて全く気にしていない様子。みんな毎年これを着ているんだもんね。意識しすぎてるのは私だけなんだろうな。

「それでは学年別に整列してください」
 先生の号令を受けて、一年生を左にして整列していく。普段の朝礼と同じ並びだから集合が早い。田舎の学校なので全校生徒が集合しても体育館は半分も埋まらず、後ろにはガランとしたスペースが広がっている。暖房が効いているためか、ハイグレ水着1枚でも寒くはない。むしろ密集すると少し蒸し暑かった。男女混合で背の低い子から順番で並んでいくので、私の前後は男子だった。2人ともこっちが恥ずかしくなるくらいに堂々としているから、私ばかりが変な汗をかいてしまう。水着とはいえ、乾いている状態だから背中や脇などに変な汗染みが出来ていないか小まめに確認する。良かった、今のところ異常はなさそうだ。

「それでは早速始めます。みんな周りの子たちにぶつからないように広がってください」
 自分たちで両腕を開いて、動くことができるくらいのスペースを確保する。男子とは間違っても絶対に何があっても当たりたくないから、スペースを確保するために入念に手を伸ばす。

「うおっ」

 むにゅん。と暖かく柔なか感触。そのあとに後ろから漏れる低い声。伊藤くんの声だ。気づいてから初めて私は事態を把握する。男子に、それもあろうことかおちんちんに触ってしまった。

「ごっごめん!」

 手を引っ込めて慌てて謝る。視線は無意識に触れてしまったアレに行ってしまう。小さかったけど、何回か見た覚えがあるお父さんと同じ形のシルエットが薄いハイグレ水着越しに浮かんでいた。

「別にいいから前向けよ」

 火を吹きそうなくらい顔を熱くしながら焦る私とは対照的に、伊藤くんは全然気にしていない様子だった。
「う、うん……」

 私が正面に向き直ると、生徒全員が整列を完了していた。ハイグレ姿の生徒たちが均一にずらりと並んでいる。これはけっこう壮観かも。

「まずは神様へのご挨拶です。先生に続いて3回繰り返してください」

「「「はい!!」」」

 原先生の指示に元気な返事で答える私以外の全校生徒たち。

 先生はくるりと私たちに背を向けると、素早くガニ股になった。

「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」

 出た、ハイグレポーズ。
 ついに行われた恥ずかしいポーズに私は思わず身構えてしまう。でもそれはやっぱり私だけだった。みんな一斉にガニ股になって、両手を床へと突き出して前かがみになった。
 強い抵抗を感じながらも、私もそれに倣うことにする。まずは股を大きく開いて……うう……この時点でかなり恥ずかしい。苦痛を必死で押さえ込んで腕をまっすぐ下へと伸ばす。手が少し震えている。お辞儀をしているように屈んで準備は完了。ハイグレ水着も相まって、私きっと今すごい間抜けな姿なんだろうなあ……。

 そこからは余計なことを考える余裕はなかった。一気に3回連続でのハイグレポーズが始まる。

「ハイグレッ!」

 下ろしていた両手を掛け声と共に一気に引き上げる。開ける視界。天井の照明が眩しい。生まれて初めてのハイグレ。最初のハイグレを終えて、私はすぐに違和感を感じた。私のやり方が下手なのか、やはり水着が小さすぎたのか、水着が股に強く食い込んでしまう。強烈な不快感ですぐに食い込みを直したかったけど、みんながそれを待ってくれない。仕方なく私も準備体制に入る。
――あと2回……。
 腕を下ろして……から――

「ハイグレッ!!」

 マズイ……更に食い込みがキツくなった。早く直したい……でもその前にハイグレをしないと……!
 神様に捧げるハイグレって先生も言ってたし、そんな大事なハイグレを疎かにするわけにはいかない。私はしっかりとガニ股を維持して、深く屈んだ。

「ハイグレェ!」

 やっと終わった。たった3回なのに少し息が切れて体も汗ばんできた。ひとつゆっくりと息を吐いてから、私は食い込んでいるハイグレの股布に人差し指を差し込んで直してあげる。同じようにしてお尻の部分も調整する。思ってたよりも深くまで食い込んでるな……ハイグレ恐るべし。

「はい。みなさん良く出来ました。素晴らしいハイグレにハイグレ魔王様もきっと喜んでいらっしゃいますよ」 
 先生は満足そうに拍手をしてくれた。

「ハイグレ魔王様……?」
 聞きなれない神様の名前だ。

「学校の近くの神社に纏ってる神様の名前だよ。ずっと昔にこの地域を収めていた人らしいけど」

 思わず零れた独り言を聞いていた伊藤くんが後ろから教えてくれる。彼は中丸くんと違ってとっても優しい。顔も結構イケメンだし、意外とアリかも。あれ……? そういえばさっき食い込み直してた時って伊藤くんに丸見えだったよね? しまったあああああ……。

「それではハイグレ祭の練習を始めます。みんなでひとつの輪を作ってください」
 先生の手がパンと叩かれる。
 その瞬間、みんな蜘蛛の子を散らしたように壁際へと広がっていった。私は完全に移動するタイミングを失ってしまった。オロオロと立ち尽くしていると、ぐいっと腕を引っ張られた。もしかして伊藤くんが……?

「何をボケっとしてんだよ。5年はこっちだぜ」
 照明に照らされる真っ赤なハイグレ。

「なんだ中丸くんか」
 素直に出た感想だった。

「何だとはなんだよ。どんくさいお前をせっかく呼びに来てやったのに」
 なんでコイツはイチイチ癇に障る言い方をするのか。もう我慢の限界だ。

「余計なお世話です! 人の心配する暇があったらその嫌らしい染みを拭いた方がいいんじゃない?」
 中丸くんのおちんちんの先端が収められていると思われる部分が黒く濡れている。中丸くんも気づいたようで慌てて両手で覆って隠していた。怒りに任せて我ながら最低な反撃をしてしまったと思う。でも、おしっこをチビるのが許されるのは幼稚園児までだよね。

「お、お前だってビッショリ濡れてるじゃねえか!」

「なっ……!?」
 何ということだろう。追い詰められた中丸くんが同じ攻撃を仕掛けてきた。女子に向かってお漏らしをしているなんて冗談であっても許される言動ではない。
 ……。
 ……で、でも……一応、念のため、ちょっとだけ確認。人差し指と中指をさりげなく思いあたる場所にくっつけてみる。
 ハイグレがじんわりと湿っているのを感じる。そんな馬鹿な……股布の広範囲をぬるっとした感触。 ぬるっ……? 人差し指にはヌメヌメとした液体。人差し指と親指と擦ると少し糸を引くような粘り気がある。一体これは……。

「こらあああ! アンタ懲りずにまたキリちゃんをイジメてたわね!」
「うほあ!?」
 視線を戻すと既に中丸くんの姿はなかった。代わりにカエデちゃんが立っている。

「俺は何もしてねえよ。コイツが――」
「問答無用! キリちゃんはハイグレ祭が初めてだって言ったでしょ!」

 床に尻餅をついた状態で中丸くんが反論する。でも、確かに彼の言う通り今回は私も悪かったかも。ちょっと申し訳なく思う。

「大丈夫よ」
「え……?」
 いつの間にか隣に立っていた原先生が優しく微笑んでいた。

「すぐに慣れるわ」
「ひゃっ!?」
 私は反射的に手を振り払ってしまった。原先生は何を思ったのか自らの股間へと私の手を引っ張り当てたのだ。
「す、すみません。私ビックリして……」
「ううん。気にしなくていいわ」

 そう言いながら原先生は、また私の手を掴んでアソコへと運んでいく。
「あ……」
 私のと同じ感触。いや、原先生の方がすごい……。

「みんな一緒。ハイグレ祭は男子も女子もハイグレをグショグショに濡らしてハイグレするのよ」

 その言葉には不思議と妙な説得力があった。指から伝わる柔らかい感触。指にねっとりと絡む温もりが安心させてくれるのかな。私は吸い込まれるように、水着の内側に隠された先生の秘部へと指を滑り込ませた。
 
「もうっ橘さんったら」
 先生は私の手をゆっくりと引き抜く。指に残る柔らくてとろっとした感触。先生はまだ私の手をしっかり握ってくれている。手は私のお股へと運ばれる。ついさっきまで先生の暖かに包まれていた指を自分のナカに挿れてみる。
「んあ……んふ……」
 不思議な感覚……ふわふわとして、キュンキュンともする……狭いスペースの中で指を動かせば動かすほど、どんどん気持ち良くなっていく……。
「はい。それ以上はハイグレ祭りの後でね。まずはハイグレで気持ち良くなりなさい。本気のハイグレは今のより気持ち良いわよ」
「はい……」
 原先生は優しく私の手を胸まで引き戻した。ハイグレは気持ちいい……べっとりと濡れた手を見つめていると先生の言葉が何回もゆっくりと再生されている。ハイグレで気持よくなる……本気のハイグレで気持ち良くなる……。ハイグレ祭に本気でハイグレ……ハイグレ……ハイグレ……ハイグレ……。

「さあ、あなたも列に加わりなさい」
「はい……先生……」

 先生に促され私は5年生の列へと向かう。でも、整列する前に私にはやらなければならないことがあった。
「さっきはごめんなさい」
 すでに並んでいる中丸くんの前に立って深く頭を下げた。彼の膨らみが良く見える。染みもさっきより大きくなっていた。でもこれでいいんだ。間違っていたのは私なんだから。
「私、ハイグレのこと誤解してた。中丸くんはずっと私にハイグレの良さを教えようとしてくれてたんだよね」
「別に気にしてねえよ」
 そっけなく答える中丸くん。これも彼の優しさだと思うと少しカッコイイかも。
「ほら見て! 中丸くんの言った通り私もビッショリだよ!」
 腰を突き出して、両手も使ってうまく照明の光を反射させながら中丸くんに見てもらう。くちゅくちゅと音を立てながらアソコを揉み解すと、すぐにさらにヌルヌルになっていった。
「ほ、ほら……んくっど、どう……?」
「わ、わかったから!」
 中丸くんはハイグレと同じくらい顔を真っ赤にして、そっぽを向いてしまった。怒らせちゃったかな……?

「あらあら橘さんダメじゃない」
 ぺたぺたと足音をたてて原先生が走ってきた。
「中丸くんのおちんちんこんなにおっきくなっちゃったわよ」
 全然気にしていなかったけど、先生の言う通り中丸くんのアソコはとんでもないことになってしまっていた。さっきまでのプニッとかわいい状態から、まっすぐ伸びる巨大な塔に変貌していた。放課後にビデオで見た子のものより大きい……ハイグレは巨塔に引っ張り上げられて、まるでテントのようになっている。

「この状態では練習にならないわね……」
 原先生はそう言うと、中丸くんの正面で両膝をついてしゃがみ込んだ。
「あむ……ん」
 先生は迷いなく中丸くんの大きなおちんちんをハイグレごと口に含んだ。目の前で繰り広げられる展開に私はただ呆然と先生の口を見つめていた。
「ンパッ、ちゅっ……んむっ」
「うっああっ……あっあっ」
 数秒後、中丸くんは全身が痙攣したようにピクンピクンと震わせる。
「ああ……はぁ」
「ぷはぁ! これでスッキリしたわね」
 手の甲で口を拭いながら先生は立ち上がる。
「はい……ありがとうございました」
 ぐったりとしながら、なんとかお辞儀をする中丸くんのアソコはベットリと先生の唾液が塗られてテカテカと光っていた。
「さあ、橘さんも列に加わりなさい。また同じことが起きたら今度はあなたにやってもらうことになっちゃいますよ」
 真顔で言う先生の言葉は冗談に聞こえなかった。私は小走りでアオイちゃんとカエデちゃんの間に滑り込んだ。
 
「さすが原先生、上手だったね〜」
 アオイちゃんがうっとりとした目で先生を見つめている。
「私もあの位できれば……」
 反対側ではカエデちゃんが下を向きながらブツブツとなにやら呟いていた。

「キリちゃん、ハイグレ楽しい?」
 小さい声でアオイちゃんが聞いてきた。
「うん」
 同じくらいの大きさで私は答える。不思議とハイグレに対する嫌悪感や抵抗は綺麗さっぱりなくなっていた。それどころか今はハイグレのことで頭がいっぱいだ。早くハイグレ祭が来ないかなあ。ハイグレ魔王様に恥ずかしくないハイグレを捧げたい。そしてお祭りの後は……。

「はいみんな静かにー」
 先生の指示に従ってみんなすぐに静かになった。もちろん私もお喋りをやめて前を向く。

「ハイグレ祭は偉大なるハイグレ魔王様を讃え、復活を祈る神聖なお祭りです。本番は中央にハイグレ魔王様の像を置かせて頂きます。今晩の練習ではなにもありませんが決してふざけたり、手を抜いたりしてはいけませんよ。わかりましたね?」

「「「はい!!」」」
 原先生の説明に元気な返事で答える私たち。

「いいでしょう。ハイグレ魔王様の忠実なしもべ。ハイグレ人間たちよ、さあ偉大なるハイグレ魔王様にハイグレを捧げるのです!」

 どうやら先生の今の台詞がハイグレ開始の合図らしい。みんなが一斉にガニ股になった。私もみんなに合わせてハイグレを開始する。
「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」
 今回は3回限定ではなく、リズム良くハイグレを続けていく。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 少しづつコツも掴めてきて、周りを見る余裕も出てきた。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 カエデちゃんのハイグレはまるでお手本のようで、私も密かに隣で参考にしている。
「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」
 アオイちゃんのハイグレはなんだか暴力的。悪い意味じゃなくて、乱暴に揺れる胸と、荒々しく揺れる髪。ずるいくらい溢れる色気。思わず手を止めて見とれてしまいそうだった。

「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」

 何十回とハイグレを繰り返すうちに、またハイグレが食い込んできた。でも、もう不快なんかじゃない。濡れて硬く締まったハイグレはこれまでに感じたことのない刺激を私に与えてくれる。これはきっとハイグレで感じることができた人だけが味わうことを許された快楽……だめ気持ち良い……! 気持ち良くてもうハイグレ以外何も考えられない!
「ハイグレッハイグレェッハイグレェ〜ッハイグレェ〜ン!」
 ハイグレ魔王様が復活したら……ずっとハイグレできるのかなあ……それもいいかもぉ……――。


「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」

 何十分くらい続いただろう。私たちの無心のハイグレは続く。みんな体もハイグレもグッショリと濡らし、窓ガラスも真っ白に曇らせるほど熱気で満ちていた。私の足元にもポタポタと雫が滴り落ちていく。それが汗なのか、全く別のものなのかもわからない。たぶん両方じゃないかな。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッ」」」

「終了!」

 ピタリとハイグレコールが止んだ。息の切れる音と、もっと続けていたかったというため息が館内に入り混じる。

「みんなご苦労様。明日の本番も頑張ってね」

 輪の中央で話す原先生。あれ……?

 先生の肌ってあんなに青かったっけ?

「よく聞きなさい可愛いハイグレ人間たち」

 私たちハイグレ人間は先生の言葉を黙って静かに聞く。

「ハイグレ祭は一年に一度だけ訪れるハイグレ魔王様復活のチャンス。今年こそ成功させるわよ!」
 
「「「ハイグレッハイグレッハイグレッ!!」」」
 先生の言葉に私たちは誓いのハイグレを行う。

「私は原真紀という教師の姿を1日でも早く捨て去り、誇り高きハイグレ星人の姿に戻りたい。そのためにもお前たちのパワーで何としてでもハイグレ魔王様を復活させるのよ!」

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッ!!」」」
 ハイグレ星人様のお言葉の意味は不思議と私にもしっかりと理解できた。私はハイグレ人間。ハイグレ人間がハイグレ星人様のしもべの1人としてハイグレ魔王様の復活に全身全霊をかけることは当然のことだ。

「フッフッフ、橘さんも立派なハイグレ人間に転向しましたね」
 ハイグレ星人様から直接お褒めの言葉を頂けた! お礼を言わなくちゃ……!
「ハイグレッハイグレッハイグレッ。ありがとうございます! 私も今日からハイグレ人間として精一杯頑張ります!」

「いい心がけよ。しかし、ハイグレ祭を過ぎればお前たちがハイグレ人間である記憶は再び1年間封印される。これからもハイグレ人間として生きたいなら死ぬ気で頑張りなさい!」

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッ!!」」」

 もうハイグレを脱ぐなんて考えられない。ハイグレ星人様のしもべとして生きて行くことが私たちの最高の幸せ。絶対に明日成功させるんだ!

「さあ、我らに忠実なしもべたちよ。ハイグレ魔王様に忠誠を誓いなさい!」
 私たちはステージに向き直る。今日一番なくらいに股を開いて準備完了だ。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッ! 全ては偉大なるハイグレ魔王様の為に!!」」」

「よし、解散!」




 まだ火照った体が冷めやらぬ帰り道。雪は勢いを増していて、道路にも積もり始めていた。私とアオイちゃんとハナちゃんは今日の練習のことで盛り上がりながら歩く。

「こんなにハイグレが気持ちいいものだなんて思わなかったよお」
 まだジンジン痺れるアソコを揉みながら私は感動をアオイちゃんに伝える。ハイグレ人間がハイグレ姿で家に帰るのはごく当たり前で、ハイグレ祭の練習後は毎年こうしているらしい。

「キリちゃんも気に入ってくれたみたいで良かった〜。明日は頑張ろうね!」
「ハイグレまお〜さまのためにハナもがんばる〜!」
 ハナちゃんも元気に飛び跳ねながら楽しそうに言う。
 明日失敗したら来年まで記憶がなくなって、ハイグレの素晴らしさを忘れちゃうかもしれない。なんとしてもハイグレ魔王様を復活させて、地球をハイグレで支配して頂かないと……!



「おかえり〜!」
 家に帰るとママの姿はなかった。食卓に2人分の夕飯と1枚のメモが残されていた。

「『急に仕事が入ってしまいました。夜にお姉ちゃんが来てくれる予定です。明日の夜までには戻ります。姉妹で仲良くね』……ママまた仕事かあ〜」
 メモをテーブルに置いて、椅子に座った。ずっとハイグレをしていたから疲れた……。
「とりあえずお風呂に入ろう」
 重い腰を持ち上げて私は浴室へと向かう。
 お湯は湧いていた。ママが出かける前に準備していってくれたのだろう。
 私は当然ハイグレ水着のまま湯船に飛び込む。プールとはまた違う変な気分。

「キリ〜帰ったの?」
 お姉ちゃんの声だ。どうやら2階にいたみたいだ。
「あ、うん。おかえり! 今お風呂ー!」
 お湯に浸かりながら答える。
「晩御飯は冷蔵庫、おつやの残りは戸棚に入ってるよ」
「おかえりじゃなくて、ただいま。おつやじゃなくておやつ。でしょ」
「あ……べ、べつにこっちでは合ってるんだからいいでしょ!」
 お姉ちゃんはこの町に転校しないで向こうの高校に通うため一人暮らしをしている。所属しているオカルト部の活動をしたいっていうのが転校を拒否した理由らしい。たまに遊びにきては、田舎であることや、方言、文化などをからかっていく。

「ところで、あんたこの町の奇祭知ってる?」
 お風呂の扉越しにお姉ちゃんが話しかけてくる。
「奇祭って?」
「こういった田舎に存在するヘンテコなお祭りや風習のことよ」
 私は何も答えなかった。お姉ちゃんは1人でずっと喋ることができる人だから心配はない。
「んで、ハイグレ祭っていう奇祭がこの地域に存在するらしいんだけど、全国的に見てもかなりヤバイらしいのよ」
 なんてとってもタイムリーな話題なんだ。私すら知らなかったお祭りの情報をこの人は一体どこで仕入れてくるのだろう。
「なんかね、子どもたちに無理やりレースクイーンみたいなエッグいハイレグの水着を着せて催眠術にかけるらしいのよ。それで催眠状態の子どもたちを操って遥か昔に封印された悪魔の復活の儀式をするって噂よ。なんでも、悪魔が子どもによって封印されたらしくて、子どもの力じゃないと解放できないとかなんとか無茶苦茶な理由らしいわ。あんたも変な奴らには気をつけなさいよ」
 饒舌に知ったかぶりをするお姉ちゃんに私は我慢できず扉を開けた。

「ハイレグじゃなくてハイグレね。ハ、イ、グ、レ!」

「ハイ……グレ……ってその格好……あんた訛りや方言がうつるだけじゃ飽き足らず……」

「悪魔じゃなくてハイグレ魔王様! それに私たちは催眠術で操られてるんじゃくて、ハイグレ人間として生まれ変わってハイグレ魔王様を復活させようとしてるの!」
 濡れたハイグレ水着が体にぴっちりと張り付くのを感じながら、身振り手振りでお姉ちゃんの誤解をなんとか解こうとする。

「ハイグレ魔王……様? ハイグレ人間?」

 ちんぷんかんぷんな様子のお姉ちゃん。驚きの余りトレードマークの赤い縁の眼鏡がずり落ちそうになっている。これは詳しく説明してあげるしかなさそうだな。

「ハイグレ人間っていうのは私たちのことで、ハイグレ水着を着てハイグレ魔王様に忠誠を誓ったしもべのことを言うの! ハイグレッハイグレッハイグレッ!」
 渾身のハイグレポーズを決める。これでわかってもらえたかな?

「お前も既に洗脳済みか……その年で哀れな……」
 肩の上で切りそろえられた、ふんわりと少し癖のある自慢の髪の毛をくしゃくしゃとかき回しながらため息をついている。ダメだ……昼間の私と一緒だ。やっぱりハイグレを着てみないとハイグレの素晴らしさはわからないのかな。でもお姉ちゃん用のハイグレなんてないし……。

「まあでも調べてみたら、数百年の歴史があっても悪魔の復活は1度も成功していないみたいだし、明後日には洗脳も解けるって話だから大丈夫かな?」
 そう言ってお姉ちゃんは茶の間へと行ってしまった。さっきまであんなにハイグレで盛り上がっていたはずなのに何か寂しい……。明日ハイグレ魔王様にお姉ちゃんを真っ先にハイグレ人間にして頂こう。そうすれば私の言葉を無視したことを泣いて謝ってくれるはず。

 そんなことをしている間にハイグレはすっかり乾いてしまった。お茶の間に行っても喧嘩になるだけだろうし、明日も早いから今日はもう寝よう。

「ハイグレ祭は近くの神社でやるからね〜! おやすみ〜!」
 2階へと続く階段を上る途中で、お姉ちゃんに叫んだ。




 目覚まし時計のアラームで私は目を覚ました。時計の針の位置よりも先に自分の姿を確認する。ちゃんとハイグレを着ている。昨日のことは夢じゃないんだ。今の私はハイグレ人間。そして、今日は待ちに待ったハイグレ祭。

 ドアを開けて部屋を出――。
 開かない。
 ガチャガチャとドアノブをいくら回しても、押して開くはずのドアはビクともしない。

「やっと起きたわね。あんたには悪いけど、バリケードを築かせてもらったわ」

「その声は……お姉ちゃん!?」
 扉の反対側から聞こえるお姉ちゃんの勝ち誇った声。ドアの前に何か障害物を置かれたみたいで、私の力ではとても開けられそうにない。

「ハイグレ祭はあんたが行けなければ必ず失敗するわ。逆に言うとあんたが行ったら僅かながら成功しちゃう可能性があるのよ」

「どういうこと?」

 お姉ちゃんが昔から都市伝説や怪談などのオカルトが大好きだったけれど、まさかハイグレ祭までこんなに調べていたとは思わなかった。もしかすると私よりも詳しいのかもしれない。

「なんでこの町が都会から子どもがいる家庭の移住者を募集していたと思う? その子を悪魔が転生するための依り代にするためよ」

「ハイグレ魔王様の……依り代……」

「そう。実際にあんたはそうやって見事なまでに完璧に洗脳されて帰ってきちゃうし……私の妹ならもう少し頑張って抵抗しなさいよね」

 私がハイグレ魔王様の依り代……。それ以降のお姉ちゃんの言葉は耳にはいっていなかった。私がこの身を捧げることでハイグレ魔王様が転生できる。私が必要なんだ……。
 時計を見るとお祭り開始の時間まであまり時間がなかった。意を決して私は窓ガラスに手をかける。窓を開けると冷たい風と一緒に大粒の雪がたくさん吹き込んできた。

「ちょっと! 2階から飛び降りるつもり!? そんなことしたら大怪我するわよ!?」

「ハイグレ人間は怪我なんてしないもん!」

 私の中に迷いはなかった。私はハイグレ魔王様に身も心も捧げると誓ったハイグレ人間だから。
「全ては偉大なるハイグレ魔王様のためにっ!」
 大ジャンプを披露して、私は植え込みの中に突っ込んだ。
「いてて……」
 雪がクッションになってくれて、なんとか着地に成功した。ハイグレも無事のようだ。

「バカッ! 何やってるの!」

 私の部屋から顔を出すお姉ちゃんを無視して私は神社へと向かった。


 裸足のまま雪で埋もれた道路をひた走る。雪は昨日の夜よりも更に強くなっていた。
 神社には結構人が集まっていた。大人たちを掻き分けて境内へと向かう。途中で何度かバシャっという音が聞こえた。視線を向けると、この辺の人じゃないお兄さんたちが数人、大きなカメラを私に向けていた。私を撮るのは自由だけど、もうすぐハイグレ姿なんて珍しくも何ともなくなるのにね。

 広場ではもうみんな整列を終えていた。雪が降り続く中、私も含めてみんなハイグレ水着1枚。でもぜんぜん寒くない。みんなも平然と裸足で雪を踏んでいる。私は先生に遅刻したことを謝りに行く。原先生は色白のいつもの肌に戻っていた。
「ああ橘さん、お姉さんからお休みすると電話があったので、これからお迎えに行こうと思っていたんですよ。体調など大丈夫ですか?」
 私が頷くと原先生は心底ホッとしたような表情で私を見下ろす。
「早くハイグレ魔王様にハイグレを捧げたいです」
 私は今の素直な気持ちをそのまま答える。

「そうですね。それでは早速始めましょう」
 先生がパンと手を叩く音を合図に、私たちは昨日の輪になる陣形を作った。
 いろんな場所に三脚にセットされたビデオカメラが置かれている。私が先週見たビデオに色んな角度からの映像があったのはこういうことだったのか。

「あのカメラで録った映像は資料の他にお店で売るらしいよ」
 アオイちゃんが隣で教えてくれた。だから去年の映像があんなに綺麗に残っていたんだな。
「毎年マニアの大人に高値で売れるんだって。売り上げはハイグレ祭の資金にするとか」
 どんなマニアなんだろう……でもハイグレ祭に貢献できるなら仕方ないか。もし今年ハイグレ魔王様を復活させることができなくて、次にやってくるハイグレを知らない子に教えてあげるためにも頑張って綺麗な映像を残さないと。
 改めて探すと階段の下にいたような、レンズの大きいカメラを構えている人たちもいっぱい居る。すでにバシャバシャと撮影している音も聞こえた。
「すごい人だね」
「毎年こんな感じだよ。ハイグレ祭が楽しみなのは私たちだけじゃないんだね」
 こんな雪でも変わらず人が集まるなんて……このお祭りを待ってくれてた人たちのためにも最高のハイグレをしなきゃ。

「お祭りが終わったら、いっぱい遊ぼうね」
 アオイちゃんが私の手を握ってくれた。暖かくて柔らかくて、胸の中にパンパンに張り詰めていた緊張がすうっと抜けていく気がした。
 でも、私はお祭りで……依り代ってハイグレ魔王様が私に乗り移るってことだよね。お祭りの後、私は一体どうなってるんだろう。できることならみんなでハイグレしていたいけど……ハイグレ魔王様のためなら仕方ないよね……。それが私のこの町での役割なんだろうし。

「2人とも、始まるよ」

 カエデちゃんが教えてくれると、軽い地響きと共にかわいいお人形が土の中から姿を現した。赤いモヒカン頭にピエロのような仮面を被った二頭身のお人形。もちろんハイグレも着ている。濃いめのピンクのハイグレを着ていて――。

 腕を上げなくちゃ。

 突然そう感じた。余計なことを考えている場合じゃない。私はすぐに握っていたアオイちゃんの手を振りほどく。指をピンと伸ばして、両腕を真っ直ぐ天高く伸ばした。アオイちゃんもカエデちゃんもほぼ同時に私と同じ格好になっている。
 頭の中に流れてくる直感に逆らうことなく、私は両手を上げたまま地面に両膝を突く。その指示に忠実に従うことで自然と表情が緩み笑顔になってしまう。私だけじゃない。みんなほぼ同じ行動を取っている。ハイグレ人間たちも、普通の服を着て見物に来ている大人たちまでも笑顔で膝を突いて両腕をまっすぐ上に伸ばしている。
 それからその腕を上半身ごと静かに振り下ろして、地面にぺたりとくっつける。おでこに雪が付くくらいまでひれ伏すと、心の底から満たされる気持ちになった。だらしなく口は開きっぱなしだけど、今は全然気にならない。

「しっかり気を引き締めろ。今年こそはハイグレ魔王様を復活させるんだ」

 顔だけを少し上げてみると、既に本来のハイグレ星人の姿に戻った原先生の後ろから1人の男の人が現れた。がっちりとした体型のおじさん。写真などで何回か見た覚えがある……思い出し丹賀町長だ。でもいつのもスーツ姿じゃない。小麦色の肌にTバック1枚だけという姿。私はこの方もハイグレ星人様だったんだとすぐにわかった。
「さあハイグレ人間たち、ハイグレ魔王様の御神体にハイグレを捧げるのだ」
 私たちはハイグレ星人様のご命令に従って立ち上がる。

 ガニ股になって、両腕をピンと伸ばして……準備完了。
 みんなでタイミングを合わせて一気に引き上げる。

「「「ハイグレッ!!」」」

 き、きんもちいい〜……。高揚感と緊張感の入り混じる中で行うハイグレは格別だった。2回、3回と回を増すごとに練習のときの数倍の刺激が全身を駆け抜ける。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」
 
 ぎゅっぎゅっとだんだんハイグレが食い込んでくるのがわかる。薄い生地のため乳首もピンッと起き上がって胸の部分にポチっと突起を作っている。でも恥ずかしくはない。むしろ興奮するのはなんでなんだろう。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ!!」」」

 練習の時に刺激をコントロールできるようになったつもりでいたけど、その考えは甘かったみたい。際限ない快感が容赦なく私を襲ってくる。私はこの素晴らしい気持ちよさに感謝してハイグレを続ける。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」

 ハイグレを開始して十数分。男子も女子も締まりのない笑顔でハイグレを繰り返す。男子のおちんちんはみんな硬く反り立っていた。カッコイイなあとは思うけど卑猥だなんて思わない。もう私は完璧にハイグレの虜だ。今日が終わったら来年までおあずけなんて嫌! ああんハイグレ魔王様、私たちハイグレ人間に明日からもハイグレを!

『ホホホ……ハイグレを気に入ってくれたようでなによりよ』

 唐突に聞こえた甘美な声。ハイグレをしながらキョロキョロと辺りを見回しても、みんなまっすぐお人形を見つめている。ただの気のせいかな。

『聞こえているんでしょう? あたしの名前はハイグレ魔王。この地球の支配者だった者よ』

 言葉の内容を理解して、驚いて心臓が止まるかと思った。脳内に流れ込むハイグレ魔王様の声にハイグレポーズにも気合が入る。

『ホホホ、かわいいハイグレ人間ね。あんたのお蔭でおかげであたしのパワーも戻ってきたわ。あんたの身体も悪くなさそうだし今度こそ復活できそうよ』

 私の胸は高鳴った。ハイグレ魔王様が復活されれば、ハイグレ人間としての生活が……いや、私は魔王様に体を捧げるんだった。アオイちゃんたちが少し羨ましいけど、私も少しでもお役に立てるならハイグレ人間としては本望なのかな。

『あら、なんだか不満そうね。でもあたしの命令は絶対よ。あんたは支配者であるあたしのしもべなんだから」

「ハイグレッハイグレッ、もちろんですハイグレ魔王様。ハイグレッ」
 思わず声になってしまった。
 アオイちゃんとカエデちゃんは私の異変に気づいたようで、不審な顔でこっちを見ている。でもそんなことはどうでもいい。私の気持ちをハイグレ魔王様に伝えないと!

「私、ハイグレ人間キリは、偉大なるハイグレ魔王様に忠誠を誓ったしもべ……私の身も心も全て魔王様に捧げました……どうぞご自由にお使いください……ハイグレェ!」

 最後は叫んでいた。ハイグレ人間全員がハイグレを続けながらだけど私を見ていた。落ち着いてきたら少し恥ずかしくなってきた。でも次の瞬間、私も含めてみんなの意識は円の中央へと戻されることになった。

『ホーッホッホッホ! よく言ったわハイグレ人間!』

 人形が真っ白に光って、その上に人影が現れた。涼しげな青い肌。すらっとした体に人形と同じモヒカンと仮面、そしてもっこりと股間の膨らんだピンク色のハイグレ水着。

『はじめまして。あたしはハイグレ魔王……この地球の支配者』

 なんて美しいお方なんだろう。ハイグレ魔王様のお声を聞いてみんなハイグレに気合が入る。

「「「ハイグレェ! ハイグレェ! ハイグレェ! ハイグレェ!」」」

『そうよ。どんどんあたしにハイグレを捧げなさい。今度こそは封印を解くことができそうよ』
 楽しそうに笑いながら私たちを眺めた後、ハイグレ魔王様は原先生と丹賀町長を見た。
『お前たちも長い間よく頑張ってくれたわね』
「もったいないお言葉です。ずっとお待ちしておりましたハイグレ魔王様」
 2人は本来のお姿で、ハイグ魔王様に片膝を突いて頭をさげる。

「ちょっと待ったあああああ!」

 私たちの支配者の感動の再会を邪魔する怒号。みんなハイグレを止めて声の正体を確認する。人ごみとハイグレ人間を掻き分け現れたのはお姉ちゃんだった。

「悪魔め! 妹は絶対に渡さない!」
 ゴム長靴を履き、高校の制服を着て、頭にはバケツ、手にはモップを握ってハイグレ魔王様と対峙するお姉ちゃん。多分その装備では魔王様でなくても勝てないと思うよ……。

「このお札をあの人形に貼り付ければ……!」
 ポケットから取り出した1枚の紙。難しい字が絵みたいに書かれていた。
「貼り……つけれ……ば……」
 ポサッと柔らかい音をたてて雪の中に沈むモップ。武器を棄てたお姉ちゃんは、両腕を揃えて空へと伸ばし、ハイグレ魔王様のお人形の前に跪いた。勢い良く膝を突いたせいで被っていたバケツは脱げて後ろへ落ちた。お札はまだ指に挟んだままだけど、人形を見つめるお姉ちゃんは顔はとびきりの笑顔だった。

「ははあ〜! 偉大なるハイグレ魔王様ァ〜!」
 お祭り開始直後の私たちと同じように、お姉ちゃんはお人形にひれ伏している。
「ハイグレ魔王様ァ〜」
 何度も何度も上半身を起こしては降り積もった雪の中に顔を突っ込んでいる。お札はあと数センチでお人形に届いてしまうけれど、顔を白くしながら拝跪しているお姉ちゃんにはもう貼り付ける余力はなさそうだ。

『なにこの見るからにマヌケな女は』
 ハイグレ魔王様はお姉ちゃんの頭上へと移動する。魔王様には目もくれず人形に跪くお姉ちゃん。
『あら。そういうこと』
 魔王様はお姉ちゃんをじっくり観察して、何かを思いつかれた様子だ。
『決めたわ。この子の身体を頂くわよ』
「ハイグレ魔王様ァ〜……えへへハイグレ魔王様ァ〜……』
 お姉ちゃんには全く聞こえていないようだ。相変わらず顔面で雪を固め続けてる。雪で眼鏡も水滴だらけでお人形もよく見えていなそう。ものすごい光栄なお言葉を頂いているのに……。

『さあハイグレ人間たち、あたしにパワーをよこしなさい!』

「「「全ては偉大なるハイグレ魔王様のために!!」」」
 私たちはハイグレ魔王様のご命令に従ってハイグレをする態勢になる。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ!!」」」
 ハイグレ魔王様の復活のチャンスを逃すわけにはいかない。私たちはすぐにハイグレを開始する。全ての力を注いでハイグレを繰り返す。
 このままハイグレを続けたらお姉ちゃんがいなくなってしまうかもしれない……でも私は妹である前にハイグレ人間なんだ。ハイグレ魔王様のご命令は絶対だから……それにハイグレ魔王様がお姉ちゃんの中に入ったら私はハイグレ人間のままでいられるかもしれない。お姉ちゃんには悪いけど、私はハイグレ人間でいたい。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ!!」」」

『フフハハハハハ!! いくわよおおおおお!!』
 ハイグレ魔王様は天高く飛び上がった。
「ああハイグレ魔王様ァん〜……ハッ私は一体……」
 その時、お姉ちゃんが我に返った。
「そうだ……封印のお札を……ぐぐ……グレ……様ァ……札を……」
 跪きながらも、あと数センチ先のお人形へと手を伸ばしお札を貼ろうとしている。
『そこまでよ!』
 ハイグレ魔王様はお姉ちゃんの体に飛び込んだ。
「きゃあああああああああああああ!!」

 轟音と真っ赤な光が神社を包んだ。突風のような風も吹いて、私は仰け反って尻餅をついてしまった。目を開けても光と砂埃で全く前が見えない。

「ホホホ……」

 お姉ちゃんの声が聞こえる。立ち上がっているお姉ちゃんの姿がぼんやりと浮かんでいる。

「ついに戻ってきたわよ」

 お人形の隣には、濃いピンクのハイグレ水着姿を着た青い肌の姉ちゃんが立っていた。
「あら、この紙切れ……本当にヤバイやつじゃない」
 声はお姉ちゃんだが口調は完全にハイグレ魔王様だった。
「ホホホ、貼られいたら危ないところだったわ」
 お札はお姉ちゃんの姿をした魔王様にビリビリに破かれて撒き捨てられた。白い紙はすぐに雪に埋もれて見れなくなってしまう。どうやらお姉ちゃんの計画はギリギリで失敗したようだった。
「ちょっとなにこれ見づらいし邪魔ね」
 お札を処分した後は、トレードマークだった赤いメガネを自ら投げ捨てる。

「みなさん、ハイグレ魔王様のご降臨ですよ」
 原先生に言われてようやくお姉ちゃんがハイグレ魔王様の依り代になったんだと実感が湧いてきた。

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」

 私たちはハイグレ魔王様に心からのハイグレを捧げる。あのお方はもうお姉ちゃんじゃなくてハイグレ魔王様なんだ。私は魔王様のためにお姉ちゃんが大役を果たせたことが誇らしかった。そして、私はこれからもハイグレ人間として生きていくことができる!

「ハイグレ魔王様、この町はほぼ侵略済みでございます。未転向の住民も明日までにはハイグレ人間へと転向可能です」
 原先生が私たちのハイグレをBGMに報告をする。

「暗くなる前に終わらせなさい。明日にはハイグレ人間たちを使って本格的に地球征服計画を再開するわよ!」

「ハッ、それでは町中のハイグレ人間を総動員して、すぐに開始させます」

 原先生が指をパチンと鳴らすと、私たちの前に水鉄砲のような銃が落ちてきた。
「それは撃たれた人間をハイグレ人間へと変える光線銃よ。昔からこの町に住む人間たちは既にハイグレ人間になっているけれど、それ以外の人間はコレを使ってハイグレ人間にしてあげる必要があるわ」
 私たちはハイグレを続けながら原先生の説明聞く。ママも多分それ以外の人間に入っているはずだ。

「あなたたちの手でこの町をハイグレ魔王様の完全な支配下に置くのよ!」

「ホーッホッホッホ! さあお行きなさい! あたしの可愛いしもべたち!」

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッ! 全ては偉大なるハイグレ魔王様のために! ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレッ!」」」

 私たちは銃を手に取る。神社の中を見回すと、さっきまで服を着ていた大人たちもハイグレ姿になっている。私たちがハイグレ魔王様の封印を解いたからハイグレ祭で転向した状態に戻ったってことかな。でも、ところどころにまだ愚かにもハイグレ姿じゃない人もいた。すぐに誰かが光線を放った。
「ぎゃあああああ!!」
「lきゃあああああ!!」
「いやああああああ!!」

 老若男女の悲鳴が響く。
「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」

 数秒後にはみんな色とりどりのハイグレ人間になっていた。
 私も負けないように未転向者を探す。

「キリちゃん、神社の外に行ってみよう!」
 アオイちゃんが提案してくれる。
「よし俺たちは駅の方にいってみようぜ!」
「いいわね。そこなら未転向者人がいそう!」
 中丸くんとカエデちゃんが目的地を決めてくれる。駅で待っていればママもすぐにハイグレ人間にしてあげられるかも。

「それじゃ出発!」
 この町をハイグレ魔王様のものにするため。そして地球をハイグレ魔王様のもにするため私たちは頑張るぞ! 全てはハイグレ魔王様のために!

「「「ハイグレッハイグレッハイグレッハイグレッ」」」
 

ぬ。
2017年04月02日(日) 10時21分03秒 公開
■この作品の著作権はぬ。さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
3月に入って一気に忙しくなって大遅刻での投稿になってしまいました
締め切りを守れず大変ご迷惑おかけしました(´・ω・`)
テーマは「田舎の奇祭」といった感じです。田舎って結構過激なお祭りが多いですけど小さい頃からの慣れのせいか意外と受け入れちゃうんですよね
ハイグレ祭もそんな部分をネタにしようと書き始めたんですけど、お題の全部入りも目指したせいもあってか想定よりかなり長くなってしまいました
肝心の内容が薄くなってしまったのも反省点ですね
そして、土下座しちゃう人形ネタを勝手に使わせて頂きました。あのネタ大好きなんです。ありがとうございました
次の企画では締め切り遵守致します
それではまた(`・ω・´)ノ

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白い雪とカラフルなハイグレ水着のコントラスト、それに年端もいかない少年少女、まったく小学生は最高だぜ
この奇祭において小学校卒業というのはなかなかの絶望なのだろうか
お姉ちゃんの情報収集力とやばげなアイテム所持、もう少し冷静でいれば危ない所だった
依代にされたのはちと可哀想(名誉)ですが、あの姉だからこそ依代にされてもなお魔王様の中にちょこっと残ってる気もします
ママさんには練習後のキリちゃんのグショグショに濡らしたハイグレ姿を見せてやりたかった、仕事め
あとおちんちん関係で顔を出すお父さんが地味にツボです
akariku ■2017-04-02 20:58:15 p344004-ipngn200206takamatu.kagawa.ocn.ne.jp
執筆お疲れ様です!
田舎では変な風習があるとよく言いますがこんな風習なら大歓迎ですね!
小学生がハイグレに勤しむ背徳感、かっこよく現れたお姉ちゃんがあっという間に負ける無様さ、それを上手く組み合わせお題コンプする文才、感服致しました!
満足 ■2017-04-02 08:46:26 om126200020249.15.openmobile.ne.jp
結構なボリュームがありつつも常に先が気になる展開が続き、一気に読んでしまいました。
全体を通して、キリちゃんの洗脳前後の落差が最大の見所だと感じました。丁寧な導入と初ハイグレへの困惑、そして洗脳完了後の姉への敵対心……キリちゃんの心情の移り変わりが、一人称視点ゆえにとても明瞭です。まだ性を知らない無垢な年齢設定も上手く効いています。
まあ理屈を抜きにしてもやはりロリショタのハイグレは非常によろしい! ビバ生命礼賛!
「祭り」部分の興奮は先の方々と同意見ですが、個人的には「方言」の用い方が面白いなぁと。方言には地元の連帯感と異邦人の排斥の要素が含まれるわけですが、しんちゃん語録がそれに大いに貢献しています。
また「その歳で哀れな」や「のぼりっこ」といった聞き覚えのあるワードもちらほらと。
ハイグレ小説としてのエロさと原作リスペクトの絶妙なバランスでの両立、というぬ。さんの真骨頂を改めて感じさせていただきました。執筆お疲れ様でした!
香取犬 ■2017-04-01 23:18:31 i114-182-243-172.s42.a013.ap.plala.or.jp
狙い澄ました投稿時間といい、ぬ。さんの拘りが色濃く反映された力作に唸るばかりです。
前半のカルチャーショックによる戸惑いと、後半の宗教的な緊張感漂う怒涛の展開とのコントラストが見事に映えており、私にはまさに「序破急」のお手本のように思えましたよ♪
そして「三つ子の魂百まで」と言いますし、地元のお祭りって何故か不思議と受け入れられてしまうんですよね。
そんな【祭り】の王道に終始ニヤニヤしながら、キリちゃんの葛藤に興奮しっぱなしでした。
今企画の最後を飾るに相応しい傑作を、ありがとうございました!
牙蓮 ■2017-04-01 21:26:48 38.117.168.203.megaegg.ne.jp
こんばんハイグレー!(`・ω・´)ついに……! ついに第3回企画のトリを飾るぬ。さんのハイグレ小説がYO☆ME☆RU☆

ってなんやこれ最高やんかいさあああああああああ待ってた甲斐ありまくりやんかいさあああああああ(*´д`*)寒村のちょっとした年中行事のような扱われ方から入って徐々に明かされていくおそるべき奇祭の全貌……クライマックスにはハラマキレディース様はもちろんのこと普段あまり出番の少ないTバック男爵(なぜか敬称略(謎)といった幹部勢も巻き込み、それだけでは飽き足らずハイグレスレ発祥の魔王様人形ネタまで放り込んでくる! しかもしかも! お題の「方言」「天気」「祭り」「撮影」「姉妹」をフルコンプ! しただけに留まらず! 私からの無茶振り「一人称で小説書いてみて☆」まで完遂するとは、恐るべき才能……まさに奇才! 奇祭だけに!【審議中】 ( ´・ω) (´・ω・) (・ω・`) (ω・` )

ド田舎で執り行われる奇祭、それを阻まんとするオカルト好きの人物、奇祭が成功すると「神様」が降臨される(けど今まではいつも失敗に終わっていた。今度は成功してしまう)、というと、その昔CMが怖すぎて放送中止になったあのクッソ難しいホラーゲームを想起させて私のトラウマがカマクビをもたげそうになりましたが、そんなもの押さえつけて終始興奮に次ぐ興奮を提供してくださったぬ。さんのステキな作品、ご投稿くださり本当に、本当にありがとうございました!!(`・ω・´)bb
0106 ■2017-04-01 01:39:12 kd106161196049.au-net.ne.jp
風習はその土地に生まれた人ならどんな奇妙なものであっても疑いもなく受け入れられるもので いつのまにか洗脳されてたなんてことも気付かないかもしれません
そんなハイグレ祭に否応にも参加することになった主人公キリちゃんが 徐々にハイグレ人間に洗脳されていく様が丁寧に描かれていて 読み進めるうちに物語に没頭してしましました
ハイグレのみならず先生のエロ処理シーンを挟むところなど 幅広い性癖への配慮も見られます
そして最後に妹をハイグレ洗脳から救おうとした姉がまさかハイグレ魔王の依代になってしまうとは とても面白い展開だと思います
このボリュームで物語的にはまだまだ序章 これからハイグレ侵攻が始まると思うと続きを妄想せざるをえません 個人的に企画を無視して続きを書いて欲しい そう思わせる作品でした
余談ですが「お前も既に洗脳済みか……その年で哀れな……」というセリフに原作へのリスペクトを感じるところが ぬ。さんらしいなと思いました
ROMの人 ■2017-04-01 00:35:47 softbank126082026156.bbtec.net
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