【本編・後編】三位一体のハイグレ洗脳 〜TOG最終決戦if〜



「う、うぅ……」
「大丈夫、ソフィ?」

 眼前に横たわる少女を気遣いながら、シェリアは『ピクシーサークル』を発動させる。応急処置とはいえこれでひとまず命に関わるような大傷は癒す事ができたが、細かい原素(エレス)の乱れや内臓に蓄積したダメージまでは取り除ききれない。

(もうこれ以上、私もソフィも戦える体じゃないわね……)

 そんな忸怩たる思いで見つめる先は、桃色の残滓。爆発的な奔流は収まり、この世で一番聞きたくなかった嬌声が届けられる。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」


[フフフ。いい姿になったね、二人とも]
《ククク。よき姿となったものだ、お前達》
【ホホホ。いい姿じゃない、坊や達〜♪】


 高みの見物とばかりに見下ろす魔王の前で、幼馴染達が股を開く。余りに似つかわしくないハイヒールへ鍛え上げた足を嵌め込み、アスベルは白色の、ヒューバートは青色のハイレグ水着を身に纏っている。遠目ではあるもののその薄い布地には腹筋が薄っすらと浮き出ており、何より卑猥な膨らみが食い込みの先っぽにぶらり、革袋の如くぶら下がっていた。


【あ〜ん、もうっ! 戦う前からずっと思ってたけど、ホントハイグレ映えする子達ねぇ。今すぐにでも食べちゃいたいくらい、だわっ!】


  ――ムギュっ

   ドピュっ……

 興奮気味に魔王が突き出した両腕が兄弟の股間に触れたかと思うと、彼らは体を仰け反らせる。未だ転向直後の興奮冷めやらぬ中、魔王直々に与えられた恩賜とあらば耐えられるはずもない。魔王の影になって掴まれた股元自体は確認できないが、尚もハイグレを続けている体はピクピクと絶頂の余韻に打ち震えていた。


[……魔王。まだ終わってないって事、忘れてないかい?]
《……魔王。まだ終わってないという事、忘れてはいまい?》


【分〜ってるわよ、そんな事。じゃあ後でたっぷり可愛がってアゲルから、アンタ達も一緒にハイグレしてなさい】


「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」

 リチャードとラムダにたしなめられ、ハイグレ魔王は名残惜しそうに命令を下す。アスベルとヒューバートはその言葉に一瞬の静止後、復唱のハイグレポーズ。そして白く濡れ汚れた切っ先とガチガチに勃起した水着色の男性器をそのままに、エメロード達三人の下まで歩んでいってハイグレを奏でる隊列に加わるのだった。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」


[フフフ……。――さぁ、待たせたね]
《ククク……。――さぁ、待たせたな》
【ホホホ……。――さぁ、待たせたわね】


「くっ……」

 去り行くハイグレ人間達の行き先を確認する事もなく、魔王はこちらへ足を向けてくる。その姿にシェリアはようやく上体を起こせるまでになったソフィを抱き寄せ、ギュッとその体を握り締める。眼前に魔王、背後に崩れかかった岩壁とあってはもはや逃げ場などない。なけなしの思いで袖口に忍ばせてあった短剣を手に取るも、先の戦いで見せつけられた力量差を考えればどうしても投擲する事自体憚られてしまう。


[君達で最後だ。この厳かな雰囲気の中でハイグレ転向できる事を、光栄に思うがいい]
《お前達で最後だ。この厳かな雰囲気の中でハイグレ転向できる事を、光栄に思うがいい》
【アナタ達で最後よ。この厳かな雰囲気の中でハイグレ転向できる事を、光栄に思いなさい】


「陛下……、いえ、リチャード! これが本当に、あなたの望んだ結末なの!?」


[……君も、アスベルと同じような事を言うんだね。
 もちろん、これが僕達が理想とする有るべき世界の姿だよ。皆がハイグレとその快楽に塗れて、等しく暮らす事ができる。君も今からその世界の一員となるんだ、そんな悲しそうな顔は似合わないよ]
《……お前も、あの人間と同じような事を言うのだな。
 もちろん、これが我らが理想とする有るべき世界の姿だ。皆がハイグレとその快楽に塗れ、等しく暮らす事ができる。お前も今からその世界の一員となるのだ、悲しむ必要などどこにもない》
【……アンタも、あの坊やと同じような事を言うのね。
 もちろん、これがアタシが理想とする有るべき世界の姿よ。皆がハイグレとその快楽に塗れて、等しく暮らす事ができる。アナタも今からその世界の一員となるのよ、そんな悲しそうな顔なんてイ・ラ・ナ・イ・の♪】


「ラ、ムダ……! リチャー、ドっ……!」

 シェリアの腕の中で唸り声を上げるソフィにも、魔王は一瞥をくれるのみ。そして幾度となく仲間達の生を、人間としての生を終わらせてきた憎き右腕が突き出され、彼女達は声ならぬ悲鳴を上げる。


[さぁ、覚悟はいいかい? 折角最後まで逃げ延びたんだから、もう一つ試しておきたかった洗脳法でハイグレにしてあげるよ。その身を以て、ハイグレ魔王国の礎となるがいいっ――!]
《さぁ、覚悟はいいかっ!? 折角最後まで逃げ延びたのだ、もう一つ試しておかねばならぬ洗脳法でハイグレにしてやろう。その身を以て、ハイグレ魔王国の礎となるがいいっ――!》
【さぁ、覚悟はいいかしら? 折角最後まで逃げ延びたんですもの、もう一つ試しておきたい洗脳法でハイグレにしてあげるワ。その身を全て、ハイグレに捧げなさぁ〜いっ――!】


「ああぁぁぁっ――!?」
「きゃあぁぁぁっ――!?」

  パアァァァ――

 掌が握られたと同時に光が溢れ、シェリアの体は桃色の光に包み込まれる。視界は一瞬で切り替わり、眼前に立つ魔王の姿やアスベル達のハイグレポーズ、その背後で輝く星の核(ラスタリア)や青緑色の地核も、そして抱き寄せていたソフィの体までもが一切合切光の中へ消えていく。
 完全なる独りぼっちで迎える、人としての終。スーッと絵具が水に溶けていくかの如き自然さで身ぐるみを剥がされてしまうおぞましい感覚に打ち震えながら、シェリアはあらん限りの声を張り上げたのだった……。





    …………
    ……
    …





「ぁぁぁぁぁっ――……」

 声の限り、いつまでも叫び続けていた。なのにある瞬間からふと、喉の痛みが感じられない。

(誰か、助けてっ……!)

 その思いを声に乗せ尚も目一杯喉を引き裂くが、感じられるのは普通に井戸端会議をしている程度の感覚のみ……。

(どういう、事……?)

 そう思っているうちにいつの間にか瞼の裏側を照らしていた桃光は掻き消え、シェリアは恐る恐るといった具合で閉ざしていた瞳を見開いていく。

    …
    ……
    …………

「……っ! ソフィ!?」

 開け放たれた瞬間からクリアな視界に映り込んできたのは、変わり果てた娘(未来の)の姿。サラサラと流れるライトパープルの長髪は辛うじていつものままツインテールだったけれども、特注のヒューマノイドスーツはそこにはない。大きく開け放たれた背中、両肩に掛けられた銀色の肩紐。覗き込めば白銀の平面の中でプクっと、蕾の如き胸元がいやらしく突き出ていた。

「……い、嫌あぁぁぁっ!!?」

 そしてどれだけ見たくなかろうと、視線はソフィから外れ否応なく真下へ注がれてしまう。本来ならそこにあるはずの胸飾りはもちろんなく、あるのは金色に輝くハイレグ水着のみ。谷間の真ん中に皺を寄せ、蠱惑的な稜線は全裸に近い状態でくっきり。まだ肝心要の食い込みは確認していない段階でも、絶望の悲鳴を抑えきれない。


[フフフ、いい格好になったね。ちょっと華やかにサービスしてあげたけど、どうだい? 感想は?]
《ククク、いい格好となったな。少々華やかに着飾らせてやったが、どうだ? 感想は?》
【ホホホ、いい格好になったわね。特別に華やかな色にしてアゲタけど、どぉう? 感想は?】


「いいわけないでしょ! ほんっとにもう、しんっじられないっ!!」

 もはや戦闘状態は過ぎ去ったと見たのか、魔王は爪を片付けマントも元のようにグルっと体の周囲へ巡らせて問ってくる。恥ずかしさも相まってシェリアは烈火の如く食って掛かるが、まだ冷静さを保っているソフィは率直な疑問をぶつけてくる。

「ねぇ、シェリア。これ、教官やパスカルの時と違う。教官もパスカルも、最初から自分の事ハイグレ人間だって思ってたけど、わたしはまだ普通のわたしのままだよ?」
「! そういえば、そうね。
 アスベル達もハイグレ人間になってたからこそ、あんな破廉恥な事……。一体、どうなってるの?」


[フフフ……。君達はまだ未洗脳者としての自我が残された、完全なハイグレ人間じゃないんだよ。
 本来ハイグレ洗脳は色々な状態、段階に調整する事ができて、それがこの世界でも可能か試してみたかったんだ。何分遠方からハイグレ粒子を送り込んでるから、現地の物理法則に阻まれないか心配だったけれども、どうやら杞憂だったみたいだね]
《ククク……。お前達はまだ未洗脳者としての自我が残された、完全なハイグレ人間ではないのだ。
 本来ハイグレ洗脳は様々な状態、段階に調整する事ができ、それがこの世界でも可能か試してみる必要があった。何分遠方よりハイグレ粒子を送り込んでいる故、現地の物理法則に阻まれる恐れがあったのだが、どうやら杞憂に過ぎなかったようだ》
【ホホホ……。アンタ達はまだ未洗脳者としての自我が残された、完全なハイグレ人間じゃないのヨ。
 本来ハイグレ洗脳は色々な状態、段階に調整する事ができて、それがこの世界でも可能か試す必要があったの。何分遠方からハイグレ粒子を送り込んでるから、現地の物理法則に阻まれやしないか心配だったけど、どうやら杞憂だったみたいネ♪】


「それじゃあ私達、実験台にされたって事!? この後一体、どうするつもり……」


[フフフ、決まってるじゃないか。未洗脳者はもちろん――]
《ククク、決まっているであろう。未洗脳者はもちろん――》
【ホホホ、決まってるじゃな〜い。未洗脳者はもちろん――】


  ――パチンっ!

 もったいぶった物言い、そして打ち鳴らされた指の音が澄み切った空間に響き渡る。


[――ハイグレ洗脳するだけさ!]
《――ハイグレ洗脳するだけだ!》
【――ハイグレ洗脳するだけよ!】


「えっ……!?」
「うそっ、からだが……!?」

 その音を耳にした瞬間、ソフィとシェリアは徐に立ち上がっていた。衝突の残滓である瓦礫を避けて互いに距離を取り、ビシッと直立姿勢。
 それが己の意思に則って行われていたのなら、何ら驚く事はない。しかしながら実際には彼女らの意思を他所に、体が独りでに動き続けた結果なのだった。

「シェリアっ!」
「そ、ソフィっ……!」

 互いに正面を向いたまま視線だけで向き合い、窮状を訴えかける。目と耳に加え口の動き、それに呼吸程度しか自由が効かないこの状態はさながら絵画に描かれた登場人物にでもなってしまったかのようで存外に苦しい。目端に映るソフィも表情を歪めじっと耐えており、何ともいたたまれない思いだけが募っていく。
 彼女にとって恐らく人生初であるハイヒール、そして銀色のハイレグ水着も相まってその出で立ちは歓楽街のショーダンサーの如くけばけばしくて派手。加えて視線を落とせば大方の予想通り、アスベル達と違って余分なモノがない分股布がダイレクトに股間へ食い込んでいた。

(私のお股も、あんな痛々しい事になってるのかしら……?)

 人の振り見て何とやら、シェリアは我が身へ思いを馳せる。ましてや自分の衣装は金色、ソフィ以上に派手な見た目でそれこそ遊び慣れてますオーラが凄まじいのだろう。
 星の核(ラスタリア)からの光を浴びて、テカテカ輝く布地。格好の恥ずかしさと動けない苦しさと、そしてこれから何をされるのだろうという恐怖で心の中がぐちゃぐちゃになりながらも、体はそのような内情などおくびにも出さず直立不動で次の指示を待つ。


[よし、体への司令もちゃんと伝わってるようだね。どうだい、二人とも。初ハイグレの着心地は?]
《うむ、体への司令も問題なく伝わってるようだな。どうだ、お前達。初ハイグレの着心地は?》
【ホホっ、体への司令もちゃんと伝わってるようねぇ。どぉう、二人とも。初ハイグレの着心地は?】


「分からない。いつもの服とそんなに変わらない気もするし、でもお股がキュンとして――」
「だっ、ダメよソフィ! 女の子がそんなはしたない事言っちゃ……」


[フフフ、無駄な気遣いだよ。どうせ今からそのキュンとした感覚を、体全体で味わう事になるんだから……]
《ククク、無駄な足掻きだな。どうせすぐにそのキュンとした感覚を、体全体で味わう事になるのだから……》
【ホホホ、無様な言い訳ネ。どうせ今からそのキュンってした感覚を、体全体で味わう事になるんですから……】


「っ……!」


[さぁ準備はいいかい? 立ち上がったからには、次にやる事は一つ――]
《さぁ準備はよいか? 立ち上がったからには、次にやる事は一つ――》
【さぁ準備はいいかしら? 立ち上がったからには、次にやる事は一つ――】


「あっ……」
「うそっ!? やあぁ……」

 魔王がスッと手を挙げると同時に、二人の体はグッと沈み込む。閉じていた脚は肩幅に開かれ、折り曲げた膝へ重心がずっしり乗っかってくる。
 自由が効かずとも感覚で分かる、紛う事なきがに股の姿勢。まだ何も始まっていないというのに布地が食い込んだ股間はキュンキュンと切なげに震えていた。


[君達の新たな門出だ。まずは一回、心を籠めて刻むといいっ――!]
《お前達の新たな門出だ。まずは一回、心を籠めて刻むがいいっ――!》
【アンタ達の新たな門出よ。まずは一回、心を籠めて刻みなさいっ――!】


「あっ……。
「待っ……。


  ――ハイグレっ!」
  ――ハイグレっ!」


   ビシィっ――


 振り下ろされた青い右腕と同時に、澄んだハーモニーが地核の方々へ響き渡る。ゆっくり足刳へ添えられた両腕が、合図と共に一閃。前傾姿勢から腰を反らせつつ繰り出されたポーズは腕を吊り上げた状態のままキープされ、ある種の清々しさが残る。
 まだ洗脳されていない、自分はハイグレ人間でない……! その思いは強いはずなのに、どうしてかその余韻に浸る解放感が、そして全身を駆け巡ってやまない甘美な痺れが愛おしくて堪らない。

「なに、今の……? 体がジンジンして、あったかい。そして気持ちい――」
「待って、ソフィ! それ以上言っちゃダメっ!!
 それを受け入れてしまったら、あなたがあなたじゃなくなってしまう。そんな気がするわ」


[その通り。ハイグレを気持ちいいと感じる本能こそが、ハイグレ人間である証。君達がハイグレによる快楽を感じれば感じる程、ハイグレ粒子は働きを強める。そして自らハイグレの快楽を受け入れた瞬間、脳細胞への侵食も始まっていくというわけさ]
《その通り。ハイグレを気持ちいいと感じる本能こそが、ハイグレ人間である証。お前達がハイグレによる快楽を感じれば感じる程、ハイグレ粒子は働きを強める。そして自らハイグレの快楽を受け入れた瞬間、脳細胞への侵食も始まるという訳だ》
【その通り。ハイグレを気持ちいいと感じる本能こそが、ハイグレ人間である証。アナタ達がハイグレによる快楽を感じれば感じる程、ハイグレ粒子は働きを強める。そして自らハイグレの快楽を受け入れた瞬間、脳細胞への侵食も始まっていくってワケ♪】


 魔王が語る恐るべき真実に、身の毛がよだつシェリア。しかしながら裏を返せば、ハイグレの快楽に屈しさえしなければ洗脳を逃れるチャンスがあるという事……。

「負けないっ……! 私達は絶対に、あなた達の思い通りになんてならないんだからっ……!」


[フフフ、そのやせ我慢がいつまで続くのかな? じゃあ次は、三回続けてのハイグレをしてもらおう。せーのっ!]
《ククク、そのやせ我慢がいつまで続くものか。 では次は、三回続けてのハイグレをこなしてもらおう。せーのっ!》
【ホホホ、そのやせ我慢がいつまで続くかしらぁ? じゃあ次は、三回続けてのハイグレをしなさい。せーのっ!】


「ひっ……!?
「えっ……!?


  ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
  ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」


   ビシっ! ビシっ! ――ビシィっ!


 遠方のハイグレコールが続く中、ソフィとシェリアは二度目のハイグレポーズを披露する。それも今度は単発ではなく、三回続けての連続ポージング。一度だけでも体に残った痺れや疼きは簡単に抜けなかったというのに、今度は休む間もなく振り上げ、振り下ろし、そしてまた足刳に沿って引き上げる。
 その動きの目まぐるしさにシェリア達はたった数秒で息切れを起こす。慣れない動きそのものの疲労度もさることながら、精神的負荷がかなり大きい。掛け声と共に引き上げる時に限らず、次のポーズへ向けて腕を下ろす動作においても二重に食い込みを強調しているようであり、まるで取っても消せないVラインを体へ刻みつけているかの如き背徳感に襲われる。

(でもそれが、どうしてこんなに『キモチイイ』って感じられるのっ……!?)


[ほらほら、二人とも顔が赤くなってきているよ。ハイグレで興奮してきたようだね]
《どうした、双方ともに顔が赤くなっているぞ。ハイグレで興奮してきたようだな》
【あらあらぁ〜、二人とも顔真っ赤じゃな〜い♪ ハイグレで興奮してきたのね】


「だ、誰がっ……!」


[フフフ、やせ我慢だねぇ……。
 ではそんな不感症のシェリアさん達にはもっと、ハイグレを楽しんでもらおう。僕らが『やめ』と言うまでハイグレを続けるんだ]
《ククク、やせ我慢を……。
 ではその様な不感症の者達にはもっと、ハイグレを楽しんでもらう他ない。我らが『やめ』と言うまでハイグレを続けるのだ》
【ホホホ、やせ我慢ねぇ……。
 じゃあそんな不感症の娘達にはもっと、ハイグレを味わってもらいましょう。アタシが『やめ』って言うまでハイグレを続けるのよ】


「いやっ! もうハイグレするの、わた……。
「えぇっ!? そんなの無理に決まって……。


  ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
  ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」


 なけなしの抗議も虚しく、審判の右腕は無情にも振り下ろされた……。





 その合図に従ってソフィとシェリアの体は従順に、ハイグレポーズを開始した。歯切れのいい掛け声が淡々と響き、腕の振りは鋭く、それでいてがに股姿勢を意固地に保って……。
 これまでのような単発のハイグレポーズとは全く違う、アスベル達正規のハイグレ人間達にも課せられている終わりの見えない洗脳讃美歌。そんなめくるめく快楽の荒波が一挙に押し寄せる中、少女達は懸命に自分を繋ぎ止める。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ――そ、ソフィ……!?」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――あっ、あぁ! うわぁっ……!?」

 声を上げようにも荒い息遣いに阻まれ、そしてハイグレコールによって遮られる。ガクガクと震える体は踏ん張りを利かそうとしても、奥歯を噛み締める事さえ許さない。顔はあっという間に茹で上がり、心臓は早鐘の如くバクバクと脈打っていた。


[さぁ、まだまだ腕の振りが甘いよ。もっとキビキビハイグレポーズに勤しむんだ]
《まだだ、まだ腕の振りが甘い! より鋭さを持ってハイグレポーズに勤しむのだ》
【ほぅら、まだまだ腕の振りが雑よ。もっとキビキビハイグレポーズしなさ〜い】


「ハイグレっ! ハイグレっ! っ……!? ――ハイグレっ!! ハイグレっ!! ハイグレェっ!!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! っ……!? ――ハイグレっ!! ハイグレっ!! ハイグレェっ!!」

 今の状況でさえ精一杯だと言うのに、無慈悲な命令が更に追い打ちを掛けてくる。制御権を失った体は魔王の言葉一つで巧みに動かされ、より大きな声を張ってハイグレに集中する。
 腹の底から声を出す清々しさ、水着が擦れる感覚、そして魅惑たっぷりに揺れる胸の感覚まで一つひとつが全て快楽に繋がっていく。もはや全身性感帯といっても過言ではない。助けなど到底望めない世界の果てで、二人はただハイグレポーズだけを繰り返す。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ――しぇ、シェリアっ……!」
「頑張って、ソフィ! ――ハイグレっ! ハイグレっ!
 諦め、なければっ、きっと……! ――ハイグレっ!
 何とかなる、からっ! ――ハイグレっ! ハイグレっ!」

 紡ぐ言葉は力強くも、時折裏返ってしまう事こそが彼女達の現在地を如実に物語っている。
 ポーズを開始してから数分、さすがに最初のインパクトから立ち直って会話ができるようになっていた。性に関する知識がなくて困惑するソフィを、シェリアは懸命に気遣う。しかしながら一瞬でも気を抜いてしまえば、たちまちハイグレ一色に染まってしまう極限状態。それ故彼女のために裂ける余裕は僅かでしかないけれども、交わす言葉程励みになる物もない。


[ふむ……]
《うむ……》
【へぇ……】


 そんな彼女達の様子を、魔王は興味深げに眺めている。洗脳の度合い、体の反応、そして対象の精神状態まで……。その全てが彼にとっては研究対象、観察に値する物なのであった。


[さて、後ろはどうかな……?]
《では、後ろはどうだ……?》
【じゃあ、後ろはどうかしら……?】


 まるで散策でもするかのような気楽さ、興味の赴くまま魔王の姿が少女達の視界から消えていく。


[フフ、思った通り。見事なTバックだ]
《クク、思った通り。見事なTバックだな》
【ホホ、思った通り。見事なTバックよ】


「ハイグレっ! ハイグレっ! ……っ! ハイグレっ! ――」

 真後ろから聞こえてくる呟きに、シェリアはキッと唇を噛む。感覚的にお尻が丸出しであろう事は薄々分かっていたけれども、その事実を他人から、あまつさえ顔見知りの異性から指摘されたとあっては恥ずかしくないはずがなかった。


[ほんのりと朱を帯びていて、まさに桃尻って感じだね。ソフィはスモモで、シェリアさんは白桃かな?]
《ほんのりと朱を帯びており、まさに桃尻といった所か。プロトス1はスモモで、赤髪の女は白桃であろう?》
【ほんのりと朱を帯びていて、まさに桃尻って感じじゃない。そっちがスモモで、こっちが白桃かしら?】


「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
 (スモモ……。甘くて、酸っぱい……)
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
 (白桃って……。ほんっとにもう、しんっじられない!)

 そんな女性を見下した『お尻品評会』に悔しさを募らせていると、魔王の姿が戻ってくる。腕を組んでニヤニヤと表情を緩めている様はまさに悪辣な支配者、下心に支配された男の末路にしか見えない。これが本当に、あのリチャードなの……? 他ならぬ彼の命によって苦しめられている最中ではあるものの、柔和な紳士であった元のイメージとのギャップに頭が付いて行かない。
 すると――。


《――やはり、違いが感じられぬ。そういう事なのか、プロトス1(ヘイス)……!》


 魔王が徐に歩み出てきて、ソフィの眼前に立ちはだかる。憎悪に燃える瞳、その口元に三重のハーモニーはない。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
 (ラムダっ……!)

 主導権を得た原子生命体の気配を前に、ソフィだけでなく傍観の位置に据え置かれたシェリアも緊張感を高める。


《性に翻弄され、変化を受け入れようとしないお前はまさに人間そのもの……。
 エメロードに造られたお前がっ! 人として生きようとした我を否定し、我を守ろうとした者をも殺したヒューマノイド如きが、人として生きるのかっ!?》


「ハイグレっ! ハイグレっ! ハっ――、うあぁっ!?」

 吠えたラムダがソフィの胸元を小突き、その先端を捩じり上げる。乳首を抓まれたソフィは反射的に声を上げ、目を白黒させる。

「ソフィ!? ――ハイグレっ! ハイグレっ!」

 できる事なら今すぐにでも駆け寄ってやりたい。しかし今のシェリアにはハイグレポーズを続ける事しかできない。
 ラムダはそんな二人の様子に表情を歪め、尚も乳首を引っ張り続ける。凄惨な笑みに込められた思いは、ひとえに千年越しの憎悪。実験に利用され、人の都合で廃棄され、そして寄り添ってくれた理解者をも奪われた恐怖と悲しみから来る怒りが全て、ソフィの小さな体へぶつけられている。
 確かに対ラムダ決戦兵器として生み出されたソフィには幾度となく命を狙われた恨みがあるかもしれないけど、そんな使命を帯びた生を授かった責任はソフィ自身にないし、記憶の中でラムダの恩人を射殺していたヒューマノイドもソフィではない。
 しかしそれらはあくまで加害者側の論理であって、虐げられてきた者にとっては些末な事。エメロードの手によって生み出されたヒューマノイド、唯一の理解者を殺した仇敵を元にして生み出された後継機……。ラムダには復讐の全てをソフィにぶつけるだけの理由が十二分にあった。


《痛いかっ? それとも気持ちいいかっ!? その甘美なる業炎に身を焦がすがいいっ!》


「ハイグレっ! ハイグレっ! ――はぎゅぅっ!!? ハイグレっ! ハイギュレっ! ハイグレェっ!? ――」

 空いていたもう片方の手までもが平たい胸元へ迫り、一つ残されていた銀色の豆粒を磨り潰さんばかりに抓み上げる。
 両の乳首を同時に刺激され、ソフィの体は激しく痙攣し始めた。決して崩れないがに股姿勢の中膝がガクガクと笑い、足刳ラインを刻む両腕も手首を振り乱しているかの如く一定の角度を保てない。

「あっ、あっ、はぁっ……! はぃっ、ハイギュ……っ!? ハイグっ……! はぐぅっ……!」

 しかしそんな状態でも体は無慈悲にハイグレポーズを繰り返してしまう。外からの刺激に、内側から増幅されていく快感。もはや性欲の板挟みとも言えるこの状況に、ソフィの股元はじんわりと水気を帯びて灰色に染まっていく。

「ソフィ!? しっかりして! ソフィっ!! ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ――しぇ、シェリっ……。ハイギョエっ! あぁっ!? あぁんっ……!」

 本来ヒューマノイドである彼女に、この様な漏水の機能など備わっていなかった。感情由来の涙と同じく、単なる体外排出活動に過ぎない生理現象は機体維持の観点から不要とみなされ排除されている。
 しかしハイグレ人間となった体は、もはやその法則に則らない。より従順に、よりいやらしく……。主人の目を楽しませる奴隷として最適な体へと造り替えられていたのだった。


《泣け! 喚け! 性に慄け!! 恨むならエメロードを恨むのだ、なっ!》


  ギュウゥゥゥ――


「ハイギュレエェェェーーっ!!」


  プシャアァァァ……


 動けない体から引き千切らんばかり、思いっきり乳首を引っ張られる。その最大級の刺激にソフィの瞳はぐるりと裏返り、あられもない醜態を晒す。背筋に嫌な震えが走ったかと思うと限界を超えて反り上がり、地を仰ぎ見られそうな程までに首が湾曲する。反対に突き出された股間からは粘度の高い液体が勢いよく飛び出し、大地へ恥ずかしい水溜まりを浩々と溢れさせていた。

「ハイ、ギュっ。ハイゥエっ……。ハイギュ、レェ……! ――」
「そ、ソフィ……。――ハイグレっ! ハイグレっ!」

 精神的に幼い彼女には耐え難いレベルでの絶頂、そして意識さえ絶え絶えとなっても尚続くハイグレポーズにシェリアはただただ恐怖を覚える。ソフィはまだ無事なのか、そして自分はアレに耐えられるのか……? そんな不安に押し潰されそうになっていると物言わぬハイグレ人形と化した彼女から目を切り、魔王が両手をマントの裾で清めながら歩み寄ってきた。


[さて、待たせたね……]


「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
 (! リチャード……!)

 再び口元の主導権が切り替わる。三重奏でなく、地の底から響くようなラムダの重低音でもない。それは幼少期から聞き慣れた声色、リチャードのものだった。


[ソフィばかり可愛がられて寂しかっただろう。すまない、ラムダがとかくご執心なものでね。
 でも、もう大丈夫。今度はこの僕が、しっかり君の事を可愛がってあげるよ]


「い、いやっ……! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」

 できる事ならもっと、はっきりと拒絶の意思を示したい。しかしこれまでのやり取りでもう、彼は異界の魔王と一体化してしまったのだと諦めている自分がどこかにいる。


[ふむ……。ピッタリとハイグレを着こなしているばかりか、程よい胸の膨らみが健康的で実にいいハイグレポーズだ。確かシェリアさんは救護団で『戦場の天使』と呼ばれてるんだったかな? これならハイグレの世界がやって来ても間違いなく、みんなのセックスシンボルになれるよ]


「ハイグレっ! ハイグレっ!
 ――そ、そんなのっ! なりたく、なっ――ハイグレっ! ハイグレっ!」

 とは言うものの金色の水着姿で人前に立つ自分を想像してしまい、思わず頬が熱くなる。そんな思いを知ってか知らずか、リチャードはどこか楽しむようにして胸の膨らみをポヨンと跳ねさせてみたり、おへそをくすぐってみたりとシェリアの体を弄ぶ。

「や、やめっ……! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」

 クネクネと身を捩り逃げ惑うシェリアは、逆に誘っているかのよう。そして上機嫌に視線を下げていき、股元を覗き込んだリチャードが[おや?]とわざとらしい声を上げた。


[これは何だい? 僕の目には、見せちゃいけない物のように見えるんだけど]


「そっ、それは……! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」

 彼の言わんとする事は確認せずとも分かる。ハイグレポーズを繰り返すシェリアの股元、そこを覆う薄布の横からは幾筋かの縮れ毛が好き勝手に飛び出していた。
 水着の隙間から伸び出た、陰毛のはみ出し。それは女としてあるまじき失態であるものの、シェリアにも尤もらしい言い分があったのだった。

「だ、だって! ――ハイグレっ! ハイグレっ!
 こんな格好するだなんて、思わないじゃない! ――ハイグレっ!
 今日は最終決戦だから、気合入れて身支度したけど! ――ハイグレっ!
 物には限度、ツルツルになんかしてる訳ないわよ! ――ハイグレっ! ハイグレっ!」


[そうか、それはいけないね……。どうやらハイグレ人間としての心構えがなっていないようだ。今日は特別に、僕がシェリアさんのお股を処理してあげ、ようっ!]


  プチっ――


「ハイグレっ! ――いたっ!? ハイグレっ! ハイグレっ!」

 顔から火が出そうな羞恥の中懸命に弁明していると、不意に足の付け根へ針で刺されたような痛みが走る。


[これが何だか分かるかい?]


 続けて右手を眼前へ突き出してくるリチャード。輪を作るように閉じられた親指と人差し指、その先には右へ左へ幾度も進路を変えている癖の強い赤毛が一本握られていた。

「女の子の、下の毛を……! ――ハイグレっ!
 抜いて見せてくるだなんて、しんっじられない! ――ハイグレっ! ハイグレっ!」


[おやおや、折角抜いてあげたのにその態度かい? ハイグレ人間にとって基本となるエチケットを教えてあげたというのに、本来ならお礼を言われて然るべきだよ]


「ハイグレっ! ハイグレっ! ――だ、誰がっ!
 ハイグレっ! ――言うもの、ですかっ!
 ハイグレっ! ハイグレっ! ――女の子のアソコは、とてもデリケートなのっ!
 ハイグレっ! ハイグレっ! ――そこへ土足で踏み込んでくるような、真似をされて……っ!
 ハイグレっ! ――絶対に、ありがとうだなんてっ!
 ハイグレっ! ハイグレっ! ――言うわけ、ないっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」


[なるほど、君がまだ調教に値する未洗脳者だとよく分かる返答だね。ではそんな無礼者には、こうしよう――!]


「えっ? う、うふぉ……!?」

 リチャードがキッと睨みを利かせると、シェリアの体が独りでに動き出す。終わらぬポーズの中一応の自由が残されていた口元が一転して大きく開かれていき、そのまま動かせなくなってしまった。

「ふぁいぐれっ! ふぁいぐれっ! ふぁいぐれっ! ――」

 やや顔を上向かせ、大口を開けたまま行うハイグレポーズ。その無様な見た目に反して、強いられるシェリアは口端が裂けそうな痛みに内心悲鳴を上げていた。


[支配者に逆らうとはこういう事だ、未洗脳者。猿にも劣る恥辱で身を焦がすがいい。――喰らえっ!]


「ふぁ、ふぁいぐれっ!? ふぁいぐれっ! ふぁいぐ――」
 (う、嘘!? いやっ、やめ――)

  ――ポイっ

「んぐっ!?」

 大口の真上で開かれたリチャードの五指。そして抓まれていた陰毛が舞って舌の上に着地するや否や、シェリアの口はギュッと真一文字に結ばれる。

「んんっ! んぐぅっ!? んん〜〜〜っ!!」

 しっかりと閉じられた口は喋る事はおろか、息継ぎする事すら叶わない。しかしながら終わらぬハイグレポーズに合わせコールだけは懸命に行おうとするが故に、口内にはみるみるうちに唾液が溢れ返ってグチュグチュとセルフうがいを行う音が外にも漏れ聞こえてくる。

(いやあぁぁ〜〜っ!? アソコの毛が、口の中で泳いでるうぅぅ〜〜っ!?)

 歯に当たり、壁面を擦り、おぞましい感覚に身の毛がよだつ。それは麺類や植物の繊維質とも全く違う、例えるなら針金を口に含んだかのような感覚。幸いにして味や匂いは感じられないけれども、自分の陰毛を食しているのだという事実に気が狂いそうになる。


[フフ、じっくり味わえたみたいだね? それじゃあ、そろそろ――]


「んんっ! んぐっ……! んんっ! んんぅっ――!?」
 (えっ、まさか……!? 嫌よ、やめ――)


  ――ゴクっ


 リチャードの腕が振り下ろされると同時に、シェリアの喉も大きな音を立ててうねりを上げる。嫌だ嫌だと思った所で喉の筋肉は無情にも動いてしまい、大量の唾液が一気に流れ込んでくる。チクっと喉に引っ掛かる僅かな違和感、しかしそれすらも一瞬後には食道の奥へと消えていく。


[どうだい? 初めて陰毛を食べた感想は……?]


「……ぷはぁっ!
 いいわけ、ないでしょ! ――ハイグレっ! ハイグレっ!
 女の子に、いいえっ……! 人に下の毛を、食べさせるなんて! ――ハイグレっ! ハイグレっ!
 心底見損なったわ! ほんっとに、もう! ――ハイグレっ!
 しんっじられない! ――ハイグレっ! ハイグレっ!」


[フフフ、まだまだ元気そうだね。存外心が強いようだ、アスベルばかりに気を取られて少し侮っていたよ。
 でも、これで終わりだなんて思わない事だね。シェリアさんのエチケットが整うまで、この責め苦はつづ――おや?]


 上機嫌に手を伸ばし、更なる刈り取りを行おうとした所でリチャードの手が止まる。眉を寄せふんふんと独り頷いていたかと思うと背筋を伸ばし、シェリアの下を離れていってしまった。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――う、うぅ……」
「シェリア、大丈夫? ――ハイグレっ! ハイグレっ!」

 恥辱から解放されホッと一息うな垂れていると、隣からソフィの声が聞こえてくる。いつの間に意識を取り戻していたのか、目には弱々しいながらも再び光を湛えまだハイグレ人間にはなっていない。
 あんなに激しい絶頂を迎えさせられたというのに、自分を見失わず……。それに加え他人を気遣う優しささえ保っているのだから頼もしく、そして眩しく感じられて仕方がない。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
 (私はたったあれだけの事で、動揺してたっていうのに……)

 もう惑わされない、何があってもソフィと二人で耐え抜いてみせる……! 幼馴染の健気な姿に力を得て、気を引き締め直すシェリアであった。


【――ってワケなのよぉ〜。分かったかしら?】


 他方、離れていった魔王は悠然と腕を組み、その口から代わる代わる様々な音色を響かせていた。


[なるほど……。魔王が持つ計測機器や魔術、そして経験に基づいた考察による所、ソフィはおよそ15%、シェリアさんは5%程度の精神面におけるハイグレ化傾向が見られたって事だね]


《快楽に限らず、動揺をきたす事によっても侵食が進むとは興味深いものだな》


【ホホホっ、それがハイグレ洗脳というものよ♪ ハイグレ光線で無理矢理心の中を空っぽにしてアゲルのもいいけど、こうやって心のスキマを突っついてハイグレを忍び込ませるってのも、支配者として必要な洗脳スキルと覚えときなさい】


[あぁ、分かったよ]
《うむ、心得よう》


 自ら発した報告にコメントし、そして我が身へ講釈するその姿はまさに一人芝居。傍から見れば相当異様な光景なのだが、当の本人達は何ら動じることなく一定の結論を下すのだった。


[じゃあ、ひとまずこれで、実験は成功したって事でいいんだね?]


【そうねぇ。むしろ何の代わり映えもしなくて、つまんないくらいだったわ〜。でもこれでアンタ達も、ハイグレ洗脳の何たるかは分かったでしょ?】


[あ、あぁ]
《…………》


【ホホっ、いい返事ね。
 それじゃ、さっさと終わらせちゃいましょ。こんな小娘達の相手なんて、もううんざり! 早く終わらせて、ボウヤ達と遊びま――】



  《――待てっ!!》





    …………
    ……
    …





 早く終わらせたい。そんなはやる気持ちがありありと滲み出ていた魔王の物言いを遮って、ラムダの叱責が響き渡る。


《お前達、まさかこのまま終わらせるつもりではないだろうな? 我は――》


 例え誰が相手であっても、頑として譲らない。そんな決意さえ感じられる語気に押されるがまま魔王の体は押し黙り、再び内向的コミュニケーションへと立ち返ってしまった。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ! ――」

 残された沈黙、無表情で立ち尽くす中で繰り広げられる舌戦はさしずめ脳内会議。その行く末が自分達の運命を決める以上、ソフィとシェリアは詰め寄ってでも仔細を聞き出したい所だったが、無情にも体はハイグレポーズを繰り返すばかりでただ見守る事しかできない。


【――はぁ。分かったわよ……】


 ヒリヒリとする緊張の刻が五分程に及ぼうとした頃、ようやくハイグレ魔王が長い吐息と共に外へ向け言葉を発した。


【そこまで言うならアンタ達に任せるワ。リチャード、ラムダ。アタシが退屈しないように、そしてアンタ達がこの星域を治める『エフィネア公爵』に相応しいと証明するために、この小娘達をとっておきの調教法でハイグレ洗脳してご覧なさい】


[ありがとう、ハイグレ魔王]
《感謝するぞ、ハイグレ魔王》


 無理を聞き届けてもらった謝意が滲み出る言葉を以て、最終的な結論が下される。調教による段階的ハイグレ洗脳……。それは必殺無敵のハイグレ光線を回避できた僥倖と見るべきなのか、それとも先程のスキンシップをも上回る責め苦に耐えなければならない奇禍への入口と見るべきなのか、シェリアにはイマイチ判断がつかなかった。


【じゃあアタシは、あやとりでもしながら見ててアゲルから精々頑張りなさい】


[あぁ、任せてくれ!]
《あぁ、任せるがよい!》


 半ば興味を失ったと見える魔王の声、そして青肌の体が再び少女達の下へ歩み寄ってくる。


[フフフ、では始めるとしよう。――ハイグレポーズ、やめっ!]
《ククク、では始めるとしよう。――ハイグレポーズ、やめっ!》


「ハイグレっ! ハイグレっ! っ……!?」
「ハイグレっ! ハイグレっ! っ……!?」

 たった一言だけの、単純な命令が地核全体へ響き渡る。声にするだけなら簡単な、それこそ五歳児でも労せず述べられるであろう何の変哲もない言葉。しかしながらその威力は絶大で、あれ程どうにもならなかったハイグレポーズがいとも簡単に打ち切られてしまう。

「はぁ、はぁっ……」
「はぁ、はぁっ……」

 久しぶりに目一杯吸える空気、幾分か和らいだ股間の食い込み。荒い呼吸の中、シェリア達は崩せない直立姿勢のまま束の間の休息を貪っていた。


[じゃあここからはラムダ、君に任せるよ。共に乗り越えられるようサポートはするから、君の思う様にやってご覧]


《感謝するぞ、我が友よ。お前の言う通り、我は過去を断ち切ってみせる。永劫の快楽の中でプロトス1(ヘイス)、貴様を焼き尽くしてやろう……!》


 マントを振り払い、本気度を示すラムダ。その瞳は見紛う事なく、紅き暴星の輝きに包まれていた。


《では、どうしてやろうか。そう易々と転向などさせぬぞ。

  …… …… ……

 そうだな。ではお前達も知っている、この場所を用いた責め苦を与えてやろう》


「えっ……!?」
「これって、まさか……!?」

 ラムダが立ち尽くすソフィとシェリアへ鋭い眼光を投げかけると、二人の体が独りでに動き出す。足をハイグレポーズとは違って軽く自然体に開いて、右手は剥き出しのお尻を伝ってその割れ目へ……。左手は絶えず気を付けの姿勢を取っているという歪な格好の中、突き出された人差し指がハイレグ水着の布地をも巻き込み、不浄の穴目掛けてギュッと押し込まれたのだった。

「あぅっ!?」
「はぎぃっ!?」

 突然の衝撃に、二人は悲鳴を上げる。本来なら強烈な異物感に顔をしかめる所だったが、その顔はほんのりと朱に染まる。


《ククク、感度良好であるな。ではその感覚に少し馴染んでもらおう》


「あっ。――やぁんっ! あんっ……」
「いやっ。――なん、でっ! こんぅ、なぁっ……」

  ――グニィ ズポっ ブズっ……

 ラムダの思いに従って、ソフィとシェリアは己の尻穴を穿り始めた。舐めるように壁面を布地で抉り、一度抜いてはまたその感覚を楽しむかの如く再び差し込まれる。

(いやあぁぁぁ。何で、お尻なのにっ……! こんな、キモチイ――)

 未曾有の感覚に、シェリアは身悶えていた。その感覚はまるでアソコのよう……、いや、ともすれば昨夜決戦の緊張を解すため自慰を行った時よりキモチイイかもしれない。世間一般ではアナルへの挿入は相当苦しいと聞き及んでいたけれども、不快感なんて何処へやら! むしろハイレグ水着のスベスベした感覚がお尻全体へ広がる度、腰がビクッと浮き上がりそうになる。

「あっ、あっ、あんっ……! ぅ、くぅんっ……!」

 今なら分かる、何故エメロードがあんなに嬉しそうな顔をして穿っていたのか……。

「あっ、うっ、シェリっ! わた、しっ……!
「そっ、ソフィ! 私、もぉっ……!


  ――んんんーーーーっ!!」
  ――イっ、ん〜〜〜〜っ!!」


   ビクっ ビクビクっ――

 スパートをかけるようにして指の動きが早まったかと思えば、二人して顔を仰け反らせる。体全体に震えが走り、股元の布地がじんわり湿るそれは、誰の目にも明らかな絶頂であった。


《ククク、イったようだな。これ程まで体の洗脳が深化しているのならば、問題ない。――さぁ、ここからが本番だ》


「はぁ、はぁ……。な、なに……?」
「お、お願い……。少し、休ませっ……」

 余韻の疼きがまだ体全体に残る中、二人の体は動き出す。まだ力が入らない膝を無理矢理伸ばし、それぞれ90°ずつ体の向きを変える。

「シェリア……」
「ソフィっ……!」

 洗脳されてから初めて向かい合う二人。股元をビチャビチャに濡らし、乳首をピンと立たせた水着姿は何とも見るに堪えなかった。


《これが最期の顔合わせだ。冥途の土産に、よく拝んでおくのだな》


「っ……!」
「っ……!」


《では、始めるぞ。
 お前達にはこれから、共に快楽の業火へ堕ちてもらう。そうだな……。まずは『姉貴分』である赤毛の女に、手本を示してもらおうか》


「きゃあっ!?」
「シェリアっ……!?」

 その直後、シェリアの視界からソフィの姿が消えた。再び動き出した足元、ヒール音を高鳴らせソフィへ背を向けるべくクルリと半回転する。

(私が姉貴分、ね……)

 普段から身の回りの世話を焼いていたり日常の知識を教えたりしているシェリアにとって、決して違和感のある言葉ではない。しかしながら何故、敵対しているラムダがその事を知っている……? 答えは至って単純、幼馴染であり共に旅をしていた事もあるリチャードの記憶を共有しているからとしか考えられず、改めて彼らが一体となって自分達を陥れに来ている恐ろしさを痛感する。


《双方共に、準備ができたようだな。では女、ハイグレを始めるのだ》


「えっ? ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 首を傾げる間もあればこそ、シェリアはハイグレポーズを開始する。準備とは何なのか? 気になって視線を巡らせてみると、存外に首を回転させ振り返る事ができた。

「しぇ、シェリア……」

 無理な体勢で腕を上下させる痛みの中、不安げな顔のソフィと目が合う。彼女はシェリアのようにハイグレポーズなどはさせられておらず、準備とは言っても膝を曲げて身を低くしているのみ。
 しかし特徴的なのが、その手元。祈るように両指を絡ませて大きな握り拳を作っているかと思えば、その中で人差し指だけがピンと二本、印でも結ぶように真っ直ぐ突き立てられていたのだった。

「ハイグレっ! ハイグレッ! ハイグレっ! ――」
 (ま、まさか……)

 その形にシェリアは見覚えがある。あれは忘れもしない、七年前……。まだわんぱく盛りだったアスベルが一時期大いにハマっていた、背を向けたヒューバートへ幾度となく仕掛けられていた無慈悲で下品なイタズラ……。


《ククク、機は熟した。ではプロトス1(ヘイス)よ、その両指を眼前の尻穴へ突き立てるのだ!》


「えっ? なに? わたし、今からシェリアに何す――」

 その一大ブームの頃まだラントに居なかったソフィは知る由もない。何を命じられているのか分からないと眉をひそめてはいるが、その表情のまま体は動き出し、シェリアの背後へ肉薄する。そして――。



「――『シェリアにカンチョー!』」



「ハイグ――はぎぃぃぃっ!!?」

  ――ブスリ!


 突き上げられたソフィの両指が勢いよく、シェリアの尻穴へ差し込まれた。
 その瞬間シェリアはあられもない悲鳴を上げて、ハイグレポーズの命令をも無視して硬直する。これまでに経験した事のない衝撃が股間から頭へと一瞬で突き抜けて行って、まるで尻穴から『ライトニングブラスター』を撃ち込まれたかのよう。ホワイトアウトする視界、尚も押し付けられた布地に狂喜乱舞する直腸。ハイレグ水着に犯され失神寸前の精神へハイグレの影がじわりと忍び寄っているのは分かっていても、正直抗う力も残っていない。

「あ゛、あ゛か゛っ……。は゛っ……、は゛い゛く゛、れ゛っ……」
「シェリア、大丈夫っ? ねぇ、シェリアっ……!?」


《ククク、よい景色であるな。――では攻守交代だ、各々準備するがよい》


  ――キュポンっ!

「あぐぅっ!?」
「ごめんね……。シェリア、ごめ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 付け根まで差し込まれていた指が引き抜かれ、解放されるシェリア。目一杯新鮮な空気を吸い込み、巻き込まれた布地をひり出せば幾分か理性が戻ってくる。
 まだ少しクラクラするものの、耐え抜いた自分を褒めてあげたい。しかしながら先行する足の動きに合わせ振り返れば、こちらへ背を向けてハイグレポーズに勤しむソフィの姿があった。


《もはや段取りは分かっているであろう。無駄な抵抗はやめる事だな》


「あ、あぁ……。嫌ぁ……」

 無情にも膝は折れ曲がり、先程のソフィ同様しゃがみ込んでしまう。両手を組んで人差し指を伸ばし、体は準備万端……。

「ハイグレっ! ハイグレっ! しぇっ、シェリアっ! わたっ、しぃ……!」
「ソフィ!? お願いだから、そこから逃げ――」

 そんな必死の言葉を紡いている間にも、体は前進を始めてしまった。命令されているとはいえ、実際に動くのは他ならぬシェリア自身の生身。ハイヒール姿でのしゃがみ込みダッシュだなんて、足はつりそうだし上体のバランスを取るため腹筋も背筋も酷使されてかなり辛い。
 しかし人差し指だけはピンと真っ直ぐ、天を指し示す。無理な運動に思考が乱される間にもソフィの真後ろまで駆け込んでしまい、顔を上げると汗に濡れたスモモがプリプリと揺れる。銀色のTバックを目安に、組手の位置を微調整。そんな工程を半ば諦念の境地で眺めていると、不意に口元が動き出し――。



「――『ソフィにカンチョー!』」



「ハイグレっ、ハっ――あがぁぁぁっ!?」

  ――ブスっ!


 普段なら絶対口にしないであろう下品な口上を述べさせられ、両腕を突き上げる。調整の甲斐あってソフィの尻穴を寸分違わず捉え、肛門をこじ開けるとそのまま一気に根元まで差し込む。
 ビクッと震えるソフィの体、反対に肛門は食い千切らんばかりの勢いでギュッと窄まってくる。指のうっ血もさることながら、じんわりと伝わってくるソフィの直腸温度に思わず身の毛がよだつ。しかし今のシェリアには指を引き抜く事はおろか、何もできない。できる事といえば精々、先に責め苦を味わった者として壁面を擦らないようただじっと震えに耐えるだけだった。


《……まだ浅はかな抵抗を試みているな。その努力が無駄であると、早々に知れ!》


「あっ……!?」

  ――クイっ

「――あぎぃっ!!?」

 そんなささやかな心配りさえ呆気なく打ち砕かれてしまう。ラムダの瞳がギラリと光ったかと思うと、突き入れた人差し指が左右同時に折れ曲がる。蕾のように膨れる第二関節、壁面を押されソフィは喉を磨り潰すような奇声を上げて悶え苦しむ。

「ソフィ!? ソフィっ……!?」


《ククク、ハイグレ人間の体には格別の報酬であろう。ハイグレに触れればお前達の体は、どこであろうと性感帯へ変わる。それが強い摩擦によって擦り付けられたとあれば……、想像するまでもなかろう?》


  ――ズポっ

「ぅぐっ!?」

 高笑いと共に引き抜かれた自分の指を、シェリアはまじまじと見つめる。やや紫色に染まったそれはソフィの股布のお陰で濡れてこそいないものの、彼女の精神を削り取った血塗られし刃にしか見えなかった。


《さて、共に最初の一撃を耐え抜いた事はさすがと言っておこう。
 しかし、まだ終わりではない。お前達には我が負った苦しみと同じ、身近な者を目の前で喪う苦しみを味わってもらう。
 それも、ただ喪うのではない。その引き金を引くのは他ならぬ、お前達自身だっ!
 どちらかがハイグレに屈するまで、この責め苦は続く。精々互いの断末魔を味わいながら、よがり狂うといいっ……!!》


「えっ……? シェリアとわたしが、洗脳……?」
「そんな、嫌よっ! ソフィを洗脳しなきゃいけないなん――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 告げられた責め苦の真の姿に、絶望する二人。その口からは思わず泣き言が零れ落ちるが、それすらも許されずハイグレポーズが始まってしまう。



「いやだっ! シェリア、シェリ――『シェリアにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハ――いぎぃぃぃっ!?」

  ――ブスっ!



 痛切な叫び声から一転して響く、強制された口上。そして穴を抉られたシェリアは目を剥き歯を食いしばって、必死に耐え忍ぶ。



  ――ズポっ

「っはぁ、はぁ……。
 お願いよ、ラムダ! こんな事、もうやめにし――『ソフィにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイ――ぐえぇぇぇっ!?」

  ――ブスっ!



 指が引き抜かれると同時に反転して、カンチョーの構えを取るシェリアの体。懸命に許しを請うも相方のハイグレポーズが始まるや否や走り出し、その菊門を盛大にこじ開けた。



  ――ズポっ

「う、うぅ……。
 消えちゃう。このままじゃわたし、シェリアを消し――『シェリアにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグレっ! ――はぎゅぅぅぅっ!?」

  ――ブスっ!



  ――ズポっ

「っ……!
 さっきより、深いっ! お尻の穴、段々緩――『ソフィにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグ――でえぇぇぇっ!?」

  ――ブスっ!



 システム化され、地獄の様な調教は本人達の意思と無縁な所で行われていく。年頃の少女達が恥ずかし気もなく十歳前後の男児の様に、それも水着姿で互いの尻穴を穿っているのだから異様などという言葉では言い尽くせない。
 それに加え、彼女らは後の時代において母と養女となるはずだった間柄。泣き叫ぶ娘の穴を掘り、娘に掘り返され女を捨てた絶頂顔を晒す母親。そんな少女達に互いの存在を消させるという残酷さをも秘めた『母娘カンチョー合戦』を前に、ラムダの高笑いは止まらない。


《クハハハハっ! そうだ、これこそが我が見たかった景色だ!》



「はぁ、はぁ……。――『シェリアにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグ――うぐぅぅぅっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



  ――ズポっ

「……っあぁ!
 ソフィ……。あぁ、ソフ――『ソフィにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグレ――げえぇぇぇっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



 眼前の惨状は更に激しさを増し、完全にタガの外れてしまったシェリア達はありとあらゆる汁をぶちまけていた。涙に鼻水、涎に汗……。果ては潮や小水といった物まで節操もなく垂れ流し、彼女達の周囲はじっとりと濡れ汚れていた。


《見ているか、リチャード? これでプロトス1(ヘイス)は完膚なきまでに叩き壊されるであろう。絶望の中消えゆく奴を見送るこの心地、これを以て我はようやく安息の地へと踏み出す事ができるのだ》


[…………]


 嬉々として語るラムダ、しかし当のリチャードからは返事がない。魔王のように一歩後ろへ退いている訳ではないので、聞こえなかったという事はないはず。訝しんでもう一度声を掛けると、今度はたっぷりと間を取って重い口を開くのだった。


[ラムダ……。君は本当に、人間の心というものが分かってないみたいだね]


《何……?》


[確かに君の言う通り、身近な者を不本意な形で手に掛ける苦しみは並大抵の物じゃない。
 でも、それだけじゃないんだ。もう一度見てごらん。彼女達が本当に、絶望の狭間で苦しんでいるだけなのかを]



「ハイグレっ! ハイグレっ! ハ――いひぃぃぃんっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



  ――ズポっ

「……っはぁ!
 ソフィ、大丈――『ソフィにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイ――ぐいぃぃぃっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



  ――ズポっ

「……あぁっ! うぅんっ!
 シェリア、ありが――『シェリアにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグレっ! ――はぎゅいぃぃぃんっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



  ――ズポっ

「……っつぁ!
 頑張、って! もう少しの、辛ぼ――『ソフィにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグレっ! ――はぐぅぅぅっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



  ――ズポっ

「うっ……うぅんっ!
 わたしも、最後までっ! ずっと一緒に――『シェリアにカンチョー!』」

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグ――れえぇぇぇんっ!?」

  ――ビチャっ ビチャっ



《…………》


[見ての通り、彼女達はまだ希望を失ってない。それは何故か? それは二人が一体となって、共に苦難へ立ち向かっているからだ]


《共に、だと……?》


[そう。確かに見かけ上は互いに互いを裏切り、傷つけ合う修羅場が築かれている。それは僕達がこれまで嫌という程見てきた、人間の強欲で残忍な一面の再現に他ならない。
 でもこの方法は決して、それだけじゃないんだ。強制された動きの中で同じ責め苦を味わう、それは刑の執行人としての立ち位置より洗脳実験の被験者という側面が強くなって、むしろ傷の舐め合いにも似た同族意識を生んでしまっている。
 今にして思えば、君と僕との関係も同じようなものだったのかもしれない。互いに己の境遇を呪って、それに同調し合えた喜びから来る、偽りの共感。でもだからこそ、彼女達もこの苦難が二人揃って与えられた試練なんだという思いの下、君が最も嫌う『協力』という人間特有の関係で耐え忍んでいけると錯覚しているんだよ]


 雄弁に語るリチャードの言葉に、ラムダは押し黙るしかない。元来彼は王城にて数々の人間模様を見てきた、謂わば人心のプロ。ラムダとの融合が進みその激しい憎悪の中で一時己を見失いつつあったが、ハイグレ魔王の参入によって個としての存在が明確になった今、持ち前の冷静さと分析力を取り戻しラムダとの格の違いを見せつけていたのだった。
 しかし――。







[それじゃあここからは、僕もサポートするとしよう]


 彼は今や、ハイグレ魔王国の一角を統治する『エフィネア公爵』となる身。その知識も策謀も全て融和や共存といった物の為でなく、ハイグレの為だけに使われる。


[君はソフィに、未洗脳者としての半生を後悔しながら転向してほしいんだったね]


《あぁ……》


[じゃあ今やらせてる責め苦も踏まえて、こういうのはどうかな?]


  ――パチンっ!


「――『シェリアにカン――』。……??」

「ハイグレっ! ハっ――。……??」

 体の主導権を譲り受けたリチャードが指を鳴らすと、今まさに突き上げようとしていたソフィの両腕がピタリと止まる。彼女だけでない、足刳に沿って腕を振り上げ始めていたシェリアの動きも同じく唐突に打ち切られる。

「はぁ、はぁ……」
「はぁ、はぁ……」

 何の前触れもなく与えられた休息に、二人は喉を掻き鳴らす。激しく上下する金銀の胸元、その丁度中間点では度重なる挿入によってすっかり押し広げられてしまった尻穴がヒクヒクと大口を開け打ち震えていた。


[何をしてるんだい? さっさとするんだ]


「っ!? また、体が……」
「いやぁ。もういやぁ……」

 容赦なく下されるリチャードの命令に、体だけが粛々と突き動かされる。互いに距離を取って立ち上がり、久方ぶりに伸ばした膝関節の痛みに顔をしかめたかと思いきや、このカンチョー合戦が始まる前の様に再び向かい合わされる。
 しかも今度は駆け寄る距離もない、手を振り上げればぶつかってしまいそうな至近距離での対面。見下ろすソフィの顔は色々な液体で汚れていて、正直見るに堪えない。しかし今は人の事より何より、空いたままになった尻穴から空気が出入りする初めての感覚に気を取られて仕方なかった。


[二人ともそれぞれ、五割程の洗脳値と言った所か。君達は共に励まし合えたからこそ、先の受難を乗り越えられたと思っているんだろう? だったら今度は、その共感を奪った上で洗脳する。
 真の孤独に置かれた時、人は己を保ち続けられるのか? ハイグレを拒みたいなら見せてくれ、その『未洗脳者の意地』という奴を……!]


「くっ……。――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 思わせぶりなリチャードの下知、それに伴い始まるシェリアのハイグレポーズ。がに股になり上体をやや傾けて変態ポーズを行えば、丁度ソフィの目線と同じ高さになる。

「シェリア……」

 不安げな顔、それを見ればいかに自分が切羽詰まった顔で快楽に耐えているのだろうかと嫌でも想像がつく。


[さぁ、ソフィ。君がこの洗脳で最も大切な要(かなめ)となる。僕と君、そしてシェリアさんが三位一体となって、この洗脳を完成させよう]


「いや、やめてっ! リチャード、やめ――あぁっ!?」

 対話の相手が千年来の仇敵から友情の誓いを交わした幼馴染へ変わったとあって、ソフィは一縷の望みを託して訴えかける。しかしその声に耳を貸す事は終ぞなく、無情なまでに左足がじわりじわりと独りでに持ち上がっていった。

「あ、あぁ……」
「ハイグレっ! ハイグレっ! くっ……! ハイグレっ! ――」

 段々と水平を目指し持ち上がる、肌色の素足。ブレのない綺麗なフォームで丁度シェリアのがに股を二等分するかの如く分け入ると、頂点へ触れるか否かといった所でピタリと静止する。

「んっ! くぅん……! ハイグレっ! あんっ……!」

 腕を下げ沈み込む度、股布と向こう脛とが僅かに触れ合っているとシェリアは本能的に感じ取っていた。まだ何も起きていない、ただハイグレポーズをしているだけ……。しかしそれでも先のカンチョーで布地を引っ張られた感覚が思い起こされ、お股がムズムズと切なくなってくる。


[ハハハっ! そんなに待ちきれないのかい? やはり君はみんなのセックスシンボルだ]


「ちっ、ちがっ! あんっ……! ハイグレッ! ハイグレっ! ――」


[でも、その切なさもここまでだよ。さぁ一思いに決めるといい、ソフィ!]


「嫌だ! わたしは――あぁっ!?」

  ――ブンっ

 必死に首を振る傍ら、その左足が機敏に動く。ゆっくり持ち上げていた先程とは打って変わって、垂直に近い所まで一気に引き戻され嵐の前の静けさの如くピタッと止まる。
 そして――。



  ――ブンっ

「ハイ――はぎゅぅっ!!?」



 まるで蛙が潰れたような情けない悲鳴が、地核へ響き渡った。踵を浮かし静止していたソフィの脚は再び反転、上昇を試みる。それも普段月の軌跡を描き敵を屠っていた『双月』に匹敵する勢いで、僅かな股布にのみ守られたシェリアの股間を迷いなく蹴り上げたのだった。

「はぐっ……! はいっ、はいぐっ……! はいぐ、ぇ……」
「シェリア、大丈夫!? ねぇ、シェリアっ……!」

 泡を吹き白目を剥くシェリアの姿に、ソフィも冷静ではいられない。心配で、不安で、それでいて申し訳なく……。すぐにでも助けたかったが、振り上げられた左足は彼女の意に反して尚もグリグリと押し上げられていた。


[いい悲鳴だったよ、シェリアさん! やはりハイグレ人間は食い込みに起因した刺激に弱いようだね。
 そして、ソフィ。どうだい、自らの手で愛すべき人の洗脳を促進させた気分は?]


「っ……!」

 心を抉る質問に、ソフィからの返事はない。先程までとはステージの違う、自らもその痛みを知っているからこそ刑の執行人としての苦しみはより一段と大きかった。


[ふむ。ならばっ――]


「……っ!? ダメっ!」



  ――ブンっ

「ぁ……。――うぎぃっ!?」



 黙りこくった二人へ牽制の意味も込めて、再び必殺の蹴りが見舞われる。元来その手刀足刀を武器として千年もの時を戦い抜いてきたソフィ。その身体能力を以てすれば行動の再現など朝飯前であり、先程と寸分違わぬワレメの真ん中を見事に蹴り上げたのだった。


[おや、予測できる快楽だと効果が鈍るのかな? 一回目の数値よりやや洗脳度数が下がっているよ]


「ぅ、うぅ……」
「ぁ、あぁ……」


[でもまぁ、そんな事は関係ない! シェリアさん、君は今からハイグレ人間への下り坂を一気に転げ落ちるんだ。そしてソフィ、君は自慢の足技でシェリアさんを立派なハイグレ人間に、生まれ変わらせてあげるんだっ……!]


 言葉を失う二人を尻目に、リチャードは高らかな宣言を下す。凄惨な笑みを浮かべるその顔に、かつての憂いはない。彼はラムダの『ともだち』、彼女らと共に死線をくぐり抜け王国を取り戻した悲運の王子などどこにもいなかった。



  ――ブンっ

「あぎぃっ!?」


  ――ブンっ

「うげぇっ!?」


  ――ブンっ

「おぼぉっ!?」



 彼が放った合図を皮切りに、ソフィの左足が再び動き出す。振り上げた脛が股間を打ち、そしてまた弓の弦を引き絞るが如く下げられた踵が空を断ち月弧を描き襲い来る。

「いやぁぁぁーーっ!! シェリアぁぁぁーーっ!?」


  ――ブンっ

「かはっ!?」


  ――ブンっ

「ひぐっ!?」


  ――ブンっ

「うぐっ!?」


 肉を叩き付ける音をも遮り、少女の悲痛な叫びが木霊する。いくら足の動きを止めようと思っても、ハイグレ人間の体は言う事を聞いてくれない。妙にリアルに感じられる脚の感覚。それは比喩でも何でもない、シェリアという人物を形作る魂を少しずつ削っている証であった。

「ダメぇぇぇーーっ!!」

 優しく髪を解かしてくれた笑顔、毎日話し掛けてくれた綺麗な声……。思い出せばキリがない、沢山の思い出が溢れてくる。
 しかしそれらはもう、存在しない。ソフィ自身が今まさに、打ち砕いてしまった。
 親愛なる幼馴染は普段の可愛らしさをかなぐり捨て、瞳をひっくり返したあられもない姿を晒している。そんな変わり果てたがに股人間を前に、幼い心はガタガタと崩れ落ちつつあった。


  ――ブンっ

「あぶっ!?」


  ――ブンっ

「おごっ!?」


  ――ブンっ

「いぎぃっ!?」


 一方で度重なる痛みに呻く間もあればこそ、シェリアは悲鳴を上げ続ける。下腹部へズンと来る衝撃もさることながら、何より押し付けられるハイレグ水着の布地がとてつもなくキモチイイ。これは頭でそう感じているのか、それともハイレグ水着そのものが感じているのか……? もはや自分が人間なのかハイレグ水着なのかさえ分からぬ朦朧とした意識の中を、ふわふわと宛てもなく漂っていた。


[さぁシェリアさん、ハイグレがお留守だよ?]


「ぁ……。ハイグ――」


  ――ブンっ

「れ゛ぇっ!? ハイ――」


  ――ブンっ

「ぎゅれっ!? ハ――」


  ――ブンっ

「いぎゅうっ!? ハイグ――」


  ――ブンっ

「でぇっ!? ――」


 精神が流れ出た体は水を吸収するスポンジの如く、リチャードの命令を受け入れてみせる。腕を振り上げ股をおっ広げると同時に蹴り上げられ、その痛みと快楽に呻きながらもまた次のポーズのため両腕を足刳へ沿わせていく。


  ――ブンっ

「はぎぃっ!? ハイ――」
 (あっ、あぁ……)


  ――ブンっ

「ぐいぃっ!? ハイグ――」
 (私の、ハイグレぇ……)


 スポンジになったのは体だけでなく、心も同じであった。ハイレグ水着の感覚に揺り動かされていた所へ投げ込まれた、ハイグレという道標。ハイレグ水着はキモチイイ、ハイグレポーズをすればもっとキモチイイ……。そんな悪魔の囁きを跳ね退ける理性はシェリアに残されていなかった。

「シェリアーーっ!? シェリアぁぁぁーーっ!!」


  ――ブンっ

「いぎゅれっ!? ハイグ――」


  ――ブンっ

「れぇんっ!? ハイ――」


 声の限り仲間の名を呼び続けるソフィに、答える者は誰もいない。加速していく蹴りとポーズ、被検体の頬は恍惚に染まっていく……。


[さぁラストスパートだ。最後は未洗脳者の心を一片も残さないくらい、派手に執り行おう!]


「シェリアっ、シェリアっ、シェリアっ……! シェリ――あぁぁっ!?」

 何度も蹴り上げながらうわ言のように呟いていたソフィの言葉が、一瞬途切れる。
 振り下ろしと共に軽くバックステップを踏んだ、右の軸足。類稀なる体幹でバランスを崩さず着地すると、勢いは水平にまで引き絞った左足へ全て乗る。狙いは万全、後は蹴り出すのみ……。魔王の凄惨な笑みと共に、三位一体のハイグレ洗脳は今ここに完成する。

「いやぁぁぁぁぁーーーーっ!?」


  ――ブゥゥゥンっ

「ハイ、ギュレェェェェェーーーー!!」


 光子を纏ったハイヒールは弧を描き真っ直ぐハイレグ水着へ……。金色の股布、その中央にて輝く牝真珠。ハイグレと未洗脳者との瀬戸際を彷徨うシェリアへの手向けとして、クリトリスを撃ち抜く強烈な食い込みが送られたのだった。

  プシャアァァァ――

 余りの衝撃に耐えきれず倒れ込んでいく、シェリアの体。快楽は脳を焼き切る程の域に達し、おびただしい量の愛液がそのバランスを取ろうととめどなく溢れてくる。
 弧を描きドバドバと排出される性噴水が、対面へ立つソフィの水着を汚す。しかしそれに驚く声すらも上がらず、スローモーションのように繰り広げられた数秒間は地を擦る音を以てようやく終わりを告げる。

「シェリ、ア……」
「あっ、あぁん……。ハイ、グレェ……」


[素晴らしい! これぞラムダ、君の見たかった洗脳風景なんじゃないかい?]
《素晴らしい! これぞリチャード、我が見たかった洗脳風景の体現であったぞ》


 先程までの喧騒が鳴りやみ一転して遠くハイグレコールのみが響く中、リチャードとラムダは我先に興奮の声を上げる。


《泣き叫ぶ中最愛の者を、己の足によって洗脳する。我がプロトス1(ヘイス)へ与えたかった苦しみは、まさにこれであったぞ》


[そうか、満足してもらえてよかったよ。魔王、君の感想はどうだい?]


  ――コツンっ

「あひぃんっ!?
 ハイ、グレ……。ハイっ……グ、レェ……」

 内なる存在に語り掛けながら、リチャードは足先でシェリアの脇腹を小突く。激しい運動による失神で早々簡単には戻らないと思われたシェリアの意識だったが、僅かその程度の刺激で息を吹き返したばかりか、うわ言のようにコールを繰り返しつつ両腕を鼠径部へ向け持ち上げる。
 いつ如何なる時でも馳せ参じる、魔王への絶対服従。呼吸に等しいレベルへまで深化した、ハイグレの浸透……。それはもはや各種計器で計測するまでもなく、完全なハイグレ人間としての転向を済ませた証であった。


【ホホホ、中々面白いショータイムだったワよぉ。単にめくるめく快楽責めでハイグレに屈させるんじゃなく、お互い傷を抉り合わさせながら堕とすだなんて、乙な洗脳するじゃな〜い♪
 それだけの調教を行えるラムダの熱意、そしてそれを効果的に引き立たせるリチャードの知性。アンタ達二人が手を取り合っていけば、きっといいハイグレ世界が作れると思うワ。この星全てをハイグレに染めるのが大前提だけど、アンタ達二人を『エフィネア公爵』に認めてア・ゲ・ル♪】


[ありがとう、ハイグレ魔王]
《感謝する、ハイグレ魔王》


 この発言を以て、星の核(ラスタリア)での戦いは終わった。因縁の戦いに打ち勝ち、舞い込んできた未洗脳素体を一つひとつ洗脳してやる。洗脳の方法も試したかった物が全て試せたので、抜かりは一切ない。
 これでようやく、本格的な洗脳に移れる……。彼らの前途はその心同様、とても晴れ渡っていた。


[さぁ、進もう。ラムダ、ハイグレ魔王。僕達がこの星の未来を、ハイグレによって切り拓くんだ!]


【ホホホ、そうねぇ。でぇ〜も、あと一つやり残した事があるんじゃな〜い?】


 そう呟いたハイグレ魔王の意思に従って、青肌の体が辺りを見回す。星の核を背に未だハイグレポーズに勤しむハイグレ人間達、自らの恥液に溺れる新生ハイグレ人間。そしてそんな彼女を見下ろすように、銀色のハイレグ水着を纏った未洗脳者が呆然と立ち尽くしていた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい――」


[あぁ、そういえばいたねぇ。正気を失ってもまだ転向してないのかい?]


【むしろ、正気を失っちゃったから転向できないって所かしらぁ? 快楽も嫌悪も、今のこの娘には何もないのよ、きっと】


《ククク、哀れな事だな。もはや身体機能の強制すら解いているというのに、立ち向かう事は疎か逃げ出す事すらできないとは……。我らも早く地上に戻る必要がある故、手早く終わらさせてもらおう》


「――めんなさいごめんなさいごめんなさっ……。――ハァっ!」

 壊れたボイスレコーダーのように何度も同じ台詞を繰り返していたソフィの口が唐突に閉じられ、代わりに深く息を吸い込んでいく。同時に強制されたのは、腰を落とし両腕を足刳へ沿わすお馴染みの姿勢。新世界の魔王は因縁に終止符を打つために、最後の命令を下す。


[さぁ、ソフィ。未洗脳者の君を完全に消し去るまで『高速ハイグレ教化刑』を続けるんだ]
《プロトス1(ヘイス)。未洗脳者のお前が完全に消え去るまで『高速ハイグレ教化刑』を続けるのだ》
【さぁ、小娘。未洗脳者のアンタが完全に消え去るまで『高速ハイグレ教化刑』を続けなさい】


「ハイグレっ! ハイグレっ!」

 身の毛もよだつ命令を前に、ソフィは虚ろな目をしたままハイグレポーズにて答える。感情を失った仮面のような頬を、一筋の涙が伝っていく。つい数十分前に獲得したばかりのそれは、一体何を表しているのか……? シェリアを屠った罪悪感、自らに訪れし運命への嘆き、それすらも分からぬまま未洗脳者として最期の時を刻んでいく。

「ハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェ――」

 息継ぎすらも許されぬ、高速ハイグレポーズ。彼女の身体能力を以てすればそのスピードに合わせ腕を上下させる事など造作もなく、およそ五秒ばかりの間に九回ものハイグレポーズが刻まれる。そして――。

「ハイグレェェェーーっ!」

 一転して上体を反らせ、大掛かりなハイグレポーズが繰り出される。限界まで腕を引き上げ肺を空っぽにするまで息を吐き続ける最中、酸素を求めのたうち回る脳内では記憶媒体がブチブチと焼き切られていた。

「――ハァっ!
 ハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェ――ハイグレェェェーーっ!」

 僅かな息継ぎの後、再び行われる高速ハイグレと脳内除去作業。五秒間の高速ハイグレポーズによって尋常ならざる量のハイグレ粒子を体に溢れさせ、更に五秒程の吐出で極限へ追い込まれた体はそれすらも快楽と誤解しハイグレ粒子を受け入れていく。
 これら十秒程のサイクルで、着実にハイグレ人間が生成される。施された未洗脳者は抗う余地なく短時間で、しかも壮絶な苦しみを以て息の根を止められる。これまでの経緯と新たな道へ踏み出したラムダへの敬意として、ハイグレ魔王が用意したささやかな贈り物であった。

「ハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェ――ハイグレェェェーーっ!

 ――ハァっ!
 ハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェ――ハイグレェェェーーっ!

 ――ハァっ!
 ハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェハイグェ――ハイグレェェェーーっ!

 ――ハァっ! ――」


[フフフ。もう痛めつける所は残ってないというのに、まだ痛めつけるんだね。これだけ労力を掛けたんだ、転向したらしっかり働いてもらうよ、ソフィ]
《ククク。我が千年の受難、骨の髄まで刻み込まれた事であろう。これだけ手間を取らせたのだ、転向後休む間もなく我が僕として尽くせ、プロトス1(ヘイス)》
【ホホホ。いつ見ても、教化刑に掛けた未洗脳者は無様でいいわねぇ〜。これだけ手間を掛けたんですもの、転向したら真っ先に憂さ晴らしに使うお仕置き要員ネ♪】


「ハイグェハイグェハイグェハイグェ――ハイグレェェェーーっ!」

 先にハイグレ転向を済ませたお歴々を差し置いて、一番のハイグレコールを響かせるソフィ。パーティ最後の生き残りとして、この巨悪を野に放つ事なくここで討ち取るという重責は彼女の双肩に掛かっている。しかしながらその双肩も銀色の肩紐に締め上げられるばかりであり、風前の灯火となった抵抗はそう長くは続かなかった……。





    …………
    ……
    …





  ――数日後



 海の香りを纏って駆け抜ける南風は爽やかな活気をもたらし、青く澄み渡った大空の向こうには『空の海』が穏やかな波紋を描いている。緑溢れるこの地に差し迫っていた他国からの侵略という脅威はひとまず遠のいたものの、世界中で問題となっている暴星魔物(ぼうせいモンスター)による襲撃が相次ぐ今、ここラントも決して平穏とは言えない情勢が続いていた。
 しかし行き交う人々の顔には心なしか明るさが戻りつつある。街のシンボルである大風車『守護風伯』が再び風を受け始めた事に加え、王都バロニアからはウィンドル王国を守護する『大翠緑石(グローアンディ)』に原素(エレス)が戻ったという便りが届いた。世界は少しずついい方向に動き始めた、そしてそれは我らが領主アスベル・ラント一行がやり遂げたのだ……! そんな誇りを胸に領民達は日々の暮らしを精一杯、守り継いでいたのだった。

  ――キィィィン

 鳴り響く駆動音、唐突に遮られる日差し。仰ぎ見れば白銀のボディを陽光にて輝かす惑星間航行船『シャトル』の姿があった。

「アスベル様だ!」

 誰かが上げたその人声を皮切りに、街角から歓声が上がる。主君の帰還を喜ぶ者、世界の危機を食い止めた功績に対する称賛、「ウィンドル王国万歳!」と国そのものを称える声といった具合に、その反応は様々。しかしそれらは一つのうねりとなって街中へ広がっていき、露天商は商売そっちのけでカウンターを乗り越え、奥様方は窓を開けて上空を見上げ、皆それぞれ英雄の帰還をこの目に焼き付けようと街一番の大広場へ向けて駆け出した。

  ――ヒュウゥゥゥ

 南北へ走る小川の畔へ築かれた広場、そこへモーターの回転数を落としたシャトルが着陸する。我先に殺到する人々の中、ラント民兵とストラタ進駐軍とが協力して即席のバリケードを作って機体と民衆、双方の安全を確保する。前ラント領主夫人ケリー、ラント家執事のフレデリックといった街の主だった面々も出迎えに訪れ、歓喜の瞬間は今ここに訪れようとしていた。

  ――パシュゥ

   コツっ コツっ コツっ――

 ハッチが開き、次いで鳴り響くブーツの音。沸き立とうと膨れた歓声は一瞬の静止の後、反転して尻すぼみ……。それはまるで振り上げた拳を何処に下ろしていいのか分からなくなったかのように、観衆達の間へ不穏な空気がじわりと広がっていく。


[やぁ。出迎えご苦労、みんな]
《うむ。出迎え感謝する、人間達よ》
【ホホっ。出迎えアリガト、ボウヤ達】


 その言葉を以て、広場に満ちていた高揚感は完膚なきまでに一掃された。三重に折り重なって響く歪な声色、ハッチの中程まで下ってきた姿は鮮赤の長髪に青肌という異形。その面影から「リチャード様……」「そんな、ウソだろっ……!?」などと立ち昇る悲鳴が示すように、決戦の結果が何の予備知識もない領民達へ向けて相当の衝撃と共に叩き付けられていた。


[僕達はこの通り、エフィネアの大地へ舞い戻ってきたよ。それもただ戻ってきたんじゃない、ハイグレという新たな力を携え戻ってきた。この力は僕達に未来を与え、平和の礎を成してくれる]
《我らはこの通り、エフィネアの大地へ舞い戻ってきた。それもただ戻ってきたのではない、ハイグレという新たな力を携え戻ってきたのだ。この力は我らに未来を与え、平和の礎を成してくれる》
【アタシはこの通り、エフィネアの大地へ降臨したのヨ。それもただ降り立ったんじゃない、ハイグレという素晴らしい力を携え降臨したの。この力でアンタ達の未来を、アタシ色に染めてアゲルの】


 バサッとマントを翻し、露わとなるハイグレ。男性のハイレグ水着姿というこの世界の常識とは余りにもかけ離れた姿に、主君への忠義と生理的嫌悪感との狭間で何とも複雑な表情を浮かべる者達があちこちで見られる。


[それじゃあ、紹介しよう! これが新たなる時代を生きる、ハイグレ人間の姿だっ……!]
《それでは、紹介しよう! これが新たなる時代を生きる、ハイグレ人間の姿だっ……!》
【それじゃあ、紹介するワ! これがアンタ達の未来となる、ハイグレ人間の姿よぉ……!】


 しかしそんな未洗脳者の反応など些事に過ぎないとばかりに、魔王は嬉々とした表情で暗いシャトルの搭乗口を指し示した。

  カツっ カツっ カツっ――

 鋼板を叩くハイヒールの靴音が取り巻いていた喧騒をしんと静まり返らせる。危なげない足取りで段を下りてくる、ハイレグの水着姿。互いに距離を取って魔王の後ろへ付き従うようにして立ち並んだかと思うと、衆目へ見せつけるべく一斉に股を開いてみせた。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

「そんなっ! アスベル様……!?」
「あぁ、ヒューバート。あなたまで、そんな姿に……」

 最前列で股間の膨らみを揺らすアスベルとヒューバート。その姿に民兵隊隊長バリーが、そして兄弟の実母であるケリーが悲痛な声を上げる。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

「あんなに強そうだった、ダンディな騎士様まで……」
「おい! なんかスッゲー、ナイスバディな姉ちゃんがいるぜっ!」

 その動揺は彼らばかりではない、領民達の間にも広がっていく。アスベルと共に度々ラントを訪れてはさり気ないエスコートで道行く女性達を魅了していたマリクの変わり果てた姿が、今回がラント初訪問ながらふくよかな胸元を恥ずかし気もなく振り乱すエメロードの姿が、人々に(エメロードに限っては主に男性達に対して)大きな衝撃を与える。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

「そんなっ、嘘でしょ!?」
「パスカル姉様!?」

 人一倍元気に股間のVラインを刻むその姿に、ラント近郊に存在するシャトル格納庫の整備と警護のため滞在していたパスカルの姉フーリエ、妹ポアソンのアンマルチア姉妹も信じられないと我が目を疑う。
 そして――。

「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「みんなぁー、ただいまぁー! ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 苛烈な調教を経て尚、奇跡的に自我を取り留めたソフィが銀色のハイレグ水着姿でキビキビと、その隣で殊更自らの金色ハイレグ水着姿へ視線を集めてやまないシェリアが色気たっぷりに、ハイグレ人間ならではの回復力と強化された輝術の効力によって元通り引き締まったお尻の穴をキュッと閉じてハイグレポーズを執り行う。

「シェリア、何というこ――」
「ブラボォォォーーっ! シェリアさぁぁぁーーんっ!!」

 貞操観念を無くした孫娘の姿に愕然とするフレデリック。そんな彼を遮り、ストラタ進駐軍副司令を務めるレイモンは理想的なセックスシンボルを前に妄執的な片思いを炸裂させる。


[フフフ、これで分かっただろう。ハイグレ人間となった者達はいつ如何なる時も僕達の命令に従い、ハイグレポーズを以て敬意を示す]
《ククク、これで分かったであろう。ハイグレ人間となった者達はいつ如何なる時も我らの命令に従い、ハイグレポーズを以て敬意を示す》
【ホホホ、これで分かったでしょう。ハイグレ人間になったらいつ如何なる時もアタシの命令に従い、ハイグレポーズを以て敬意を示すの】


「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 支配者の言葉に合わせ繰り出される、一糸乱れぬハイグレポーズ。その練度は中央軍の騎士達が行う祝賀パレードをも凌ぐ程であり、未だ鳴りやまぬ悲鳴を打ち消すには十分過ぎる迫力を備えていた。


[皆がハイグレ人間となった時、この世界は真に一つに纏まると思わないかい? さぁ、まずはここからだ――!]
《皆がハイグレ人間となった時、この世界は真に一つと纏まるであろう……。 さぁ、まずはここからだ――!》
【皆がハイグレ人間になった時、この世界は真にアタシの物になるのよぉ……。 さぁ、まずはここからよ――!】


  ――スチャっ!

 魔王が片手を上げると、忠実なシモベ達は一斉にハイレグ水着の中から引っ張り出してきた簡素な銃を、――ハイグレ魔王が試験的に母星より転送してきた洗脳兵器『ハイグレ光線銃』を眼下へ向け、その引き金へ指を掛ける。


[みんな、ハイグレにおなりなさぁ〜いっ!]
《みんな、ハイグレにおなりなさぁ〜いっ!》
【みんな、ハイグレにおなりなさぁ〜いっ!】


「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ハイグレっ! ハイグレっ!」

  ――ヒュンっ!

 魔王の宣言の下、シモベ達のハイグレ光線銃が一斉に火を吹き始めた。宝石のような先端の球体から撃ち出される、桃色の光線。それは突然の事で呆気に取られる領民達へ殺到していき、最前列に立っていた民兵や進駐軍の兵士達から次々と新たなハイグレ人間へ生まれ変わらせていく。

「うわぁぁぁーー!? ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「いやあぁぁぁーー!? ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 雨あられと降り注ぐ洗脳光線、全方向至る所で咲き乱れる桃色の洗脳花。

「あなた、助け――ああぁぁぁーーっ!? ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「ポアソン、里へ連絡――おおぉぉぉーーっ!? ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」
「フーリエ姉さ――まあぁぁぁーーっ!? ――ハイグレっ! ハイグレっ! ハイグレっ!」

 兵に囲まれ逃れようとしたケリーも、この事態が全世界的な危機だと直感したフーリエやポアソンも、皆等しくハイグレの魔の手に掛かっていく。


[ハハハっ! ハイグレ世界の始まりだぁっ!!]
《クククっ! ハイグレ世界が始まるぞっ!!》
【ホホホっ! ハイグレ世界の始まりよぉっ!!】


 鳴り響く魔王の笑い声。その中で逃げ出す領民達も見え始めたが、アスベルやソフィ、ヒューバートといった面々がタラップから飛び降り追走を開始する。未だ逃げ惑う人々の悲鳴が大多数とはいえ、その中を掻き分け老若男女のハイグレコールが確かに耳に届いてくる。
 こうして、守るべきもののために戦った優美なるパーティは最終決戦に破れた。彼らが守りたかったもの、そして彼ら自身すらも、もうここにはない。穏やかな領内の風景が一変、ハイグレに彩られた新世界の第一歩が他ならぬ彼ら自身の手によって始まっていったのだった……。



                          〜 Fin 〜


牙蓮
2020年06月21日(日) 23時16分55秒 公開
■この作品の著作権は牙蓮さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
という訳で、ここまでお読み頂きありがとうございました&お疲れ様でした!
妄想爆発し長くなってしまいましたが、これにて三編に渡ったTOG最終決戦if、無事完結です。

いかがでしたか? 前作のコメントでも触れたシェリアとソフィの恥辱、楽しんで頂けたでしょうか?
本編最終決戦という事で彼女達ならではシチュを描いてみたい、そしてリチャードとラムダが洗脳するからこその場面を描き出したいとの思いで書きました。
特にラムダに関しては今後執筆の機会があるか分かりませんからね、書きたいもの全て絞り出した次第です(笑)
道のりは異なっていながらも同じ『孤独』という境遇を歩んできた二人だからこそ生まれる洗脳の歪み、そしてその狂気が背景の深みを描いた序章によってより皆様に伝わっていれば幸いです。
そんな壮大な種まきがちゃんと結実に繋がっている事を祈りながら(自己陶酔でありませんように……!)、この辺りで失礼したいと思います。

最後になりますが、今回執筆の機会をくださったリクエストに感謝します。
とてもお待たせしてしまう事になり、しかも我慢できず途中で色々つまみ食い執筆しながらになっちゃいましたけど、私も原作への理解が更に深まったり、久々に本格戦闘シーンも書けたりと楽しんで書く事ができました♪

この作品の感想をお寄せください。
今回も執筆お疲れさまでした。
序章、前編で丁寧に積み立ててきた仲間たちの絆を崩すべく、リチャード=ラムダ=魔王が思う存分暴れまくる後編でした。
その後編のほとんどはシェリアとソフィの洗脳シーンで構成されているというバランスは、大胆という他ありません。
過去のハイグレ作品を振り返っても、二人分の洗脳過程にこれだけの文量を費やしている作品はそう多くはないはずです。
「これが書きたかったんだ!」という牙蓮さんの信念を、筆致からひしひしと感じました。

今作では「命令」に重きを置いていたかと思います。
未洗脳状態であっても一度ハイグレ粒子を浴びてハイレグをまとえば、魔王たちに絶対服従の奴隷と成り果ててしまう。
ハイグレポーズはもとより、どんな滑稽で下品な痴態でも、仲間を痛めつける行為でさえも、命令の前には逆らえなくなってしまう。
シェリアとソフィはいともたやすく行われる様々なえげつない行為に対しても、「人間」としての尊厳を必死に守り通そうとしました。しかし(お約束どおり)マモレナカッタ…
操り人形にされた挙げ句に心を折られた彼女たちの末路には良心が痛むのですが、それと同時に歪んだ興奮を感じざるをえませんでした。
にしても双月で股間蹴り上げはアカンでしょ……こっちまで股間キュってなりますわ……。でもそれを無理やりさせられているソフィの気持ちを想像すると股間が(ry

ラストシーンの見知ったキャラクター全員集合→アスベル達のハイグレ姿御開帳→洗脳活動開始というのも、恥辱的にもハイグレ洗脳的にも美味しい展開でした。最後までチョコたっぷりの欲張りセットのような作品だったと思いました。
ハイグレ小説としてもグレイセスのノベライズ(?)としてもレベルの高い、これだけの大作を描き切られたことに惜しみない賞賛を送りたいです。
香取犬 ■2020-06-27 19:45:49 ai126165106084.73.access-internet.ne.jp
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