コードギアス 反逆のルルーシュ 〜カレンの仕事〜



ブリタニア帝国により占領・植民地化された日本。

そこでは、反ブリタニアの地下組織「黒の騎士団」が、ゼロこと、仮面を被り正体を隠した
ブリタニアの学生ルルーシュの元に結成されていた。
そして彼の組織は影の支援の下、幾度となくブリタニア軍に対し大打撃を与え
着実にその成果を伸ばしていっていたが、そんな矢先の事であった。


「香月カレン、入ります!」

コンクリートで固められた地下の作戦会議室に、活発そうで、赤いセミショートの髪の少女こと、香月カレンが
挨拶をしながら入ってきた。
彼女はルルーシュと同じ学校のクラスメートではあるが、影ではこうして反ブリタニア活動に身を投じている
少女であった。

「来たか。」

「何か用ですか、ゼロ?」

ゼロはカレンが傍まで来ると、彼女に一枚の紙を手渡す。その紙に目を通した彼女は、動揺の色を見せた。
何故ならその紙は、「黒の騎士団」を影から全面的にバックアップしてるキョウトの
財団が、諸事情で一時的に活動資金供給を停止するという通知であったのだ。

「資金供給の一時的停止・・・・!?いくら一時的でも、その間、ナイトメアの整備や
 訓練が全く出来なくなるのでは・・・!?」

カレンの動揺の反面、ゼロは冷静に淡々と答える。

「その通りだ。キョウトの財団ならその心配はないと思っていたが、少々計算外だった。
 ある程度は余裕があるが、それでも応急の資金繰り策をしなけれななるまい。」

「しかし、一体どうやって・・・・?」

最もな事をカレンが聞くと、ゼロは一呼吸をおいて、カレンに向きなおし口を開く。

「色々考えたが、今月に関しては、騎士団の活動を一時的に消極化する。
 その上で、団員には総出で、無理をしない範囲で資金繰りに協力してもらいたい。」

ある意味、急場しのぎにはもってこいの方法かもしれないが、その言葉に、カレンは一抹の不安を覚えた。

「資金繰り・・・ですか?私は別に構いませんが、具体的にはどういう風に?」

「基本はお前の自由だが、他の団員はコンビニや工事現場でアルバイトをしている。
 だが、やはりそういう所だとあまり給料がいいものでなくてな・・・。
 出来れば、お前には一ヶ月で出来るだけ高額を稼げる所に行って貰いたい。」

そう言ってゼロは、一枚のチラシをカレンに渡す。そのチラシを見たカレンは
一瞬固まり、その次には顔を恥ずかしそうに真っ赤に染めた。

「ゼ、ゼロ!?ま、まさか私にここで一ヶ月働けと!?」

カレンが顔を真っ赤に染めるのもムリはなかった。
何故ならそこは、巷で噂の『コスプレバー』というものであり
そこでは女性がアニメキャラなどの様々な格好をして接客をするという所だったのだ。
だが、真面目なカレンにとっては、そういう事自体が恥ずかしい事であり、容認したいようなものではなかった。
しかしゼロはそんな彼女の本音などおかまいなしに、話を続ける。

「あいにく、短期高額で募集してる所がそこぐらいしかなくてな。
 一定金額を稼げたらノルマ達成という事で戻ってきていいんだが・・・・嫌か?」

カレンとしてはかなり乗り気ではないが、今までのゼロの言葉には明らかに
ここに行って稼いで来い的な含みがあるものであった。
組織の活動継続という事もあるが、流石にリーダーであるゼロの無言の圧力には勝てない。

「・・・・わ、分かりました。ここで一ヶ月・・・・頑張ってきます・・・・。」

カレンは羞恥心を伴いつつも、渋々同意せざるを得なかった。
それを聞いたゼロは、満足そうに仮面の下で笑った。






その職場こと「コスプレバー・ブリタニアン」は、新トーキョーの中心街から少し外れた、雑居ビルが
立ち並ぶゲットー地区の、人の気配があまりなさそうな路地裏に店を構えていた。
店の入り口には、店名ロゴが入ったネオン看板が上に設置してあるだけで
あまり目立たない店だが、通の間では、可愛い女の子ばかりと評判の店であった。
そんな店の事務室で、カレンは店長直々に採用面接を受けていた。


「いや〜、素晴らしい!キミはスタイルも顔も完璧だねぇ〜!
 文句なし!採用だ!」

店長の嬉しそうな声が、店の事務室内に響き渡った。

だが面接では志望動機ややりたい事などは一切聞かれず、逆に店長は
カレンの体に関する質問ばかりを行ってきていたのだ。
流石に、如何わしい店の店長だけある。

「あ・・・・ありがとうございます。そう言って頂けると嬉しいです。」

それに対して、店長の正面に座っているカレンはというと、あまり嬉しそうな
顔をせず、ぎこちない笑顔を作りながら答えを返した。

それもそのハズ、これからここで働くというのに、一体どんな格好をさせられるのか
不安でたまらなかったのである。
一応、店長の話だと極度に卑猥だったり、陰部などを露出するようなコスチュームでは
ないという事だが、果たしてどこまで本当なのか皆目見当もつかない。

(・・・メイドくらいならまだマシなんだけど・・・・。あ〜、もう!なんで
 よりによってこんな所で・・・!)

考えれば考えるほど、どんな格好をしなければならないかという不安と同時に、
何故よりにもよって、ゼロはこんなジャンルの店を自分の働き先として紹介したのかと
いう怒りにも似た疑念も湧いてきた。

そんな彼女の内心を他所に、店長は面接書類を纏めながら口を開く。

「じゃ、早速今日から研修に入ってもらおう。んで、今月は水着系のコスチュームで
 接客してもらう事にしているんだ。」

その言葉にカレンは一瞬ビクッとする。水着という時点で、カレンの頭の中では警報が鳴り始めていた。
店長は、ロッカーの中から小型の衣装ケースを取り出すと、フタを開けて衣装をカレンの目の前に出した。
その衣装を目にしたカレンは、思わず顔を真っ赤にしてしまう。

「そ、それを着るんですか・・・・?」

カレンに顔を赤くさせたその衣装は、真っ赤に染め上げられたハイレグに、膝まではあるだろう同色の
ニーソだったのだ。
今までそんなものを着たこともないカレンにとっては、恥ずかしい代物である。

「そうだねぇ、今月は皆これで統一してるからね。違うのは色ぐらいさ。」

淡々と話す店長。カレンとしては当然着たくないが、ここで断ってしまったら、後々ゼロがどういう
ペナルティを加えてくるか分かったものではない。
羞恥心をグッと抑え、カレンは口を開く。

「わ、わかりました。それでやらせて頂きます。」

「おー、よかった。分かってくれて嬉しいよ。」

そう言って店長はにこやかに答える。

(とりあえず、あれ以上の格好はさせる気ないみたいだし、それだけでもヨシとするか・・・・。)

内心で自分にそう言い聞かせるカレン。すると店長は、今度は後ろにあったTVモニターに
繋いであるDVDデッキを起動し、何か映像を出そうとしていた。

「?・・・・・何をされてるんですか?」

不思議に思ったカレンが店長に尋ねる。

「ああ、言い忘れてたんだけどさ。今月のウチの店のパフォーマンスとして、今から見てもらう
 動きとセリフをやってもらう事になってるんだ。だから開店まで、接客マニュアルと一緒にこれを見て
 しっかり研修してもらわないとね。」

「え?」

一瞬店長の言っている意味が分からなかったカレンだったが、そのまま店長はDVDデッキを再生させ
映像を映し出す。
そして映し出された映像の動きとセリフを目の当たりにしたカレンは、今度こそ失神しそうになった。







そして夜。
バーの開店時間になると、入り口の黄色いネオンに電気が通り、ドアの施錠がはずされる。
それと同時に、入口から客の男達がどどっと吸い込まれるように入店してきた。

「聞いたか?今月から新しいサービスが始まるそうだぜ?」

「マジ?一体どんなもんなんだ?」

「なんでも、女の子全員水着姿で接客するんだとよ。」

「へー、楽しみだな。」

男達がわいわいと喋りながら店の中まで入ってくると、そこには男達にとって
見たこともないような光景が広がっていた。
ミラーボールの光でライブハウスのような照明に包まれている店の中には、そこそこ
大きいステージが設置されており、そこの上では、様々な色のハイレグと膝まであるニーソックスを
身に纏った状態の女達が一列に並んでいたのだ。
女達は男達が入店してきたのを確認すると、腰を落としてコマネチをしながら

『いらっしゃいませ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!』

と、綺麗にハモりながら挨拶を送る。それを見た男達は、見たこともないポーズと掛け声に暫く呆然と
していたが、斬新なセクシーさを感じたのか、ウオー!!!!っと歓声を上げた。

「な、なんかいいな!新鮮な感じだぜ!」

「おお!しかも噂どおり可愛い子だらけ!選り取りみどりだな!」

自分の欲望に正直になった男達は、すぐに好みの女の子を指名して席についていく。
十分もしないうちに、客席はほぼ満席となった。

「カレンさーん!4番テーブルに指名入りましたー!」

そして指名注文を聞いたボーイがカレンの名を呼ぶと、ハイレグ女達の列の中から、赤いハイレグ姿のカレンが
現れ、指定されたテーブルの前まで歩み寄ってくる。

「お・・・・おい、あの子、可愛くないか・・・・!?」

「あ、ああ。写真より全然いい・・・・。」

カレンを指名した二人の男は、思わずゴクリと生唾を飲み込む。そして当のカレンはテーブルの前に
つくと、

「指名、ありがとうございます♪本日は精一杯、お相手させて頂きますね♪
 ハイグレ♪ハイグレ♪ハイグレ♪」

と、言いながら、ハイグレポーズを取った。その光景に二人の男はカレンのセクシーさに鼻血を
出しながら、コクンコクンと頷くしかなった。
だが、カレンも外見では何ら違和感なくパフォーマンスをこなしていたが、内心では全くの逆であった。

(・・・くぅっ・・・!!!・・・・恥ずかしい・・・・!!一体なんなのよ、このヘンテコなポーズとセリフは!?
 ある程度覚悟はしてたけど、まさかこんな事するだなんて・・・・!)

確かに衣装もパフォーマンスも、凄まじく過激という訳ではないが、それでもハイレグ水着姿でコマネチポーズは
カレンに羞恥心を持たせるには十分だった。
研修中、何回も店から逃げ出したくなったが、そうすると後でくるゼロのペナルティが怖いため
なんとか留まってきたという感じである。

(だけど・・・これも一時期の我慢!ここで沢山指名とってガッツリ稼げば、それだけここの
 店を早く抜け出せる・・・・・・!それまでの我慢よ、カレン!)

そう改めて自分に言い聞かせると、カレンは二人の男がいるテーブルに同席して接客を始めた。

「そ、それにしても今月のパフォーマンスは変わってるねぇ。元ネタは何なのさ?」

男の一人が、カレンのハイレグの股間の部分から胸の谷間まで嘗め回すように見つめながら
口を開く。

「これはね、エッチな大魔王が地球に侵略しにきて、そこにいた女達を、大魔王に忠実な
 ハイグレ人間に変えちゃったっていう感じなの。・・・・ちなみに、ここでいう大魔王って誰だか分かる?」

「い、いや、分からないけど・・・・。」

それを聞いたカレンは、自分の片手をスッと相手の膝の上に置き、上半身を相手の体の方に傾けて摺り寄せる。

「それはね・・・。今日ここに来てくれたお客さんなんだ♪限度はあるけど、それ以外だったら
 なんでも言うこと聞いてあげるよ♪マ・オ・ウ・サ・マ♪」

カレンの悩殺的なセリフを耳元で聞かされた途端、その男は頭から湯気を出してポスンとソファーに
倒れこんでしまった。その顔は、凄くニヤけている。

「おわ!ジョーンズ、しっかりしろ!」

(・・・・こんなセリフ言う自分も自分だけど、これぐらいで失神するなっての・・・・。
 どうせ全部マニュアル通りの言葉なんだからさ・・・・。)

そんなやりとりを暫く続けつつ、カレンは男達の相手をうまくこなしていく。
他愛のない世間話に付き合ったり、一緒にトランプゲームをしたりと、淡々とこなしていった。
すると店長がカレンがいるテーブルに歩み寄ってくる。

「お取り込み中失礼します、カレンさんに次のお客様のご指名が・・・。」

それを聞いた男達が、不平を漏らし始める。

「えー?つい30分前ぐらいにカレンちゃんと遊び始めたばっかなんだぞ〜?」
「そーだそーだ、もう少し遊ばせろー!」

すると店長は、気まずそうに口を開いた。

「そ、それが・・・・。待っているのはベルゼム卿だと言えば、きっとどいてくれるだろうと
 お相手の方が・・・・。」

その名を聞いた途端、男達の顔からサーっと血の気が引き、慌てて帰り支度を始めたのだ。

「わ、わるいカレンちゃん、俺達、これから用事あったんだ!」
「きょ、きょ、今日は楽しかったよ!じゃあまた今度!」

そう言って男達は早々に立ち去っていく。あっという間の事に、カレンはポカーンとしつつも
店長に促されるまま次のテーブルへと歩んでいく。

「あ、あの、さっきの人達はどうしたんですか?」

「ベルゼム卿の名が出てきたからだろうねぇ。ベルゼム卿という方は、あらゆる所で顔が効く
 影の有力者だからさ。言っておくけど、ベルゼム卿の機嫌を損ねたら大変だから、決して
 粗相のないようにね。・・・・多分、相当扱いにくい人だから。」

「扱いにくいって・・・・。」

話を聞く限り、どうも初日からヤヴァい客を相手にしなくてはならなさそうだ。だが、カレンに
とってそれはあまり大した事には感じられなかった。
彼女は戦闘メカに乗って、これまでブリタニア軍相手に戦ってきたのだ。今更暗黒のドンだか
何だか知らないが、それぐらいでビビるようなタマではない。

(それぐらいでビビってたら、こちとらとっくに命落としてるっての・・・。)

そんな事を思っているウチに、二人は煌びやかに装飾された木のドアに前につく。

「それじゃ、相手は当店の大事な御得意様だから、くれぐれも粗相のないようにね。」

「分かりました。」

念を押して店長が確認すると、店長はコンコンとノックしてドアを開けると、そこには黒いスーツとシルクハットに
実を包み、立派な白髭を蓄えた初老の男が一人、ソファにドカっと腰掛けていた。
カレンはベルゼムの姿を確認すると、営業マニュアル通りの言葉で挨拶をはじめた。

「指名、ありがとうございます♪今日は精一杯尽くさせて頂きますね♪
 ハイグレ♪ハイグレ♪ハイグレ♪」

淡々とハイグレポーズをこなしつつ、マニュアル通りの言葉を口にするカレン。しかしベルゼムはその動作を確認するや
いなや、細めていた目をクワッと見開き、急に立ち上がった。

「違ぁあぁう!!!なんじゃそのポーズはぁ!?」

凄まじい剣幕で叫ぶベルゼムに、思わずカレンは固まってしまった。だがベルゼムは、そんな二人を他所に次々と口を開く。

「ワシが若き頃、映画でそのポーズを見て以来、長年リアルで見てみたいと願って、やっと今日見られると思ったからこそ
 予定をキャンセルしてまでやってきたのに・・・・。
 まさか エロティックさの欠片も見受けられない稚拙なモノを見せられるとは・・・・。嘆かわしい、嘆かわしいぞい・・・・。」

そう言いながら泣き崩れるようなリアクションまで取るベルゼム。その光景を見た
カレンは、あまりの事に絶句してた。

(な、なに・・・この人・・・・大丈夫・・・・なの?)

思わず内心で狂人扱いしてしまう。カレンにとって、たかがパフォーマンスでこのような行動や
言動を取る人間など想定外であったのだ。
するとベルゼムは気を取り直したのか、スクっと立ち上がると、カレンを指差す。

「いいかね!そのポーズが好きだからこそ、キミのそのような稚拙なパフォーマンスは
 ワシは許せぬのじゃ!もっと腕を磨いてこんか、このバカモノ!」

その言葉に対して流石のカレンもムカっときたのか、何か言い返してやろうかと思った矢先、
横から店長が口を挟む。

「ベ、ベルゼム様、大変申し訳ございません。この者は今日入ったばかりの新人で
 ございまして、どうかご容赦の方を頂きたいものでございます。」

あくまでへりくだった態度を取る店長。ベルゼムはそれを聞いて少しは怒りが収まったのか
ソファに再び座り込む。

「・・・・まぁよい。新人ならば仕方がない・・・・。だがな・・・。」

そう言ってベルゼムは一呼吸おくと、

「ワシは人目見て、その娘の外貌が結構気に入ってたのじゃ。だが、そんな未熟な技術ではせっかくの
 美貌も台無し・・・。よって娘!来週のこの日までに、ワシが納得できるぐらいまで腕を磨いてくるのじゃ!」

と言い放った。一体どれだけ我侭を言われているのかと思ったが、間髪いれずに店長が割ってはいる。

「ははー!かしこまりました!必ずや、ベルゼム様がお気に召すハイグレ人間に育ててみせます!」

「へ?え・・・ちょ・・・ええーーーー!?」

勝手に話を進められ、カレンは思わず悲鳴を上げた。





数時間後、カレンは学園内にある学生寮に帰ってきた。
周りの部屋の住人は既に寝静まっているが、カレンは自室に入りドアを閉めると、
ベッドには身を投げず、むしろおもむろにその場で私服を脱ぎだした。

「はぁ・・・。あの爺さんのお陰で、プライベートな時間も台無しになりそうだわ・・・・。
 大体店長だって・・・・ブツブツ・・・・」

彼女が溜息をつきながらボヤきつつ、私服を全て脱ぎ去ると、そこには、店で身につけていた
赤いハイレグとニーソックスを纏ったカレンだった。

それもそのハズ、結局あの後、カレンは店長に呼ばれ、お得意様の機嫌を損ねてはならないという
事で、家でのポーズの練習を命じられたのである。
カレンにとっては拒否したかったが、業務命令ともあれば、彼女は観念して練習を行わざるを
得なかった。

「・・・・とにかく、さっさとあの爺さんを納得させた方が後々の面倒が省けそうね。
 全く、なんで男ってこうなんだか・・・・・。」

そんな後ろ向きなグチばかりを口にしてた彼女だったが、ふと店長のセリフを思い出す。
確か店長は、練習して来いと言ったと同時に、もしあの老人の指名を取れたら
その分の努力分を考慮して給料をアップしてもいいと言ったのだ。

裏を返せば、あの老人の指名を取るという事は難しそうだが、それでも成功したらリターンは多い。

(・・・・まぁ、それ考えたら、こんな事は些細な努力よね。それにこんな単純な動作のポーズ、本気で
 やれば、来週までには嫌でも完全にマスターできるわ。)

そう思いつつ彼女は、店から借りてきた教育用DVDをプレーヤーにセットする。
映像が始まるまでの十数秒間のうちに、彼女はハイグレポーズを取るために姿勢を蟹股に
整えた。

(よーっし・・・一気にマスターして、さっさと給料上げよ!)

そう改めて決心し直したカレンは、映像が始まると、勢いよくハイグレを始める。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」

こうして、カレンの特訓が始まった。
最初は映像の動きを真似て感覚を掴もうとするに終始していたが、次第に体で動きを
覚えてくると、重心のかけかたやバランスなど細かい点にも注意して練習していく。
すると、彼女の動きはみるみるうちに上達していった。

(なんだ、やっぱり簡単じゃん。この調子なら全然問題なしね!)

そう確信した彼女は、ひたすら練習に没頭していき、そしてその練習は
深夜になっても続いていった・・・・。







そして次の週のバイト日。

カレンは店のロッカールームに入ると、手早く私服から衣装へと着替え、入念に
手足をほぐし始める。
体の調子としては絶好調といったようだ。

(よーし、特に異常なしっ、と。これでどっか悪かったら、せっかくの練習もムダに
 なるからね・・・・。)

先週からこの日まで、カレンは暇を見つけては人目を忍んでハイグレポーズの練習を行っていた。
その為、一週間前のポーズとは動きのキレも足の角度も見違えて良くなり、動きそのものは
精度が高くなっていたのだ。
そのせいもあって、カレンの表情は自信で満ち溢れていた。

「おお、カレンちゃん、待ってたよ。ちゃんと練習してきたかい?」

カレンが事務室に入ると、営業報告書に目を通していた店長が、視線をカレンに移した。

「もちろんです、店長。これでベルゼム卿も納得して頂けると思いますよ。」

自信満々にカレンは言う。

「そうか、それはよかった。・・・・ああ、それとね、その事についてちょっと君に
 伝えなきゃいけない事があるんだ。」

「なんですか?」

一体何事かとカレンは首をかしげる。

「実は、3日前から入った新人さんがいてね。その人も今回、ベルゼム卿に同じ内容の事で指名
 されたらしくて、披露は二人一緒って感じだけどいい?」

この事はカレンにとって少し意外な事であった。新人が入るならともかく、まさか自分の
披露の場にもう一人加わろうとは流石に考えてはいなかったのだ。
だが、それが事実でもカレンにとっては些細な事である。その人間がいようといまいと
自分の練習成果になんら変わりはない。

「分かりました、別に私としては全然構いませんけど。」

「そうか、よかった。とりあえず待機室にもういるハズだから、一回顔合わせしておくと
 いいよ。」

そう言って店長は、女の子達が待機する待機室へと繋がるドアを指す。カレンは一体どんな
人なのかという微かな期待と不安を胸に、ドアノブをガチャリと回してドアを開けた。

ドアを開けて目に入ってきたのは、褐色の肌に灰色の髪のツインテールと、そして薄紫色の
ハイレグとニーソックスで包み込まれた若い女体であった。

「ん?」

そしてお互いに相手の存在に気づき、視線を合わせる。そして相手の姿を確認した途端、二人は
相手を警戒して身構えた。

「お、お前・・・・・!確かブリタニア軍将校のヴィレッタ!!」

「く、黒の騎士団のカレン!なんでこんな所に・・・・・!?」

二人は面識があった。しかも友好的な形ではなく、ブリタニア軍と黒の騎士団との戦場において
互いに戦闘ロボに乗り、生死を賭けた戦いを繰り広げた、いわば呉越同舟の敵同士だ。
まさかこんな所で敵に会うとは思っていなかったのか、双方かなり驚愕している様子であった。

だが相手の格好が格好である。敵と面しているという緊張感が薄れていき、次第に
普段は敵としての相手が、とてつもなく間抜けに見えてきた。

「・・・・はっ、まさかブリタニアの将校サマがこんな所で、しかもそんな格好でバイトしてる
 なんて・・・・。堕ちたもんね、ブリタニアもさ。」

「ふん、何とでも言うがいい。こっちは只の小遣い稼ぎだからな。だが貴様こそ、普段は
 正義だなんだと抵抗しておいて、裏の顔は男から金を毟り取る変態娘だったとは意外だったよ。」

二人の間でバチバチと火花が散り、凄まじく険悪な雰囲気が漂い始める。

(まさか、このブリタニア女と一緒に接客とはね…!この女だけは絶対に許せない存在だってのに!)

カレンの中に、何時の間にか憎しみの炎が上がる。
それもそのはず、彼女は騎士団の作戦中、幾度となくヴィレッタに任務を妨害されていた。
作戦自体は成功に終わっているが、ヴィレッタのお陰でかけなくても良い苦労を幾度となく
させられていたのだ。

(だけど、今回は丁度いい機会かもね・・・・!客の目の前でこの女に赤恥かかせてやれば
 それだけでもかなり爽快だわ!よぅし、この場を借りて…ふふふ……!)

練習をしてきたので自信があったのか、心の中で彼女はそう決心した。
そんな中、二人を呼びに来たボーイがドアを開ける。
途端に、ボーイは場の雰囲気に威圧されるが、恐る恐る話しかけてきた。

「あ、あの〜・・・・ベルゼム卿がお見えになられたので、二人とも早く来るように・・・
 との事です・・・。」

その言葉に二人は身構えの姿勢を解くが、それでも二人の視線の間では火花が絶えない。
ベルゼムの待つ部屋に向かう間も、二人は互いの悪口をネチネチと言い合っていた。

「これから会うベルゼム卿のご機嫌を取るには、パフォーマンスの練習してないと
 ムリだよ。恥かかないうちに帰ったら?栄光あるブリタニア将校のさん?」

「ほざけ。どんな偏屈だろうが私にかかればイチコロだ。どこぞの貧相な体つきの小娘と
 違ってな。」」

「あ、そう?じゃあその貧相な体つきの小娘に負けちゃって、プライドがズタボロになっちゃう
 自信過剰女さんは可哀相ね。」

「安心しろ、そんな事は地球がひっくり返っても有り得ない事だ。逆は十分に有り得るが。」

道中に周りの客に聞こえないよう小声で話していたため、周囲への影響はなかったが、
案内ですぐ側を歩いていたボーイには丸聞こえであった。しかしその殺伐とした会話を
止めようがなく、ただただ聞こえないフリをしていた。
やがて、ベルゼムがいる特別VIPルームに辿り着くと、ボーイはドアノブに手をかけ
ドアが軋まないよう注意して開け放った。

『失礼します!』

入室と同時に、二人は声をハモらせて挨拶をした。

「おお、先週の娘、来たか。どうやら、他の者も一緒のようじゃな。」

ベルゼムは持っていたティーカップをテーブルに置くと、姿勢をカレンの方に
向き直した。

「では、約束どおり、、まずは練習の成果を見せてもらおうかの。やってくれ。」

「はい。」

カレンは返事をすると、すぐさまガニマタになりハイレグのVカットに沿って両手を添える。
横をチラ見してみると、ヴィレッタはカレンの様子を見るかのように彼女をじっと見ていた。

(見てなさい、ブリタニア兵め・・・。練習してきた腕を見せつけて大恥かかせてやるわ!)

そう心で吐いたカレンは、視線を正面に戻す。そして彼女は一呼吸おくと、
練習の成果を強調するかのように、勢いよくハイグレポーズをとった。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」

そのポーズの上達度に、ベルゼムも思わず唸ってしまう。彼女のポーズは、先週のものと
比べて明らかに完成度が高いものとなっていたのだ。

「うむぅ・・・。娘、なかなか上達しおったな。」

「は!ありがとうございます!」

賛辞の言葉を確認し、カレンは内心でガッツポーズを取った。プライベートな時間を削ってまで
やった練習が実ったのだ。
そしてその歓喜は同時に、ヴィレッタに対する優越感へと変わる。

(さぁて、後は無練習の将校様の無様なポーズでも見せてもらおうかしらね。)

そう思いつつカレンが勝ち誇ったような顔でヴィレッタの方へ視線をやる。だがヴィレッタは
動揺する事もなく、逆にカレンの視線を嘲笑うかのように口元を歪ませた。
まるで、カレンのポーズなど目ではないかの如く。

(・・・?なんなの、あの余裕ぶり・・・・。)

カレンが不審に思っていると、ベルゼムはそんな彼女の思考を中断させるかのように、
ヴィレッタに対して口を開く。

「・・・それでは、次にそちらの新人のポーズを見せてもらおうかのぅ。」

「仰せのままに。」

ヴィレッタはそう返事すると、カレンの時と同じようにコマネチのポーズを取って体勢を
整えた。その様子に動揺や不安などの色はまるで見受けられない。
そして彼女は、その状態でハイグレポーズを取った。

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

その瞬間、カレンやベルゼムは己の目を疑った。ヴィレッタのポーズは、初めてとは思えぬ
ぐらいに手足の動きが洗練され、速度や声の大きさ、手の角度までもが初心者のソレを遥かに
凌駕していた。
しかもどういう訳か、カレンとは比べ物にならないほどの淫靡な雰囲気まで醸し出していたのだ。
誰がどう見ても、カレンのものとは格が違うのは明らかであった。

「す、素晴らしい!お主、相当なやり手じゃのう!」

「お褒めの言葉、有難く頂戴いたします。」

ベルゼムが思わず立ち上って拍手を送ると、ヴィレッタは跪いて頭を下げる。一方のカレンはというと、
新人で憎っくき敵であるヴィレッタに負けた事にショックを隠しきれず、呆然としていた。

「そ、そんな・・・・なんで・・・・!?」

未だに信じられないといった感じで声を震わせながら呟く。相手は練習など全くやっていない
ド新人のハズなのに、練習を積んだ自分が負けるなど有り得ない事だった。
そんな様子の彼女に、ヴィレッタは一瞥をくれる。

「ふふふ・・・・・残念だったな、所詮小娘のお前と、大人の私とでは格が違うという事さ。
 小娘に大人の豊満な肉体から醸し出されるオーラを出せる訳がないだろう。」

そうヴィレッタが言うと、ベルゼムも口を挟む。

「うむ、確かに娘の方は動きも前よりかなりよくなったが、もう一人の方と比べて色気は
 なかったのぅ・・・・。」

「・・・・・・・・・・っ!」

更なる追撃のセリフに、カレンは悔しそうに唇を噛む。
ベルゼムの指名の可能性を取り逃がした事で給料アップが出来なくなったかもしれない事もあるが、
何よりも彼女に屈辱感を味合わせていたのは、宿敵ヴィレッタに敗れたという事だった。
勝負の内容自体は凄まじく下らない内容だが、彼女にとっては自分と敵対する憎き敵に負けるなど
あってはならない事なのである。

(くそぉっ・・・・・!!よりにもよってあんな女に負けるなんて・・・・!!こんなの・・・・・こんなの
 認めてなるものかっ!!)

現実を直視すれば直視するほど、彼女の心の中には凄まじい屈辱感と復讐心が湧き上がってくる。
そしてその気持ちが心の許容限度を超えたと同時に、彼女の口は無意識のうちに勝手に動いていた。

「ベルゼム様!お願いがあります!」

「なんじゃ?言ってみよ。」

「今回ばかりは隣の者に見劣りするモノをお見せしてしまいました!しかし原因はおそらく、私の練習
 不足にもあると思います。ですので、ベルゼム様さえ宜しければ、挽回のチャンスを頂けたらと思います
 !お願いします!」

そう言ってカレンは頭を下げて懇願する。
ベルゼムは少し考えるような素振りを見せるが、すぐに返答した。

「なかなかいい心がけじゃのう。気に入った、お主にはまだチャンスをやろうではないか。」

「ありがとうございます!あと、次回披露する際に、隣の者ともう一度腕比べをしたいのですが
 それでも宜しいでしょうか?」

その言葉に一番反応したのは、ベルゼムではなくヴィレッタであった。

(この女・・・・あれ程差があったというのに、まだ懲りないというのか。どうやら、徹底的に身の程を
 知らせてやらないと分からないようだな。)

「ふむ・・・・お主としてはどうじゃ?」

ベルゼムはヴィレッタに会話を振る。ヴィレッタは少し考え込んだ後、答えを返した。

「私としては別に構いません。彼女としても、私という起爆剤がいないと本気になれないようですから。」

負けるはずがないと云わんばかりに、嫌味を込めたセリフを吐きつつ了承する。カレンは一瞬ヴィレッタを睨むが、
ベルゼムがいる以上グッと堪えた。

「よかろう。ではまた来週あたりお主達を指名する。その時までに双方、準備をしてくるが良い。期待しているぞ。」

『はっ!』






「・・・・で、何故私までそんな下らない事に付き合わなければならん?」

その夜、学生寮のカレンの部屋から、若い女の不機嫌そうな声が聞こえてくる。
声の主は、カレンと同じ黒の騎士団のメンバーである、緑色のロングヘアの少女ことシーツーだった。

「いいじゃない、株で資金稼ぎなんてやり方じゃ、普通のバイトと比べて全然暇でしょ?
 だったら、こっちの事も手伝ってほしいなって思っただけよ。」

そう言いながらカレンは、ベッドに座っているシーツーの脇にカバンを放ると、コスチュームに
着替え始める。

「それはそうだが…。そんな下らない内容の勝負にそこまで熱くなる必要があるのか?バイト先で
 敵とハチ合わせしたからって、そこで何か危害加えてくる訳でもあるまいし、そのまま
 放っておけば…。」

「あ・ま・い!」

シーツーのセリフを遮るように、カレンは振り向きながら口を挟んだ。

「あいつには色々と恨みがあるわ。幾多の攻防戦の中で、アイツは私の任務中に悉く邪魔しにきた…。
 お陰でこっちは本来かけなくていい苦労までかけさせられてるのよ!戦場でこんな不愉快な事、
 ないったらありゃしないの!」

語気を荒げはじめるカレンに、シーツーは威圧され始める。

「だからあの女には・・・・・勝負の内容以前に一回目の前で直接屈伏させなきゃ、この気持ちは収まらないの!
 今回はまさに千載一遇のいいチャンス!この機会を利用して、あの女を叩きのめすのよ!」

拳を握り熱く言い切るカレンの背景に、シーツーは復讐の炎のようなモノが燃え盛っているのを目にした。
最早彼女の頭の中には、宿敵ヴィレッタに勝つことしかないようだ。
カレンの性格上、こうなった以上は説得するなど到底無理だと悟ったシーツーは、溜息をつくと口を開く。

「…分った、練習に付き合えばそれでいいのだろう…。」

「さすがシーツー。物わかりがよくて助かるわ。」

シーツーの返事に満足したカレンは、何時の間にかハイレグ姿に着替え終わっており、DVDをセットしていた。

「で、具体的に何をすればいいんだ?言っておくが、私もその格好になって一緒にやれなんて
 絶対にお断りだからな。」

「大丈夫、そんな事させないよ。シーツーにはDVDの映像と見比べて、どこが悪いか指摘して欲しいだけ。
 やっぱり自分じゃ分からない所もあるかなと思ってさ。」

その答えを聞いてシーツーは内心ホッとする。あまりノリ気ではない演技指導だが、少なくとも
一緒にハイレグを着て練習するよりは100倍はマシだ。
そんな事をシーツーが思っているうちに、カレンはDVDセットを完了して、何時でもポーズに
移れるようガニマタの姿勢を取る。

「これでよし…と。じゃあシーツー、指導お願いね。」

「・・・・ああ。」

シーツーが面倒そうに言うと同時にDVDの映像が始まり、それに合わせてハイグレポーズを取り出した。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」




数十分後・・・

「ハァ・・・・ハァ・・・・どう、シーツー・・・?まだダメ・・・?」

そこには、ポーズの連続で汗だくになっているカレンがいた。
ここ数十分の間、ヴィレッタが出していた大人の雰囲気とやらを出そうと、あれこれと努力を
続けていた。しかし。

「・・・・前と変らん。」

シーツーは淡々と酷評を下す。その言葉にカレンはガックリと項垂れた。

「はぁ〜、またか…。一体何がダメなんだろ…。」

彼女としては精一杯やっている。シーツーの指摘もあって、今まで気づかなかった動作の緩慢な部分を
見つけ出し修正したり、手足の角度を変えたりしてみたが、どうやってもヴィレッタが出していたような
大人の雰囲気といったエロティックさが出せない。

「・・・・やはり、大人の女の貫録とやらじゃないのか。お前はまだ成長真っ盛りの少女みたいなものだし
 まだそこまでのモノを出すのは無理があるんじゃ…。」

「う・る・さ・い!」

シーツーの意見を排除するかのように、語気を強めるカレン。

「小娘って、私だってもうそろそろ20歳なのよ!それなのに、アイツを超えるものが醸し出せないなんて
 絶対におかしいわ!」

だが実際には、そういった雰囲気をまるで醸し出せない。口では相当な強気だが、カレン自身、やはりまだ
女として熟し切れてない自分とヴィレッタとの間では、普通の練習ぐらいでは埋めがたいオーラの差があるのかと
薄々感じていた。

「・・・とりあえず、一旦シャワーでも浴びてきたらどうだ?汗まみれでマトモな練習が出来るとは思えないぞ。」

不意にシーツーが声をかける。確かにカレンの体は汗まみれで、今の状態で練習しても、とても集中できるような
状態ではない。そうカレンも感じたのか、「それもそうね」と言って、シャワールームへと入る。

「おい、その水着、脱がないのか?」

「着たままでいいわ、コスチュームって言っても、どうせ水着だし。」

そう言い放ってシャワールームに入ると、元栓をキュッと捻る。それと同時にシャワー口から雨のように
湯が降り注ぎ、ハイレグ姿の彼女の体を包み込んだ。
だがシャワーを浴びつつも、彼女はヴィレッタとの差を如何にして縮めようか、と物思いにふけっていた。

(・・・・最初はどうにでもなると思ってたけど、やっぱりオーラばっかりはどうしようもないのかしら・・・。
 こうなったら、もっと別の何かで差を埋めるしかないか…。)

だがそう考えた所で、すぐに何か別案が浮かんでくる訳でもない。彼女は髪に手を入れ髪を洗うが
あれこれと模索するが、どうにもいいアイデアが思いつかない。水が流れていく音が、シャワールームに
空しく響く。
そんな状態で、無意識のうちに尻に食い込んでいたハイレグを直そうと、ハイレグの股間のVゾーンの部分を
両手で掴み、上に引っ張りあげた、その時だった。

「あんっ!!」

カレンは思わず、性的快感を含んだ甘い声を上げて体を震わせてしまう。一瞬何かと思って股間の方に目をやると
ハイレグを引っ張った時に、股間の部分が布で締め付けられたらしく、少し食い込み気味となっていた。

「もぅ・・・・まさか引っ張りあげてたなんてね・・・・」

そう呟きつつ、ふと自分の目の前にある鏡を覗き込むと、そこに映った自分の表情に彼女は驚きを隠せなかった。
そこに映っていた彼女の顔は、快感を感じたことで桜色に上気し、トロンとした目つきの表情だったのだ。

「うそ・・・なにこれ・・・?」

よくよく確認してみるが、湯気で火照っているという類ではない。明らかに快感が原因で起こっているものだ。
そしてその顔からは、ヴィレッタが持つ大人の女のオーラとやらに負けないほどの、エロムードが醸し出されている事が
自分でも自覚できる。
それを認識した途端、彼女の頭の中で何かがひらめいた。

「・・・・・・・これよ・・・!これだわ!」

カレンは顔を上気させたまま、見つけられなかったモノを発見した喜びのあまり、シャワーの元栓を締めるのも忘れて
急いで体を拭き、シャワールームを飛び出す。
ベッドで横になって雑誌を読んでいたシーツーは、カレンの様子に驚いた様子を隠せなかった。

「ど、どうした?何でそんな気持ちよさそうな顔をしてる?」

「シーツー、遂に、遂に見つけたのよ!あのヴィレッタに勝つ方法を!」

興奮気味に喋りながらカレンは、一旦止めていたDVDのポーズの場面を再生し、何かをチェックするかのように
画面を見つめていた。

「・・・・やっぱり!ビデオのインストラクターの動き、上半身は手しか動かしてない!道理でさっきの練習の時には
 あの感覚がなかったんだ・・・・!」

動きを確認して、両手でガッツポーズを取る彼女。一方のシーツーは、一体彼女がどういう訳か話を飲み込めずにいたが
とりあえず何か発見があったらしいという事は理解できた。

「まぁ・・・・何か分かったんならそれはそれでいいんじゃないか?」

「ええ・・・!これなら今度の勝負、絶対に逃さないわよ!これなら絶対にいける!」

息を荒くしながら嬉々とした表情で言う。どうやら彼女は、既に勝利を確信しているようだ。普段の彼女らしい
前向きで一直線な考え方だと、シーツーは思わず笑みを作った。
しかし、そんな状況も、カレンが何かを思いついてから脆くも崩れ去る。

「・・・そうだ、いい事思いついちゃった。どうせ勝つなら、あの女に、た・っ・ぷ・り・と恥をかかせてやらないとね。
 楽しみだわ・・・・!」
 
そう言うと同時に、カレンの顔が黒く邪悪な笑みに変化する。一転、シーツーは思わず背筋に寒気を感じたが
彼女のどす黒いオーラに何ら口を挟む事が出来なかった。





そして、幾分かの日数が過ぎ、遂に再勝負当日の夜がやってきた。
店自体は何事もないかのように平常どおりに開店し、続々と客が入り口から入ってくるという
至極見慣れた光景が展開されていく。
ハイレグ姿の女の子達は指名を受け、次々と客が待つテーブルの方へと散っていくが
カレンとヴィレッタの二人は、待機室で来たるべくベルゼムの指名を待っていた。

「しかしお前も懲りない女だな・・・・どうせ負けるのに、また恥をかきにくるとは。」

ヴィレッタがパイプ椅子に座り、腕組みをしながら嫌味を言う。彼女にとっては
最早カレンなどは女としての格が違いすぎて、眼中にないようだ。

「悪いけど、今度の勝負は完全にこっちのものよ。甘く見ない方が身の為じゃない?」

「ふん、戯言を・・・・。」

カレンは、どこか含み笑いをしながら軽くヴィレッタの嫌味を受け流す。
その態度にヴィレッタは、余裕の態度を見せつつも、どことなく違和感を感じた。

(なんだ?こいつ、どことなく余裕だな・・・。)

見た目は何ら変わってはいない。だが強いて言うなら、今のカレンには前の彼女からは
感じ取れなかった妙な自信と期待に満ち溢れているのだ。
何か小細工でも弄したのかと思ったが、そうならばむしろ感じ取れるのは
後ろめたさからくる不審さである。一体何が彼女にそこまでの自信を持たせているのか。

そんな事を考えていると、不意にボーイがドアを開け、ベルゼムが来店した事を告げられる。
すると待ってましたと言わんばかりにカレンはスクッと立ち上がりドアの外へと出て行く。
カレンの様子を観察していくうちに、何ともいえない不安に襲われ始めるヴィレッタだが
ベルゼムが待っている以上、そちらに足を進めない訳にはいかなかった。

そしてその状態のままベルゼムが待つVIP室にと辿り着く。
ボーイがノックをしてからドアを開けると、そこには相変わらずソファに座り茶を啜っている
ベルゼムの姿があった。

「おうおう、着たか。」

茶器を静かに置くと、体を彼女達の正面に向きなおし口を開く。

「では・・・・また早速見せてもらおうかのう。まずはお主からじゃ。」

そう言ってベルゼムはヴィレッタを指差す。「かしこまりました」と相槌を打った後彼女は
ポーズの姿勢をとり、そのままハイグレポーズを取った。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」

「うむ、相変わらず見事じゃ。」

一連の動作を見たベルゼムが感嘆の意を表し、軽く拍手を送る。だが一方のヴィレッタはというと
常連客の賛美の声を聞いても内心はモヤモヤしたままであった。

(あの小娘・・・・・・・一体何をしでかす気だ・・・・?)

だが、そんな事を考えている彼女を横目に、ベルゼムは拍手を終えると、今度は視線をカレンの方
へと移した。

「さて・・・・、今日のメインイベントといこうかのぅ。お主がわざわざリベンジを申し込んでまで
 ワシに見せたいというモノを見せてもらおう。」

「はい!」

カレンは元気よく返事をして一歩前へと出ると、静かにハイグレポーズの姿勢を作った。
その時、初めてヴィレッタは一つの事実に気づいた。それは、カレンが着ているハイレグが
彼女本来のサイズのモノより、僅かなものではあるが小さい事に。

(あの女、何を考えてる・・・・・?サイズが小さいモノを着たら、キツくて仕方がないハズだが・・・・?)

あまりにも不可解なカレンの行動に、ヴィレッタは思わず首を傾げてしまう。
だがそんな彼女を他所に、カレンは一呼吸を置くと、遂にハイグレポーズを開始した。



「ハイグ・・ぁ・・・・レッ!」

するとどうした事か。1回目の動作に入ると同時に、彼女の顔が、突然快楽に歪んだ。
その様子を見たベルゼムとヴィレッタは、思わず己の目を疑う。

「な・・・・!?なんだ、何て顔してるんだ、この女!?」

ヴィレッタがあまりの事につい声をあげる。ベルゼムの方も口に出しはしなかったものの
同じく驚愕していたようであり、口を開けたまま硬直していた。
だが、それにも関わらずカレンは、狂ったように引き続きポーズを繰り返していく。

「ハイグレッ・・・!ハイグレッ!・・・・ハイグレェッ・・・・!」

回数を重ねるごとに、カレンの表情は快楽に歪んでいく。キリッとしていた目はトロんとし始め、
瞳の色もうつろなものとなっていっている。
手足の動きや角度は模範的なソレだが、上半身は少しではあるが、振り子のように前後に
揺らしていたのだ。
股間の前で腕をクロスさせる時は少し前に体を傾け、両腕をあげる時は、腕と一緒に
体も思いっきり反らしている。その度に彼女の顔は快楽に歪む。
その表情と動き、声色からは、男を悩殺するエロフェロモンが十分すぎるほど滲み出ていた。

「い、一体なんで・・・・!?」

どういう事か訳が分からず戸惑うヴィレッタ。だが彼女の回転のいい頭は、様子を暫く観察して
すぐに原因を突き止めた。

(あ、あいつ・・・・!布の張力を利用して股間を・・・・!)

ヴィレッタにとって予想外の事だった。まさか両腕を前でクロスさせる時に前に体を倒す事によって
一旦ハイレグの張力を弱め、その状態で体を反らせる事で一気にハイレグに張力を与え、一番負荷のかかる
股間を締め付けるなど、彼女には思いつきもしない事だ。

「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレェッ!」

カレンはそんなヴィレッタを差し置いて、ただひたすらベルゼムに自分のポーズと自身の表情の官能さを
アピールする。
最初は驚いていたベルゼムも、そのオーラに次第に心を奪われていき、興奮しながらその光景に見とれていた。

「す・・・・す・・・・すごいぞいっ!こ、こ、こ、こんなエロいモノが見れるとはぁっ!!」

ベルゼムは鼻血をドバドバと垂らし、これ以上ないというぐらいニヤけながら凄まじい拍手を送る。
それを確認したカレンはポーズを止め、快楽覚めぬまま息を荒くしつつも、ベルゼムに感謝の意を表した。

「はぁ・・・・はぁ・・・・ありがとうございます♪」

残るは、どちらが良かったかというベルゼムの評定のみとなるが、最早ベルゼムが評定を下すまでもない。
誰がどう見ても、今回はカレンの圧勝と言ってよく、反論の余地はなかった。
それを痛いほどよく分かったのか、今度はヴィレッタが悔しそうに唇を噛む。

(お、おのれ・・・・!イレブンの小娘風情が・・・・!!)

暫く悔しさと憎悪に打ち震えたが、彼女はすぐに冷静な思考を始める。
よくよく考えてみれば、こんなアホらしい勝負でここまで熱くなる事はない。確かに負けた事自体は
不愉快だが、こんな事で互いの真価が決まる訳でもないのだ。
そう考えると、熱くなってた自分がアホみたいに思えてきた。

(はっ・・・よくよく考えれば私も愚かだったな。こんな事で・・・・)

そう思い込み、溜息をつきつつ、宿敵に負けたという自分の汚点を振り払うかのように首を横に振る。
現実逃避に近いが、これ以上悔しさに心を支配させては彼女のプライドが崩壊しそうなのだ。
それを考えればヴィレッタの判断は正しいが、その意図はいとも簡単に崩される。



「ベルゼム様。一つお願いがあります。」

不意にカレンがベルゼムに口を開く。

「な、なんじゃ?」

「今回はヴィレッタのポーズより上のモノを披露できました。しかしベルゼム様としては
 恐らく私達二人が、同じように最高のポーズをお見せする事で、更なる満足感を献上できるものと
 考えています。」

その言葉に、ヴィレッタは思わず思考が停止した。

「そこで・・・・。今ベルゼム様の目の前でヴィレッタに私の方が演技指導をして、すぐさま最高の
 ポーズをベルゼム様にお見せしたいと思いますが如何でしょう?」

「な!?何を勝手な・・・」

思わずヴィレッタが叫びかけるが、それを遮るようにベルゼムが言葉を発してしまう。

「おお!それは名案じゃのう!だが、そんなにすぐマスターできるものかね?」

「ご心配なく♪コツさえ掴ませれば直ぐですから♪」

「そうかそうか!それじゃ、今すぐやってくれい!」

「了解です♪」

してやったり、と心の中でニヤけたカレンは、素早くヴィレッタの後ろに回りこむ。

「く、来るな!私に何を・・・!!」

あくまで拒絶しようとするヴィレッタだったが、後ろからカレンがヴィレッタに耳打ちする。

「ほら・・・・せっかくベルゼム様がお望みなんだから、ちゃんと気持ちよさそうにポーズ取らなきゃ
 失礼でしょ?ちゃんとやりなよ?」

「っ!!」

ここにきてヴィレッタはカレンの真意を理解した。
どうやらカレンは復讐だか何だかのつもりで、公衆の面前でヴィレッタのあられもない姿を曝け出させ
彼女を羞恥心の海の中に突き落とす気のようだ。
今すぐ蹴り飛ばしてやりたいが、ベルゼムがそれを望んでいる以上、従う他ない。

(くそぉ・・・・!覚えて・・・ろよ・・・!!)

彼女は悔しそうに暫く歯軋りをしたが、やがて静かにコマネチポーズを取る。その体は悔しさか怒りかで
震えているようにも見えた。

「よっし。それじゃ、まずここから直すから。」

それを確認したカレンは、何事もなかったように陽気な声を出したと思いきや、ヴィレッタのハイレグの股間の部分の
Vゾーンを後ろから両手で掴むと、思い切りグイッと引っ張りあげた。

「あんっ!!」

突然の快楽に思わず甘い声を出してしまうヴィレッタ。だがカレンは手の力を緩める気配を見せない。

「ほらほら、そのままコマネチ動作。」

カレンは容赦なく動作指示を出す。
股間を締め上げられ性的快感を覚えつつ、彼女はハイグレポーズを取り始めた。

「ハイグレッ・・・・!ハイグレッ・・・・!ハイグレッ・・・・!」

快楽が声に出ないよう必死に抑えるが、それは自然と顔面に伝わり始める。カレンの時と同様、目がトロンとし始め、
顔は紅潮し、吐息も段々と荒いものとなっていった。
しかも時折カレンは、クイッ、クイッと、股間の締め付けをキツくするかのようにハイレグを更に上に引っ張りあげる為
押し寄せる快楽の波は勢いを増す。

(や、やだ・・・・!・・・恥ずかしい・・・!!)

自分の股間に食い込んだハイレグと、今の自分の表情がどれほど淫猥な表情になっているかを想像して
彼女の心は羞恥心で満たされていく。そのせいで彼女の顔は益々紅潮した。

(くくくく・・・・・・ザマァないわね、ヴィレッタ・ヌゥ。まさか今日、こんな事させられるとは
 思ってなかっただろうから、心の準備なんて出来てないでしょ・・・・?)

その様子を悟ったカレンは、黒い笑みを浮かべつつ心の中でヴィレッタを嘲笑する。だが、彼女の復讐心はそれだけでは
満足しなかった。

「さぁヴィレッタ、次のステップよ。次は腕を前でクロスさせる時は体を前に少し倒して、腕を振り上げる時は
 思いっきり体を仰け反らせなさい。」

「なぁっ・・・・!?」

紅潮した顔で驚愕するヴィレッタ。さっきのカレンの様子を見てる限りでは、それをやる事で相当な
快楽が押し寄せるハズだと予測がついていた。
ただでさえこんななのに、そんな事をしたら、公衆の面前で「絶頂」を迎えかねない。

「ほらほら、何をグズグズしてるの?お客様であるベルゼム様をお待たせる気?」

「!!・・・・く・・・・わ、分かった・・・!!」

返事を聞くとカレンは、ヴィレッタのハイレグから手を離し彼女の様子を見守る。
ヴィレッタは、カレンの言われた通りの動きを上半身に伝え、前に少し体を倒す。そして彼女はハイグレッ!と
言いながら両腕を勢いよく上げ、体を仰け反らせた。
そしてそれは同時に起こった。

「あぁああぁぁあぁぁぁぁあっ!?」

ハイグレコールを終えた直後、思わず悲鳴に近い甘声を上げてしまう。上半身を仰け反らした事で
ハイレグの布が上に引っ張られ、股間の締め付け度が急激に上がったのだ。

「はぁ・・・はぁ・・・!」

息を荒げながら、思わずヴィレッタは股間を押さえてしまう。締め上げられた股間は、快楽と締め付けでジンジンとしていた。
だがカレンは容赦なく言葉を浴びせる。

「あらあら。ちゃんと続けないとダメじゃない?そうですよね、ベルゼム様?」

「え?あ、ああ、そうじゃのう・・・。続けてくれ・・・・。」

ヴィレッタの痴態に意識も釘付けだったベルゼムは、カレンの言葉にハッとして生返事を返す。
彼の鼻の下は完全に伸びていた。

「わ・・・・分かり・・・ました・・・!」

ヴィレッタは顔を快感で真っ赤にし、羞恥心で顔を歪めながらも、再びハイグレポーズを取る。
そして再び動作を行い始めると、またもや快楽の波がヴィレッタを襲った。

「ハイグッ・・・レッ!!ハイグレッ・・・!!ハイ・・・グレッ・・・!!」

そして再びハイグレコールと動作を続ける。
10分間ぐらいは何とか持続させたが、これ以上続けたら快楽の限界を超えると同時に、自分の
プライドが崩壊していきそうな気がしてきた。さっさと切り上げろと言わんばかりに、頭の中では
警報が鳴り響き始める。

(く・・・!最早限界だ!こうなったら一旦・・・・!)

決意を固めたヴィレッタは、ハイグレポーズを止めようと手を下ろそうとした。だが、どうした事か。
自分の意思にも関わらず、手と体は動きを止めず、口は「ハイグレッ!」というセリフを叫ぶのを
止められず、そのまま続けてしまう。

(と、止まらない!!?)

ヴィレッタは驚いた様子で自分の体を疑った。こんな事で自分の体の制御が効かなくなるなど当然の
事ながら想定外の事態だ。
そんな時、訳が分からず戸惑っている彼女の様子を察知したカレンが声をかけてくる。

「あら、その様子だと体がキモチよさに正直になっちゃったようね。ヴィレッタったら、結構順応しやすい
 体だったの?」

嫌味を込めながらクスクスと子悪魔のように笑うカレン。
反論しようとするが、口と体が言うことを聞かない以上、どうする事も
出来ずに、只ひたすらハイグレコールとコマネチを続けてしまう。

(思ったより早かったわね。こいつ実は淫乱なんじゃないの?だとしたら話は早いわ。ふふふ…。)

そう思いつつニヤりと笑うと、カレンは再びヴィレッタの後ろに回り込み、彼女の耳に唇を近付ける。
すると彼女は一呼吸を置くと、生暖かい吐息をヴィレッタの耳に浴びせる。

「っ―――――――――!!」

新たな刺激を外部から与えられ、ヴィレッタはビクリと体を震わせて反応してしまう。

(や、やめろぉ・・・・!そんな事したら・・・あぁん・・・・!!)

既にハイグレポーズによる股間の締め付けによって凄まじい快楽に侵されていたヴィレッタにとって
ヴィレッタの理性をじわじわと奪っていた。
そこに新たな刺激を加えられた事で、ヴィレッタの理性崩壊に益々拍車がかかってくる。
息は荒く顔は完全に紅潮しきり、目も段々と輝きをなくしてうつろなものになっていった。

(・・・・あぁ・・・・キモチいい・・・・。って、ダメだ!ここで正直になったらヤツの思い通り・・・・
 そう分かってるハズ・・・・だけど・・・あぁ・・・・・・!)

そして唯一抵抗していた心の中も、快楽の波に襲われ始める。こうなった以上、最早ヴィレッタの
理性が崩壊するのは時間の問題となった。

(ふん・・・・。そろそろアンタのつまらない理性、バラバラに崩してあげるわ!)

その事をヴィレッタの表情から鋭く読み取ったカレンは、止めを刺すために、ヴィレッタの
ハイレグの股間の部分の布を掴むと、一気にそれを引っ張り上げた。
そして、ヴィレッタの甘声が部屋中に大きく響いたのは、それとほぼ同時であった。
 
「いやぁああッ!!!」

これまでにない程の声量で享楽に浸った甘声を上げる。
そしてそれと同時に彼女の瞳から、最後まで僅かに残っていた抵抗の光が消え失せ、表情からも
羞恥の歪みが消えていった。
そして残ったのは、どんよりとした欲望の光を持った瞳と、快楽に悦ぶうっとりとした表情。

(あぁ・・・もう我慢なんて出来ない・・・・!!もっと・・・もっとこの快楽を・・・・・味わいたい…。)

ヴィレッタの理性は完全に崩壊してしまった。そして彼女は、後ろから自身のハイレグを掴んでいた
カレンを振り払うと、前より勢いよくハイグレ動作とハイグレコールを行っていく。

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

ヴィレッタは何ら恥ずかしがる様子を見せず、ただ行為を繰り返す事によって、同時に快楽を
得ようとしている。その様子を見たカレンは、自分の作戦が完全に成功した事を確信した。
あのプライドが高く、憎っくき敵であるヴィレッタを、文字通り「壊す」事に成功したのだ。

(ふふ・・・・ふふふふ・・・・ははははははっ!!!やった!遂にやってやったわ!!)

長年の怨みを晴らした事によって、カレンは邪悪な笑いを内心であげる。
今まで悉く、戦場で自分の邪魔をしてきた敵の醜態を見るほど、彼女にとって爽快な
事はなかった。
先程の抵抗は見る影もなく、今やヴィレッタは快楽に支配される人形のようなものだ。

「・・・・・・。」

そんな中、椅子に座ってその様子を眺めていたベルゼムは、ヴィレッタの変貌ぶりに
ただただ目をじっとこらして見ていた。
視線を受け、忘れかけていたベルゼムの存在を思い出したカレンは、ニッコリと笑い
口を開く。

「如何ですか?御覧の通り、ヴィレッタにもポーズを完全にマスターさせましたが。」

「お、おお!素晴らしい!素晴らしいぞい!こんな美しくも淫らなモノを見たのは
 初めてじゃ!!」
 
興奮しきったベルゼムが鼻息を荒くしながら答えた。

「ふふ・・・・そこまで言って頂けると、彼女に(指導)した私も嬉しい限りです。
 では引き続き、彼女の素晴らしいポーズをご堪能ください。」

一方のヴィレッタは、二人のそんな会話を他所に、ただひたすら行為によって得られる
快楽を追い求めていた。

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

(あぁん、キモちよすぎるぅ・・・・!こんな、こんなにキモチいい事があったなんて・・・・!)

今まで性的な事に興味関心がなかった分、その反動は大きい。
ヴィレッタはポーズを取りながら、新たに獲得できた己の愉しみに心底から喜びを感じ始めた。
そしてそれと同時に、性的快感がどんどん彼女の中で大きくなっていき、段々と限界をに
近づきつつあった。

(ああ、も・・・・もうイきそう!!)

性的絶頂が近いと分かったヴィレッタは、早く絶頂を掴もうと更に勢いよくハイグレポーズに
没頭していく。
愉悦に浸り、狂ったように同じ言動と動作を繰り返すその姿からは、かつてのブリタニア軍
将校としての威厳は欠片も感じられなかった。
そして遂に、ヴィレッタはその時を迎えた。

(あん!あん!あん!も、もうダメぇ!!イク、イクゥゥゥゥ――――ッ!!!)

体の中で巻き起こる快楽の波が彼女の中枢を一気に襲った。
それと同時に彼女の体はハイグレポーズを取りながらブルブルと痙攣し、その直後に顔を
紅潮させたまま彼女は、その場にヘナヘナと座り込んでしまう。

「あ・・・・・・・はぁん・・・。キモチ・・・・よすぎぃ・・・・♪」

ヴィレッタは輝きを失った瞳のまま顔をウットリとさせつつ、締め付けられたばかりの股間を
ハイレグの上から名残惜しそうに手でさする。
そんなヴィレッタの様子を見ていたカレンは、満足そうに見ながら口元をニヤけさせていた。







一ヵ月後・・・・・・・・・


「諸君!この一ヶ月間の資金調達、ご苦労だった。」

黒の騎士団のアジトにある集会室に、ゼロの声が響き渡る。
ゼロの前には団員達が集まっているが、働きづめで疲れた様子の者や、逆にようやく活動再開かと
いわんばかりに英気に満ち溢れている者など、様々であった。

「諸君らの尽力のお陰で、この厳しい一ヶ月間を乗り切れる事ができそうだ。本日よりは
 打倒ブリタニアの為に大いに力をつくしていこうではないか。」

『おーっ!』

団員達はゼロの声に合わせ声を張り上げる。だがそこでゼロはおかしな事に気づいた。

「・・・・おい、なんで全団員が集まっていない?ここにいるのは男の団員ばかりではないか。
 女の団員はどうした?」

そう言われて団員達が周りを見回してみると、確かにそこにいるのは、ゼロの横に
いるシーツーを除いて男ばかりである。一ヶ月前は女性だけでの数十人はいた
ハズだが、影も形もない。

「ど、どうしたんでしょうかね。」

団員の一人が検討がつかないといった感じで方を竦める。
すると一人の団員が、挙手しつつ口を開いた。

「あ、女の隊員達なら、さっきアジトに来る前にとっ捕まえたブリタニアの女将校の尋問とかで
 カレンさんをはじめ第2倉庫にいるみたいですぜ。」

その言葉にゼロは不審感を抱いた。

「バカな。たかが一人の為に、女の隊員が総出で構う必要があるとはとても思えん。
 シーツー、第2倉庫に行って、数人を除いて残りを全員こっちに連れて来い。」

「ああ、分かった。」

シーツーは了承すると、緑色の長髪を靡かせながら集会室を出、第2倉庫の方へと廊下を
歩んでいく。

「全く、なんであいつら全員が・・・・・」

ブツブツと文句を言いながら、シーツーは何時しか第2倉庫の自動ドアの前に辿り着く。
セキュリティーロックを解除しようとカードキーを差し込んだ時、彼女の耳に
以前聞いた単語が倉庫内から聞こえてきた。

『・・・・ハ・・・グレッ!・・・・ハイ・・・ッ!・・・・イグレッ!』

その単語を聞いた時、シーツーは一瞬手を止める。

「なんだ、この掛け声は・・・・。どうやら何人かが一斉に喋っているようだが、この言葉
 どこかで聞いたような・・・・。」

シーツーは記憶を少し以前に遡らせてみると、その言葉に関する記憶がだんだんと
蘇ってきた。
確か、カレンがバイト先のパフォーマンスとやらで練習を重ねていた時に発した
あの掛け声じみたセリフだ。

「い、一体何が・・・・。」

訝しみつつ、カードキーを差し込んだまま暗証番号を打ち、ドアロックを解除する。
プシューッ、という蒸気音と共にドアが横滑りに開くと、中の光景を見たシーツーは言葉を失って固まった。

『ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!』

広い倉庫の中では、単色のハイレグに身を包んだ女性団員達が、1ヶ月ぐらい前にカレンがやっていたような
動作と声を繰り返し行っている光景が広がっていたのだ。
どの女も、快楽にふけって恍惚そうな表情をしながら、ただ行為に没頭している。

「な、なんだこれは!?お前達、一体何を・・・!?」

戸惑いつつ周囲を見渡していると、シーツーの目に、シーツーがよく知っている3人の女のハイレグ姿が飛び込んできた。
一人は、よくゼロ専用のナイトメア・ロボットの整備を兼任してくれる女団員と、カレン、それにブリタニア軍
将校であるハズのヴィレッタ・ヌゥの姿だ。
ヴィレッタは、他の女達と同様、キモチよさそうにハイグレポーズを繰り返しているが、そのすぐ傍ではカレンが
整備の団員の女性の背後に回って、後ろから彼女の両腕を掴んでエスコートするように動かしていた。

「ほーら、こうするとキモチいいでしょ?これからもっと教えてあげる・・・。」

カレンは、興奮し上気した顔を団員の耳元まで寄せ、囁くように口を開く。一方の団員は、恍惚とした表情で
ハイグレポーズを取っていた。

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!あぁん、ハイレグって最高ぉ・・・・!」

いつもの清楚な彼女からは信じられないような表情で、信じられないようなセリフが聞こえてくる。
とにかく、自分の頭では理解不能な何かが起こっていると直感したシーツーは、急いで倉庫から出ようとした。

(い、いかん!何かがおかしくなってる!一旦戻ってゼロに報告を・・・・!)

だが、倉庫から出る前にカレンの腕は何者かによってむんずと掴まれた。慌てたようにシーツーが腕の主を
確認すると、そこには顔を紅潮させているヴィレッタの姿。

「ふふふ・・・・逃げてはダメだぞ?同じ女として、お前にもこの愉しさを教えてやりたいからな・・・・。」

「な・・・?!くそ、離せ!!!」

シーツーは無理やり腕を振り解こうとするが、ヴィレッタの腕は協力接着剤でくっつけられたかのように
彼女の腕を掴んで離さない。
もがいていると、さっきまで団員の腕を動かしていたカレンが何時の間にか歩み寄ってきていた。

「あら、シーツー。アンタもここに来てたんだ。」

カレンは、新しい獲物を見つけた猛獣のような目で、シーツーを狙うように見ながら
黒い笑みを作る。

「カ、カレン!これは一体どういう事だ!?なんで敵兵のハズのヴィレッタまでがこんな・・・・!?」

「敵、ね・・・・。ふふふ、確かに一ヶ月前まではそうだった。だけど彼女、今じゃ私の可愛い可愛い
 ハイレグ奴隷なのよ。そうよね、ヴィレッタ?」

カレンがヴィレッタに会話を振ると、ヴィレッタは、性欲という濁った光で瞳を輝かせながら
コクリと頷きながら口を開いた。

「ああ・・・・。一ヶ月前にカレン様からこの愉悦を教えてもらって以来、私は悟ったんだ。
 如何に今まで従ってきた軍隊が、息苦しくて面白みの欠片もない居場所だったのかをな・・・・・。
 だから私は、これからもキモチいい事を教えてくれるカレン様の傍で、自分が本当に愉しめる場所を
 求める事にしたのさ・・・・・。」

カレン様。そんな言葉が、あのプライドが高いヴィレッタの口から出た事で、シーツーは更なる衝撃を受けた。
それを聞いたカレンは、ふふ、と軽く笑いながら口を開いた。

「ふふふ・・・・奴隷の分際で随分と嬉しい事言ってくれるわね。ご褒美をあげるわ。」

カレンは少し嬉しかったのか、ご褒美と言わんばかりにヴィレッタのハイレグの股間の布をキュッと引き上げる。
そうするとヴィレッタは嬉しそうに、かつキモチよさそうに顔を快楽に歪めた。

「あぁん・・・・カレン・・・・様ァ・・・・・。」

そんなヴィレッタの様子を見て、カレンは自身の優越感を感じているのか、薄ら笑いを浮かべている。

(・・・・まさか・・・・こんな事になっていたとは・・・・!)

シーツーは彼女達の様子を見て状況を段々と理解した。
一ヶ月前の再勝負の日、確かにカレンは凄まじいほどの上機嫌で帰ってきた。その時は
ヴィレッタと決着がついて一段落したのだろうと軽く流していたが、どうやら
その後、歪んだ方向で二人の関係は進展してしまったらしい。

だが、それを理解した所でシーツーが逃れる術はなく、逆にぞろぞろと集まってきた
ハイグレ女達に囲まれ始めていた。

「さーて、と。この場を見られた以上、シーツーにもこの愉しみを「共有」してもらって、口止めしておかないとね。
 ここにいる他の皆と、同じようにさ♪」

そう言ってカレンは楽しそうな声を発しつつ、すぐ傍の箱の中から、真新しい黄緑色のハイレグと、同じ色の
ニーソックスを取り出す。

「お、おい!まさかソレを私に・・・・!?」

シーツーが震えた声で言う。

「大当たり♪大丈夫、奴隷としての格付けはヴィレッタだけだから、シーツーは他の団員達と同じ立場で
 愉しみを共有できるからさ。あんま心配しないでよ。」

「い、いやだ!そんなもの、誰が・・・!!」

あくまで拒否するシーツーに、カレンは軽く溜息をつく。

「もー、仕方ないなぁ・・・・。みんな、シーツーにもハイレグ水着のキモチよさを教えてあげて。」

そう号令がかかったと思いきや、ハイグレ女達は一斉にシーツーに飛び掛り、動きを封じた上で
シーツーの服を脱がせにかかった。

「うあ!!や、やだ!!やめてくれ!!!頼むっ!!!」

必死に懇願するシーツー。普段はポーカーフェイスだが、この時ばかりは恐怖で顔をゆがめ、目じりには
涙を浮かべていた。
だがそんなシーツーの必死な願いも、全て無視されていく。

「ジタバタしないでよ〜!大丈夫、私もこういう事されたけど、一回着ればきっとキモチよさ分かるって!」

「そうそう!シーツーもいい加減観念しなよ!」

そう言いつつハイグレ女達は、シーツーの器用に衣服を脱がしていき、用意されたハイレグとニーソックスを
着用させていく。

「や、止めろおおぉおぉぉぉおぉ――――――――っ!!!」

倉庫内に、シーツーの叫び声が空しく響いた。






「・・・遅い!やつら、一体何をモタモタしているんだ!?」

一方、数十分以上シーツー達を待っているゼロは、段々とイラ立ちを隠せなくなっていた。
本当なら直ぐに終わるハズなのに、ここまでかかる事自体、異常なのだから仕方ない反応である。

「ゼロ、よけりゃ俺が見てきましょうか?」

団員の一人が志願を買って出る。
あまりの遅さにイライラしていたゼロは、流石にそろそろ別の人間を行かせた方が良いと判断したのか
その団員を指名して行かせようとした所、突然集会室のドアがプシューッと横開きした。

「すまん、遅くなったな。」

そしてドアの向こうから、シーツーとカレンを初めとして、団員の女達が殆ど揃って入ってくる。
全員、黒の騎士団指定の戦闘服に身を包んでいた。

「遅い!一体何をしていた!?」

「捕虜の尋問に手間取っていました。申し訳ありません、ゼロ。」

淡々とカレンが言い放つ。
さっさと定時報告会に移りたいゼロはそれを聞くと、その話題をさっさと切り上げ、男達からの定時報告を聞き始めた。
その傍ら、カレンがシーツーの傍まで歩み寄り、小声で耳打ちする。

「ふふふ・・・・・さっきのシーツーのハイグレポーズ、なかなか良かったわよ。言った通り
 気持ちよかったでしょう・・・・?」

それを聞いたシーツーは、顔を赤くしながらクスっと笑う。

「ああ・・・・。まさかこんな愉しみがあったとはな・・・。また後で(指導)の方、頼むよ・・・。」

シーツーはそう言いつつ、ハイレグで引っ張りあげられ、締め付けられた自身の股間を片手で撫でながら
この後で受けるであろうカレン直々の「ハイグレポーズ指導」に期待を膨らます。



こうして黒の騎士団の内部で、女性陣によるもう一つのグループが密かに出来上がりつつある事は
男団員はもちろん、ゼロですら気づかないままであった・・・・・。


z
2008年05月24日(土) 02時52分30秒 公開
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■作者からのメッセージ
今回初めて長文SSを執筆してみました。
今思えばムダに長いかもしれませんが、次回以降はちょっと気をつけて書いてみたいと思いますm(_ _)m

※ちなみにベルゼムは元ネタにも登場しない完全オリキャラですが、所詮脇役なので適当に想像してもらって結構です。