スクールランブル バトル・ハイグレ・ロワイヤル
それはほんの些細な出来事から始まった。
「おのれ、許すまじ2−D!!」
「くそっ!許せねえ2−C!!」
教室を出て互いの教室を目指す花井と東郷。
「おい、これはどういう事だ、東郷!」
「何だと花井!先に説明してもらいたいのはこっちの方だ!」
二人が取っ組み合いの喧嘩を始める。

「ちょっと、お前ら何やってるの?」
「ああ、周防か。」
「全く、二人とも昼休みくらい静かにしなさい。」
騒ぎを聞きつけてやってきた美琴と愛理が言う。
「二人とも、聞いてくれたまえ。2−Dが我々2−Cを侮辱したんだ!」
そう言って花井が一枚の紙を見せる。そこには『2−Cよ、2−Dに跪け!』と書いてあった。
「これをどう弁解する、東郷!」
「ほう、それはこちらの質問に答えてからにしてもらおう!」
東郷が一枚の紙を差し出す。そこには大きな文字で『2−C委員長・花井参上!お前たちを潰す!』と書いてあった。
「ちゃんとお前の名前が書いてあるぞ?」
「違う!僕はそんなのを書いた覚えは無い!」
「俺だってそんなのを書いてない!」
「お前、嘘なら嘘ですとはっきり言った方が良いぞ。今なら許してやる。」
「それはこっちの台詞だ。さあ、早く吐いちまいな。」
二人の目から火花が出て一触即発の状態。

「何だ何だ?」
2−Cと2−Dから野次馬がぞろぞろ出てくる。
「見ろ、お前達!これは2−Cから俺達への果たし状だ!」
「うお、喧嘩売ってんのか!」
「なめるな、2−C!」
2−Dの野次馬達がいきり立つ。
「何だと!いつも先に突っかかってくるのはD組の方だろうが!」
「そうだそうだ!」
2−Cの野次馬達も言い返す。その人数はどんどん増えていく。

それを眺める仲良し四人組。
「うわー、大喧嘩が始まりそうだよ。愛理ちゃん、美コちゃん、止めてあげてよ。」
「無茶言うな、塚本。こんな人数じゃ止められねーよ。」
「ちょっと、晶。あなた何とかしなさいよ。」
「ううん。」
晶は考え込む。
「分かったわ。我に秘策アリ!」
晶が花井と東郷の前に進み出る。

「ちょっといいかしら、二人とも。」
「何だ、高野君か。今は男同士の決闘、口を挟まないでくれ。」
「そうだぜ。女には見えない嵐が渦巻いているんだ。下手に触ると怪我をするぜ?」
晶が花井と東郷に唐突に銃を突きつける。
「私にいい考えがあるの。」
「うっ!いい考え?」
「花井君と東郷君が殴り合っても野次馬達の鬱憤は晴らされないわ。そこで、一つ提案させてもらうわ。サバイバルゲームよ!」
「なぜサバゲになるんだ?」
「2−Cと2−Dのどちらが優秀かはその団結力、行動力、チームワークにかかっているはずよ。」
「ふっ、つまり僕達2−Cがいかに優れているかをD組に見せ付ければいいわけだな。」
「そうよ。その誹謗中傷の紙程度で折れることの無い力をお互いに発揮するのよ!」
「面白い、いいだろう。ふっ、D組の真の力を発揮する時が来たな!思いっきりびびらせてやるぜ!」
その周りで歓声が上がる。



PM7:30 体育館
「さあ、お集まりの皆様。ようこそ、夜の学校、いや、戦場へ。」
晶がゲームの内容説明を始める。
「今回はモデルガンを使わず、このハイグレ銃でゲームをしていただきます。」
「ハイグレ銃?」
「そうです。このハイグレ銃から出る光線に当たるとハイグレ人間になってしまいます。」

「なあ沢近。なんでこんな事になったんだ?」
「話の流れよね。あの場の雰囲気に飲まれちゃったって感じ。」
美琴と愛理がため息をつく。

「連絡事項があります。今回のゲームは一応テスト勉強の合宿補習ということになっています。なので、先生方が何名かいらっしゃいます。監視役という名目で。ただしどちらの味方もしません。」

「高野の奴、どこでそんな根回ししてるんだ?」
「さあな。」

「バリケードやトラップは自由に作って構いません。ただし学校の器物を破損しないように。それと、戦場は新校舎のみ。外には出ないように。」

「何か本格的になってきたね。」
「2−Cって前にもサバゲやったんだよね。強敵じゃないかな〜。」

「2−Cの代表と2−Dの代表は前へ。出発場所のくじ引きを。」
「ちょっと待った!」
その声は吉田山だった。
「俺達水着ずもう軍は独立して戦わせてもらうぜ!」
「なに、裏切るのか!?」
花井が声を荒げる。
「違うダス。ワスらはワスらの信念に従って動きたいダス。C組もD組もワスと吉田山君と奈良君の敵ではないダス。」
「えっ、僕も入ってるの?」
当事者意識の無い一人。奈良だった。
「ふっ、裏切りは戦場の常。上等じゃねえか!なあ、高野?」
東郷が言う。
「そうね。分かりました。あなたたち三人は第三勢力ということで参加してください。」

結局、くじ引きの結果2−Cは1F多目的ホール、2−Dは3F2−E教室、水着ずもう軍は4F音楽室からのスタートとなった。

「さあ、それでは戦闘開始はPM8:00です。準備開始!」



PM7:55 多目的ホール
「おい、花井。作戦方針はどうするんだ?」
冬木が聞く。
「そうだな。以前のサバゲと同じだが、やはり攻撃と防御の役割を明確にしたほうが良いだろう。」
「また女子がディフェンスで男子がオフェンスか?あたしはどっちかっていうと攻めに回りたいんだけど。」
「周防なら問題ないか。よし、いいだろう。」
「私も混ぜてもらえるかしら?」
「高野君もか。しかし、そうなると守備の方がな。」
「それなら俺と菅が残る。」
麻生が言う。
「そうだな。前回は守りを女子だけに任せて失敗したからな。よし、烏丸、今鳥、田中、冬木も守備を頼む。」

「(チッ、何でこんな下らねえイベントに参加してるんだ、俺は。)」
播磨が一人自問自答する。
「(俺は不良なんだ。団体行動なんてできるかよ。帰るか。)」
「ねえ、播磨君。」
播磨に呼びかける天満の声。
「なんだ、天・・・・いや、塚本。」
「期待してるからね!播磨君は2−Cのエースなんだから!」
「おう、任せろ!D組なんて俺一人で十分だぜ!」
播磨はやはり単純だった。
「いやー、八雲は幸せ者だなあ。こんな頼もしい彼氏がいて。」
「待て、塚本。俺は別に妹さんと付き合ってるわけじゃ・・・。」
「もう、隠すな隠すな。じゃ、とりあえず頑張ってね。」
天満は愛理たちのところへ戻っていく。

キーンコーンカーンコーン
戦闘開始のチャイム。
「みんな、絶対勝つぞ!」
「おおーっ!!」
全員でバリケードを作り始める。

2−C 34名   2−D 37名  水着ずもう軍 3名



PM8:05 旧校舎・茶道部部室
「わざわざ付き合って頂いてすみません、谷先生。」
「いいんですよ、刑部先生。僕も今日は残業で残るつもりでしたし。」
「姉ヶ崎先生も残っていただいて。」
「怪我をする生徒がいたら大変ですから。」
「絃子先輩、始まったみたいですよ。」
笹倉先生が監視カメラを見ながら言う。ちなみに学校中に取り付けてある。
「高野君、見事なまでに隙が無いな。またテレビに投稿する気か・・・。」

「ところで、なぜ君たちまでいるんだ?」
絃子先生が目を向けた先には、八雲・サラ・さつき・榛名・稲葉がいた。
「はい、私が残ろうって言いました!早い話が野次馬です!」
稲葉が手を上げて言う。
「八雲の家でお泊りをするって親には言ってますので問題ありません。」
「いや、東郷君。そういう問題じゃ・・・・。」
「じゃあ、勉強しながらカメラを見ていればいいんですよね?」
さつきが言う。
「あっ、じゃあ、刑部先生に物理を教えてもらおうっと。八雲は?」
サラが問いかける。
「谷先生に英語を教えてもらおうかと・・・。」
無理矢理付き合わされた八雲は遠慮がちに言う。

こうして待機教員と1−D有志の夜は更けていった。



PM8:20 3F
花井と播磨以下10名の男子、美琴、晶の女子2名、計12名。
「おい、花井。これからどうするんだ?」
「2−Eは階段と階段の間にあるからな。挟撃できれば理想なんだが。」
「なら、俺に任せろ。」
「播磨!」
「いくら播磨でも一人じゃ危険だ。あたしと高野も付いていく。」
「けっ、足手まといにはなるなよ。」
「よし、なら俺達で敵をひきつけている間に、お前達三人が奇襲をかけてくれ。」
石山がまとめて言う。
「了解!」



PM8:25 4F
4Fの廊下を進む播磨、美琴、晶の三人。
「そういえば忘れていたわ。」
「なんだよ、高野?」
「この階の音楽室に水着ずもう軍の三人がいるはずよ。」
「ああ、そうだったな。」
三人に目掛けて光線が飛んでくる。
「周防、高野、伏せろ!」
二人が慌てて伏せる。
「ちっ、避けられたダス。」
西本が悔しそうに言う。
「くそっ、やりやがたったな!」
播磨が西本に突進する。
「うおりゃあああ!!」
西本に向けてハイグレ銃を放つ。
「ぐおおっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
西本がハイグレ人間にされポーズを取る。
「播磨、右!」
美琴が叫ぶ。右から飛んできた光線を間一髪避ける。
「(播磨を倒すチャンスだったのに・・・。)」
心の中で悔しがる吉田山。
「いくぞ!」
美琴が吉田山にハイグレ光線を当てる。
「うわあっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「そこっ!」
晶がハイグレ銃を放つ。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
奈良の声。
「これで水着ずもう軍は壊滅ね。あっけないわ。」
「時間を食っちまったな。急ぐぞ!」
三人は目的地に向かって駆けて行く。

2−C 34名   2−D 37名  水着ずもう軍 全滅



PM8:35 2−Eバリケード前
「おい、花井。何かおかしくないか?」
斉藤が前を警戒しながら言う。
「俺達が固まってこの場所にいるのに全く反撃が無い。」
梅津が訝しがる。
「油断はするな。誰もいないと思わせる敵の策かもしれない。」
ピッ
通信が入る。
「おい、花井、聞こえるか?」
「ああ、聞こえるぞ、周防。そっちはどうだ?」
「少しトラブルがあったけど目的地まで来た。今すぐにでも突撃できる。」
「よし、作戦開始だ!」

ハイグレ銃を放ちながら進む花井以下十名。
教室のドアに入り込んで様子を伺いながら2−E教室前のバリケードに進んでいく。
「本当に反撃が無いな。どうする?」
「危険だが誰かがバリケードの中に入り込むしかないな。」
「僕が行こう。援護を頼む。」
花井は援護射撃に守られながらバリケードに取り付く。よじ登って銃口を向ける。
「そこまでだ!」
「待て!あたしだ!」
「周防?」
花井がハイグレ銃を向けていた相手は美琴だった。
同じようにバリケードをよじ登っている。
「お前ら、何してるんだ?」
「いや、敵がこの中に隠れていると思ったんだが、もぬけの殻だな。」

ピッ
通信が入る。多目的ホールの永山からだった。
「花井君!大変なの!2−Dが大勢で攻めてきたの!」
「何だって?」
「30人近くいるわ。今麻生君たちが防いでいるけど、早く来て!」
「分かった、すぐ行く。」
通信を切る。

「くそっ、こちらの作戦を読まれていたか。」
「あいつら、全員で攻撃を仕掛けているのか?」
「すぐに戻ろう!」

「危ない!」
晶が叫ぶ。
「えっ?ぐわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「うおっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
晶の制止も空しく石山と梅津にハイグレ光線が当たり、二人がハイグレ人間化する。
「ふっ、ここがお前達の墓場だ!」
「くっ、東郷!ハリー!」
前後を四人の男子に囲まれる。
「ふはははっ、ハリーの読みどおりだな。」
「花井なら現実的な策を取って攻撃と防御に均等に戦力を分けると踏んだのさ。」
「さあ、お前ら!こいつらを全員ハイグレ化してやれ!」
2−Dの四人が一斉射撃してくる。
「三沢!斉藤!」
次々と2−Cの攻撃部隊に当たりハイグレ化していく。

「バリケードに飛び込め!」
播磨が叫ぶ。花井、美琴、晶がそこに飛び込む。
「ちっ、無事なのは四人だけか。ざまはねえな。」
「すまない、僕のせいだ。」
「花井、後悔している暇があったら応戦しろ!」
美琴に檄を飛ばされ撃ち始める花井。
「東郷とハリーは強敵だ。反対側を叩くぞ!」
「おう!」
四人でハイグレ銃で集中砲火を浴びせ、二人をハイグレ化する。
「よし、逃げるぞ!」
「了解!」
追ってくる東郷とハリーの追撃を受けながら四人は後退していく。

2−C 26名   2−D 35名



PM8:55 多目的ホール前
「くそっ、どんだけ出て来るんだよ!」
冬木が敵の猛攻に対して悪態をつく。
「まさかほぼ全員をこっちに回してくるとはな。」
「しかし、30分近く撃ちあってるのにお互い全然当たらないな。」
麻生と菅が話ながら撃つ。

「うえーん、怖いよう。」
「泣いてる暇があったら手を動かしなさい、天満。」
「大丈夫よ、塚本さん。もうすぐ花井君たちが戻って来るわ。」
大塚が元気づける。

「このままじゃラチがあかねえ。こっちから仕掛けられないのか?」
「無茶言うなよ、今鳥。」
田中が言い返す。
「チッ、せめてDサイズの胸さえあれば・・・・。」

「イチ・ジョー!勝負しろ!」
先頭に立ってララが叫んでいる。
「あいつの胸はD!これだ!イチさん!」
今鳥が一条を呼ぶ。
「何でしょうか、今鳥さん?」
「一緒にララを倒すぞ。」
「えっ?でも。」
「ララは敵の中核だ。あいつを倒せば敵は必ず動揺するぞ。」
「分かりました、やってみましょう。嵯峨野、結城、援護お願い!」
二人が親指を立てて同意の意思を示す。

今鳥と一条が陣地を飛び出す。すかさず嵯峨野と結城や他の皆が援護射撃する。
「ララさん!」
「イチ・ジョー!やっと出てきたか!腕が鳴るぞ!」
一条がララに飛びつき、ハイグレ銃を封じる。周りにいるD組の生徒もララに当たることを恐れて撃てない。一条は拳銃をポケットから取り出し、構えようとする。
「させるか!」
ララも必死に一条の手を掴み、拳銃を奪い取ろうとする。
「この!」
「くっ!」
二人は膠着状態に陥る。
「イチさん、離れろ!」
今鳥の声。いつの間にかララの後ろに回りこんでいた。
「えっ?は、はい!」
「何、イマドリ!」
「ジョーダンの恨み、思い知れ!」
今鳥がララにハイグレ銃を放つ。ララの体が激しく点滅する。
「うわあっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
ララがハイグレ姿になり、ポーズを取る。

「ララがやられた!」
「ひとまず退却しよう!」
2−Dの生徒達が統制を失って退却を始める。
「よし、追うぞ!」
「アソ、大丈夫か?」
「2−Cは奇襲に失敗して人数で劣っている。敵を減らせる千載一遇のチャンスだ。」
「しゃあねえ。今鳥、一条、ついて来てくれ!」
「私達も行くわ。」
城戸、鬼怒川、三原も続く。

2−C 26名   2−D 34名



PM9:10 昇降口
麻生と菅が先頭に立ち7人は昇降口にやって来る。
「やけに静かだな。やっぱり戻った方がいいんじゃないか?」
「花井たちが反対からやってくるはずだ。それまでま待とう。」
そうこうするうちに敵の反撃が始まる。
「隠れろ!」
全員が物陰に身を隠す。
「数えたところ十五人くらいね。あとは別の方角に逃げたのかしら。」
城戸が首をかしげる。
「一条!大塚に連絡してくれ。敵の襲撃に備えろって。」
「はい、分かりました。」
一条が通信機を取り出して伝言を伝える。

麻生と菅がハイグレ銃を連射し、一人に命中させる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「よし!当たったぞ!」
「こっちもだ!」
今鳥が叫ぶ。その先にはハイグレ姿にされた女子生徒がいた。
城戸と鬼怒川の陸上コンビが一人仕留める。一条と三原も連携攻撃で一人倒す。
「こっちに運が向いてきたな。」
「ああ。このまま一気に蹴散らすぞ!」

「みんな、無事か!」
廊下の奥から聞こえてくる声。
「その声は周防か!?」
その脇には花井もいる。
「すまない。D組の連中がトラップを仕掛けていたせいで遅れた。」
「播磨と高野は?」
「東郷とハリーを撒いている。」

「よし、今まで暴れられなかった鬱憤を晴らすよ。行くぞ、花井!」
「おお!」
美琴と花井がそこら中にハイグレ銃を掃射する。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「きゃっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
3人を瞬く間に倒す。残りの7人は四散して逃走する。

通信が入る。
「一条さん?天王寺君たちが襲ってくるの!戻ってきて!」
「こちらは片付きました。花井さんと周防さんとも合流できたのですぐに戻ります。」
通信を切る。
「よし、みんな。ダッシュで行くぞ!」
「おお!」

2−C 26名   2−D 27名



PM 9:25 多目的ホール前
「男は俺たち三人だけか。少しきついな。」
冬木が田中と烏丸に言う。
「冬木君、前!」
「えっ?」
天王寺が銃を乱射しながら突っ込んでくるのが見える。
「うわあっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「冬木!」
冬木がハイグレ人間化する。
「烏丸!さがるぞ!」
田中と烏丸は後退。第一防衛線崩壊。

「まずい!第二防衛線は女子しかいないわ!」
「私に任せて!」
愛理がハイグレ銃を放つ。天王寺の近くにいた男子に当たる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

「永山!花井たちはあと何分かかるんだ?」
「五分くらいよ。」
「ちっ、それまで持つかな?」
「大丈夫。私は田中君を信じてるから。」
「永山・・・・。」
見つめ合う二人。
「こら、そこ!オノロケは後にしなさい!」
敵を防いでいる大塚に怒られる。

「まずいわ!第二防衛線も持たない!」
天王寺たちは2−Cの防御をものともせずつ突進してくる。やはり麻生らの主力を引き離されたのが痛手だった。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「結城!」
ハイグレ姿にされ、ポーズを取る結城に驚く嵯峨野。その嵯峨野にもハイグレ光線が命中する。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
嵯峨野もハイグレ人間化し、ポーズを取る。

「永山、危ない!」
「えっ?」
田中が永山を突き飛ばす。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「田中君!」
田中がやられて永山もたじろぐ。その彼女にもハイグレ光線が命中する。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
永山は田中と並んでハイグレポーズを取る。第二防衛線壊滅。

「うおおおおおおおっ!!」
天王寺を中心に十名近くが第三防衛線に取り付く。
2−Cはバタバタやられているが、D組の損失は愛理と烏丸が仕留めた2名のみだった。
天王寺はバリケードを力任せに蹴り飛ばす。
「うわあっ!」
近くにいた女子達が吹き飛ぶ。
「いたたたっ。」
「天満!逃げなさい!」
「えっ?」
天満の眼前には両手にハイグレ銃を構えた天王寺の巨体が。
「あ、あ、あ。」
腰が抜けて動けない。

グラッ
突然天王寺の巨体が揺らぐ。何者かの蹴りが入っていた。
「大丈夫、塚本さん?」
「か、烏丸君?」
烏丸が天王寺を後ろへ蹴り飛ばし、ハイグレ銃を放つ。
「ぐわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

愛理が天満にだけ聞こえる大きさの声で言う。
「ふーん、いいわねえ、天満は。ピンチに助けてくれるナイト様がいて。」
「な、何言ってるの、愛理ちゃん!」
天満の顔が真っ赤になる。

その間も断続的に銃撃戦が続く。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「いやっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「なっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
三人の女子生徒が新たにハイグレ人間にされる。
「このままじゃ全滅も時間の問題だわ。」
「大塚さん!あれ!」
雪野が指差した先に花井たちの姿があった。しかし、D組の連携攻撃の前になかなか前進できない。

「くそ、前に進めない。」
「仕方がない、あれを使うか。」
「あれって何だよ?」
花井が通信機に向かって怒鳴る。
「合図をしたら目を閉じてひたすら走って脱出するんだ!1!2の3!!」
花井が懐から小さい弾薬のような物を投げる。
「うわっ!!」
花井が投げたのは閃光弾だった。両軍の中央で炸裂し、D組の生徒達が混乱する。

「今のうちに撤退だ!」
C組の生徒達はD組を尻目に各々走っていった。

2−C  18名   2−D  24名



PM9:35 旧校舎・茶道部部室
「うわー、すごい、花井先輩!かっこいい!」
監視カメラを見ながら大はしゃぎする稲葉。
「良かった、姉さん。無事で。」
「2−Dがやや優勢って感じだね。」
八雲とさつきが感想を述べる。
「もう、お兄ちゃんとハリー先輩ったらまだトラップを解除してるよ。」
「さすが高野先輩。隙が無いね。」
榛名とサラも同じく宿題をさっさと片付けて画面に釘付けになっている。

「そういえば、刑部先生はモデルガン集めが趣味でしたよね?射撃なんかも得意なんですか?」
谷先生が質問する。
「ええ、まあ。素人に毛が生えた程度ですけど。」
「何言ってるんですか、絃子先輩。学生時代は一緒にサバゲを沢山やって10連勝したりしたじゃないですか。」
「こら、葉子。勝手に人の過去をばらすな。」
「刑部先生ってそういうの得意なんですか?」
「いや、稲葉君。そんな期待の眼差しで見られても・・・。」

「はあ、私もこういうの参加してみたいな〜。」
妙先生がボソッと言う。
「それですよ、先生!私達も参加しましょうよ!」
さつきが身を乗り出して提案する。
「賛成!ねえ、八雲もやろうよ。」
「え、私も?」

「お前達、これはそもそもC組とD組の喧嘩を終わらせるためにやってるんだから・・・。」
谷先生が言いかけるがそれを絃子先生が遮る。
「いえ、飛び入り参加はOKのはずです。水着ずもうチームの例もありますし。」
「絃子先輩も参加してくれるんですか?またコンビ組めるなんて思わなかったですよ。」
笹倉先生が楽しそうに言う。

絃子先生が晶に電話をかける。
「もしもし、高野です。」
「高野君、ハイグレ銃の予備はどこにあったかな?」
「旧校舎の一階にまとめて置いてありますけど。」
「十丁くらい借りても良いかな?」
「はい、構いませんけど。まさか参加するつもりなんですか?」
「ああ、1−Dと教員の混成チームでね。今度会う時は敵同士だ。C組とD組への連絡はよろしく。」
「分かりました。」

「では、諸君。役割分担を決めよう。私と葉子は校舎の北西側から入ってD組が集結している地点を叩く。」
「人数が多いですし、久しぶりにハッスルできそうですね、先輩。」
葉子がハイグレ銃を点検しながら言う。
「D組で集団からはぐれている生徒達、それとC組は大半が現在バラバラで行動している。だから・・・・」
絃子先生が黒板に書きながら説明する。
「校舎の北東側から姉ヶ崎先生と俵屋君、南西側から東郷君と稲葉君、南東側から塚本君とアディエマス君。」
全員が同意する。
「四方向から奇襲をかけ、一気に殲滅する。以上!」

「あの、僕は?」
「谷先生はここで監視を引き続きお願いします。誰もいなくなるとさすがにまずいですから。」
谷先生ががくっとなる。

「よーし、頑張るぞー!」
初めてのサバゲを楽しみにする妙先生を先頭にみんな出て行く。
「先生。」
サラが谷先生にコソッと耳打ちする。
「気を落とさないで下さい。もしかしたら姉ヶ崎先生の水着姿が見られるかもしれませんよ?」
サラはそれだけ言って外に出る。谷先生が必死に監視カメラの確認を始めていた。

「何を話してたの、サラ?」
「何でもないよ、八雲。さあ、私達も気合入れて頑張ろう!」

2−C  18名   2−D  24名   第四勢力・1−D&教員チーム  8名



PM9:55 2−E教室前
「お前ら、よくやってくれた!出した犠牲は大きかったが、C組の奴らの戦力はがた落ちだ!このまま勝つぞ!」
オオーッ!という声が上がる。
「しかし、ララと天王寺がやられたのは大きいな。どうする、東郷?」
ハリーが問う。
「C組の奴らは男子の大半がやられている。問題ない。」
「でも、あっちのクラスは男子が半分残ってるし、周防さんや沢近さん、高野さんに一条さんもいるわよ?」
女子の一人が言う。
「ふっ、女子なら一条はともかく他の奴らは素人の強さだ。せいぜいトラップを仕掛けて俺たちを足止めするくらいしかできない。」
「通信が入ったぞ。高野から連絡事項だ。」
通信を受けた男子生徒が1−D&教員混成チームの参加を伝える。
「フッ、面白いじゃないか。俺のアメリカに置いてきたカウボーイ魂が燃えてきたぜ。」
東郷はいつにも増して闘志を燃やす。

「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
いきなり二名の生徒がハイグレ人間化する。
「なんだ、どうした?」
「東郷、廊下の奥だ!長距離狙撃だ!」
ハリーが叫ぶ。立て続けにハイグレ光線が生徒たちを捉えていく。

「やったー、三人目!」
「私は四人だぞ。」
「むー、負けませんよ、先輩!」
笹倉先生と絃子先生が競って生徒たちをハイグレ化していく。

「やってくれるじゃねえか、先生達よ。みんな、ばらけろ!集合場所は後で通信する!」
東郷がみんなに指示を出し、D組はバラバラになって逃げ出した。

2−C  18名   2−D  17名  1−D&教員チーム  8名



PM10:05  2F職員室前
「ねえ、どうやって移動する?」
冴子が三原に尋ねる。
「集合場所は確か4Fの美術室よね。あっちの階段使えば早いよ。」
「最短ルートで行けば襲われる心配も無いしね。」
「でも、用心に越したことは無いわ。慎重に進みましょう。」
城戸に対して鬼怒川が冷静な意見を述べる。

「きゃ!」
「三原!?」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
三原がハイグレ人間となってポーズを取っている。
「あそこ!一年の俵屋さんよ!」
さつきが背を向けて廊下を逃げている。
「もう例の新チームたちが来たのね。」
「一人みたいね。こっちは三人だし、倒せるわ。行きましょう!」
城戸がダッシュする。

「待ちなさい!」
城戸と鬼怒川が陸上部で鍛えた走力にものを言わせどんどん追い上げる。
「すばしっこいわね。全然当たらない。」
さつきはジグザグに走り、二人のハイグレ光線を避けながら走る。
その後ろを冴子が追いつこうと懸命に走る。

「妙先生!OKです!」
さつきが叫ぶ。
「了解!」
妙先生が三人の走りすぎた教室から出てくる。三人の後ろに回りこんだ格好だ。
ハイグレ銃を一番後ろにいた冴子に命中させる。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
城戸と鬼怒川が冴子を助けようと戻ってくるが間に合わなかった。

「先輩達の相手は私ですよ!」
さつきがその後を追って鬼怒川にハイグレ銃を浴びせる。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「おキヌ!」
「城戸さん、よそ見は禁物よ?」
妙が城戸に向かって撃つ。ハイグレ光線が命中し、ハイグレ人間化する。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

二人がハイタッチする。
「ナイス、俵屋さん!」
「先生もすごいですよ!」
「この調子でどんどん行くわよ!」

2−C  14名   2−D  15名  1−D&教員チーム  8名



PM10:10 3F2−A教室内
「イチさん、もう大丈夫か?」
「平気みたいです。先生方も移動したみたいですね。」
一条はまだ刑部&笹倉ペアが隠れていないかを確認しながら言う。
「集合場所はこの上だろ?さっさと行こうぜ。」
「はい、そうしましょう。」
二人は誰もいないのを確認して外に出る。

ピュンピュン
一条の足元にハイグレ光線が飛んでくる。
「戻れ、イチさん!」
二人は再び教室内に隠れる。教室の中に誰かが入ってくる。
「ハリーさん・・・。」

「誰かがいたはずなんだが・・・・。また高野のトラップだったのか?それとも見間違いかな?」
ハリーが独り言を呟く。
「仕方ない、他を当たろう。」
ハリーが外に出て行く。ほっとする二人。

「うわあっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
外からハリーの声がする。
「ハリーがやられたみたいだな、イチさん。2−Cの仲間が近くにいるのか?」
「先生方かもしれませんよ。私、見てきます。」
一条が立ち上がる。
「おいおい、俺を一人にするなよ。」
「大丈夫ですよ、すぐに戻ります。」
一条はそう言って外に出て行く。

一条が廊下を見てみるが、ハイグレ人間にされたハリーしかいなかった。
「おかしいな。」
隣の教室を調べてみるが誰もいない。
「あまり今鳥さんを待たせるのも良くないし、戻ろうかな。」
一条は2−Bの教室を出ようとする。そこへ・・・
カチャ
背中に銃を突きつけられる感触がする。
「えっ?」
「一条先輩、覚悟!」
稲葉だった。ハイグレ銃の引き金を引く。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
一条の体の点滅が収まると、ハイグレ人間になっていた。

「イチさん!?」
隣の教室で今鳥が一条の叫び声に事態を察する。
「ちっ!」
今鳥は銃を片手に外に出る。隣の教室でハイグレポーズを取っている一条を発見する。
「くそっ!」
一条を一人で行かせた事を後悔する今鳥。打ちひしがれる彼にハイグレ光線が飛んでくる。
「うわっ!」
今鳥が最後に見たのはこちらに銃を向ける東郷榛名の姿だった。
「うわああっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
今鳥がハイグレ人間化する。

「榛名、私、あの一条先輩を倒したよ!」
「私だってハリー先輩と今鳥先輩を倒したわ。」
「えへへ、私達ちょっと凄いよね。」
「さあ、次に行きましょう!」

2−C  12名   2−D  14名  1−D&教員チーム  8名



PM10:15 1F校長室前
「おい、アソ。」
「何だよ、菅。」
「やけに2−Cの人数が減ってると思わないか?」
菅が携帯用のGPSを見ながら言う。全員の現在地点が表示されている。
「2−Dの奴らじゃないか?」
「いや、違うだろ。さっきD組の奴らも随分ハイグレ人間にされているのを見たぜ?」
「まさか、1年と先生達のチームか。女だけだと思っていたがやるみたいだな。」
「ああ、こいつは意外なダークホースだな。」

二人は階段の手前までやって来る。
「よし、ここを上れば一気に目的地に着くぜ。」
「階段は絶好の待ち伏せポイントだからな。気を抜くなよ、菅。」
「ああ、分かってるって。」

二人は常に上を警戒しながら上っていく。
しかし、1Fと2Fの間、2Fと3Fの間、何の襲撃もなく通り過ぎる。
「うわっ、何だこりゃ!?」
「マジかよ。」
3Fにたどり着くとそこら中にハイグレ人間化されたD組の生徒達がいる。
「誰がこんな事を。」
「播磨か高野でもこれだけの人数は・・・。」

「菅!飛べ!」
麻生が叫ぶ。二人は廊下の両側にあった障害物に隠れる。
「どうする、アソ!今なら階段に戻れるぞ!」
「そうだな。ここで突っ込んでも的にされるだけだし、戻ろう。」

二人は階段まで戻ってくる。上を目指そうとするが・・・。
「ぐわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
菅が階段の踊り場から発射されたハイグレ光線に当たり、ハイグレ人間になる。
撃ったのは八雲だった。
「塚本の妹!ちっ!待ち伏せか!」
麻生は下へ続く階段の方へ逃げようとする。
「逃げられませんよ、麻生先輩?」
「挟まれたか。」
麻生が上の階段を上っている間にサラが下のほうへ先回りしていた。
「D組の奴らをやったのはお前らか?」
「違います。刑部先生と笹倉先生です。」
八雲が答える。
「そうか・・・・。ところで、サラは射撃が上手いんだな。」
「はい。協会はならず者の侵入が多いですから、護身のために教わるんです。」
サラが銃を構え直す。

麻生がハイグレ銃を放つ。しかし、二人は間合いを見切っていて当たらない。
「先輩は私が倒します!」
サラが宣言し、麻生を銃撃する。麻生は八雲に背後を取られているのでうまく動けない。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
麻生にハイグレ光線が命中し、ハイグレ化する。

「やったね、八雲。」
「うん、ちょっと恐かったけど。」
「何言ってるの。菅先輩を一撃で仕留めたじゃない。」
「そんな、たまたまだよ。」
「よーし、この調子で張り切って行こう!」

2−C  10名   2−D  11名  1−D&教員チーム  8名



PM10:20 4F美術室
「はあ、はあ。やっと着いたよ。」
「敵を避けながら進んで時間食っちゃったわね。」
天満と愛理が美術室に入る。

「無事だったか、二人とも。」
「天満、愛理、お疲れ様。」
美琴と晶が労いの言葉をかける。
他に美術室にたどり着けたのは大塚、砺波、雪野、播磨、花井、烏丸だけだった。
「10人だけか〜。随分少なくなっちゃったね。」
「ええ、さっき少しやり合ったから分かると思うけど、1年の子達が強すぎるのよ。」
愛理がため息をつく。
「あたしと高野は刑部先生と笹倉先生に襲われたぞ。」
「危うくやられるところだったわ。」

「烏丸君。」
「塚本さん。無事でよかった。」
「う、うん。」
烏丸に声をかける天満。それを見守る播磨は複雑な気分だった。

「2−Dの様子はどうなの?」
砺波(隣子)が質問する。
「さっき播磨と様子を見てきた限りでは大部分がやられているようだ。」
「あっちの人数もこっちと同じくらいになっちまったんじゃねえか?」
花井の話に播磨が補足を加える。
「となると個々の戦闘力で勝る1−D&教員チームがかなり有利になったわけか。」
花井が悩みだす。
「おい、花井。もう守るって発想は捨てたほうが良いんじゃないか?」
「そうだね。ここは打って出て一人ずつ倒していくしかないわ。」
美琴と晶が口々に言う。
「私達のことなら気にしないで。私達だって立派な戦力よ。」
大塚が言う。隣子と雪野も同意する。
「天満、あんたもよ。」
「えっ?何が?愛理ちゃん。」
「あんたも足引っ張らないように頑張りなさい。」

「よし、敵を見つけ次第全員に通信で連絡。その都度近くのメンバーで集合して撃退する。」
「なら、まずは確実に4Fを安全地帯にしてその後下に行くのが合理的じゃない?」
大塚が提案する。
「そうだな、大塚君。それで行こう。」
全員が美術室を出て個々に4階の索敵を始める。



PM10:25 3FAV教室前
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「きゃ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
AV教室に立てこもる2−Dを攻略する1−D&教員チーム。
「反撃もだいぶ収まってきたみたいだね。あと五人かな?」
「あ、当たった。」
サラと話しながら撃っていた八雲が一人に命中させる。
「あと四人か。よし、そろそろ頃合だな。突入しよう。」
絃子先生を先頭に全員が突入する。
「先生達で敵をひきつける。君達五人は側面に回りこむんだ。」
そう言って教員三人は正面から銃撃する。

八雲たちは教員達の援護を受けながら前進し、右側面から銃撃する。
「行きますよ、先輩!」
稲葉が男子一人をハイグレ化する。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「隙あり!」
さつきが一人に命中させる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
サラも一人をハイグレ化する。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

「お兄ちゃん。」
一人で抵抗を続けている東郷を妹が呼び止める。
「榛名か。フッ、生き別れになった兄と妹の荒野の決闘とは燃えるシチュエーションだぜ。」
「生き別れにもなってないし、荒野でもないでしょう?馬鹿な事言わないの。」
「ふ、まあいいさ。榛名、勝負だ!」
東郷が榛名に向けてハイグレ銃を放つ。榛名は横っ飛びに避けつつも応戦する。
「いい反応してるじゃないか!面白い!面白くなってきたぞ!」
「お兄ちゃん、うるさい。」
榛名が一人喋っている東郷にハイグレ銃を命中させる。
「なっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

「よし、2−Dは殲滅完了だ。お次は2−Cの番だ。」
「2−Cの子達はどこにいるんですか?」
妙先生が質問する。
「4階みたいですね。相手は十人。」
笹倉先生が答える。
「相手は十人だけですか?だったら花井先輩と戦えるチャンスがあるかも。楽しみ〜。」
「油断しちゃ駄目よ、稲葉。まだ播磨先輩が残ってるから。」
「あと、周防先輩と沢近先輩、高野先輩もね。」
八雲とサラにたしなめられる。
「4階の美術室に集合しだしてだいぶ立つみたいですね。」
さつきが時間を確認する。
「どうせ4階を全員で索敵してから3階に下りてまた索敵、って作戦だろう。下りてくる所を待ち伏せよう。」
絃子先生が言う。
「よし、行動開始だ、諸君!」

2−C  10名   2−D  全滅  1−D&教員チーム  8名



PM10:30 3F階段付近
4Fの索敵を終えた2−Cメンバーは集団になって階段を下りる。
3Fにたどり着き、階段の前で花井が指示を出す。
「さっきまで聞こえていた銃声がしない。敵が潜伏している可能性は大だ。何かあればすぐに通信するように。」
「あ、あそこ!」
雪野が指差した先に絃子先生の姿が。
「ちっ、絃・・・・・・じゃねえ、刑部先生か。俺に任せろ!」
播磨が追いかけていく。
「待て、播磨!またおびき出すつもりかもしれない!戻れ!」
しかし、播磨は花井の静止を聞かずに闇に消えていく。

2−Cの集団目掛けてハイグレ銃が飛んでくる。
「笹倉先生だわ!」
「僕に任せて。」
烏丸が走っていく。それを見て笹倉先生は後退していく。
「烏丸!待て!あれは僕達を引き離す罠だ!戻れ!」
しかし、烏丸はすでにいなかった。

「あのよお、花井。先生達の強さは桁違いなんだ。あの二人に任せるしかないだろ?」
「・・・・・。そうだな。」
「あんまりのんびり話している暇もなさそうね。」
愛理が花井と美琴に言う。遠くで動く人影があった。
「教室側に八雲と稲葉さん、特別教室側にサラと東郷さんだね。後の二人はいないみたい。」
晶がすぐさま観察する。
「よし、二手に分かれて倒すぞ!」



PM10:35  2−C教室前
花井、美琴、砺波、雪野のグループは八雲と稲葉が隠れた2−Cの前にやってくる。
「おい、花井。」
「何だ?」
「お前、八雲ちゃんにベタ惚れだろ?撃てるのか?」
「心配するな。僕は八雲君のハイレグ姿も見てみたい!」
花井がガッツポーズをしながら答える。
「花井君、それでいいの?」
「黙っていれば格好良いのに。」
砺波と雪野に口々に非難される。
「はっはっは、二人とも、そんなに褒めないでくれ。」
「いや、褒めてねーよ。」
美琴がツッこむ。

花井が扉を開けて中に入る。三人もそれに続く。
すぐに銃撃戦が始まる。
「花井先輩!私の力、見せてあげますよ!」
「望むところだ、稲葉君!」

「周防さん、何とかならない?」
膠着した銃撃の様子を見かねて雪野が言う。
「援護してくれ!私が突っ込む!」
「分かったわ。」

「うおおおおおおっ!」
美琴が砺波と雪野の援護射撃に守られて突進する。
「ごめんね、稲葉さん!」
美琴が稲葉の頭上にジャンプし、そのままハイグレ銃を浴びせる。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
稲葉がハイグレの水着姿になる。

「稲葉!」
「おっと、友人の心配をしている場合じゃないぞ、八雲君?」
八雲が稲葉に気を取られているうちに花井が間合いを詰めていた。
「(さあ、君のハイレグ姿を見せてくれ、八雲君!)」
八雲の読心術に、花井の赤裸々が気持が映っていた。
「先輩。私はあなたのものではありません。」
そう言うと、八雲は花井の懐に素早く入り込む。
「早い!しかし、こんな近くの間合いではそんな大振りの銃では・・・。」
しかし、本気の八雲は違った。素早くポケットから拳銃を取り出し、花井にハイグレ銃を放つ。
「ぐわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
花井がハイグレ姿にされ、ポーズを取る。
「花井!」
「花井君!」
八雲はそのまま追撃を振り切って逃走した。

2−C  9名   1−D&教員チーム  7名


PM10:40 化学室
「サラちゃんと榛名ちゃん、いないね〜。」
「この中に入ったのは見間違いかしら。」
天満、愛理、晶、大塚は机の下やカーテンの裏を調べていく。
「きゃ!」
「大塚さん?」
振り返ると一緒にいた大塚がハイグレ人間化していた。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「天満、晶、気をつけて!この教室の中にいるわ!」
「そこよっ!」
晶がハイグレ銃を放つ。近くに被弾したのに驚いたサラと榛名が姿をさらす。

「姿が見えればこっちのものよ。二人とも、行くわよ!」
「う、うん。ごめんね、二人とも!」
天満が謝りながら撃つ。すぐに乱戦になる。

「きゃ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
愛理の放った一発がサラをハイグレ化する。
「さあ、次は貴方よ!」
三方から押し包まれ逃げ場のなくなった榛名に晶がハイグレ銃を浴びせる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

「ふう、何とか倒せたね。」
そこへ通信が入る。
「高野か?」
「どうしたの、美琴?」
「稲葉さんは倒したんだけど八雲ちゃんに逃げられた!」
「分かった。こっちも終わったところよ。すぐに行くわ。」
「頼むよ!」
通信が切れる。

「私が行くわ。」
「愛理ちゃん?」
「あの子とは何か色々あるし、決着をつけるいい機会だわ。晶、あんたは天満をお願い。」
「了解。」

2−C  8名   1−D&教員チーム  5名



PM10:45 中央階段前
「ねえ、晶ちゃん。私達はこれからどうするの?」
「まだ捕捉していない俵屋さんと姉ヶ崎先生の捜索ね。他はみんなに任せておけば良いわ。」
話している二人に向けてハイグレ光線が飛んでくる。
「階段の下からだよ!さつきちゃんだよ!」
「相変わらず目が良いわね、天満は。」
二人はさつきを追いかけて二階に下りる。

「多分私達が囮を追いかけている間に背後から襲うってパターンでしょうね。」
「どうする?一度戻る?」
「いえ、どうせ戦わなくちゃならないなら早めに倒した方が良いわ。私に考えがある。」
晶が天満の耳元で作戦を伝える。

天満がさつきを追いかける。
「さつきちゃん、待てー!」
さつきは天満の攻撃が全く当たらないので意に介さず逃げていく。
「先生!」
奥まで来たところでさつきが叫ぶ。手前の教室から妙先生が出てくる。
「塚本さん、あなたには悪いけど消えてもらうわ!」
妙先生がハイグレ銃の照準を合わせる。と同時に彼女の頭に銃口が突きつけられる。
「えっ?」
振り返ると晶だった。
「天満は囮を追いかけているフリをしている囮です。引っかかりましたね。」
「さすがね、高野さん。私の負けよ。撃ちなさい。」
「その前に右に三歩動いてください。」
妙先生が右に三歩動いたのを確認し、ハイグレ銃を放つ。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」

「うわっ!先生!?」
さつきが作戦を見破られた挙句、妙先生までやられて動揺する。
「ごめんね、さつきちゃん。」
天満がさつきにハイグレ銃を放つ。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
さつきと妙先生の叫び声が廊下に木霊していた。

2−C  8名   1−D&教員チーム  3名



PM10:50 茶道部部室
「高野、お前は狙ってやったのか?」
谷先生が監視カメラを見ながら呟く。
微妙にカメラからずれた位置にいた妙先生をカメラの前にずらしてからハイグレ銃を放った晶。
「後で何を要求されるんだろうな・・・。」
晶に報酬をせびられることを恐れながらもカメラを見つめ続ける谷先生であった。



PM10:55 2−E教室前
2−Dが作っていたバリケードに立てこもってハイグレ銃を撃つ笹倉先生と八雲。
それに対峙しているのは美琴、愛理、砺波、雪野だった。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
雪野が笹倉先生の放った光線に当たってしまう。
「美奈ちゃん!きゃっ!」
砺波も同様に被弾してしまう。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
砺波もハイグレ人間化した。

「あたし達二人だけかよ!無茶だ!」
「晶と天満がもうすぐ来るわ!もう少しの辛抱よ!」
二人は撃ち続けながら話す。
「播磨と烏丸はどうしたんだ?」
「分からないわ。」
「ちっ、あたし達が何とか踏ん張らないとな。」

「美コちゃん、愛理ちゃん、来たよ〜。」
「苦戦してるみたいね。」
天満と晶がやって来る。
「やっと来たか!」
「遅いわよ、二人とも!」

一方バリケードでは・・・
「姉さん!?」
「どうしたの、塚本さん?」
「え、その、何でもないです。」
笹倉先生がチラリと2−C陣地を見る。
「お姉さんとは戦えない?」
「すみません。」
「ふふ、いいのよ。私ももっと楽しみたいし、肉弾戦で行きましょう。」
「肉弾戦ですか?」
「久しぶりで腕が鳴るわ。貴方はお姉さん以外と戦うと良いわ。後は私に任せてね。」
「分かりました。」

「なっ!?二人が飛び出してきたぞ!?」
「どういうつもり?」
美琴と愛理が混乱する。
「肉弾戦よ!大型銃は捨てて!拳銃だけで戦うのよ!」
晶が即座に敵の意図を把握する。
「全員散らばって!ゲリラ戦よ!」

一方笹倉先生と八雲は・・・・
「ふふ、高野さん、よく分かってるじゃない。」
「高野先輩はサバイバルゲームが趣味ですから。」
「さあ、こっちも負けずに行くわよ!」

2−C  6名   1−D&教員チーム  3名



PM11:00 2F3−D教室前
「絃子の野郎、手加減ってもんを知らねえのかよ!」
播磨は絃子先生の猛攻に音を上げつつも反撃する。
「くそっ、何であんな遠くから正確な射撃ができるんだ!」
播磨の放つハイグレ光線は全てバラバラに着弾するが、絃子先生のはそうはならない。
「んっ?あいつまた移動する気か?」
少しずつ移動しながら撃ち始める絃子先生を目で追い、播磨も動く。



PM11:05 2−D教室
八雲と激しい撃ち合いを続ける愛理と晶。
「やっぱりあの子、天満がいないこっちに来たわね。」
「狙ってたの?」
「ええ。あの子とは因縁があるから戦いたかったのよ。」
「ま、いいけどね。」
その間にも銃撃戦は激しさを増していく。

「このままじゃラチがあかないわね。仕方がないわ。晶、目を閉じてなさい!」
愛理は花井から一発だけ貰っていた閃光弾を放つ。
「くっ!」
「何て威力!」
二人は目がくらむのを必死で耐え、八雲に近づく。

「なっ!?」
閃光弾をまともに喰らって動けないと思っていた八雲に銃を突きつけられる晶。
「なぜ!?」
「音です。音で先輩達の動きは分かります。」
八雲は閃光が収まって自分が銃を向けているのが晶だとはっきり認識する。
「ごめんなさい、高野先輩。」
八雲がハイグレ銃を放つ。
「きゃ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
晶はハイグレ姿でポーズを取る。

「晶!」
愛理が叫ぶ。しかし、近寄る暇は無かった。
「なっ!」
八雲に飛びつかれ、押し倒される。
「何するのよ、八雲!」
「先輩とは今まで色々とありましたし、決着をつけたいんです。」
「あんたも私と同じってわけ?いいじゃない。簡単にはやられないわよ!」
愛理に銃口を向けようとする八雲の腕を掴み、必死で引き戻そうとする。
両者の力は互角。どちらも少しも気を抜けない状態になった。

2−C  5名   1−D&教員チーム  3名



PM11:10 コンピューター室
「バカ、塚本。頭を上げるな!」
「それじゃあ笹倉先生がどこにいるか見えないよ。」
天満と美琴は教壇に隠れ、笹倉先生の攻撃をしのいでいた。
「うふふ、どうしたのかしら?出てらっしゃい。」
笹倉先生は余裕の態度で撃ち続ける。
「このままじゃやられちゃうよ、美コちゃん。」
「そんな事言われてもな・・・。よし、塚本、少しだけ笹倉先生に銃撃をしてくれ。」
「美コちゃんは?」
「先生に飛びつく。格闘だったらあたしが絶対勝てる。」
「うん、分かった。」

天満が意を決して笹倉先生に向かってハイグレ銃を放つ。
笹倉先生はそれを悠々と避ける。
「うおおおおおおおおおおおっ!」
美琴が拳銃を片手に笹倉先生に飛び掛る。しかし・・・
「うわっ!」
美琴にハイグレ銃が命中する。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「美コちゃん!?」
美琴がハイレグ水着を着てハイグレポーズを取る。
「うふふ、あなたたちのやりそうな事はお見通しよ?」
「そ、そんな。」
笹倉先生が一歩一歩近づいてくる。
「さようなら、塚本さん。」
笹倉先生が天満に向かってハイグレ光線を放つ。

「もう駄目!」
天満は目をつぶる。
「あれ?」
もう当たったはずなのに何とも無い。

「大丈夫、塚本さん?」
天満を抱えている烏丸が声をかける。
「烏丸君?」
「危なかったよ。もう少しで当たるところだった。」
烏丸は天満を下ろす。
「下がっていて。笹倉先生は僕が倒す。」

「あの距離で塚本さんを抱えて逃げるなんてさすがね、烏丸君。」
「先生、塚本さんを倒すのは僕を倒してからにして下さい。」
「うふふ、分かったわ。じゃ、行くわよ。」
そう言うなり、二人は猛スピードで動き出す。
二人は高速でハイグレ光線を繰り出す。

「うふふ、どうしたの、烏丸君?それじゃあ私には当たらないわよ?」
笹倉先生の方が技術が上回っている。
烏丸は徐々に部屋の隅に追い詰められていく。
「残念ね、烏丸君。」
笹倉先生が近づいていく。
「きゃ!」
笹倉先生が机の脚つまづいてよろめく。教室内が暗くよく見えなかったからだ。
「今だ!」
烏丸はすかさずハイグレ銃を放つ。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
笹倉先生がハイグレ姿になり、ポーズを取る。

2−C  4名   1−D&教員チーム  2名



PM11:15  2−D教室
八雲と愛理はまだ揉みあいになっていた。
「早くあきらめなさいよ!」
「できません!」
「くっ!」
愛理は長時間不利な体勢でいたせいで、抑える力が落ちてくる。
「もう、駄目!」
愛理はどんどん力が抜けていく。

「お嬢!」
「ヒゲ!?」
「播磨さん!?」
教室に播磨が入ってくる。馬乗りになっている八雲にハイグレ銃を浴びせる。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
八雲がハイグレ姿になり、ポーズを取る。

「ふう、助かったわ。ありがとう、ヒゲ。」
「てめーが素直に礼を言うなんて意外だな。」
「何よ、私が素直にお礼を言っちゃいけないわけ?」
「別にそうじゃないけどよ。」
「あんたは何でここにいるの?刑部先生は?」
「さっき逃げられちまってな。この近くにいるはずなんだが。」

「ねえ、ヒゲ。」
「何だよ?」
「何で私を助けてくれたの?」
「そりゃ、同じチームなんだから助けねえと負けちまうだろ。」
「でも、相手は八雲よ?」
「相手が妹さんでも今は敵同士だ。」
「逆だったら?私と八雲の立場が逆だったら迷わず私を撃つ?」
「知るか、そんなの。」
「そう。」
はっきりと撃つと言われなくてほっとする愛理。
「さっさと行くぞ、お嬢。後は一人だけだ。」
愛理が立ち上がろうとするが、その場にしゃがみこんでしまう。
「ごめん、さっきのでだいぶ体力を消耗したみたい。先に行って、ヒゲ。」
「ちっ、しゃあねえな。すぐ来いよ。」
播磨はそう言うと教室を出て行った。

2−C  4名   1−D&教員チーム  1名



PM11:20 コンピューター室前
「ありがとう、烏丸君。」
「いや、僕にお礼を言われる資格は無いよ。笹倉先生を見失わなかったら周防さんはやられずに済んだ。」
「でも、私を助けてくれんだし、おあいこだよ。」
「ありがとう。行こう、塚本さん。あとは刑部先生一人だから。」
天満は愛理から先ほど通信を受けて、八雲を倒したことを伝えられていた。

並んで歩いていく二人に、ハイグレ光線が飛んでくる。
烏丸が天満を反対側に突き飛ばす。
「ふう、危なかったね、烏丸君。」
天満が烏丸の方を向く。
「烏丸君!?」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「烏丸君!!」
烏丸がハイグレ人間化していた。
天満はその場でへたり込んでしまう。

「チェックメイトだ、塚本君。」
そう言って天満に銃を向けているのは絃子先生だった。
「先生。」
しかし、絃子先生は撃たない。
「どうして撃たないんですか?」
「ふふ、ちゃんと理由はあるよ。」

しばらくして廊下の奥から聞こえてくる足音。
「塚本!!」
ハイグレ銃を撃ちながら突進してくる播磨。
「絃子!天・・・塚本を放せ!」
「嫌だといったら?」
「ぶっ倒す!」
播磨が凄む。
「そうか。」
絃子がハイグレ銃を放つ。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
天満がハイグレ銃を浴びてハイグレ人間になる。
「残念だったな、拳児君。」
冷酷な一言。
「塚本!絃子、てめぇ!」
「君だって周防君を助けようとした花井君に同じ仕打ちをしたじゃないか。」
「うるせえ!何で同じ事を!」
「わざと怒らせて君の本気モードと戦ってみたいと思っただけだ。」
「へっ、そうかよ。だったら、俺に本気を出させたこと、後悔することになるぜ。」
「私の家に居候している分際でよく言うな、君は。まあいい、ここではなんだ、屋上で勝負だ。」
「いいだろう。」
播磨と絃子先生は屋上へ向かうことにした。

2−C  2名   1−D&教員チーム  1名



PM11:25 屋上
「言っとくがよ、女だからって手加減しないぞ。」
「私の攻撃の前にいつもたじたじになっている君の台詞ではないな。」
「御託はいい。行くぞ!」
播磨が突進しながらハイグレ銃を放つ。絃子先生はそれを避けながら反撃してくる。
「ちっ!」
「ふっ!」
二人は隠れては出て、出ては隠れてを繰り返す。

「ふふ、腕を上げたじゃないか、拳児君。」
「てめぇには及ばねえよ。俺は拳で聞くほうが好きだしな。」
「そうだったな。」
絃子先生が瞬間的に迫ってくる。
「当たるかよ!」
播磨は転がって必死に避ける。
「ったく、てめえはこの年で戦争ゴッコなんて恥ずかしくないのかよ。」
「昔の血が騒ぐって言うのかな。最初は遊びのつもりだったが、つい熱くなってきちゃったよ。」

絃子先生が拳銃を両手に二丁構える。
「本気で行くぞ、拳児君!」
「今まで手加減してたのかよ。なめるなああ!!」
しかし、本気を出した絃子先生は強く、播磨は苦戦を強いられる。

「ちっ!弾切れか。エネルギーパックの予備も使い切っちまったし。くそっ!」
「勝負あったな、拳児君。」
絃子先生が用心深く近づいてくる。
「拳児君、アスタラビスタ!」
絃子先生がハイグレ銃を撃つ。

「ヒゲ!」
その刹那播磨の手にハイグレ銃が投げ込まれる。屋上に全速力で上ってきた愛理が投げたものだった。
そして、ハイグレ光線を放った播磨と絃子先生の間に割り込む。
「きゃああ!!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「お嬢!」
「なっ、沢近君?」
愛理が播磨の盾になってハイグレ人間化していた。

「お嬢!お前の犠牲は無駄にはしないぜ!」
愛理の登場でしばし呆然としていた絃子先生にハイグレ銃を浴びせる播磨。
「し、しまっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
絃子先生がハイグレ姿になり、ポーズを取る。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「やった、勝ったぜ絃子。」

2−C  1名   1−D&教員チーム  全滅



PM11:30 屋上
全て終わった矢神学院。
「お嬢、おめえ、なんで俺をかばったりしたんだ?」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「答えられるわけ無いか。」
播磨は夜空に浮かんでいる月を見上げる。
「満月には程遠いが、きれいな月だな。」
播磨はしばらく月を見続けているが、ボソッと言う。

「ありがとな、お嬢。今度は俺が助けられちまった。」
そして、ハイグレ人間の愛理に向き直る。
「お嬢・・・・。」
播磨の唇が愛理に触れる。愛理は「ハイグレ!」と叫ぶことが出来ない。
そのまま時は過ぎていった・・・・。

劇終


















「・・・・・・って脚本なんだけど、どう?」
「わー、すごく面白いよ、晶ちゃん!」
「ありがとう、天満。これで劇の撮影を進めたいんだけどどうかしら?」
「あのさあ、高野。ちょっと凝りすぎじゃないか?劇の台本覚えるのが少し大変だぞ?」
「そこらへんは後で調整するわ。まだ企画段階のものだし。」
ここはメルカドの店内。晶が新しく企画した劇の台本について友達と話し合っていた。
「納得いかないわ!何であたしとヒゲがこんなエンドになるのよ!」
愛理が机を叩いて抗議する。
「駄目?嬉しがると思ったんだけど。」
「誰が嬉しがるのよ!誰が!さっさと書き直しなさい!」
「じゃあ、最後は八雲と播磨君がブチュッってエンドで。」
「ヒゲから離れなさい!普通に終わらせればいいのよ!」
「仕方ないわね。後で直しておくわ。」
愛理がさっきからツッコミっぱなしだった。

バイト中の八雲が商品を持ってやってくる。
「ねえ、八雲。あなたはどう思う?これ送ったら大賞間違い無しよ。」
「先輩、このハイグレ銃というのはどうするんですか?無いと思いますよ?」
「甘いわね、八雲。今の時代CGでなんとでもなるのよ。」
「は、はあ。」
「じゃあ、八雲もサラ達にちゃんと伝えといてね。撮影は間近よ。」

「おい、高野。マジでやるつもりなのか?っていうか許可下りるのか?」
「大丈夫。理事長と刑部先生には話を通してあるわ。」
「晶ちゃん、どうしていつもそんなに手際がいいの?」
「フッ、それはね、私が高野晶だからよ。」
「説明になってないわよ。」
「あの、先輩。テストが迫っているのにみんな協力してくれるんでしょうか?」
晶はフッと口元に笑みを浮かべる。

「安心しなさい。我に・・・・・・秘策アリ!」

MKD
2008年08月12日(火) 18時32分12秒 公開
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■作者からのメッセージ
予告どおりのスクールランブルのハイグレ小説です。私が書いた中で一番の長編になりました。1−D&教員チームのパワーバランスがおかしい気がしますが、そこはスルーで。

話を作る時ってやはり起承転結が大事ですが、私が大切にしているのはその後のエピローグです。その後どうなったのかな、と本を読んでて気になることがあるからです。

それでは、また投稿する日までお待ちください。