ハヤテのごとく! 綾崎ハーマイオニーとハイグレの秘宝

ここは白皇学院屋外プール。
今日は一年に一度の夏休みのプール解放の日。

「ん〜、気持良いわね〜。」
生徒会長・桂ヒナギクが大きく伸びをする。
「ヒナちゃん〜、遊ぼうよ〜。」
ビーチボールを手にしながら委員長・瀬川泉が言う。
「今行くわ。」
その傍らに親友の花菱美希と朝風理沙もやってくる。
「ヒナ。ぺったんこなのにそんな派手なビキニをよく着ていられるな。」
「ぺったんこじゃない!」
「あ、ハヤ太君とナギ君だ。」
ヒナギクと美希から注意を逸らし、二人に手を振る理沙。

「おい、ハヤテ!何で私がプール解放などというつまらぬ行事に参加せねばならんのだ!」
「まあまあ、お嬢様。これもクラスメートの皆さんと親睦を深めるためですし。」
「だからってなぜスポーツなどしないといけないんだ!」
「お嬢様は放っておくと一日中家の中でオタクライフを満喫してしまいますからね。」
「ふん!」
三千院ナギと綾崎ハヤテがやってくる。
「まったく、ナギったら。少しは運動しないと健康体の維持はできないわよ?」
「ヒナギクとは違うからそんなことしなくてもいい!」
「喧嘩はそのくらいにしてナギちゃんも遊ぼうよ。」
泉がナギをプールに引きずり込む。

「ハヤ太君は泳がないのか?」
理沙が執事服を着たままのハヤテを見て言う。
「お嬢様が溺れたらすぐに助けないと行けませんから。外から見ていたほうがいいんですよ。」
「なるほど。それを口実に外から私達の水着姿を堪能したいというわけか。」
美希が言う。
「何を言ってるんですか!」
「何を言ってるはおこちらの台詞だ、ハヤテ。お前の分の水着もきちんと持ってきてあるぞ?」
ナギが言う。
「お嬢様?」
「お前と一緒に遊ぼうと思って昨日通販で買っておいたんだ。」
「お嬢様、しかし・・・。」
「しかしではない!」
ナギが手を叩く。すぐさまSP達が集まってくる。
「お前達、ハヤテの着替えを手伝ってやれ。嫌がっても無理矢理着せるんだ!」
「かしこまりました、ナギお嬢様。」
「あの、お嬢様。嫌がってもって・・・・うわっ!」
口を挟もうとしたハヤテはSP達に物陰へ連行されていった。

数分して・・・・
「お嬢様!」
「おお、着替え終わったか、ハヤテ。」
ナギが着替え終わったハヤテの方に振り向く。
「ぷっ・・・・。いや、良く似合っているぞ、ハヤテ。」
ナギが笑いをこらえながら言う。
「ひどいですよ、お嬢様!こ、こんな、女物のスクール水着なんて・・・・!」
ハヤテは女性用の少しハイレグぎみのスクール水着を着て後ろにはリボンをしていた。
「ハヤテ、そのリボンもぴったりだぞ。」
「似合ってませんから!」
ハヤテが必死に抗議する。
「うわあ、ハヤ太君、そういう趣味があったんだ・・・・。」
「ハヤ太君、何気に色っぽいぞ。」
「これは我々動画研究会のお宝映像になるな。」
生徒会三人娘が各々感想を述べる。
「フォローになってません!ヒナギクさんからも何とか言ってください!」
「まあ、いいんじゃない。水着なんて泳げればいいんだし・・・・。」
ヒナギクが見るのも恥ずかしいとばかりに顔を背ける。
「引いてませんか?引いてますよね、ヒナギクさん!?」
ハヤテが泣きそうな顔をする。

「ああ、すまんすまん。ちゃんとしたのを用意してあるから。」
ナギがちょっとばかり罪悪感を感じて言う。
「冗談!?はあ、そうですよね。」
ハヤテがほっとした表情で言う。
「ところで、着替える前に一つ頼みがあるんだが。」
「何でしょう?」
「ちょっとハイグレ人間の真似をしてみてくれないか?」
「はい!?」
「その恥ずかしい格好から抜け出したければ、だ。」
「ああ、もう分かりましたよ。」
ハヤテがやけくそ気味に言う。
「じゃあ、行きますよ。って、何でこんなに見物人が!」
ナギやヒナギクたちだけでなく、他にプール解放に来ていた生徒達まで集まってくる。
「もう僕お婿にいけません・・・。」
「だったらずっと私の執事をしていればいい。」
「もう、もう・・・・。」
ハヤテが落ち込んでぶつぶつ言う。

「行きますよ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
ハヤテが叫び、ハイグレポーズを取る。観衆からよくやったとどよめく。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ああ、もういいぞ、ハヤテ。私は満足だ。」
「はあ、はあ。そうですか、お嬢様。じゃあすぐに着替えて・・・・・うわああああああああっ!!」
いきなりハヤテの体がまばゆいまでに光り輝く。
「ハヤテ!?」
「うわあああっ!!」
ハヤテを覆っていた光が収まる。

「おい、大丈夫か、ハヤテ!?」
ナギがハヤテに駆け寄る。
「ええ、大丈夫ですよ、お嬢様!」
ハヤテがいきなり手から気功弾のようなものを放つ。
「ナギ!」
ヒナギクがナギに飛びついて倒れこむ。
「危ないじゃないか、ハヤテ!」
「危ない?やだなあ、お嬢様。一緒にハイグレ人間になって頂こうと思っただけなのに。」
「ハヤテ!お前どうしたんだ!頭打ったのか?」
「違いますよ、お嬢様。僕はハイグレ魔王様の僕になっただけですよ。」
「何を言ってるんだ、お前は?」

言い争うハヤテとナギに向かって走ってくる少女が二人。
「ハヤテ様!」
「ナギ!」
伊澄と咲夜だった。
「おお、咲と伊澄か。」
「ナギ、まさか、あの水着をハヤテ様に着せたの?」
「そうだ。」
「あかんな。手遅れやったか。」
「手遅れ?」
「あれは着た人をハイグレ人間に変えてしまう魔王の水着。ハヤテ様は今ハイグレ人間なのよ。そして、仲間を求めて周りにいる人々を同じようにハイグレ人間にしていくの。」

「御説明ありがとうございます、お二人とも。お礼に咲夜さんと伊澄さんを最初にハイグレ人間にしてさしあげましょう。」
ハヤテが右手を前に翳し、ハイグレ光線を放つ。
ガキンッ
ハヤテのハイグレ光線が弾かれる。
「ヒナギク!?」
ヒナギクが木刀正宗を持って正眼に構えている。
「泉、美希、理沙!すぐにここにいる全員の避難誘導をして!私はここで時間を稼ぐわ。」
「ハヤ太君は強いぞ?お前の手に負えるのか?」
「大丈夫よ、美希。」
「分かった。」

「ハヤテ君!あなたの目を覚まさせるために全力で行かせてもらうわよ!」
「望むところです!」
「はあっ!」
ヒナギクの持つ木刀正宗は使い手の潜在能力を最大限にまで引き出す力を持っている。
「ぐはっ!」
ハヤテが突きを喰らって倒れる。
「いつものハヤテ君なら避けてるのに。寄生しているだけじゃ彼の本気を引き出せないのね?」
よろめいたハヤテを相手に次々と攻撃をヒットさせていく。
「うふふ!ハヤテ君に取り付いている怨霊、早く出てきなさい!」
ヒナギクが激しく動き回り、普段より動きの鈍っているハヤテに突きを入れる。
「ぐはっ!」
ハヤテはプールのフェンスまで吹き飛ばされた。
「さあ、覚悟しなさい!」
止めを刺そうと構えるヒナギク。
「んっ?」
水着の紐が解ける音。
「きゃっ!」
危ない所で胸を隠すヒナギク。今まで水着姿で動き回っていたせいで紐が緩んでいたのだ。
「隙あり!」
ハヤテがすかさず動く。
「しまった!」
ヒナギクは両手で胸を隠しているので応戦できない。
そのままハヤテが右手から放ったハイグレ光線が命中する。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
ヒナギクは白いハイレグを着たハイグレ人間になってしまった。

一方生徒会室では副会長・霞愛歌と書記・春風千桜が二人で仕事をしていた。
「ねえ、千桜さんはプール解放には行かないの?」
「私はああいう騒がしいのは苦手ですから。」
「メイドさんのバイトはやってるのに?」
「それは関係ないです!愛歌さんこそどうなんですか?体が弱くても水着になるくらい出来るはずです。」
「暑いところにいるだけでも体によくないのよね。」
エレベーターの到着する音がする。
「誰でしょう?」
エレベーターのドアが開く。
「大変だよ、二人とも!」
泉だった。
「ハヤ太君がハイグレ人間になっちゃって、ヒナギクが防いでいて!」
「このままだと学校中がハイグレ化してしまうんだ!」
美希と理沙が大声で言う。
「三人とも落ち着いて。全く話が飲み込めません。」
千桜が困惑して言う。

「あはは、皆さんおそろいのようですね。」
生徒会室のバルコニーの方から声がする。
「ハヤ太君!?どうやってここに?」
エレベーターは泉たちが使った後には動いていない。
「ハイグレ人間たる僕には時計塔をジャンプしながら上るくらい簡単なんですよ。」
ハヤテが平然と言ってのける。
「ヒナは?ヒナはどうしたんだ、ハヤ太君。」
「もうハイグレ人間になって頂きました。」
「私達も襲う気か?」
「ええ、それが僕の使命ですから。あ、そうそう、ナギお嬢様がどちらにお逃げになったか御存知ありませんか?」
「知らない。知っていても教えないぞ。」
「なら自分で探すしかないですね。」

「よく分からないけど、白皇学院のピンチのようね。千桜さん、すぐに校内放送を。」
「分かりました。」
千桜が放送マイクの方へ走っていく。
「させませんよ!」
ハヤテがハイグレ光線を放つ。
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
千桜に光線が命中し、黄緑色のハイレグ姿となり、ポーズを取る。
「千桜さん!」
「よそ見をしてる暇はありませんよ!」
「きゃっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
愛歌が被弾する。紫のハイレグを纏い、ポーズを取り続ける。
「さあ、次はあなた方三人ですね。」
「逃げろ!」
美希の掛け声で二人もエレベーターの方へ走る。
「何で動かないの!」
泉が何度もボタンを押すが扉が開かない。
「無理ですよ。ここのブレーカーを落としてありますから。」
「ええっ!そんな!」
「行きますよ!」
ハヤテが両手からハイグレ光線を高速で放つ。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「うわっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
泉は水色、理沙は赤のハイレグ水着を着て仲良くポーズを取っている。
「泉!理沙!くっ!」
「チェックメイトですよ、花菱さん。」
「うわあっ!!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
命中したハイグレ光線が収まると、美希はピンクのハイレグ姿になっていた。
「これで生徒会は制圧完了。」
ハヤテは不敵の笑みを浮かべると生徒会のメンバーを残し、その場を去っていった。

「おい、咲、伊澄。これは一体どういうことなんだ?」
ナギが一緒に逃げている二人に質問する。
「ナギ、あのハイレグ水着、通販で買ったんか?」
「そうだ。」
「あの水着は呪われた水着。鷺ノ宮家で封印するために探っていたの。」
「呪われた水着?」
「とある魔王が地球に残したアイテムの一つなの。地球征服のための。」
「とある魔王ってハイグレ魔王か?というか実在するのか?」
「ええ。今から十年以上前に来襲した痕跡があるわ。」
「ふーん。で、ハヤテを元に戻すには?」
「それが分かってたら苦労はしてへんよ。全く、ナギがお遊びで借金執事に着せたばっかりに・・・。」
「うるさいうるさいうるさい!そんな事知るか!」

「喧嘩はいけませんよ、お嬢様。」
「ハヤテ!?」
彼女達の前に立ちふさがっているハヤテ。
「お前、いつの間に!」
「さあ、お嬢様。僕と一緒にハイグレ人間になりましょう。」
ハヤテが手からハイグレ光線を出して追ってくる。
「咲夜!ナギを連れて隠れていて!」
「おい、お前一人で何とかなるとでも思っているのか?」
「私は大丈夫よ、ナギ。」
伊澄はふふっと笑う。
「分かった。気ぃつけてな。」
伊澄の強さを知っている咲夜はナギの手を引いて逃げていった。

「さあ、ハヤテ様を操っているその邪な力を除霊します!」
「除霊?僕は幽霊なんかじゃありませんよ?」
「その水着に秘められた力の前ではハヤテ様といえど無力だったようですね。」
伊澄が手元からお札を取り出す。
「参ります、ハヤテ様!」
気を込めてお札を何枚も同時展開させる。
「除霊!」
掛け声と共にお札が共鳴して光る。
「それだけですか?」
「えっ?」
ハヤテは平然と立っている。
「その程度ではハイグレ魔王の僕である僕を倒すことはできません。」
「ならば、八葉六式・撃破滅却!」
伊澄は魔王の水着を直接破壊しようとハヤテの懐に飛び込んでくる。
バシッ
「くっ!」
伊澄の手をしっかり捕まえるハヤテ。
「これでもう逃げられませんよ。さあ、伊澄さんも一緒にハイグレになりましょう。」
ハヤテがハイグレ光線を放つ。伊澄は手を掴まれているので避けられない。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
青のハイグレを着た伊澄はポーズを必死に繰り返していた。

「はあ、はあ。もう走れないぞ、咲。」
体力のないナギが大きく肩で息をしながら言う。
「せやかて執事達とは連絡が取れんし、頑張りや。」
「ハヤテの奴、見境なく生徒を襲っているようだな。」
ハイグレ姿にされている生徒達を見て言う。
「巻田も国枝もハヤテにやられたんと違うかな。参ったわ。」
「へくちっ。」
「ああ、そうか。ナギ、まだ水着やったね。」
咲夜が自分の上着をナギに着せてやる。
「着替えとる余裕ないし、これで我慢しや。」
「ありがとう、咲。」
「ほな、行くで。」
「ああ。」
二人は歩いていく。
「きゃっ!」
「咲!?」
咲夜にハイグレ光線が命中していた。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
咲夜はオレンジのハイグレ人間化した。
「ハヤテ!」
ハヤテが姿を現す。
「やっぱりお前か。咲夜に何てことをするんだ!」
「咲夜さんだけじゃありませんよ。伊澄さんやヒナギクさんにもハイグレ人間の素晴らしさを理解していただいています。」
「何!?」
「お嬢様、覚悟!」

ガキンッ
「誰ですか!」
ハヤテが後ろに飛び退がる。ナギとハヤテの間にもうもうと土煙が立っていた。
「私の声を忘れたとは言わせないわよ、綾崎君。」
「桂先生?」
「その通り!」
衝撃が収まるとその場には桂雪路が立っていた。
「私も忘れてもらっては困るぞ!」
「その声は理事長?」
理事長がハヤテの後ろにある木の上から降りてくる。
「フッ、学校の平和を乱す者はこの葛葉キリカが許さん!」
理事長が凄む。
「おお、理事長が珍しくまともな事を言っている!」
ナギの失礼な感想。
「ナギちゃんは逃げなさい。学園の外ならまだ平気なはずよ。」
「先生も気を付けてください。」
「勿論。」
ナギは校門に向かって走っていく。

「あなた方とはいずれ決着をつけないといけないと思っていました。行きますよ!」
ハヤテがハイグレ光線を放ちながら突進する。
「何の!」
理事長がトンファーでハヤテの光線をぶった切りながらカウンターを喰らわせる。
「ぐわっ!」
「綾崎君、まだまだ!」
雪路がライトニングプラズマ並みの高速拳を叩き込む。
「BACOOOOOOOOOOONN!!」
ハヤテは思いっきり吹き飛ばされ、したたかに体を打ち付ける。
「さあ、綾崎。観念してもらうぞ。」
理事長がトンファーをハヤテに突きつける。
「桂先生、止めを。」
「理事長、これは!」
「なっ!?」
雪路に注意を促されて理事長は気付く。
「変わり身の術?」
ハヤテを取り押さえていた場所にあったのは一本の棒切れだった。
「うわああっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
理事長の執事・詩音の悲鳴。
「しまった!詩音!」
理事長が詩音の隠れている場所に走っていく。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
詩音が青のハイレグ水着を着てポーズを取っている。
呆然とする理事長目掛けてハイグレ光線が飛んでくる。
「くっ!」
理事長は寸前のところで避ける。
「何!?」
すかさず第二波が飛んでくる。避けきれず当たってしまう。
「うわあっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
理事長は赤のハイレグ人間となってポーズを取る。

「理事長!」
追いついた雪路があたりを見渡す。
「どこに隠れてるの、綾崎君!」
雪路に向かってハイグレ光線が飛んでくる。
「こんなの当たってたまるかあ!」
気合で次々飛んでくるハイグレ光線を避ける。
「そこだ!」
雪路がハイグレ光線が飛んでくる方向に近くに落ちていた石を投げる。
ヒットした音が聞こえる。
「やりますね、先生。ハイグレ魔王の僕である僕がここまで押されるとは思いませんでしたよ。」
「当然よ。これ以上やりあってもあなたの攻撃には当たらないわよ。」
「そうですかね。」
ハヤテがそんなことは無いという笑いをする。
「先生、1万円あげますから十秒間じっとしていて下さい。」
「えっ、本当?諭吉くれるの?」
雪路がお金に反応する。
「隙あり!ハイグレ光線!」
「しまった!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
雪路は水色のハイレグ人間となってポーズを取り続ける。

校門までやって来たナギ。
「そうだ、マリアに電話しよう。」
ナギは携帯電話を取り出し、マリアの番号をプッシュする。
「もしもし、ナギ?」
「おお、マリア。」
「ナギ、あなた無事なの?」
「勿論だ。そんなに心配していたのか?」
「当然です。ニュースでも大騒ぎですよ。白皇の生徒達が襲われているって。」
「そうか。」
「だから、あなたもハヤテ君と一緒に避難してください。」
「それが、その、ハヤテは・・・・。」
「ハヤテ君がやられたんですか?」
「やられたというか、その・・・。」
ナギはマリアへの説明に窮する。
「じゃあ、一人なんですね?」
「うん。」
「分かりました。クラウスさんと一緒にそちらに向かいます。それまでにできるだけ学校から離れてくださいね。」
「分かった。そうする。何かあったら連絡するから。」
ナギはそう言って電話を切る。

「三千院さん!」
学年主任・牧村志織が走ってくる。
「牧村先生?」
「無事なのは貴方だけのようね。」
「はい。」
「さあ、一緒に逃げましょう。でも、助けが来ないことには・・・。」
「マリアとクラウスが来ます。」
「マリポンが?うん、それなら安心ね。」

道路を走る二人。
「逃がしませんよ、お嬢様!」
振り返るとハヤテが追ってくるのが見える。
「もう追ってきたか!」
「はあ!」
ハヤテがハイグレ光線を放つ。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
隣にいた志織に当たり、白のハイレグ姿でポーズを取っている。
「先生!くっ!」
ナギはハヤテに背を向けて逃げる。しかし、体力の無いナギはすぐに差を縮められてしまう。
「もう、駄目だ。元はといえば私のせいなんだ。だから、だから・・・・」

「ナギちゃん!」
声がするのと一緒に誰かに抱えられるナギ。
「うおっ!」
わけも分からないまま、猛スピードになる。
ハヤテを振り切ってぐんぐん前に進んでいく。
「危なかったね、ナギちゃん。」
ナギが声の主を見ると西沢歩だった。
「ハムスター?」
歩が自転車のブレーキを引く。
「あ、ごめん。君を抱えたままだとうまく走れないんだよね。ていうか、何なの、その格好?」
水着の上にジャケットを羽織っているナギを見て歩が言う。
「うるさいうるさいうるさい!」
「全く、命の恩人に向かって何て言い草なのかな?」
「ふん、大げさな奴め。ハイグレ人間にされるだけで命はとられないぞ。」
「ま、いいや。とにかく行くよ。」
「どこへだ?」
「ナギちゃんの家まで。こんなお嬢様一人じゃ危なっかしくて置いとけないよ。」
「そうか、ありがとう。」
「それくらいいつも素直だったらいいんだけどね。」

「おい、ハムスター。」
ナギが自転車をこいでいる歩の制服に手を入れる。
「な、何してるのかな、何してるのかな、ナギちゃん?」
危うくハンドル操作を誤りそうになりながら歩が言う。
「いや、お前がハイグレ人間じゃないか確かめようと思って。」
「そんなわけないでしょ!私だって白皇の生徒達に襲われて逃げてたところなんだから。」
「白皇の生徒達が?」
「もうこの辺はどんどんハイグレ化してるよ。ナギちゃんも私が助けなかったらやられてたよ。」
「なあ、ハムスター。ちょっと話を聞いてくれるか?」
ナギは魔王の水着について話す。
「うーん、信じられないんだけど。」
「私だって信じられないんだ。だが、現にハヤテがあの水着のせいでおかしくなってしまったんだ。」
「とりあえず、ハヤテ君並みの力を持っている人がいないと解決できないよね。」
「うん、まあ、そうだな。」

「おーい、ナギ!」
「西沢さん!」
ナギの幼馴染・橘ワタルとメイドの貴嶋サキだった。
「おお、ワタル、サキさん!」
「無事だったのか?」
「お前だって学校にいたのによく逃げられたな。」
「へんっ、俺をなめるなよ。」
「若は頼もしいです。」
サキが目を輝かせてワタルを見つめる。
「こんな所でのんびり話してる場合じゃねえ。早くしないと追っ手が来るぞ。」
「もう来ていたりしますよ?」
ハヤテだった。
「なっ、ハヤテ?もう追ってきたのか!なぜ私の居場所が分かったのだ!」
「西沢さんの自転車に発信機を付けさせていただきました。ワタル君とサキさんもいらっしゃるとは思いませんでしたけどね。」

「お前ら、逃げろ!」
ワタルが女性三人を自分の背中に隠す。
「駄目ですよ、若!いくら若でもハヤテさんに敵うはずが!」
「男にはそれでも戦わなくちゃならない時があるんだ!早くしろ!」
「ありがとうございます、若。」
サキがナギと歩を連れて逃げていく。
「借金執事!お前の相手は俺だ!あいつらを倒したければまず俺を倒せ!」
「あはは、参りましたねえ。でも、ワタル君の相手は僕じゃありませんよ?」
ハヤテの背後から二人出てくる。
「伊澄!咲夜!」
伊澄と咲夜が手からハイグレ光線を放ってくる。その隙にハヤテはナギ達の追って去っていく。
「待て、ハヤテ!」
「よそ見してる暇は無いで。行くで、ワタル!」
咲夜が右から、伊澄が左からワタルに迫ってくる。
「くそっ!」
ワタルは避けるのに精一杯で反撃する余裕が無い。
「後ろを取ったわよ、ワタル君。」
「伊澄!」
伊澄に抱きつかれ、身動きできなくなるワタル。
「伊澄、あの、その、む、胸が・・・・。」
伊澄はそれにお構いなくそのままの状態を続ける。
「咲夜、今のうちに!」
「おう!」
咲夜がワタルにハイグレ光線を放つ。
「うわあああああっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
ワタルは青のハイレグ水着を着たハイグレ人間となってしまった。

「きゃあっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハムスター!」
「西沢さん!」
一緒に逃げていた歩がオレンジのハイレグ水着を着たハイグレ人間になった。
「次こそは当てますよ!」
ハイグレ光線を放つハヤテ。
「ナギお嬢様!」
ナギをかばったサキにハイグレ光線が当たる。
「きゃあ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
サキは緑のハイグレ人間と化した。
「またナギお嬢様一人になってしまいましたね。」
「ハヤテ・・・。」
「さあ、ハイグレになって下さい!」
ハヤテがナギにハイグレ光線を放つ。

「させるかっ!」
その声と共にハイグレ光線がかき消される。
ナギは誰かに抱えられて十メートルほど後ろへ行く。
「マリア!クラウス!」
ナギを助けたのはマリア、ハイグレ光線をかき消したのはクラウスだった。
「マリアさんとクラウスさんですか。」
ハヤテが戦闘の構えを取る。
「その水着、まさか・・・・。」
「知っているのか、マリア。」
「はい、噂程度ですが。ようやく事情が飲み込めました。」
「どうすればいいんだ、マリア?」
「あの水着に入り込んでいるハイグレ魔王の魂を消滅させないといけません。何らかのショックを与えないと駄目ですね。」
「クラウス!ハヤテを叩きのめすんだ!」
「畏まりました、お嬢様。」

ハヤテとクラウスガ対峙する。
「悲しいぞ、少年。そんな情けない姿をした男が我が三千院家の執事だとは。」
「クラウスさん、僕はお嬢様の執事である前にハイグレ魔王様の忠実なる部下なんです。」
「聞く耳持たん。行くぞ!クラウスキック!」
クラウスが自慢の蹴りを繰り出す。
「当たりませんよ!」
ハヤテはひらりひらりと避ける。
「くっ!まだまだ!」
クラウスは必死で攻撃を繰り出すが、全く当たらない。
「息が上がっていますよ、クラウスさん。少しはお年を考えられた方がいいんじゃありませんか?」
「ふん、何を言う。ワシはまだまだ現役だ!」
クラウスが怒りの一撃を放つ。
「ぐはっ!」
ハヤテにストレートに決まる。
「ふんっ、まだまだ青い。執事長をなめてもらってこは困るな。」
「クラウスさん!後ろ!」
「えっ?」
いつの間にかクラウスの後ろに回りこんだハヤテ。彼の手がクラウスの首筋に突きつけられる。
「この距離では避けられませんね、クラウスさん。覚悟!」
「ぐわあああっ!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
クラウスは茶色のハイグレ人間と化した。

「ナギ!」
マリアがナギの手を引いて逃げようとする。
「逃げようと持っても無駄ですよ、マリアさん。」
「えっ?ヒナギクさん?」
ヒナギクをはじめ生徒会の面々が二人の行く手を塞いでいた。
反対側からはハヤテとワタル達、先ほどハイグレ人間にされた歩とサキがやってくる。
「万事休す、ですかね。」
「そんな・・・・。」
ハヤテが前に出てくる。
「ハイグレ魔王様万歳!」
ハヤテがハイグレ光線を二人に放つ。
「うわあああああっ!」
「きゃあああああっ!」
二人の体が光線の光で点滅する。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
ナギは黄色、マリアは黒のハイグレ人間になった。
全員で一緒にハイグレポーズを取る。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」


その一同を眺める人影が一つ。
「嘆かわしい。嘆かわしすぎるぞ。」
リィン・レジオスターだった。
「どこを見渡してもハイグレ人間ばかり。メイドさんが一人もいないじゃないか!」
神父はぶつぶつ文句を言う。
「私はメイドさんのいない世界は嫌だ!神の使いたる私にはそれしかありえないんだ!」
神父はそう思い立つとハヤテに対して雷を落とす。
「さあ、世界よ!元に戻れ!」
電撃で痺れるハヤテ。
「ぐわあああああっ!!」
ハヤテの水着から黒い瘴気が抜けていく。
「ふっ、これでメイドさんのいる世界に戻る。」
リィンは満足げに三千院屋敷に帰っていった。


すべて終わって三千院家・・・・
「本当にすみません、皆さん。僕のせいで・・・・。」
正気に戻ったハヤテがひたすら恐縮している。
「気にするな、ハヤテ。元はといえば私の悪ふざけのせいだからな。」
「そうよ。ナギがあんな事をしなかったら騒ぎが起きずに済んだじゃない。」
ヒナギクが抗議の声を上げる。
「まあまあ。終わりがよければいいじゃないですか。しかし、何で魔王の水着の力がなくなったんでしょうか?」
リィンの事を知らないマリアが尋ねる。
「まあ、細かいことはいいじゃないか。」
「あの、伊澄さん。あの魔王の水着は・・・・。」
「大丈夫です、ちゃんと処分しました。」
「そうですか。」
「ただ、まだ終わったわけやない。」
咲夜が深刻そうに言う。
「というと?」
「伊澄さんの話では、ハイグレ魔王の道具はまだ仰山あるんや。」
「そうなんですか?」
「ハイグレ魔王の呪いのアイテムは全て七つあります。」
伊澄が説明する。
「何かヴォル○モートの分○箱みたいだな・・・。」
ワタルがため息をつく。
「じゃあ、あと六つ破壊しないといけないんですか?」
「いいえ、五つです。今分かっているのは、一つは今回の呪われた水着、もう一つは別の場所で使われた魔王の魔術書です。」
「じゃあ、またハイグレ人間の呪いがやってくるって事なのかな?」
歩が質問する。
「はい、そうなります。ただし、その運命は別の場所で別の者達が引き受けることになるでしょう。私達にとっての危機は去りました。」

「ふう、まあ、とにかく、色々とご苦労だったな、ハヤテ。」
「あの、僕がお嬢様に刃を向けたこと、怒ってませんか?」
「いや、全く。主人である私の責任だからな。」
「しかし・・・・。」
「そんなに気になるんだったら、一つだけ罰を受けてくれたら許してやるぞ。」
「本当ですか、お嬢様。」
罪悪感にさいなまれるハヤテがその話に飛びつく。
「これを着てくれ。」
ナギが一着の服を持ってくる。
「あの、何ですか、これは?」
「セパレートの水着じゃないか。」
「分かってますよ、そんな事!」
「いや、ハイレグの次はこれかなあって、話の流れ的に。」
「何ですか、話の流れって!そんな言葉全く出てませんよ!」
「そうですよ、ナギ。」
マリアがやってきて言う。
「ハヤテ君にはこっちの方が似合うに決まってるじゃないですか。」
マリアがフリルのついた水着を取り出して言う。
「あの、マリアさん?」
「さあ、ハヤテ君。私をハイグレ人間にした罪滅ぼしにこれを着てください。」
「嫌ですよ!」
ハヤテはナギとマリアにさんざんいじめられて逃げ出す。

「あの、クラウスさん。あれは・・・・。」
呆れながら眺めているその他一同。
「いつも通りですな。」
「はあ、いつも通りなんですか・・・・。」

こうしていつも通りの日常が過ぎていく。
しかし、ハイグレの受難はまだ終わっていない。

MKD
2008年08月21日(木) 20時02分01秒 公開
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■作者からのメッセージ
『ハヤテのごとく!』のハイグレ小説です。
この話は最近完結した某シリーズにかなり影響されていたりします。私はポッタリアンなので。

そのうち他の秘宝の話も書きたいと思います。アイディアがいくつかありますので。ではまた投稿する時まで。