みなみけ 〜たとえハイグレ人間になろうともDA〜

『この物語は、南家三姉妹のハイグレ化を淡々と描くものです。過度な期待はしないで下さい。あと、部屋は明るくしてディスプレイから1mは離れて見やがってください。』



私の名前は南千秋。南家の三女だ。この世で一番素晴らしい姉・春香姉さま、逆に一番のバカ野郎の姉・夏奈と一緒に暮らしている。
ちなみに、今日は私の家で友達の内田、吉野、マコト、シュウイチと勉強会だ。皆で宿題を教えあっている。

「ねえねえ、ここ教えて〜。」
「おい、内田。ここはさっき教えたばかりじゃないか。」
「あれ、そうだっけ?」
全く、こいつのバカ野郎ぶりは夏奈に匹敵する。
「南、オレはここを教えてくれ!」
「マコトより内田の方が先だったろ。僕が教えるよ。」
シュウイチがマコトに分からないところを教えている。
「そういえば、今日はマコちゃんいないね。」
吉野がぽつんと呟く。何故か知らんがその瞬間マコトの体が一瞬揺れた。なぜだ?

「ただいま〜。あら、皆でお勉強?」
リビングに入ってくるこの声は!
「お帰りなさい、春香姉さま。」
「ちょっと待っててね。何かお菓子でも出すから。」
そう言って春香姉さまはキッチンへ行く。
さすが春香姉さま。客への気配りを忘れない。

「これ、何だろう?」
内田が春香姉さまの通学鞄の隣にある袋に手を伸ばす。
「こら、内田。春香姉さまの許しも無いのに勝手に開けるな。」
「わあ、きれいなペンダントだよ〜。」
吉野が袋についているテープを外して中を見ながら言う。
「吉野、お前まで・・・。」

「春香さん、これどうしたの?」
お菓子と紅茶を持ってやってきた春香姉さまに内田が聞く。
「ああ、それ?帰りに商店街で蚤の市がやってて、安いのを見つけたの。」
「オレ、春香さんがこのペンダントをしている所を見てみたいです!」
マコトにしては気の利いた台詞を言うじゃないか。
綺麗な装飾品はそれをつけるに相応しい人が身につけてこそ光り輝くものだ。
「春香姉さま、付けてみてください。」
「もう。みんなの前で着けるなんてちょっと恥ずかしいわね。」
そう言いながらも春香姉さまはネックレスを付けてくれる。
「どう?似合うかしら?」
「とっても良く似合いますよ、春香さん。」
「シュウイチの言うとおりです。すごく綺麗です。」
「ふふ、ありがとう。」

「あれ?」
いきなり春香姉さまのペンダントが光りだす。
「何、これ?きゃああああああ!!」
「春香姉さま!!」
ペンダントから出た光が春香姉さまを包み込んでいく。
「春香さん!」
マコトとシュウイチが近づくが、光に跳ね返されて吹き飛ばされる。
「うわ、何だこれ!」
「駄目だ、マコト。近づくのは危険だ。」
そうこう言っているうちに光が収まる。
「大丈夫ですか、春香姉さま?」
私は春香姉さまに話しかける。しかし、私は姉さまの姿を見て固まる。
春香姉さまは黄色のハイレグ水着を着ていた。

「ふふ、ようやく人間の体を手に入れたわ。」
春香姉さまの声だが、絶対に春香姉さまじゃない。
「誰だ、お前は!春香姉さまじゃないな!」
「私はハイグレ魔王。この地球をハイグレ人間化するためにやってきたの。」
「ハイグレ魔王?ハイグレ人間?何のことだ!」
「すぐに分かるわ。ふふ、このペンダントが役に立つと思わなかったわね。」
「そのペンダントは春香姉さまの!」
「私のものよ。地球侵略を成功させるために作った魔王のペンダント。人間に憑依することができるのよね。」
「春香姉さまを返せ!」
「嫌よ、せっかくの体なんですもの。もう少し使わせてもらうわ。」

春香姉さま、いや、ハイグレ魔王が私たちに近づいてくる。
「うふふ。さあ、あなたたちもハイグレになりなさい!」
ハイグレ魔王が銃を取り出して引き金を引く。
「内田!」
内田に銃から出た光線が命中してしまう。
「きゃあ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
内田がピンクのハイレグを着てやたらコマネチのポーズを取っている。何をしているんだ?
「ふふ、これがハイグレ銃の力。」
「内田を元に戻せ!」
「嫌よ。彼女は既に私の僕。さあ、次はあなた達の番よ。」
ハイグレ魔王がハイグレ銃というものを吉野に向ける。
「ハイグレ人間におなりなさい!」
ハイグレ魔王がハイグレ銃を放つ。
「きゃあ!!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「吉野!」
吉野が黄緑色のハイレグを着たハイグレ人間になってしまう。

「シュウイチ!オレ達でハイグレ魔王を止めるんだ!」
「うん!」
マコトとシュウイチが左右から春香姉さまの腕を掴んで倒す。
「くっ!放しなさい!」
「春香さんを元に戻せ!」
マコトが怒鳴る。
「内田!吉野!この二人を何とかしなさい!」
ハイグレ魔王が内田と吉野に命令する。
「はい、ハイグレ魔王様。」
「仰せのままに。」
内田と吉野がマコトとシュウイチを取り押さえる。
「マコト!シュウイチ!」
「南!逃げろ!」
「僕達は助からない!助けを呼んで来てくれ!」
「ごめん、二人とも。」
私は部屋を飛び出して全速力で走る。
マコト、シュウイチ、お前達の犠牲は無駄にはしない。春香姉さま、内田、吉野、必ず元に戻してやるからな!

私はエレベーターを降りてマンションを出る。
「きゃあ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「うわっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
同じマンションの人たちの悲鳴が聞こえてくる。早く皆を助けないと。
「よう、千秋。」
私は後ろから声をかけられる。
「誰だ!」
「誰って・・・・オレだよ、冬馬だよ。」
「何だ、冬馬か。」
私はほっと一息つく。冬馬は女だが私の弟のようなもの。安心だ。
「どうしてここにいるんだ?」
「お前の家で宿題やるって言ってたじゃないか。」
「ああ、そうか。」
「さっさと行こうぜ。」
冬馬がマンションに向かって歩き出す。
「駄目だ!戻れ冬馬!」
「何でだよ?」
「お前もハイグレ人間にされるぞ!」
「ハイグレ人間?何だそれ?」

「見つけたわよ、小娘!」
「ハイグレ魔王!」
もう追ってきたのか。素早いな。
「何だよ、春香じゃないか。って、何て格好してるんだ?」
「オレたちもいるぞ!」
マコト、シュウイチ、内田、吉野が出てくる。全員ハイグレ人間の手下になっている。
「冬馬、逃げるぞ!」
「うわあああ!待てよ、千秋!」
私と冬馬は敵の攻撃を掻い潜って逃げ出した。
「何だよ、あれ!」
ハイグレ魔王たちが撃ってくるハイグレ光線に驚く冬馬。

何とかハイグレ魔王たちを撒いたようだな。
「はあ、はあ。何なんだよ、一体。」
「だからハイグレ魔王だと言っているじゃないか。お前、私と一緒じゃなかったらハイグレ人間にされてたぞ。」
「ようやく飲み込めたぜ。」
「早く援軍を求めに行こう。」
「当てがあるのか?」
そう言われてみれば当てがない。となると夏奈しかいないか・・・。

とりあえず商店街にやって来る。
「あれ、千秋ちゃん?」
「あ、あなた方は・・・。」
私に声をかけてきたのは速水さん。春香姉さまの高校のバレー部長だ。
「こんな所で何してるの?」
「二人ともすごく汗かいてるよ?」
一緒にいたのは春香姉さまの友達でバレー部のマキさんとアツコさんだ。
「大変なんです!春香姉さまが、春香姉さまが!」
「春香がどうしたの?」
「ハイグレ魔王になってしまったんです!」
「はい?」
「春香姉さまがペンダントになってしまって、ハイグレ魔王に乗っ取られてしまったんです!」
「おい、千秋。落ち着いて説明しろよ。」
冬馬にツッコミを入れられる。私としたことがかなり動揺しているらしい。
「すーはー。」
私は深呼吸をする。
「春香姉さまがハイグレ魔王のペンダントの魔力でハイグレ魔王にされてしまったんです!」
「やっぱり意味分からないんだけど・・・。」
「おい、千秋!来たぞ!」
冬馬が指差した先にはハイグレ魔王たちの姿が。
「何よ、これっ!」
商店街の周りを大量のハイグレ人間に囲まれうろたえる速水さんたち。
「ふふふ、カクレンボはおしまいよ、お嬢ちゃん。」
「ハイグレ魔王!」
「えっ、春香じゃないの?」
「今のあいつはハイグレ魔王。春香じゃないんだ。」
マキさんの質問に冬馬が答えている。
「ああ、もう、わけが分からない!」
「御安心ください、アツコさん。私も分かりません。」

「さあ、全員ハイグレ姿にしておしまい!」
「皆さん、逃げてください!」
私はそう言いながら自分も逃げる。
「二人とも、早く!」
さすがバレー部。三人とも足が速い。
「うわああ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「冬馬!?」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
冬馬が当たってしまったらしい。水色のハイグレ人間になってしまった。
「千秋ちゃん!」
「えっ?うわっ!」
私は寸前のところでハイグレ光線を避ける。
「まずいね。囲まれてるよ。」
速水さんに言われてはじめて気付く。前後を塞がれてしまっている。

「うふふ、追い詰めたわよ、あなた達。さあ、私の僕になりなさい!」
ハイグレ魔王が命令すると、全員がハイグレ銃を放つ。
「きゃあ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「うわっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
マキさんはオレンジ、アツコさんは白のハイレグ水着を着てポーズを取っている。
「マキ!アツコ!ちっ、残りは私たち二人だけか。」
「あの、どうしますか?」
「突撃あるのみ!」
速水さんはそう言うと、私を抱えて走り出す。
「うおおおおおお!!」
速水さんの猛ダッシュに恐れをなして道を開けるハイグレ人間たち。
「何をしてるの!早くハイグレ光線を浴びせない!」
ハイグレ魔王が部下達を叱咤する。
「撃て撃て!!」
ハイグレ光線がたくさん飛んでくる。
「もうちょっとの辛抱だからね!」
速水さんが私を抱えたまま走りながら言う。
「もうすぐ商店街を出る・・・・・・・きゃっ!」
「速水さん?」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
速水さんが赤色のハイグレ人間になってしまった。
「うわっ!」
コマネチのポーズを取るのに邪魔な私は地面に投げ飛ばされる。
「随分逃げ回ってくれたわね。でも、残念だったわね。」
ハイグレ魔王が私に銃を突きつける。くっ、もう駄目なのか?
私は逃げ場を探す。しかし、先程と同じように囲まれているし、それに今は私一人しかいない。
「ふっ、私の負けだよ、ハイグレ魔王。」
「人生諦めが肝心よね。分かってるじゃない。」

「諦めるな!」
誰だ?それを確かめる間もなく私は誰かに抱えられる。
「それ!」
その掛け声と共に走り出した謎の人物に私は商店街の外へ連れ出される。

「あの、ありがとうございます、えっと・・・。」
誰だかわからないが春香姉さまの学校の制服の男の人だった。
しかし、なぜシャツのボタンを外しているんだ?
「礼には及ばん。君は危ないからできるだけ遠くへ逃げるんだ。すぐに追っ手が来る。」
「はい。分かりました。」
「さらばだ、少女よ。南春香の事はこの俺に任せておけ。」
そう言ってその男の人は去っていった。春香姉さまの事を知っているし、何者なんだろう?

私は気になったので少し後を付けてみる。安全な場所からこっそりとだ。
男の人は川に架かった橋の上にいた。
「どけ、速水!」
「嫌だと言ったら?」
「倒すまでだ。」
「保坂、あんたねえ、いたいけな女性を相手に本気を出せるわけ?」
「お前のどこがいたいけだ。」
「マキ!アツコ!行くのよ!」
「はい!」
マキさんとアツコさんが保坂と呼ばれていた男の人を押さえつけようと飛び掛る。
「効かないぞ!」
保坂さんは二人の攻撃を避けて橋の欄干の上に降り立つ。
「俺は保坂。南春香を悪の魔の手から救わねばならない。例えハイグレ人間になろうともDA!」
「ハイグレ魔王様は渡さないよ?」
橋の上で対峙する二人。
「そこ、何をしてるの?」
ハイグレ魔王が騒ぎに気付いてやってくる。
「なっ、南春香?って、うわあああああ!!」
春香姉さまに気を取られた保坂さんは欄干から足を踏み外し、川の中に落ちていった。
「うおおおおおおおお!!」
そのまま川下に流されていく。あの人、何をしに来たんだ?
春香姉さまを助けようとしていたんだからいい人なんだろうが、とんでもないバカ野郎だ。

私はそのまま商店街を離れて中学校に行く。
その途中でもハイグレ人間にされた人たちが沢山いるので隠れながら進まねばならない。
やっとの事で校門前に到着した。
「あ、あの人影は・・・・。」
私は校舎から出てくる夏奈の姿を見つけた。
「夏奈!」
「おお、千秋じゃないか。こんな所でどうした?もしかして迎えに来てくれたのか?」
「そんなわけ無いだろう、このバカ野郎!!」
私はいつもの癖でつい夏奈にツッコミを入れてしまう。
「まあまあ、千秋ちゃん。」
隣にいたケイコさんになだめられる。
「何か訳ありみたいだね?相談に乗るよ?」
ケイコさんは頭がいいのになぜこのバカ野郎と友達でいられるんだろう?とふと思ってしまった。
「実は・・・・・。」
私はあらかたのことを説明する。
「ふむ、話は分かった、千秋。」
「本当か?」
「あの、あっさり信じられないんだけど・・・・。」
ケイコさんの指摘はもっともだが、これは事実なんだ。
「いや、違うぞ、ケイコ。千秋がこんなバカなことを言うためにわざわざやってくるはずが無い。」
「そうは言っても・・・・。」
「お前は頭が固いぞ、ケイコ!そんなんだからいつも百点しか取れないんだ!」
「それは関係ないと思うよ?」

「あれ、千秋ちゃん?どうしたの、こんなところで?」
藤岡がやって来た。
「藤岡!聞いてくれ!そして春香姉さまを助けてくれ!」
藤岡にもありのままを説明する。
「千秋ちゃんの目は嘘をついてる目じゃないな。うん、俺は千秋ちゃんを信じるよ。」
「藤岡君まで・・・・。」
ケイコさんはまだ常識から抜け出せていないようだった。
「ん、何だ、あれは?」
「き、来た!!」
ハイグレ魔王が部隊を率いて校門から乱入してきた。
「きゃああ!!」
「うわああ!!」
校庭にいる生徒達が次々とハイグレ化していく。
「ほ、本当だったんだ!」
ケイコさんが今さらながらに感心する。
「みんな、ひとまず校舎の中に!」
藤岡に連れられて私たちは校舎の中に入る。

「どうする、藤岡。」
「あのペンダントを春香さんから外せば元に戻るんじゃないかな?」
「私もそう思う。ペンダントをつけてから春香さんはおかしくなってんでしょ?」
「はい、その通りです。」
「よし、皆の者、作戦開始だ!」
私たちはハイグレ魔王を一人の状態にしてそこを襲うことにした。

「おい、ハイグレ魔王!この夏奈様が相手になってやるぞ!かかってこい!」
「クソ生意気な小娘ね。そこでじっとしてなさい!」
ハイグレ魔王って意外に単純なんだな。簡単に引っかかったぞ。
夏奈は時折後退しながらハイグレ魔王を一本廊下に引きずり込んでいく。
他のハイグレ人間達は他の生徒達のハイグレ化に忙しいのでやってこない。
「さあ、ここまでおいで!」
夏奈がどんどんこっちにやってくる。当然ハイグレ魔王もだ。
「今だ!」
藤岡の号令と共に私たちが一斉に飛び掛る。
「うわっ!」
ハイグレ魔王を押し倒して無力化する。
「俺と千秋ちゃんが押さえてるうちに早くペンダントを取って!」
「う、うん!」
ケイコさんがペンダントに手を伸ばす。
「うわっ!」
いきなりペンダントから発した電気に驚くケイコさん。
「ふふ、ペンダントを外そうと思っても簡単にはいかないわよ?」
ハイグレ魔王が押さえつけられた状態で言う。
「私に貸せ!」
夏奈が代わりに出てくる。
「ぐうっ!」
夏奈も電撃に耐えられず手放してしまう。
「何だ、これ!こんなの触れないぞ!」
「ふふ、当然でしょう?このペンダントが発動すると私にしか触れないように防御機能が備わっているのよ。」
何て無駄に高性能な魔王なんだ、このバカ野郎。

「よし、ならこのまま壊してやる!」
夏奈が教室から椅子を持ってくる。
「千秋、そのペンダントを床の方にずらせ!」
「分かった。」
何かいつもと違って夏奈が冴えている気がする。
私は指示に従って椅子を振り回しやすい位置にずらす。
「思いっきりやるぞ!うおおおおお!!」
夏奈が思いっきり椅子を振り下ろす。
「うわああああ!!」
「夏奈!?」
まさかまた防御機能か?いや、違う。これはハイグレ光線!
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
夏奈が青のハイレグを来てポーズを取っている。

「ふふふ、油断したわね、あなた達。」
「リコ!」
ケイコさんが赤のハイレグを着た女性に向かって叫ぶ。リコというらしい。
「さあ、次は貴方の番よ、ケイコ!」
リコさんがケイコさんにハイグレ銃を放つ。
「きゃああ!!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
ケイコさんが白のハイレグ水着を着たハイグレ人間になってしまう。
「ケイコさん!」
私は夏奈に続いてケイコさんまでやられてしまって一瞬ハイグレ魔王を押さえている力が緩んでしまった。
その隙を逃さずにハイグレ魔王が立ち上がる。

「ふふふ、形勢逆転ね。」
「千秋ちゃん、下がって!ここは俺が!」
藤岡が私の前に出る。
「藤岡君の相手は私よ!」
リコさんが藤岡に飛び掛る。
「くっ!」
藤岡はハイグレ銃で撃たれまいと揉みあいになっている。

「やっとあなたと一対一になったわね。」
ハイグレ魔王が楽しそうに笑う。
「ああ、もう逃げも隠れもしない。春香姉さまと夏奈を返してもらうぞ、ハイグレ魔王!」
「ふふ、返り討ちにしてくれるわ!」
ハイグレ魔王が銃を私に向ける。
「えいっ!」
私はハイグレ魔王の懐に飛び込む。銃って遠くは撃てても近くに入るともろいんだよな。
私は思いっきりペンダントを引っ張る。
「ぐうっ!」
私に電撃が走る。
「ふふふ、無駄よ。その電撃に耐えられるわけないでしょう?」
「ぐわあああっ!」
「さあて、いつまで耐えられるかしらね?」
私は意識が遠のいていく。このまま死ぬのか?それともハイグレ魔王の奴隷になってしまうのだろうか?
「春香・・・・姉さま・・・・夏奈・・・・・。」
春香姉さま、夏奈!そうだ、私は負けるわけにはいかないんだ!
「うおおおおおっ!!」
「なっ!ちょっと、あなた正気なの?」
「私は春香姉さまと夏奈と一緒に暮らしたいんだ!!」
私は渾身の力を込めてペンダントを引きちぎる。
「なっ、そんな馬鹿な!こんな事って!」
「くっ!」
今ので体力を使い果たしてしまったらしい。
「この小娘!返しなさい!」
「駄目だ、もう逃げる体力が・・・・。」
ハイグレ魔王が私に銃口を向ける。
「そうだ、藤岡!これを頼む!」
私はまだ揉みあいになっている藤岡にペンダントを投げる。
その刹那私にハイグレ光線が命中する。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私は黄緑のハイレグ水着を着たハイグレ人間となり、ポーズを取る。
あとは頼んだぞ、藤岡・・・・。


夕暮れ時・・・・・
「ん、んん?」
私は目が覚める。
「起きた?千秋ちゃん。」
見渡してみると学校の保健室だった。
「藤岡。」
「ペンダントはちゃんと破壊した。みんな元通りだよ。」
保健室のドアが開く音がする。
「おい、大丈夫か、千秋。」
「心配したのよ、千秋。」
夏奈と春香姉さまが入ってくる。
「春香姉さま、もう元に戻ったんですね?」
「話を聞くと皆に迷惑かけちゃったみたいね。ごめんなさい。」
「いいえ、春香姉さまのせいではありません。みんなあのペンダントが悪いんです。」
「ありがとう、千秋。」

「おい、春香。おなかがすいたんだが。」
「もうお夕飯時ね。帰ってご飯にしましょう。藤岡君もどう?」
「はい、ごちそうになります。」
「私、ハンバーグがいいです。」
「うん、じゃあお夕飯はハンバーグにしましょう。」
「やったー!よし、そうと決まったらさっさと帰るぞ!」
「待て、夏奈。私はまだ歩ける体力が無いんだぞ?」
「俺が家まで送ってあげるよ。」
そう言って藤岡が私をおんぶする。
「よし、皆で手を繋いで帰ろう!」
私たちは仲良く手を繋いで家に帰っていった。
あの時最後の力を振り絞ってあの悪魔に勝てて良かった。
私には家族が一番の宝だから。
























ここはとある無人島・・・・
そこに流れ着いた一人の男が・・・・
「ここはどこだ?」
保坂だった。川に落ちて流された後、木の板に乗って海まで流されたのだ。
「あれは南斗六星・・・・。俺は今どこにいるんだ?」
保坂は考え込む。
「はっ!そうだ!南春香!こうしてはいられない!」
保坂は持ち前の腕力を駆使して即席のカヌーを作る。
「今すぐお前をハイグレ魔王の魔の手から救い出しに行くからな!」
保坂は勢いよく海へ飛び出していく。
「このオールは完璧な出来なわけだ。これでスピードアップをすれば日本にすぐたどり着くわけだ。」
保坂は必死にオールをこいでいく。
「待っていろ、南春香!あはは、あはは、あーははははっ!あはは、あはは、あーははははっ!あはは、あはは、あーははははっ!!」

本当に完
MKD
2008年08月29日(金) 22時48分41秒 公開
■この作品の著作権はMKDさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
みなみけのハイグレ小説です。
冬馬の兄貴達が出てくる場所がありませんでしたね。あと、保坂は本当に扱いに困る人です。
これでハイグレの秘宝は三つ。続編に乞う御期待。