サクラ大戦 命短し恋せよハイグレ人間

太正十六年・・・・・・・
帝国歌劇団は『あぁ、無情』の劇の準備で大忙しになっていた。

「大神さん、わざわざすみません。買出しにつき合わせちゃって。」
「いいんだよ、さくら君。鍛錬の一環だと思えばどうってことないさ。」
大神が両手にたくさんの荷物を抱えながら言う。
「エリカさんたちはどうしているでしょう。」
来日していた巴里華撃団のメンバーは上野に出かけていた。
「きっと彼女達も楽しんでいるさ。」

「んっ!?この気は?」
「どうしました、大神さん?」
「いや、何か変な気がしたんだが・・・・。」
「大神さん、あれ!」
さくらが空を指差す。
「何だ、あれは!!」
大神は呆気に取られる。巨大な城のような物が空を飛んでいる。
「何だろう、あれは?」
「さあ・・・・。」

帝劇に戻ると緊急警報が鳴っている。
二人は急いで作戦指令室へ走っていった。
「大神一郎、参りました!」
「真宮寺さくら、参りました!」
二人は軍服に着替えて指令室に入る。
「これで全員揃ったわね。」
副司令の藤枝かえでが全体を見渡してから言う。
「大変なことになったの。かすみ、モニターに出して。」
「はい。」
かすみがモニターに帝都東京の地図を出す。
「巨大な城のような乗り物が帝都の上空に現れたのは知っているわね?」
「はい。」
「それが新宿近辺に着陸したんだけど・・・・。そこから出て来た妙な格好をした兵士達が出てきたの。これよ。」
かえでが別のモニターを指差す。モニターにはオマルに乗ってパンストをかぶった兵士達が映っていた。
「この兵士達が陸軍省、海軍省、賢人機関を急襲、連絡が途絶えています。」
「何だって?それは本当かい、由里君?」
「これは事実よ、大神君。」
「米田司令は?」
「現在は近衛師団の指揮に当たっているわ。他県からの援軍が来るまで、米田中将しか将官がいないのよ。」
「そうなんですか・・・・。」
「一刻の猶予も無いのよ。民間人にも被害が出ているの。ただ・・・。」
「ただ?」
「その、よく分からないけど、兵士達の撃ってきた光に当たると水着姿になって変なポーズを取るって・・・。」
「はい!?」
全員訳が分からないという顔をする。

「あっ、大変です!帝劇内に侵入者です!」
椿がレーダーを見ながら叫ぶ。
「もう来たのね。光武の轟雷号への搭載は?」
「完了しています。」
「よし、全員轟雷号に乗車。花やしき支部に移動するわよ。」

轟雷号は光武と隊員を乗せ、一路浅草・花やしき支部へ到着。
「何や、これは!?」
一番最初に降りた紅蘭が驚きの声をあげる。
「どうしたでーすか、紅蘭?って、うわっ!」
後から皆と一緒に降りてきた織姫も声を上げる。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
花やしき支部の人々がハイグレ人間となってポーズを取っている。
「みんな、隠れて!」
マリアが叫ぶ。それに反応したかのように光線が沢山飛んでくる。
「敵だね。あの不思議な兵士達だよ。」
レニがつぶさに観察する。

「おかしいわね。あの兵士達はどうやってこの花やしきに入ったのかしら?」
かえでが首をひねる。
「あたいは誰かこの場所を教えたスパイがいるんだと思うぜ、かえでさん。」
カンナが言う。
「そんなのいるはずがありませんわ!」
すみれが反論する。
「何だと、このサボテン女!あたいの意見にケチを付けようってか?」
「やめるんだ、二人とも!喧嘩してる場合じゃないぞ!」
大神が止めに入る。

「屋内だと光武が使えませんね、隊長・・・。」
「ああ・・・。無闇に攻撃を仕掛けると周囲に被害を与えかねない。」
「でもこのままでは袋の鼠になってしまいまーす!」

「どうします、副司令?」
かすみが指示を仰ぐ。
「翔鯨丸を取り返しましょう。帝劇には引き返せないし、とりあえずは態勢を立て直しましょう。」
「それなら私とカンナが先頭に立って道を開きます。敵がひるんだ隙に一気に走り抜けましょう。」
マリアが銃を取り出す。
「隊長とさくらは後ろを頼むぜ。」
「分かりました、カンナさん。」
「すみれ君も支援を頼むよ。」
大神が言う。
「その必要はありませんわ。」
すみれはそう言うとおもむろに立ち上がり懐から銃を取り出し、マリアとカンナに向ける。
「えっ?」
「まさか!」
二人がすみれに襲い掛かるが間に合わない。
「ハイグレにおなりなさい!」
すみれが銃からハイグレ光線を二発放つ。
「うわああああああああああっ!」
「ぎゃああああああああああっ!」
マリアとカンナの体が点滅する。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
マリアは黒、カンナはオレンジのハイレグ水着を着たハイグレ人間となった。

「すみれさん、まさか!?」
「そのまさかですわ。」
そう言うとすみれは服を脱ぎ捨てる。その下には紫色のハイレグ水着を着込んであった。
「うふふ、そうですわ。私はハイグレ魔王様のスパイ。ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
ハイグレポーズを取りながら言う。
「あなたが花やしきの情報を流していたのね?」
「そうですわ、副司令。」
「すみれ、ずっとアイリス達を倒そうと企んでたんだね!」
「すみれが敵のスパイだったなんて・・・・軽蔑する。」
「アイリスもレニも何とでもおっしゃい!これもハイグレ魔王様の崇高なる使命のためですわ。」

「ここは完全に包囲されていますわよ?光武も使えなければ戦力も半減。潔く降伏してハイグレ人間になるのがよろしくてよ?」
すみれが高笑いする。
「すみれさん!ごめんなさい!」
さくらがすみれに向かって剣を峰打ちで叩き込む。
「ぐっ!」
すみれがその場に倒れこむ。
「今の内に!」
全員轟雷号を飛び出して翔鯨丸に向かって全力疾走する。

「はああっ!」
「せいやっ!」
さくらと大神が襲い掛かってくる敵の兵士とばったばったと倒す。
レニとかえでの武術も加えて進んでいく。

「ジャンポール!」
アイリスが腕に抱えていた熊のぬいぐるみのジャンポールを落としてしまう。
アイリスが少し立ち止まっていた所にハイグレ光線が命中する。
「きゃああああっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
アイリスは黄色のハイレグ水着を着てポーズを取っている。
「アイリス!」
レニがアイリスを助けようと戻ってきたが間に合わなかった。
「うわっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
レニは青のハイグレ人間化し、ポーズを取り続ける。

「翔鯨丸の周りに随分兵士ががいるわね。私が注意を引くからその間にハッチを開いて頂戴。」
「分かりました。」
かえでが敵の囮になっている間に三人娘が敵の銃撃を掻い潜って翔鯨丸にたどり着く。
「待って、今開けるから。」
かすみが手馴れた操作で認証コードを入れる。
ピッと解除音がしてドアが開く。
「開いた?そのまま入って翔鯨丸を起動して!」
かえでがパンスト団と格闘しながら言う。
「はい、副司令!・・・・・・えっ?」
かすみが翔鯨丸の中を見ると敵の姿が!
「なっ!?きゃああああ!!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
かすみが不意打ちを喰らって紫のハイグレ人間化する。
「きゃあ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
由里が赤のハイグレ水着を着てポーズを取る。
「かすみさん!由里さん!・・・・・・きゃああああ!!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
椿も黄色のハイグレ人間となってあとに続く。

「くっ、うかつだったわ・・・。」
「後悔してる暇はありませんわよ、副司令?」
「なっ、す、すみれ!?」
「お覚悟!」
すみれがかえでの背後から銃撃する。
「きゃああ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
かえではオレンジ色のハイグレ姿になりポーズを取る。

「くそっ、残っているのは俺たちだけか。」
大神がさくら、紅蘭、織姫を見やる。
「どないするんや、大神はん?四方から囲まれてるで!」
「そうでーす。もう体力も限界でーす。」
「大神さん、危ない!」
さくらが剣で光線を振り払う。
「すまない、さくら君。」
「うわああ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「紅蘭!?」
「きゃあああ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「織姫さん!?」
紅蘭と織姫にハイグレ光線が当たり、緑と赤のハイグレ人間と化した二人がポーズを取る。
「私と大神さんだけになってしまいましたね。もう駄目なんでしょうか・・・・・。」
「あきらめるな、さくら君!あきらめなければ必ず未来があるんだ!」
「大神さん・・・・。」

「よく言った、隊長!」
謎の声。
「えっ?この声は!?」
二人のいる所に降り立つ一人の女性。
「待たせたな、隊長。」
「グリシーヌ!?」
「助けに来てくれたんですか?」
「当たり前だ。少々ここに来るまでにてこずったがな。」
グリシーヌに群がる敵の兵士達。そこへ・・・・
「うわっ!」
「ぐわっ!」
パンスト団が次々と倒れていく。銃と弓の攻撃を受けていた。
「エリカ君!花火君!」
上に陣取った二人がピンポイントに兵士を倒していく。
「大神さん!さくらさん!助けに来ましたよ!」
「さあ、早く翔鯨丸へ!」
「分かった!」

翔鯨丸に着くと外にボコボコにされた兵士の山ができていた。
「よお、隊長、さくら。翔鯨丸の中にいた敵なら全部倒しちまったよ?」
「これをロベリア一人でか。すごいな。」
中からコクリコがやってくる。
「翔鯨丸を起動させたよ!早く乗って!」
エリカと花火、グリシーヌも合流する。
「出航!」
地上への出口を開けて翔鯨丸を上昇させる。
「よし、新宿へ向けて出発だ!」


新宿上空・・・・
「あれがハイグレ城なんですね・・・。とても大きくて頑丈そうです。」
「ああ・・・・。」
大神とさくらがハイグレ城の大きさに圧倒される。
「グリシーヌ、もっと近づけるか?」
「了解した。」
舵を握っているグリシーヌが面舵一杯にする。

「うわっ!」
いきなり翔鯨丸が大きく揺れる。
「どうしたんだ?」
「分からぬ。前方に見えない壁があるような感じがするぞ。」
「ああ、これは!」
レーダーを見た花火が声を上げる。
「ハイグレ城の周りに強力な結界が張られています!」
「結界!?翔鯨丸の主砲で粉砕しよう!」
「了解!照準補正!主砲・・・・発射!」
翔鯨丸が轟音一発、主砲が放たれる。
「なっ!?全然効いてない?」
「大神さん、それでしたら私の破邪の力で破れるかもしれません。やってみましょう。」
「頼むよ、さくら君。」

ハッチを開けてハイグレ城に向かって正眼に構えるさくら。
「破邪剣征・・・・・・・桜花放神!!!」
さくらが剣から霊気を発して結界にぶつける。
「なっ!?」
その霊気は結界の前に消え去ってしまう。

「くっ、ここまで来て・・・・・。」
大神は歯軋りする。
「んっ!?」
キネマトロンに通信が入る。
「お前は・・・・加山!無事だったのか?」
帝国華撃団諜報部隊・月組隊長の加山雄一だった。
「それはお前も同じだろう?」
「ああ、まあな。」
「挨拶はさておき、城の周りに張られた結界にてこずってるようだな?」
「ああ、強力すぎて全く手の打ちようが無いんだ。」
「やはりな。ここは俺に任せろ。秘密兵器がある。ハイグレ城からすぐに離れてくれ。」
「分かった・・・・。翔鯨丸、ハイグレ城より離脱!」


その頃巴里では・・・・
「翔鯨丸の離脱を確認!攻撃目標圏内クリア!」
「リボルバーカノン、発射準備!新式霊力弾装填!」
メルとシーが慌しく発射準備を整える。
「ムッシュ・迫水。まだテストをしたことも無いのに大丈夫かねえ?」
「しかし、加山君から送られてきた情報から判断するに、この新式霊力弾を使うより他にありますまい。」
「まあ、うまくいくかどうかは神の思し召し次第ってところだね。」
グラン・マと迫水は一抹の不安を残しつつも新式霊力弾の成功を信じる。
「発射準備整いました!」
「誤差修正・プラス0.2!照準固定!」
「よし、リボルバーカノン・・・・発射!」
グラン・マが引き金を引くとものすごい勢いで弾丸が発射されていく。
「頼んだよ、闇に覆われた帝都に希望の光を照らしておくれ・・・。」

翔鯨丸では・・・・
「高速で飛来する物体あり!ハイグレ城に向かって飛んでいます!」
ヒュウウウウウウウン
バリバリバリバリバリッ
「結界が消滅しました!」
あまりの威力に呆然とするクルー達。
「うまくいったようだな。巴里華撃団の極秘裏に開発していた新兵器、新式霊力弾だ。」
「そうか・・・・。よく調べていたな。ありがとう、加山。」
「早く敵の親玉を倒してくれよ。その間、米田中将と薔薇組と一緒に敵を引き付けておくからな。」

翔鯨丸をハイグレ城の入り口に横付けして侵入する。
仮面をかぶった男が待ち構えている。
「うふふ、ようやく来たわね。」
「お前は!」
「私の名はハイグレ魔王。立体映像だけどね。本物は屋上にいるから上がってこられたら相手をしてあげるわ。」
ホログラムのハイグレ魔王は消えた。
「行くぞ皆の者!悪しき魔王に正義の鉄槌を下すのだ!」

ハイグレ城を突き進む七人の前に立ち塞がる影。
「うふふ、ここから先は通さないわよ!」
「何者だ!」
「「「ハラマキレディ参上!」」」
「ハラマキレディ?」
「そう、ハイグレ魔王様に仕えし幹部よ。覚悟なさい!」
「ったく、ちんたら口上を述べてんじゃないよ。行くよ!」
ロベリアが言いざまに手から炎を出す。
「うわああっ!」
ハラマキレディCが自分に燃え移った火を消そうと走り回る。
「ハラマキレディC!くっ!今度はこっちからいくわよ!」
「なっ!?」
ロベリアに鞭が巻きつく。動けないところにハイグレ銃が向けられる。
「ハイグレになりなさい!」
「うわああっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
ロベリアが緑のハイレグを着てポーズを取っている。
「ロベリア!」
「よくもロベリアを!成敗いたす!」
「ぐはっ!?」
ハラマキレディBがグリシーヌの戦斧で吹き飛ばされ気絶。
「ハラマキレディB!」
「次はお前の番だ!」
「私はリーダー。一味違うわよ!」
「なっ!?うわあああ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「グリシーヌさん!」
グリシーヌは目にも止まらぬ速さの攻撃の前に青のハイグレ人間にされてしまう。

「大神さん、危ない!」
「大神さん、避けて下さい!」
さくらとエリカが大神に飛んできたハイグレ光線を叩き落す。
「何、私の攻撃を弾いた!?」
「あなたの間合い、見切りました!こちらからいきます!」
さくらが一瞬でハラマキレディAとの差を詰める。
「破邪剣征・百花繚乱!!」
「ぐっ!?だが、まだまだ・・・・。」
「必殺・金枝玉葉!」
「いくよ!マジークボンボン!」
「なっ!?二段攻撃!?うわああああっ!」
ハラマキレディAが花火とコクリコの連携攻撃の前に倒される。
「見事な連携攻撃だったな、みんな。さあ、先を急ごう。」

通路を抜けて外に出る四人。
「何でしょう、あの像は?ハイグレ魔王を象ったもののようですけど。」
エリカがハイグレ魔王像を見上げる。
「この上に魔王がいるようだな・・・・。よし、気をつけて進もう。」
大神を先頭に注意深く進んでいく。
「きゃっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「うわっ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「花火君!?コクリコ!?」
花火は黒、コクリコはピンクのハイレグを着てポーズを取る。
「うわああああははははははっ!!ここから先はこのTバック男爵が通さんぞ!」
Tバック男爵が現れる。
「不意打ちとは卑怯だぞ!」
「がははははっ。手段なんて関係ない。勝てばいいんだ!ミサイルをお見舞いしてやるぜ!」
Tバック男爵が自分の乗り物を操作してミサイルを放つ。

「エリカさん!」
「はい!」
二人は目配せしてミサイルに突っ込む。
「バカかお前ら。どうせ死ぬにしても逃げながらのほうが見てて面白いのに。」
Tバックは鼻で笑っている。
「はああああっ!」
さくらがミサイルの前に回りこんでミサイルを真っ二つにする。
「えっ!?」
Tバックは信じられないという顔をする。
「こんな危ないものは処分させていただきます!」
エリカがマシンガンをぶっ放して真っ二つになりながら飛んでいるミサイルを爆破する。
「そんな馬鹿な!!ありえん!!」
「バカはお前だ!狼虎滅却・快刀乱麻!!」
大神が無防備になっているTバック男爵に一撃を叩き込む。
「ぐああああっ!!」
Tバック男爵は力尽きて倒れこんだ。

「うふふ、やっと来たわね。待ちくたびれちゃったわ。」
ハイグレ魔王像の上にある塔の上で待っていたハイグレ魔王。
「帝都を・・・・皆を元に戻してもらうぞ、ハイグレ魔王。」
「うふふ、いい顔をした坊やね。面白いじゃない、やってみなさい。」
ハイグレ魔王が剣を構える。
「あなた、二刀流ね?これは楽しい戦いになりそうね。」
「さくら君、エリカ君、君たちは手を出さないでくれ。俺が片をつける。」
「いくわよ!」
「おお!!」

二人の剣が激しく交錯する。
「うふふふ、なかなかやるじゃない。」
「ああ、俺もお前に対して同じ意見だ。」
一分の隙も無く動く二人。
「じゃあ・・・・これはどう!?」
「くっ!」
「ふふ、これを避けるとはね。じゃあ、お次は・・・・!!」
「うおおおおっ!!」
二人は互角の勝負を展開する。

「あ、あの、さくらさん。どっちが勝ってるんですか!?」
「私にも分かりません。どちらも凄すぎて・・・。」

「あらあら、さっきまでの強さはどうしたの?防戦一方になってきたわよ!?」
「くっ!まだまだ!」
そう強がってみても大神はずるずるとステージの脇に追い詰められていく。
「あら、後が無いわね?」
「くっ!」
大神は後一歩後ろに行けば地上に真っ逆さまの場所まで来てしまう。
「ふふ、楽しいバトルをどうもありがとう。お礼に楽に死なせてあげるわ!!」
ハイグレ魔王の一撃をまともに喰らって外へ弾き飛ばされる大神。
「もう駄目だ・・・・。死ぬのか・・・・。」
「大神さん!!あきらめないで!!」
さくらが大声で叫ぶ。
「はっ・・・・・そうだ。俺にはさくら君が・・・・・。くっ、負けてたまるか!うおおおおっ!」
大神はその刹那、刀を壁に突き立てて上にジャンプする。
「なっ!?」
呆気に取られたハイグレ魔王は簡単に背後を取られてしまう。
「これで終わりだ。」
大神がハイグレ魔王の剣を叩き落す。
「お前の負けだ、ハイグレ魔王。」
「ふふふ、やるじゃない。そうね・・・・私の負けね、地球から大人しく帰るわ。」
「そうか。」
「・・・・・・なんて言うとでも思った!?私は男じゃないの。オ・カ・マ。だから約束なんて守らなくていいの。」

「何て卑劣なんですか、あなたは!神の名の下にあなたに天罰を与えます!」
エリカがマシンガンを構える。
「やれるものならやってごらんなさい。うふふふ・・・・。」
ハイグレ魔王が完全体に変身する。
「なっ!?うわあああああっ!!」
ハイグレ魔王が触手のように伸ばした腕がエリカの首を締め上げる。
「うわああっ!!」
「苦しいでしょう!?さあ、ハイグレにおなりなさい!」
「うわあっ!!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
エリカが赤のハイレグを来たハイグレ人間となった。

「エリカさん!!」
「人の心配をしている余裕は無いわよ!!」
「はっ!?」
さくらがすんでの所で避ける。
「大神さん!合体攻撃です!!」
「おお!!」
二人がお互いの剣を合わせる。
「「破邪剣征・桜花乱舞!!」」
「ぐわあああああああああああああああああああっ!!」
ハイグレ魔王が爆発し、元の体に戻る。そして倒れこんでしまう。

「やった、やりましたよ、大神さん!」
「ああ、さくら君のおかげだ。君がいたから・・・・。」
「大神さん・・・・・。」
見つめあう二人。
「まったく、見てられないわね。こっちが恥ずかしくなるわ。」
「ハイグレ魔王!!まだやる気か!!」
「ううん、もう今回はやめるわ。あなたたちには勝てそうに無いし。またの機会にするわ。」
「またの機会?」
「そ、あんたのような強い男がいなくなった時に来るかもしれないわ。」
「今度は上手くいくとは思うなよ?」
「肝に銘じておくわ。」
ハイグレ魔王はパンスト団をまとめて撤収させ、ハイグレ人間にされた人々たちも元に戻して帰っていった。


市街地で戦っている陸軍部隊は・・・・
「米田中将、敵が引き上げていきます!」
薔薇組の清流院琴音が報告する。
「よし、撃ち方やめ。どうやら敵さんしっぽを巻いて逃げ出したようだな。」
「中将、あれを・・・・。」
加山が空を指差す。
「お、あれはハイグレ城じゃねえか。」
「大神たちがうまくやってくれたようですね。」
「違いねえ。」
米田がほっとため息をつく。
「司令!ハイグレ人間にされた市民達がみんな元に戻りました!」
「陸軍省、海軍省、賢人機関も回復したようです。」
薔薇組の太田や丘が次々と報告にやって来る。
「ったく、花組は大した奴らだぜ。これで安心して俺も隠居できる。」
米田は大神を出迎えるために、報告もそこそこに花やしきに向かうことにした。


「さて、花やしきに戻ることにしようか。」
巴里華撃団を連れ、翔鯨丸の舵を花やしきに向ける。

通信が入る。巴里からだった。
「ムッシュ、どうやらうまくいったようだね。」
「大神君、君達の活躍、しっかり見させてもらったよ。」
グラン・マと迫水が嬉しそうに言う。
「はい、おかげさまで。」
「皆さん、お疲れ様でした。」
「ひゅーひゅー、大神さん、すごいですぅ。」
メルとシーも労いの言葉をかける。
    
『ありがとう、メル君、シー君。』
『メル君とシー君のハイグレ姿も見たかったな・・・・。』  ←選択

「メル君とシー君のハイグレ姿も見たかったな・・・・。って、へっ?」
何でそんなことを言いだしたか分からない大神。
「な、何を言ってるんですか、大神さん!」
「うわぁ、大神さんのエッチぃ〜。」
「お、大神さん!!メルさんとシーさんにそんな事言うなんてどういうつもりですか!!」
通信の向こう側と自分の後方から殺気を感じて言い訳する大神。
「まったく、ムッシュはこんな時まで冗談かい?器が大きいのか軟派なだけなのか・・・・。」
グラン・マが呆れ返る。その後少し話をして通信を切る。
「大神さん、相変わらず女性にだらしないですね。」
さくらが睨む。
「他の女の子達のハイグレ人間姿にも見とれすぎでしたし。」
「あ、いや、その・・・。ごめんなさい。」
大神はさくらの剣幕に押され、うなずくしかなかった。


花やしきに着陸した大神とさくらを仲間達が出迎える。
「お帰りなさい、大神君。」
「かえでさんや皆も元に戻ったんですね?」
「ええ、もちろんよ。」

「ねえ、アイリスおなかすいたよ。」
「ようし、なら皆で祝勝会をやろうぜ!」
カンナが猪一番に言う。
「やったー!!」
「わーい!」
帝国華撃団と巴里華撃団のメンバーが沸き立つ。
「っと、その前に・・・・・。大神さん、あれをやりましょう。」
「ああ、そうだな。」
大神が含み笑いをして言う。
「よーしっ、勝利のポーズ、決めッ!」



祝勝会の後、大神の部屋・・・・
「ふう、『ああ無情』の準備があるって言うのにみんな羽目外してたな・・・・。」
そういう自分も思いっきり楽しんだ大神。
トントンとドアの叩く音がする。
「さくらです、入ってもいいですか?」
「ああ、入ってくれ。」
さくらが部屋に入ってくる。
「何の用だい?」
「あの、少しあっちを向いていてください。」
「は、はあ。」
大神はさくらの反対側に体を向ける。
「んっ?」
服を脱ぐ音が聞こえる。

「大神さん・・・・。もういいですよ。こっちを見てください。」
大神がさくらを見る。
「いっ!?」
さくらは白のハイレグ水着を着ていた。
「あ、あの、私だけハイグレ人間にならなかったので、その、大神さんに是非この姿を見てもらおうと・・・・。」
「さくら君・・・・。」

「よお、大神!二人で二次会やろうぜ!」
加山が天井から酒瓶を持ってやって来る。
「か、加山!?」
「あ、その、すまない。邪魔したな、大神、さくらさん。」
二人だけの世界に居心地の悪くなった加山はドアを思い切り開けて走り去っていった。

「いったー、加山のお兄ちゃん、ひどい。アイリス、お鼻ぶつけちゃった。」
「しっ、大声を出したら聞こえてしまうで!」
「そういう紅蘭も大声出してるでーす!!」
「ったく、あんた達のせいで隊長とさくらに気付かれちまったようだよ。」
「やっぱりこういうことはいけなかったんじゃないでしょうか・・・・・ぽっ。」
「いっ!?君たち、俺の部屋の前で何を!?」
「あたいたちは別に盗み聞きをしようってわけじゃ・・・・って、おわっ!」
「カンナ、ボクたちの秘密喋っちゃ駄目だよ!」
「やっぱりしてたんだね?」
「それよりも中尉、そんな格好をしたさくらさんと何をしていたんですの?」
「そうだ。貴公の返答しだいではここで成敗いたすぞ!」
「隊長がそんな人だったなんて・・・・。軽蔑する。」
「ええっ!?俺は何もしてない!」
「大神さん、さくらさんの純情を弄んだ罪、しっかりと償ってください!!」
「この件については司令と副司令に処分を一任します。いいですね、隊長?」
「そんな、マリア!俺は無実だ!!」
その後大神は無実の罪で一晩中正座させられる羽目になってしまった。


P.S. ここは受付・・・
「かすみさん、椿、いい写真が取れたわよ?」
由里がさくらのハイレグ姿の写真を手にして言う。
「これをブロマイドにしたら売れそうですね!」
「売店の売上の二割・・・・いや、三割アップは堅いわね。」
この後に講演された『ああ、無情』限定で売られたこのブロマイドは後世において幻と言われたという。

MKD
2008年09月17日(水) 17時18分06秒 公開
■この作品の著作権はMKDさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ハイグレ小説第11弾です。
今回は秘宝は無しで純粋な(?)ハイグレ小説です。そういえば、すみれ、コクリコ、太田の中の人がハイグレ魔王の映画にも出ているなあ、と小一時間。
随分昔のゲームなのにクオリティ高すぎですよね。ちなみに作者のお気に入りはメルです。