らき☆すた 柊かがみの日記

○月×日
『今日から新しく日記をつけることにした。つかさと一緒に立ち寄ったリサイクルバザーで見つけ、どういうわけか心を魅かれた。大して凄い外見でもないんだけど。まあ、せっかく買ったんだし、毎日の生活を少しずつ書いていきたいと思う。』
ここまで書いて、私はペンを置いた。うーん、何を書こう。
『学校はいつもの退屈な授業。板書し、先生の話を聞き、問題を解く。日下部は世界史の時間に居眠りをして黒井先生に教科書で殴られてたっけ。』
『放課後はいつもの四人でこなたの家に行った。おじさんが貰いもののお菓子を出してくれたのが美味しかった。その後、こなたがクレヨンしんちゃんを見ようと言い出し、アクション仮面VSlハイグレ魔王を見た。こなたがハイグレ人間になって暮らして見たいとか言っていたけど、うーん、どうなんだろう?まあ、一度くらいならいいかも。明日目が覚めたらハイグレ人間の世界になっているとかだったら面白そう。』
『今日の夕食は肉じゃがだった。相変わらずお母さんの味付けはうまい。私もつかさに習わないと。これからの検討課題ね。』

「ふー、書き終わったし寝るかー。」
私は新しい日記帳を閉じ、ベッドに入った。



朝、カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。
「うーん・・・・・。ふあ〜。」
私は目を擦って起き上がり、大きく伸びをする。
んっ?なんか伸びをしただけなのに体が締め付けられてるような・・・・。
「うわっ!!何これ!?」
赤いハイレグを着ている。いかんいかん、寝ぼけているに違いない。
私はとりあえずに顔を洗いに洗面所に行く。
「おはよう、お姉ちゃん。ハイグレ!ハイグレ!」
つかさが黄色のハイレグ水着を着てコマネチをしている。
私はまだ夢の中なのかもと思い、ほっぺたをつねってみる。
「いたっ!夢じゃない?」
「何やってるの、お姉ちゃん?」
「あんたこそ何やってんのよ!」
「えっ?おはようのあいさつじゃない。」
「ハイレグ水着を着てコマネチしながらすることじゃないでしょ!」
「何言ってるの?ハイグレ人間なら当然でしょ?」
「ハイグレ人間?何よそれ?」
「もう、お姉ちゃんったら寝ぼけてるんだね?私たちはハイグレ魔王様に忠誠を誓ったハイグレ市民でしょ?ほら、お姉ちゃんだってその証をつけてるじゃない。」
つかさが私の体を指さす。私は自分が着ている赤いハイレグ水着をまじまじと見る。
「嘘でしょ?どうなってるの?全然分かんないわ!」
「早く朝ごはんを食べないと遅刻しちゃうよ?」
つかさは私を全く相手にせずリビングに降りていく。
「はっ、早く制服を着なきゃ!」
急がないと本当に遅刻しちゃう。私は急いで部屋に戻る。
「えっ?」
部屋のクローゼットに入れている服が全部ハイレグになっている。
「制服がない!?っていうか、あたしの服は?」
クローゼットを全部ひっくり返してみるが、結果は同じだった。
「かがみ〜、早くご飯食べちゃいなさい〜。」
下からお母さんが呼んでいる。
「はーい!」
ここにいても時間の無駄。とりあえず下に降りよう。

しかし、リビングに恐る恐る入ると、私は想像を絶する光景に目を疑った。
「おはよう、かがみ。ハイグレ!ハイグレ!」
お父さんとお母さんが緑と紫のハイレグ水着姿で私を出迎える。
「お、おはよう、お父さん、お母さん・・・・。」
「ほら、かがみもちゃんとポーズをとりなさい!」
「えっ?」
もしかして、コマネチみたいなやつのこと?
「は、はい。ハイグレ!ハイグレ!」
「うん、よろしい。早く学校に行く支度をしなさい。」
「はい。」
私はとりあえずテーブルに着いて朝ごはんを食べる。
食べながら私は少し今まであったことを整理してみる。んっ?もしかして昨日こなたの家で見た映画と同じ状況?
「ねえ、つかさ。」
「なに、お姉ちゃん?」
隣で味噌汁を飲んでいるつかさに聞いてみる。
「あのさ、昨日の映画のことなんだけど?」
「こなちゃんの家で見たやつ?面白かったよね、ハイグレ魔王様に楯突くアクション仮面があっさりやられちゃうところなんて最高だったよね。」
「えっ?あれってアクション仮面が勝つんじゃ?」
「うわ、お姉ちゃん、大丈夫?熱があるんじゃない?」
「えっ?」
だめだ、全然話がかみ合わない。お父さんとお母さんとつかさで私をからかってるようには見えないし・・・・。
「おはよう〜。」
「おはよう〜。」
いのりお姉ちゃんとまつりお姉ちゃんがリビングに入ってくる。青とオレンジのハイレグ水着を着ている。
「ほら、二人とも、ちゃんと挨拶をしなさい。」
「もう、面倒くさいなあ。ハイグレの時間には毎日やってるのに・・・・。」
「ハイグレ人間として当り前のことだぞ?」
「はーい。ハイグレ!ハイグレ!」
お姉ちゃんたちはコマネチポーズをとる。
お父さんやお母さんはともかく、お姉ちゃんたちまで?
そっか、私、なぜだか分からないけどハイグレ魔王の世界に迷い込んじゃったみたい・・・。
とにかく、情報を集めないとどうしようもないわね。学校がどうなっているのか・・・・。



私とつかさはカバンを持って家を出る。私はハイレグの水着姿なのが落ち着かなくて、そわそわしている。
っていうか、何で水着なのに靴下と靴はちゃんと履くんだか・・・・。
「おはよう、お二人さん。ハイグレ!ハイグレ!」
近所のおじさんが声をかけてくる。やっぱりハイレグ水着を着ている。もうこうなったらヤケよ!
「おはようございます、ハイグレ!ハイグレ!」
私は大きくコマネチポーズをとって挨拶をした。
町を歩く人々、駅にいる通勤客、みんながハイレグ水着を着ている。
私は変な気分になったけど、何とかつっこまずにこらえた。

校門の手前でこなたとみゆきに出会った。
「おはよう、かがみん、つかさ。ハイグレ!ハイグレ!」
「おはようございます、かがみさん、つかささん。ハイグレ!ハイグレ!」
こなたは水色、みゆきは白のハイレグ水着姿だった。
「かがみん、元気ないね?」
「べ、別に!」
「お姉ちゃん、今日は朝から変なんだよ〜。」
「変じゃない!」
私は怒って先に行く。

「オッス、柊。ハイグレ!ハイグレ!」
「おはよう、柊ちゃん。ハイグレ!ハイグレ!」
日下部と峰岸が挨拶をしてくる。日下部は黄緑、峰岸は水色のハイレグ姿だった。
「おはよう。ハイグレ!ハイグレ!」
私はそれだけ言って席に着いた。登校しただけなのにずいぶん疲れた気がする。


今は8時25分を回っている。
「そろそろ儀式の時間だぜ、柊。早く外に出ようぜ。」
「えっ?儀式?」
「そう、早く出ましょう、柊ちゃん。」
私は二人に連れられて他のクラスメイトと一緒に校庭に出る。
外には全校生徒が集まっている。
「今日は水曜日ですので、ハイグレ水着の日です。皆さんいつもより心をこめてハイグレポーズをとりましょう。」
校長先生が壇上で話している。
「それでは、今日もハイグレ魔王様に感謝のポーズをしましょう。ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
全校生徒が一斉にハイグレポーズをとる。私もやらないとまずいんだろうな・・・・。
「ハイグレ!ハイグレ!」
私も負けじと大声を上げ、腕を必死に動かす。
「ハイグレ!ハイグレ!(べ、別にやりたくてやってるわけじゃないわよ!)」
肩が痛くなってくるが、やめるわけにはいかない。一心不乱にポーズをとり続ける。
その時間が30分続いた。


9時から一時間目が始まった。
「(一時間目は世界史か・・・・。ハイグレ世界に合った授業になるのかな?)」
そんな事を考えているうちに黒井先生が入ってきた。イメージ通り黒のハイグレ姿だった。
「起立!」
号令係の掛け声がするので立ち上がる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
黒井先生がハイグレポーズをとる。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
みんなもポーズをとって返す。
「着席!」

「さて、今日はハイグレ魔王様の歴史、第四章132ページからや。教科書を開いて。」
私はカバンの中を探ってみると、昨日の晩に入れていた教科書とは別のハイグレ魔王史の教科書が入っている。
急いで教科書の該当ページを開く。
「ハイグレ魔王様はハイグレ歴11938年802日、西暦にして1897年12月2日にハラマキ星で激戦の末にハイグレ化に成功したんや。峰岸、こん時の戦いは俗になんて言われてるか分かるか?」
「はい!敵の指導者の名前をとってハラマキレディースの戦いです!」
「そうや。その通りや。そん時にハラマキレディー様たちはハイグレ魔王様に従うことになったんやな。」
黒井先生は板書をしてチェックを入れる。先生はテストに出す重要項目には大きく丸をつけるくせがあった。
「ここ、テストに出るで〜。しっかり背後関係も押さえとくんやで?」
こんな感じで授業が進んでいく。
「・・・・・・・・・・・・で、西暦1922年ハラマキレディー様はパラレル世界を行き来することによって戦力強化をすることを提唱したんや。」
黒井先生が居眠りをしている日下部を教科書で殴ってから続きをしゃべる。
「で、ハイグレパラレル計画で、初めてたどりついた第百八パラレル世界の地球において新撰組を戦力に加えることができたんや。柊、こん時に新撰組が主体になって設立した組織の名前は覚えとるか?」
えっ、私?
「すみません・・・・。わかりません。」
「ちゃんと予習しとったんか?ハイグレ抜刀隊や。しっかり覚えとき。」
その後も延々とハイグレ魔王の歴史について講義が続き、チャイムが鳴った。
「今日はここまでや。次回は世にいうアクション仮面の屈辱から始めるで。しっかり教科書を見ておくように。」
礼をした後、黒井先生は教室を出ていく。

「ふ〜、疲れた〜。」
私は机に突っ伏す。ハイレグ水着を着ていると机の冷たさが直に伝わってくる。
「柊ちゃん、珍しいね。いつもだったらちゃんと答えてるのに。」
「おい、柊。私と同じじゃないか?」
「日下部と同格に扱われるなんてなんか癪だわ・・・・。」
「いいじゃねえか。柊ってば私とスタイル同じくらいなんだし、頭の良さが同じなら同格だって。」
「う、うるさいわね!」
「そういえば柊ちゃん、最近少し太ったんじゃない?」
峰岸が私のおなかをじっと見つめる。
「うっ、言わないでよ!」
ハイレグ水着って体のラインがはっきりうつるから、ちょっとヤバいかも。そういえば毛の処理とかどうするんだろう・・・。今はとりあえず大丈夫みたいだけど。
「そ、そんなことより次の授業の準備をしなさい!」
私は二人を必死で追い払った。



二時間目はハイグレ地政学の授業。
「今日はハイグレポーズのギャップについて勉強します。」
先生がパワーポイントに二枚の映像を映す。
「では皆さん。海でハイグレポーズをとるのと、山でハイグレポーズをとるのと、どちらのほうが自然だと思いますか?」
この二つだったら当然海だろう。
「皆さんわかると思いますが、当然海ですね。それについて・・・。」
先生が板書をするのですかさず写していく。
「つまり、自然条件や周囲環境によってギャップが生じるわけです。普通はギャップのないほうを選ぼうとするでしょうが、ここであえてギャップのある方を選ぶこともあります。」
先生が振り返り、男子生徒を指名する。
「あなたは教室内で普通にハイグレポーズをとる女子と机の上に乗ってハイグレポーズをとる女子のどちらに注目しますか?」
「机に乗っている方です。」
「そうですね。ハイグレ人間として目立ちたいという欲求及び目立つという事実がギャップをあえて選択させるという作用も持っています。」
先生はまた二枚の映像を出す。
「ハイグレポーズをとるのが女性の場合、目立つ要素の中にある萌え要素というものも重要になってきます。公園と神社を例にとって説明しましょう。では柊さん、前に出て協力してもらえますか?」
「は、はい。」
私はよく分からないけど前に出る。
「では、まず公園の映像の前でハイグレポーズをとってみてください。」
えっ?何で?でもみんなの前じゃ逆らえないし・・・。
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
私は言われるがままにハイグレポーズをとる。
「はい、よろしい。では、次は神社の映像の前でハイグレポーズをとってみてください。」
「ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
「公園より神社のほうがギャップを感じますね?その上で男性のニーズが高い神社という場面を選んでいるところに萌えがあります。で、その体系別に表にまとめると・・・・」
私を席に戻してまた説明を始める。何か少し納得できちゃうような・・・・・。って、私は何を考えてるのよ!ハイグレ人間の生活に毒されている。
キーンコーンカーンコーン
「今日の授業はここまでです。お疲れ様でした。」
ハイグレポーズをとって授業が終わる。

「次の授業は水泳だから早く着替えにいこうぜ、柊。」
「えっ?水泳なのに着替えるの?」
「何言ってるんだよ。これはハイグレ魔王様に頂いた服じゃないかよ。」
「なっ!?」
「何驚いてるんだよ、柊。お前だってちゃんと用意してきてるじゃん。」
日下部が私のプール道具を漁っている。
「みさちゃん、柊ちゃん、まだ?」
峰岸が待ちくたびれてやってくる。
「おう、今行くぜ。」
私は日下部に引っ張られて更衣室に向かった。


なんか変。何で元々水着を着てるのにその上でスクール水着に着替えなきゃいけないのよ!ってか、このスクール水着もハイレグだし・・・。
「よし、準備体操終わり!全員整列しろ!」
先生が全員を集める。
「今日は水中射撃訓練を行う。全員ハイグレ銃の使い方は分かってるか?」
「はーい。」
全員が返事をする。えっ?まずい、どうしよう。私、使い方なんて分からないわよ。とりあえずみんなのまねをしてごまかそう。
「まずハイグレ銃を肩にかけて飛び込むところから始めるぞ。その後水中歩行をしながら反対側まで行け。」
先生がまず模範演技を見せる。で、その後次々と生徒がプールに飛び込んでいく。
「次!」
やば、私たちの列の番だ。私はとりあえず銃を担いでプールにとびこむ。
「あれ、苦しくない?」
プールの中にいるはずなのに息ができる。これってもしかしてハイグレ人間の力?
水の抵抗をはねのけ、私は何なく向こう岸に到着する。
その訓練を何回か繰り返した後、今度は水中から顔だけ出して射撃をする練習になった。
「くっ、水中からだと不安定で当たらないわね・・・・。」
標的に当てるのに苦戦したが、最後に一発だけ当てることができた。

「ふー、疲れたー。」
私たちは着替えて教室に戻ってきた。
「今日はずいぶんハードだったよな〜。」
「そう?私は全然・・・。ハードってほどじゃないでしょ?」
「何言ってるんだよ、私なんて足が吊りかけたくらいなんだってば!」
「いや、日下部が運動不足なだけでしょ?」
「うう・・・・ハイグレ人間として情けない・・・・。」


四時間目はハイグレ家庭科の時間。
「では、今日から制作課題・私服のハイグレ水着を始めます。」
ミシンを使ってハイレグ水着を作るみたいね。
「いたっ!」
「ちょっと、大丈夫、峰岸?」
峰岸の指が針に当たって血が出ていた。
「平気平気。」
「そう?峰岸は何を作ってるの?」
「うーん、コスモスの花柄のハイグレ水着にしようと思うんだけど、この花びらの部分が難しくて・・・。」
「ふーん。って、おわっ!!」
よそ見をしていたら関係部分まで縫ってしまった。
「おい、柊。それ何だよ?豚か?牛か?」
「猫よ!」
悪かったわね、こういうの苦手で!
「ふう〜。」
ハイレグ水着って生地が薄いから扱うのが大変ね。悪戦苦闘していると時間が経つのが早く感じる。
そのうちにチャイムが鳴り、昼休みになった。



「今日は週に一度のお楽しみなのだ!!」
隣のクラスでみんなと一緒にお昼を食べている時、こなたがいきなり席を立って大声で言い出した。
「何がよ?」
「嫌ですねえ、奥さん。」
奥さんじゃないわよ。心の中でつっこむ。
「午後のハイグレ兵士訓練のことだよ。今日は水曜だからシュミレーション訓練があるじゃん?それが楽しみなんだよ。」
「こなちゃん、シューティングゲームとか得意だもんね。うらやましいよ〜。」
「本当ですね。泉さんがいると百人力ですよねー。」
「かがみん、今日はあたしたちと組まない?今日はクラス枠とか無いし。」
「はっ?まあ、別にいいけど・・・・。」
「よっしゃ!今日はシミュレーション訓練の最短KO記録を更新するぞ〜。」
こなたが一人ではしゃいでいた。

「失礼します〜。」
「失礼します。」
ゆたかちゃんとみなみちゃんがやってきた。ピンクと緑・・・・、なんだか予想通りの組み合わせね。
「どうしたの、ゆーちゃん?」
「こなたお姉ちゃん、はい、これ。定期券忘れちゃダメだよ?」
ゆたかちゃんに定期入れを渡されている。
「おお、すまないねえ、ゆーちゃん。駅前で気づいたけどめんどくさくて戻らなかったんだよ〜。」
「あんた、家から駅まで近いんだから戻りなさいよ。」

「みゆきさん、あの、自分で作ってみたんですけど、食べてください。」
みなみちゃんがハイグレ魔王の顔をしたクッキーをみゆきに渡していた。
「ありがとうございます、みなみさん。とってもおいしそうですね。」
「いえ、そんな・・・・。」
みなみちゃんはそのままみゆきを見ていた。何してるんだろう?その彼女の肩にこなたが手をかける。
「みなみちゃん、ハイグレ人間に必要なのは魔王様への忠誠心。胸のあるなしなんて魔王様は気にしないよ?」
「・・・・・・・・・!!」
みなみちゃんの顔が蒼白になる。こなた、あんた何を言ってるのよ・・・・。


五時間目、ハイグレ人間の訓練の時間。
オマル型飛行艇に乗って、反復練習をする。初めて乗るけど、操作は簡単だしお尻も痛くならない。
で、そうこうするうちに仮想シミュレーション空間での模擬戦闘になる。
「お姉ちゃん〜。」
つかさたちが呼んでいるので、そっちの方へ行く。
「今日はどんな敵さんが待ち構えていることやら。わくわく。」
「ねえ、みゆき。どんな相手と戦うかって全然分からないの?」
「そうですね、チームごとに全く別々ですから。パンスト団員になるためには、いついかなる時でも最善を尽くせるようにしないといけないそうです。」
「そうなんだ・・・。」
悪の組織のくせに妙なところだけリアリティーがあるわね。
「次のグループ、前へ。」
あ、あたしたちの番だ。ワープ機に乗ると、周囲の世界が変わっていく・・・・。

「これは・・・・・・・雪?」
オマルに乗って上から見ていると、一面の銀世界が美しい。
「今回の目標は九人ですね。」
みゆきがレーダーを見ながら言う。
「全員ゲームオーバーになったら恐ろしい罰が待ってるからね。気を付けて行こう。」
「恐ろしい罰?」
「うん、口に出すことすらためらわれる罰だよ。かがみんもやられないようにね。」
「よく分からないけど、善処するわ。」
こうして私たちの模擬訓練が始まった。



「この世界って何?」
「ここは・・・第188仮想世界ですね。」
「まずはあの丘に行ってみようよ。目標反応が二つあるし。」
私たちはオマルに乗り、ハイグレ銃を担いでいく。

丘に着くと二人の人影がある。
「うわ、何よ、あれ!ちょっと美汐!」
「宇宙人さん?私、初めて見た。ねえ、真琴もそう思わない?」
「じゃなくて、逃げるわよ!」
真琴は美汐の手を引いて丘を駆け下りていく。
「待てー、逃がすか〜。」
こなたは楽しそうにハイグレ銃を撃ちながら追っていく。
私もやんなきゃいけないのよね?なんか気が引けるけど、まあ、仮想空間だし、いっか。
「あうぅ!!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
いつの間にかこなたがハイグレ銃で獲物(真琴)をしとめていた。
「真琴!!」
みゆきが背後の上空から美汐に銃口を向けていた。
「ごめんなさい。」
みゆきが引き金を引くと、美汐もハイグレ人間になった。

「むふふ、出だしは好調。」
「ううー、こなちゃんとゆきちゃんに先越されちゃった。私も頑張らなきゃ。」
ツッコミたいけど、ツッコめない非日常的な会話。
「あっ、目標反応が四つありますね。」
「町の東西に二つずつね。」
「二手に分かれよっか。」
私たちはグーパーで割り振りを決める。結局、私とみゆき、こなたとつかさになった。

「この辺にいるはずだけど・・・・。」
私とみゆきはレーダーを頼りに街の中を探す。人っ子一人いないけど、これって仮想空間だからかしら?
「あっ、あれは・・・。」
道路を歩いてこちらに向かってくる二人の女子高生がいた。
「あれが目標ですね。行きましょう、かがみさん。」
「う、うん。」

「はえ〜、何だろう、あれ。」
「分からない。」
「あははー、何だか佐祐理たちを狙ってるみたいだね。」
見つかってるならしょうがないか・・・。私たちは上空から銃を構える。
「佐祐理は逃げて。ここは危ない。」
「舞は?」
「私は魔物を討つ者だから。」
あっ、私たちって魔物扱いなんだ・・・。背の高い女子が剣を抜いて私たちに迫ってくる。うわっ、照準が合わない!!
「はあっ!!」
私とみゆきは間一髪で剣先から逃れる。その間に佐祐理が私たちと反対の方向に走っていく。
「逃がしません!」
みゆきが逃げようとする佐祐理に銃口を向ける。
「佐祐理を傷つけることは許さない!」
舞がみゆきに向けて突進する。
「くっ・・・。」
「はあああっ!!」
「きゃっ!」
みゆきはオマルごと弾き飛ばされる。
「みゆき!こんのっ!!」
私はみゆきと舞の間に割って入り、彼女にハイグレ銃を突き付ける。
彼女はジャンプしてこちらに接近していたので避けるに避けられない。
「ごめんねっ!」
私はハイグレ銃を放つ。
「きゃあああああっ!!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
舞はハイグレ水着を着てポーズを取る。勝った・・・・。
「舞!!」
物陰に隠れていた佐祐理が叫ぶ。やっぱり逃げないで見てたのね。
「あ、あの・・・・。」
佐祐理が恐怖のあまり立ち尽くす。私は彼女にハイグレ銃を浴びせる。
「きゃああ!!ハイグレ!ハイグレ!ハイグレ!」
彼女はハイグレ水着を着てポーズをとる。
そういえば、こんな薄い格好をしているのに寒くないわね。これもハイグレ人間の力かしら?

「おおい、かがみん、みゆきさーん。」
こなたとつかさがやってくる。
「うまくいったみたいだね、お姉ちゃん。」
「ええ、まあ。そっちは?」
「いやあ、美坂姉妹の姉の方が強くてね。つかさがメリケンサックで吹き飛ばされた時は焦ったよ。」
「うん、ちょっと痛かったかも。でも、妹の栞ちゃんの方は私がハイグレ人間にしたんだよ?」
「では、後残るは三人ですね。そのうちの二人が近くにいるようですが。」
みゆきがレーダーを見る。
「よっし、レッツゴー!」
オマルに乗って、私たちは目的地に向かう。

「わっ、何、あれ?」
「うわああ、きっとお化けだよ。僕たち食べられちゃうんだよ!」
魔物の次はお化けか・・・。これに乗ってると変な風にしか見えないのね・・・。
ハイグレ銃を放って二人をけん制する。
「逃げるよ、あゆちゃん!」
「待って、名雪さん!」
名雪があゆのてを取って走り出す。私たちは急いで追いかける。
「くっ、なんて速いの!」
ぐんぐん距離が離れていく。
「みんな、フルスロットル!」
三人がオマルのハンドルを手前に引く。そうするとスピードが上がるみたい。
少しずつだけど前を行く二人に追いついていく。彼女たちのそばにハイグレ光線が飛ぶようになっている。
「んっ?何かしら、これ?」
ハンドルについているボタンを押してみる。オマルの頭に付いている頭が二つに分かれ、前に伸びていく。
「うぐぅ!」
アヒルのくちばしに挟まれ、あゆが転ぶ。
「ナイス、かがみん!」
私たちはすかさず接近していく。
「あゆちゃん、大丈夫?」
「うぐぅ、僕、もう、走れないよ・・・・。」
名雪は鍛えているからいいだろうけど、あゆにはもう限界のようだ。
私たちはハイグレ銃を構える。
「うぐぅ、来ないでー!!」
「誰か、誰か助けて!!」
二人が叫ぶ。
「了承。」
その言葉がどこから聞こえた。その瞬間、周囲は眩しい光に包まれた。



「うわあああっ!!」
私たちはしたたかに壁に頭を打ち付ける。煙が収まるとそこにはあの三人はいなかった。
「みんな、無事?」
「は、はい。」
「私も大丈夫。」
みゆきとこなたが答える。
「あ、あれ?オマルが言うことを聞かない!?」
つかさのオマルから煙が出ている。つかさがガチャガチャと動かすが、全然だめ。
ボンッ
オマルが爆発してつかさは下に落ちてしまった。
「ゲームオーバーだね、つかさ。」
「うう、ごめん。」
「仕方ないですね。三人で追いましょう。」
私たちはつかさを置いて追跡を開始した。

「見つけた!」
レーダーを頼りに三人の逃げ先を探し当てた。私は接近しようとするが、こなたに止められた。
「気をつけて、かがみん。またミサイルパンの餌食にされちゃうよ?」
「ミサイルパン?」
「そっ。あれが直撃したらゲームオーバーだからね。」
「それでしたら、誰か一人が囮になってその間に他の二人でハイグレ化するというのはどうでしょう?」
「一人を犠牲にするのね?肉を切って骨を断つ作戦か・・・。」
「じゃあ、じゃんけんで決めよう。」
「「「ジャンケンポン!」」」
私はグー、みゆきもグー、こなたがチョキ。
「げっ、私?やだなあ・・・。」
「公平な勝負よ。早く行きなさい。」
「ちぇっ。」
こなたが渋々逃げている三人に近づいていく。

こなたがハイグレ銃を構える。そこに秋子さんの投げるミサイルパン(早苗パン?)が次々に見舞われる。
「うわあああっ!!」
こなたのオマルが爆発し、ゲームオーバー。
「かがみさん、今です!」
「オーケー!!」
みゆきは秋子さんに、私はあゆにハイグレ光線を命中させる。
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「お母さん!?あゆちゃん!?」
あとは名雪ただ一人。信じられないという目をしている。

レイプ目ってやつかしら?
「よくもお母さんを!!」
名雪が懐からジャムの瓶を取り出して投げる。
「きゃあ!!」
みゆきに当たって中身がオマルの胴体に飛び散る。
「あ、あれ?す、すみません!!」
みゆきのオマルがいきなり爆発した。
「あとは、お願いします・・・。」
みゆきはこなたの隣で気絶した。
「ごめんね!」
私は名雪にハイグレ光線を命中させた。
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」

「ふう、終ったわね。」
結局残ったのは私一人か。
「あっ・・・。」
周りの風景が真っ白になる。もやが晴れると仮想シミュレーション機の中に戻っていた。

「いやあ、今回はかがみ様のおかげだったね。」
「そうですね。危うく全滅するところでした。」
「私、また一番最初にやられちゃったよ〜。こんなんじゃ立派なパンスト団員になれないよ。」
三人が口々に感想を言っている。
「んっ?あれは何?」
校庭にたくさんの十字架型の木が埋められ、生徒が括りつけられている。よく見ると全員ビキニ姿だった。
「なにって、罰に決まってるじゃない、お姉ちゃん。」
「罰?」
「そうだよ。ゲームオーバーになってチームが全滅したら、ああやって一時間の間ビキニを着せられて晒し者にされちゃうんじゃない。」
「ビキニ姿で晒し者にされる?ハイレグ水着と対して変わらないじゃない。」
「なっ!?何を言ってるの、お姉ちゃん!?」
つかさがドン引きしていた。
「えっ?おかしいこと言った?」
「かがみん、やっぱり今日おかしいよ?体調悪いんじゃない?」
「えっ?えっ?」
「かがみさん、ハイグレ人間にとってビキニを着せられることは裸を見られることよりも屈辱なんですよ?」
「そうなの?」
「しっかりしてよ、お姉ちゃん。」
「ごめん・・・。」
何で私が謝んなきゃいけないのよ!でも、この空気は逆らえる雰囲気じゃないし・・・。

「あ、お姉ちゃんたちだ。」
ゆたかちゃんのグループがこっちにやってくる。
「おお、ゆーちゃん。首尾はいかがかね?」
「うん、平気だったよ。みなみちゃんが守ってくれたから。」
「ゆたかに怪我がなくてよかった。」
「そっちのグループはどの仮想世界に行ったの?」
「私たちは海鳴市ってところに行ってきたんだよ。」
「うわあああ、小早川さん、やめて!その話はしないで!!」
田村さんがいきなり頭を抱えてしゃがみこんでしまった。
「ひよりはー、SLBで一瞬で吹き飛ばされてしまったのがトラウマのようですねー。」
「うわああああ!!」
パティさんが説明を入れて、田村さんを撃沈する。

「あ、日下部、峰岸。あんたたち、何やってるの?」
日下部と峰岸がビキニ姿で晒し者にされていた。
「うわ、柊!頼む、武士の情けで見ないでくれ!」
「あたし、武士じゃないんだけど。っていうか、ゲームオーバーになったのね?」
「仕方がなかったのよ、柊ちゃん。一瞬のすきを突かれて竜破斬を撃たれちゃって・・・。なんて屈辱的な恰好なのかしら・・・。」
ハイグレ人間にとってビキニは天敵らしい。この二人がこんなに大人しくなっちゃうなんて。

そんなこんなで授業が終わり、ホームルームも済んだ。
「かがみん、今日予定ある?」
「別に。」
ハイグレ人間の世界に迷い込んでよく分からないのにあるわけがない。
「じゃ、つかさとみゆきさんと一緒に買い物に行こうよ。」
「どうせあんたの趣味のものでしょ?」
「ううん。みゆきさんも買うものがあるって。」
「分かったわよ。暇だし行くわよ。」
そして私たちは校門を出て駅前に向かった。



「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
駅前で多くの人たちが一心不乱にハイグレポーズを取っている。私たちもその中に混じってハイグレポーズをとる。
しばらくしてから、私たちは服屋に行った。
「みゆきは何が欲しいの?」
「最近寒くなってきましたから防寒具を買おうと思いまして。」
こんな露出の多い格好で防寒具なんてなんか矛盾してる・・・。三人は私をよそに良さそうなのを物色し始めた。
「ねえねえ、ゆきちゃん。これなんかどうかな?」
「いやいや、こっちのほうがいいと思うよ?」
二人がパーカーを取り出す。っていうか、パーカー?防寒具なのに?やべえ、つっこみてー。でも、この世界でそれやったら負けだろうなあ・・・。
かれこれ三十分かかって商品を決め、代金を支払って外に出た。
「この後はどうするの?このまま帰る?」
「今日は新作の発売日だよ?一緒に行こう?」
「やっぱそうなるのね。」
という訳で四人でアニメ店に行く。

「こなた、今日は何を買うつもりなのよ?」
「ふふふっ、これなのだよ、かがみん。じゃじゃじゃーん!」
こなたが手に持っている白いハイレグを着たフィギュアを私に見せる。
「ふふふっ、新商品の『CLANNAD 坂上智代ver』だよ!このコマネチの角度がたまらない一品なんだよ。かがみん、興味無い?」
「無いわよ。」
「じゃあ、『フルメタル・パニック?ふもっふ 千鳥かなめver2』は?ver1は青だったけど、こっちは赤だから買う価値はあると思うよ?」
うっ、ちょっと欲しいかも。
「うわー、これいいかもー。」
近くでつかさが声を上げている。
「どうしたの、つかさ?」
「これこれ、お姉ちゃん。日向夏美のハイグレキーホルダー。買っちゃおうかな?」
「あんた、そうやって無駄使いしてるから月末に苦しくなるんじゃないの?少しは我慢しなさい。」
「えー、でもー。」
「みゆきも何か言ってやりなさい。」
傍らにいるみゆきに言ったが、本人は聞いていなかった。
「えっ?あ、すみません。何ですか?」
「あんたも何か見てたの?」
「はい。このハイグレ詩集が気になりまして。」
みゆきはパラッとページをめくる。
「ハイグレ人間はなお麗しく、麗しく・・・・。何ていい音の響きなんでしょう。」
「なんかツッコむ気も起きなくなってきた・・・。」

「じゃーねー。」
「それではまた明日。」
駅でこなたとみゆきと別れる。私とつかさは電車に乗って帰宅する。
自宅の神社に入ろうとしたところで男の人に呼び止められた。
「あのー、すみません。」
「はい、何ですか?」
見たところ、普通の人。一体なんだろう?
「実は私、小神あきら様のアシスタントをつとめる白石です。番組らっきー☆ちゃんねるで神社巡りの企画をしていまして。」
「そういうことでしたら父に言ってください。私たちに言われても困ります。」
「いえ、もう許可は取っています。それで、女子高生のあなたたちに鳥居の前であきら様と一緒にハイグレポーズを取っていただきたいんです。」
白石さんの後ろから一人の小柄な女性がやってくる。
「ちょっと、白石!いつまでやってんのよ!!」
「あ、あきら様。もう少し、もう少しだけ待ってください。」
白石さんはあきら様にぺこぺこしている。
「町ゆく人たちと一緒にハイグレポーズを取る企画なんで、ご協力よろしくお願いします!」
「どうする、つかさ?」
「協力してあげてもいいんじゃないかな?断ったらこの人がかわいそうだし。」
「仕方無いわね。」

「カメラさん、照明さん、いいですか?」
「おお!」
はあ、何でこんなことになってんだか・・・。
「では、あきら様は真ん中へ・・・。」
あきら様が真ん中、その脇を私たちが固める。そういえば、今のあきら様は赤のハイレグを着ている。いつもの袖ありの衣装じゃないから新鮮な気分ね。
「では、行きますよ!テイク!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」

「お疲れ様でした〜。」
このポーズの場面を結局三回も取り直した。スタッフたちがお礼を述べて引き上げていく。
「さて、私たちも帰るか。」

夕食の後、私はベッドの上で突っ伏していた。一人になってようやく落ち着いて今まであったことを整理できる。
「なんでこんな世界になっちゃったんだろう?」
自問自答してみる。でも、分かるわけがない。肉体的にも精神的にも疲れていて全く頭が働かない。
「あっ、日記書かなきゃ・・・・・。でも、瞼が重い・・・・・。」
そのまま私は深い眠りに落ちて行った。



雀が外で鳴いている。私は浅い眠りの中でまどろんでいた。
「う、うん・・・・。」
私は起き上った。
「あれ、私、昨日・・・。」
私は昨日の記憶を掘り起こしてみる。朝起きたらみんながハイグレ人間になっていて、それで・・・・。
「!!」
私は自分の体を触ってみる。普通のパジャマを着ていた。
「あれ、どうなってるの?」
服の下もいつもの下着。制服がいつものところにかかっている。当然普通のだ。
「??」
今までのは全部夢?だとしたらずいぶんとリアルな夢だ。
とりあえず洗面所へ顔を洗いに行こう。だが、ベッドから降りようとすると肩に激痛が走った。
「いたっ・・・・。やっぱり夢じゃない?」
歩き出すと足にも痛みが走った。完全に筋肉痛だ。やっぱり、あれだけ動かしたから・・・。
洗面所に行くとつかさが先にいた。
「あっ、おはよう、お姉ちゃん。」
「おはよう・・・・。」
「どうしたの?元気ないね。」
「ねえ、つかさ。変なこと聞くかもしれないけど、昨日のこと覚えてる?」
「昨日?普通に学校でしょ?」
「その先は?」
「えっ?水曜日だから、リーディング、現代文、数学V、体育、世界史、政治経済だったよ。」
「ちょっと待って!今日って何曜日?」
「何言ってるの?昨日水曜日だったんだから木曜日でしょ?って、お姉ちゃん!!」
私は一目散にリビングに駆けて行った。テーブルの上に置いてある新聞の日付欄を見てみる。
「木曜日・・・・。そんなバカな・・・・。」
近くにいたお父さんに声をかける。
「ねえ、お父さん。昨日何をしてたから覚えてる?」
「昨日?神社の納屋の整理をしてたよ?」
「お母さんは?」
「町内会の人たちと町の掃除をしてたわよ?」
「他には?変わったことは?」
お父さんもお母さんも首をかしげる。
「別にこれといって・・・。」
これではっきりした。あの世界はどうしてだかわからないけど、私以外の人は覚えていない。でなければ、水曜日が空白になるはずがない。私が見たのが夢でない証拠はこの体の痛みだ。

私とつかさは学校に行く。道行く人たちもみんな元通りだ。
「おはよう、かがみん、つかさ。」
「おはようございます、お二人とも。」
こなたとみゆきが挨拶をしてくる。
「おはよう・・・。ねえ、あなたたち・・・。」
私はお父さんとお母さんにしたのと同じ質問をする。二人とも頭にはてなマークが浮かんでいた。

「どうしてなんだろう・・・。」
夕食を食べた後、私はベッドの上で考えていた。
一日中このことばかり考えていて、勉強に全く身が入らなかった。
昼休みにゆたかちゃんたちに聞いても同じ反応。全く記憶がない。でも、どうして私だけおぼえてるんだろう・・・。
そんな事を考えているうちに眠くなってくる。
「あ、日記書かなきゃ・・・。」
昨日はなんだかんだでバタバタしてて書けなかった。昨日の分もまとめて書かないと・・・。
私は日記帳を開く。ふと一昨日のページに目が移った。
「!!」
私は自分が書いた一つの文章に目をとめた。
『放課後はいつもの四人でこなたの家に行った。おじさんが貰いもののお菓子を出してくれたのが美味しかった。その後、こなたがクレヨンしんちゃんを見ようと言い出し、アクション仮面VSlハイグレ魔王を見た。こなたがハイグレ人間になって暮らして見たいとか言っていたけど、うーん、どうなんだろう?まあ、一度くらいならいいかも。明日目が覚めたらハイグレ人間の世界になっているとかだったら面白そう。』
私はその文章を何度も読み返してみる。
「まさか・・・。」
私は全てのページを探ってみると、最後のページにこんな文章が書いてあった。
『この日記帳は私の宝物にしてハイグレ世界への招待状。あなたがハイグレ人間になりたいと思った時、これを使いなさい。ハイグレパワーを集めてくれれば本当にあなたを支配してあげる日が来るわ。 ハイグレ魔王』
それを見た私は、今日のスペースに明日はハイグレ人間の世界にしてくださいと無意識のうちに書き込んでいた。
「でも、もし本当になったら・・・・。」
私は困るのだろうか?なぜ?思い返してみるとハイグレ人間の世界はいろいろ刺激があって面白かった。受験勉強もなく、差別もない平和な世界・・・。そう、何を不満に思うことがあるんだろう?だって、あの世界なら退屈がないじゃない。
「もしかして、私、ハイグレ人間に洗脳されてる・・・・?」
でも、それでもいいかもと思う自分もいる。
「ま、明日そうなってればだけどね。」
私はベッドに入り眠りについた。

次の朝・・・・
私は目が覚めると、ハイグレ水着を着ていた。
「戻ってきたんだ・・・。」
そう、ハイグレ人間の世界に。
とりあえずしばらくの間はハイグレの日と普通の日を交互に繰り返していこう。
「さてと、学校に行って、ハイグレライフを楽しむとしますか。」
私はハイグレへの期待を胸に学校へ行く支度を始めた。



MKD
2008年12月22日(月) 17時33分08秒 公開
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■作者からのメッセージ
勉強が忙しくなかなか更新できませんでしたが、ようやく完結させられました。
最近寒いですね。自分は寒いのが苦手なので、ハイグレ人間がうらやましいです。