ポケットモンスター めざせハイグレマスター!

ポケモンマスターを目指すため、旅を続けるサトシたち。次のジムに向かう途中に海辺の町に立ち寄ったが、既に日が暮れかけていた。
「海風が気持ちいいな〜。なあ、サトシ。ポケモンセンターに着いたら食事にしよう。」
「ああ、そうだな。」
「ピカピカ。」
サトシ、タケシ、ピカチュウが夕食を楽しみにしながら歩く。
「ねえ、この町の名前はなんて言うの?」
ヒカリが質問する。タケシがガイドブックを広げる。
「え〜、ああ、ここか。ハイグレタウンだな。シンオウ地方でも外れの方にあってあまり他の町との交流はないが、一年に一回特別なバトル大会を開いているそうだ。」
「へ〜。特殊なコーディネートで戦うバトル大会か〜。この大会の日付、明日と明後日じゃない?寄ってみましょうよ。」
ポケモンコーディネーターを目指すヒカリには興味のある大会だった。
「バトル大会か〜。よし、俺たちも出場しようぜ。なあ、ピカチュウ。」
「ピカッ!」
そんな訳でその日はポケモンセンターに泊まり、あくる日・・・。

「えっ?あなたたち、ハイグレタウン開催のバトル大会に出るの?」
ポケモンセンターのジョーイが眉をひそめる。
「どうかしたんですか?」
「い、いえ、別に・・・。ただ、あなたたちの年齢でその大会に出るのは早いんじゃないかと・・・。」
ジョーイはそわそわしながら、サトシたちにやめたほうがいいと促す。
「でも、バトルがあるんですよね?だったら、勉強にもなるし、俺も自分の育てたポケモンと戦ってみたいし・・・。」
「えっ?ポケモン?あっ、でも・・・・。」
その横からヒカリが腕時計を見せる。
「ちょっと、早くしないと出場時間に間に合わなくなるわよ!」
「うわっ!やばっ!」
サトシは朝食を一気に口の中に放り込み、リュックをしょって立ち上がる。
「ごちそうさまでした!じゃ、行ってきます!」
三人とピカチュウは慌てて走り出し、ポケモンセンターを出る。
「あ、あなたたち!待ちなさい!」
ジョーイは三人を引きとめようとしたが、その前に入口のドアが閉まる。
「どうしましょう・・・。まだ説明してないのに・・・。」
一人残されたジョーイはただただ困惑するのみだった。



会場には大勢の人がいた。総勢数百名になっている。
「うわ〜、すごい人ね〜。」
「きれいなお姉さんもいっぱいだ〜。」
ヒカリとタケシが感想を述べる。周囲には自分たちよりも年上の世代が多い。
「お〜い、サトシ〜、タケシ〜。」
人込みの中から聞き慣れた声が近づいてくる。ピカチュウが目を輝かせてその人物に飛びつく。
「カスミ!!」
ハナダジムリーダーのカスミだった。しばらく見ない間に随分と大人びていた。
「久しぶりね〜。」
「ああ、カスミもな。」
「ところで、あんたたち、なんでこんなところにいるの?」
「あたしたちはハイグレタウンバトル大会に来たの。」
ヒカリが答える。カスミは怪訝な顔をする。
「どうしたんだ?」
タケシが後を促す。
「あんたたち、もしかしてポケモンバトル大会だと思って来たんじゃないでしょうね?」
「ああ、そうだけど。」
カスミが大きなため息をつく。完全に呆れかえった表情をしている。
「このバトル大会はポケモンバトルの大会じゃないわよ?ちゃんと説明読まなかったの?」
タケシが慌ててガイドブックを取り出して該当ページを開く。
「なお、このバトル大会はポケモンバトルではありません。間違える人が毎年必ず出るので注意のこと。なにいっ!!」
「じゃあ、なんのバトル大会なの?」
「ハイグレバトル大会。人間をモンスターボールで捕まえて、その人を第三形態のハイグレ人間にして優劣を競う戦い。この町の伝統行事よ?」
「ハイグレ人間って何?」
「ハイレグ水着を着たハイグレ人間。男でも女でも関係なく『ハイグレッ』って叫びながらコマネチポーズをとるの。」
「うわ〜、全然ポケモン大会と違う所に来ちゃったなあ。」
サトシががっかりする。
「まったく、お子様がいるところじゃないわ。さっさと帰りなさい。」
「なら、カスミはなんでいるんだよ?お前だってお子様だろ?」
カスミはサトシを殴ってから答える。
「あたしだって来たくて来たんじゃないわよ!!ジムリーダーの研修旅行でたまたま寄っただけよ!!」
「研修旅行?」
「そうよ。ジム経営について学び合う研修よ。でも、今日明日は自由行動だったから、暇をつぶせそうなここに寄ったのよ。」

「お〜い!!サトシー!!」
また聞き慣れた声が聞こえてくる。ピカチュウがまたその声の方角に走りだす。
「はあ、はあ・・・。サトシ〜。久しぶりかも〜。」
ハルカだった。今は一人で旅をしているはず。なぜここに、という疑問がサトシに湧いた。
「お前・・・まさか特殊なコーディネートとかいう文章に惹かれてここに来たのか?」
「よく分かったわね。ポケモンコーディネーターを目指す私には他のポケモンのコーディネートを勉強する必要があるの。」
ハルカは胸を張って答える。その答えには微塵も揺らぎはない。
「ここでやるのはポケモン大会じゃないぞ?ちゃんと説明文読まなかっただろ?」
「あんただって人の事言えないでしょ・・・。」
カスミが横からツッコミを入れた。類は友を呼ぶ、という言葉をまざまざと見せつけられた気分だった。

まもなく開会のために担当者がやってきた。
「さて、お集まりの皆さん。本日はハイグレタウン伝統のハイグレバトル大会にお越しいただきましてありがとうございます。では、まず最初に慣例に従いまして、閉会までゲートを閉めさせていただきます。急患の場合を除いては一切出られませんので、ご了承ください。」
「サトシ!!早くしないと出られなくなるわよ!!」
「ああ!!」
しかし、人ゴミに飲み込まれて戻ることが出来ない。もがいているうちにゲートは閉じてしまった。
「仕方ない・・・。こうなったらポケモン勝負じゃなくてもやってやるぜ!!なあ、ピカチュウ!!」
「ピカ?」
ピカチュウは状況を計りかねて首をかしげる。
「ちょっと、サトシ!!まさかあたしたちまでこんな大会に参加するの?」
「そうよそうよ!!あたし、ポケモンコーディネートが見られないなら興味がないわ!!」
ヒカリとハルカが抗議する。しかし、二人とも説明文を見落としていたので同罪だが。
「まあ・・・乗りかかった船だし、事情を説明して出してもらうのも面倒だし、いいじゃないか。」
タケシが下心見え見えの顔で強引にまとめる。こうして、サトシたちはハイグレタウンバトル大会に参加することになった。



ハイグレバトル大会のルール

1 開催委員会指定のエリア内で競技をで行う
2 係員から支給のハイグレボールを受け取る。使いきった場合には逐次追加支給する
3 参加者は係員の指示に従ってそれぞれ別のスタート位置に移動し、開始の合図とともに競技を開始する
4 遭遇した競技者をハイグレボールを使ってゲットする(以下ハイグレ人間候補と称する)
5 ハイグレ人間候補を所持する競技者をハイグレボールでゲットすることはできない
6 ハイグレ人間候補はゲットした競技者の命令に従って他の競技者のハイグレ人間候補と対戦する
7 ハイグレ人間候補はそれぞれ本人の性格に合わせた技を行使することができる
8 バトルに敗北した競技者はゲットしたハイグレ人間候補の所有権を失う
9 ハイグレ人間候補は普通の人間に戻る。但し、自分を支配した競技者に再びゲットされることはない    (逆は可能)
10ハイグレ人間候補は経験値をためることで第二形態(別個の進化)、
  第三形態(ハイグレ人間)に進化する
11最終的にゲットして進化させたハイグレ人間の数で優勝者を決定する
12優勝者にはハイグレマスターの称号と景品のマスターボール、
  その配下のハイグレ人間たちにはポケモンコンテスト用品一式を授与する

「マ、マスターボールだと!?」
「何を驚いてるんだよ、タケシ?」
「知らないのか?シルフカンパニーが開発した伝説のモンスターボールだ。名前通りどんな手ごわいポケモンでもキャプチャーできる能力を持ってるんだ!!」
タケシが蘊蓄を語りだす。
「ポケモンコンテスト一式?なんかやる気出てきたかも!!」
「いや〜、でも、それってあたしたちがハイグレ人間になるってことよね?一体何をさせられることやら・・・。」
ハルカとヒカリも景品に釣られてやる気を出している。ただ、その条件がハイグレ人間になってかつ優勝することなのは難易度が高い。
「バトル大会にこれだけの出場者がいるのはこのためなのよ。じゃ、あたしはこれで。高みの見物をさせてもらうわ。」
「おい、カスミは出ないのか?マスターボールが欲しくないのか?」
「おあいにく様。あたしはそんなボールの力に頼らなくても自分の力でゲットするから。」
だべっていたサトシたちの周囲の人々は既に移動を開始していた。係員が番号札を渡して人数を割り振っている。
「君たち、早く移動してくれないかな?」
「さあ、行った行った。」
係員に半ば強引に連れて行かれる。
「ちょ、あたしは・・・見学者で・・・。」
カスミは見学証を見せようとするが、そのまま引きずられて成り行きで参加させられることになってしまった。

「ピカチュウ、ここが俺達のスタート地点みたいだな。」
「ピカピカ。」
サトシとピカチュウは233と書かれた旗の前に立つ。周囲は鬱蒼とした森だった。他のメンバーは全く別の場所へと誘導されていった。
「さて・・・どうすれば勝てるか・・・。マスターボール、是非ともゲットだぜ!!」
そうこうするうちに乾いた大きな花火の音が鳴り響く。
「行くぞ!!」
サトシは今までに経験したことのないバトルへと足を踏み入れたのであった。



「この競技スペース広いなあ。こんだけ歩いても誰も見かけないや。」
サトシとピカチュウは十分以上歩いたが、他に250人ほどいる別の参加者の誰とも遭遇しなかった。ちなみにフィールドは5km四方にわたって整備されていて、危険は伴わないようになっている。
「ピカピ!」
ピカチュウがサトシを呼ぶ。ピカチュウが指さした先には、こちらに近づいてくる一人の影があった。まだサトシには気づいていないらしい。
「よし、隠れよう!」
道の脇の茂みに隠れる。息をこらしているとだんだん足音が大きくなって、姿もはっきり見えてくる。
「あれは・・・コトネ?」
一時期共に旅をしたポケモントレーナーの同志・コトネだった。無警戒でサトシたちの横を通り過ぎる。
「よし・・・今だ!」
サトシはハイグレボールを構えて茂みを飛び出す。
「サトシ・・・!?」
呆然とするコトネにサトシはすかさずハイグレボールを投げつける。
「きゃああああ!」
コトネは赤い光に吸い寄せられ、ハイグレボールの中に入る。ゲットできるかどうか、ボールが揺れる。1・・・2・・・3・・・4・・・・カチッという音がする。
「よ〜し、コトネ、初ゲットだぜ!」
サトシはガッツボーズをする。すぐにハイグレボールからコトネを出してみる。出されたコトネは地団太を踏んで悔しがった。
「悔しい・・・・!不意打ちを警戒していなかった私の油断ってことね!」
「そう怒るなよ。ま、仲良くやっていこうぜ。そうだ、お前の属性は・・・。」
サトシは係員から支給されていたハイグレ図鑑を取りだす。その説明文が読み上げられる。
「コトネ 参加者NO.37。ハイグレ人間レベル1。くさタイプの技を行使可能。」
「へえ、くさタイプか。俺はでんきタイプだから戦っていたら勝ち目は無かったな。」
「ますます悔しい!でも、負けない限りはサトシに従わなくちゃいけないし・・・。はあ・・・。私のマスターボールが・・・。サトシ!誰かと戦ってさっさと負けなさい!」
「いやいや・・・。そんな事したらコトネが傷つくだろう?」
「どうせケガ防止のための設定があるから大丈夫よ!」
「俺は勝ちにはこだわるタイプだぞ?ってわけで、さっさと行くぞ。戻れ、コトネ!」
コトネをハイグレボールの中に収め、サトシは先に進む。ピカチュウはバトルに参加しなくていいので、気楽な表情をしてついていく。

小川に出た。少し深さのある川の上を渡れるように橋が架けられている。サトシとピカチュウがその上を渡ろうとすると、反対方向からある人が歩いてくる。その人は・・・
「カスミ!!」
「サトシ!!」
お互い鉢合わせになってしまったので、慌てて間合いを取る。
「なんか分かんないけど、ようやく獲物に出会えたわね。あんたをゲットさせてもらうわよ、サトシ!」
「そいつは残念だったな。俺は一人ゲットしているんだ。」
「えっ?」
カスミはハイグレ図鑑をサトシにかざす。
「ふんっ!上等じゃない!勝負よ!相性が悪い相手でも戦い方次第でどうとでもなるのよ!」
「よし、コトネ!君に決めた!」
コトネしか選択肢はないにも関わらず、いつもの口癖でそう言ってからコトネを出現させる。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
出現してまずコマネチのポーズを取る。ハイグレボールの力によって体の自由は奪われ、所持者の命令にのみ従わされる存在になってしまう。心の中でどう思っていようと、体が言うことを聞かないのだ。
「行くぞ、コトネ!はっぱカッター!」
「了解!」
コトネが手を広げてハッパを出現させ、そのハッパをカスミに目がけて乱れ打ちにする。
「きゃっ!」
カスミがくさ攻撃の前にひるむ。
「続けてねむりごな!」
カスミはその前に技を行使する。
「ダイビング!」
カスミは小川に飛び込む。コトネが目標を見失っている最中に水中から飛び出してアタックする。
「きゃっ!」
コトネが吹き飛ばされる。
「くっ!やったわね!サトシ!次の命令を!」
「よしっ!一気に決めるぞ!リーフストームだ!」
くさタイプの大技・リーフストームを繰り出す。能力低下のデメリットはあるが、それを上回る破壊力があった。
「きゃああああああああっ!!」
カスミは吹き飛ばされて動けなくなってしまった。
「今だ!ハイグレボール!!」
弱りきっているカスミにハイグレボールを投げつける。抵抗する力もなく、カスミはサトシにゲットされてしまった。
「カスミ、ゲットだぜ!」
こうしてサトシはコトネに続いてカスミも手に入れ。まだまだバトルは始まったばかりだが、幸先のよい出だしであった。



サトシはゲットしたコトネとカスミをハイグレボールに格納して先に進む。まだ二人とも第一形態に過ぎない。大会優勝を狙うためにはハイグレ人間への進化が必要だった。
「え〜なになに。ゲットした競技者の得点・・・。」

ハイグレタウンバトル大会 ポイント表
男性 第一形態 1P 第二形態 2P 第三形態 4P
女性 第一形態 2P 第二形態 4P 第三形態 8P
(同順位に複数の競技者がいる場合、ゲットした女性の数・進化させた数が多い方が優勝)
(ゲットした女性も進化状態も同一の場合はプレーオフを行い、ハイグレ人間としての素質で勝負する)

男性より女性の方が力は劣っているいるが、ハイレグ水着を着るという特性上ポイント面で優遇されている。ちなみに、第一形態はゲットされた時の私服姿、第二形態は個人別、第三形態はハイグレ姿だ。
「つまり、女の子を沢山捕まえた方が得ってわけか。今の俺のポイントは4ポイントで、女の子二人だから戦闘不能にならないように気を付けないとな・・・。」
コトネはくさタイプ、カスミはみずタイプ。バリエーションを広げることが戦略上有効である。その点はポケモンバトルと同じだった。伝統行事とはいえ、そのような教訓めいた趣旨がもちろんある。
「さて、これからどうしようか。できればほのおタイプかドラゴンタイプが欲しいな・・・。」
考えながら歩いていると、遠くからバトルをしていると思われる轟音が聞こえてくる。
「よし、行ってみよう!」
サトシとピカチュウは音のする方に走る。
「あれは・・・シゲル!?」
シゲルは、誰だか知らない男の人と戦っていた。お互いにハイグレ人間を使役して戦っている。

「どうした?さっきからまったく攻撃してこないじゃないか?」
男の競技者は全く攻撃を仕掛けないシゲルをせせら笑い、シゲルのハイグレ人間候補に攻撃を続ける。
「よし・・・もういいでしょう。今です!チエリさん、『がまん』攻撃!!」
「はい!!」
チエリと呼ばれた青髪のショートヘアのハイグレ人間候補は、今まで受けたダメ―ジを2倍にして反撃する。相手の男のハイグレ人間候補は一撃でノックアウトされる。
「し、しまった!!」
「行け、ハイグレボール!!」
シゲルはノックアウトされてうずくまっているハイグレ人間候補にハイグレボールを投げつけてゲットする。
「よし・・・サネヒロさん・・・ゲット!お次はあなたの番ですよ、シンジロウさん?」
「くっ!」
ハイグレ人間候補の手持ちがなくなったシンジロウは背を向けて逃げようとする。しかし、シゲルはそれを逃さずハイグレボールを投げつける。
「ぐわああああっ!!」
シンジロウはハイグレボールに飲み込まれ、抵抗むなしくゲットされてしまう。
「ふっ・・・これで男性二人をゲットしました。これでどくタイプ、あくタイプと幅も広がりましたね。」
「あ、あの、シゲルさん・・。私の体が・・・?」
今まで戦っていたチエリの体が白く光る。そして、その光が彼女を包み込み、激しく点滅する。物陰から見守っていたサトシとピカチュウもその眩しさにくらんでしまう。光が収まると、今までの私服が変化し、チアガール姿のチエリが立っていた。
「経験値が溜まって進化したようですね。これであなたも第二形態です。」
「はい・・・。ハイグレッ!!ハイグレッ!!早く第三形態のハイグレ人間にして下さい!!」
チエリはチアガール姿でハイグレポーズを取り、シゲルに忠誠を誓っていた。
「くそっ・・・。シゲルの奴、いっぱいゲットしてるじゃないか・・・。」
サトシのハイグレ図鑑に今のシゲルの手持ちが表示される。男3人・・・女3人・・・合計ポイント12。既に何人か進化をさせているようだった。
「俺も負けてられない・・・。行くぞ、ピカチュウ!」
サトシはシゲルのバトル見学をやめ、別の場所へハイグレ人間候補を求めて歩きだした。



サトシは第8エリアを歩いていた。
「さ〜て、新しいハイグレ人間を確保しないとな。どっかにいないかな〜。」
「あら、サトシ。」
「へっ?」
サトシが振り返るとそこにはサトシのママ・ハナコがいた。
「ママ?なんでこんなところにいるの?」
「旅行会社のパック旅行よ。シンオウ地方の伝統体験ツアー5泊6日の旅。電話した時に言わなかったっけ?」
「ああ、そうか・・・。」
「あんたこそ何でこんな大会に参加してるのよ?」
「ポケモンバトル大会と間違えて・・・。」
「まったく、しょうのない子ね。まあいいわ。なら、ママとバトルよ!」
そう宣言してハナコはハイグレボールを地面に叩きつける。ボールから出てきたのは・・・
「ハルカ!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
ハルカは第二形態のセーラー服姿でハイグレポーズをとる。
「ふふ、ハルカちゃんを捕まえて第二形態に進化させたばかりなの。さあ、あなたもハイグレ人間候補を出しなさい!」
「ああ、もう、分かったよ!コトネ、君に決めた!」
サトシはコトネを繰り出した。
「ハイグレ!!ハイグレ!!」

「あらあら、その子でいいの?ふふ。ハルカちゃん、かえんぐるまよ!」
「はい!!」
ハルカは火から炎を吐き、コトネに攻撃する。
「きゃっ!!」
コトネは苦痛の表情を浮かべる。
「なっ!?ハルカはほのおタイプだったのか!」
「今頃気づいても遅いわ。ハルカちゃん、せいなるほのお!」
せいなるほのおによってコトネの体が炎につつまれる。コトネはそのまま力尽きた。戦闘不能。
「行きなさい、ハイグレボール!!」
ハナコはすかさずハイグレボールを投げる。コトネはそのままハナコの所有に移ってしまった。
「残念だったわね、サトシ。コトネちゃんは私がもらったわ。」
ハナコはそのまま急いで立ち去ろうとする。ハルカを入れていたハイグレボールを前に差し出して戻そうとする。
「くっ!まだだ!行け、カスミ!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!」

「しまった・・・!」
ハナコが悔しがる。ほのおタイプに相性の悪いみずタイプをぶつけられてしまったからだ。
「カスミ、みずでっぽうだ!」
「了解!」
「ハルカちゃん、避けて!」
「ええっ!?きゃ、きゃああああ!!」
ハルカはみず攻撃の前になすすべなく翻弄されてしまう。バブルこうせん、なみのりなどの攻撃の前に第二形態の強さも役には立たなかった。そのまま戦闘不能に陥り、私服姿に戻る。そして、サトシにゲットされる。
「ハルカ、ゲットだぜ!!」

「さあ、どうする、ママ?ママはまだ一人手持ちがあるみたいだけど?」
「ここは退いておくわ。あなたも頑張りなさい、サトシ!」
ハナコは手元からけむりだまを出す。必ず脱出が成功する道具だった。ボンという音と共に白い煙があたりに充満する。その隙にハナコは逃げてしまい、行方が分からなくなった。
「ゲホゲホッ!カスミ、大丈夫か?」
「あたしは大丈夫・・・。あ、あら、なんかあたしの体が・・・・。」

・・・・・・おや!?カスミのようすが・・・・・・!
おめでとう!カスミは競泳選手にしんかした!

カスミはパーカーを羽織り、その下に白の競泳水着を着た姿になった。
「な、なんなのよ、この格好は!」
「第二形態になったみたいだな。俺の手持ちのハイグレ人間候補の初進化だな。」
「キーッ!!悔しいけど、逆らえない!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
カスミはハイグレポーズを取る。
「よし、ハルカもこの調子で進化させて、他の競技者をゲットしていこう!」
サトシは時間は昼前になっている。残された時間は少しずつ少なくなっていく。サトシは歩き出した。



「はあ、まったく・・・。ママまでこの大会に来てるなんてなあ〜。」
「ピカ、チュー。」
「顔見知りがいっぱいいて、なんなんだ、このバトル大会は。」
サトシは溜息をつく。その時・・・
「なんだかんだと聞かれたら・・・・」
「答えてあげるが世の情け」
「地球の破壊を防ぐため!」
「世界の平和の守るため!」
「愛と真実の悪を貫く!」
「ラブリーチャーミーな敵役!」
「ムサシ!!」
「コジロー!!」
「銀河を駆けるロケット団の二人には」
「ホワイトホール、白い明日が待ってるぜ!」
「な〜んてにゃ!!」
サトシが出会いたくない二人と一匹。冒険を始めて以来の腐れ縁の一味。
「ロケット団!!」
「おみゃーら、ここであったが百年目。今日こそ決着をつけてやるにゃ!」
「チッ!行け、ピカチュウ!」
「ピカ!」
ピカチュウが前に出る。しかし、コジローはそれを手で押しとどめる。
「ここはハイグレバトル大会。郷に入りては郷に従え。ハイグレバトル大会に入りてはハイグレバトル!!」
「お前たちも参加しているのか?」
「あたしらには任務ってもんがあるの。この大会で優勝してマスターボールを手に入れ、ロケット団の世界征服の足がかりにするのよ!」
「ちなみにこれはボスから与えられた極秘任務で口外無用だ。」
「おみゃーら、極秘任務を喋るニャ〜!」
ニャースに思いっきり顔をひっかかれる二人。
「ええい、とりあえず勝負だ!行け、ムサシ!」
「へっ?ムサシ?」
ハイグレ図鑑をかざしてみる。
「ムサシ 参加者NO.102 ハイグレ人間レベル1。どくタイプの技を行使可能。」

コジローはムサシしか所有していないので当然ムサシを出す。サトシは同じ第一形態のハルカを繰り出した。
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
お互いに私服姿でコマネチポーズをしてからバトル開始。
「ムサシ!!どくどく攻撃!!」
「あいよ!」
ムサシは口から毒の光線を出す。
「ハルカ!!かえんほうしゃだ!!」
「うん!!」
ハルカはかえんほうしゃでムサシの攻撃に対抗する。
「どくばり攻撃!!」
「ほのおのパンチ!!」
お互いに相性は普通なので、消耗戦になって疲れ果ててきた。
「戻れ、ハルカ!!」
サトシはころ合いを見計らってハルカをハイグレボールに戻す。
「カスミ、君に決めた!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
競泳選手のカスミを繰り出すサトシ。
「おい、汚いぞ!!こっちは交代できないのに!!」
コジローの抗議をはねつけるサトシ。
「これも勝負だろ?なら、ルールに則って全力で戦うまでだ。カスミ、なみのり攻撃!!」
「了解!」
「うわああああああああああ!!」
疲労困憊のムサシは第二形態で上位のカスミの攻撃に耐えられる訳もなく、一撃でノックアウト。
「行け、ハイグレボール!!」
ハイグレボールを投げつける。1・・・2・・・3・・・4・・・カチッ!
「よ〜し、ムサシ、ゲットだぜ!」

「ば、馬鹿にゃ・・・!ええい、こうにゃったら力づくにゃ!」
「おう!」
コジローとニャースが飛びかかってくる。
「やっぱりそう来たか!なら・・・行け、ムサシ!」
ゲットしたばかりのムサシを出す。ハイグレボールの中で回復して元気一杯のムサシ。
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
「ムサシ!!ヘドロばくだん!!」
「く〜!!逆らいたくても逆らえない!!」
ムサシはサトシの意のままに仲間のコジローとニャースを攻撃。
「「やな感じ〜!!」」
コジローとニャースははるかかなたに飛ばされていった。
「あ〜、コジローもゲットしておけば良かったな〜。まっ、いっか。」

サトシは気を取り直して次々にハイグレ人間候補をゲットしていく。見ず知らずの参加者たち相手だったが相性を考えて戦い、男三人、女二人をゲットした。日が暮れる時間帯にはハルカとムサシを第二形態の女子高生と看護婦に進化させた。
「もう少しで一日目が終了か・・・。今は8人で19ポイント。いい感じで集まってきたな・・・。これなら結構いけそうだな。」
「ピカピ!!」
ピカチュウが笑いながら歩いているサトシに注意を促す。道の向こうから一人の少女が走ってくる。
「あれは・・・ヒカリ?」
ヒカリは何かに追われて全速力で走ってくる。ずっと後ろを見ながら走ってくるのでサトシに気づいていない。
「待て〜!!」
ヒカリを後ろから追いかけているのはタケシだった。右手にはハイグレボールを持っている。
「待てって言われて待つわけないでしょ〜!!」
ヒカリはそう叫び返してひたすら走ってくる。
「よく分からないけど、ゲットしない手はないな!!」
サトシはこちらに走ってくるヒカリに狙いを定め、ハイグレボールを構える。
「えっ?サトシ?」
ヒカリはようやく前にいるサトシに気づいて立ち止まる。格好の的になってしまったヒカリに後ろからはタケシが、前からはサトシがハイグレボールを投げつける。お互いのボールの蓋が開き、キャプチャーを開始する。しばらくの膠着の後、サトシが投げつけたハイグレボールの中にヒカリの体が入る。1・・・2・・・3・・・4・・カチッ!サトシはヒカリをゲットした!
「サトシ!!」
タケシがサトシの前に立ちはだかる。
「先を越されたか・・・。あいつの持ち駒を三人も倒して、こっちも二人犠牲になって・・・。やっとヒカリ一人だけになったと思ったんだが・・・。」
タケシはがっくりと首をうなだれる。だが、すぐにサトシを見返す。
「お前を倒して全員まとめて俺が頂く!勝負だ、サトシ!」
「ああ、勝負だ、タケシ!!」
お互いに間をとってハイグレボールを構える。その時、バトルフィールド内に響く放送の声が聞こえてくる。
「ハイグレバトル大会一日目はただ今をもって終了いたします。競技者は係員の指示に従って行動してください。繰り返します・・・。」
二人とも構えたハイグレボールを下ろす。
「勝負はお預けのようだな、サトシ。また明日だ。」
「ああ。」
こうして一日目のバトル大会は終わり、競技者は宿舎へと引き揚げていった。



サトシとタケシは出発地点に戻ってくる。そこには他の競技者が戻っていた。
「随分人が少ないな〜。」
「当り前だ。自分のハイグレボールを見てみろ。無傷でいるほうが珍しいさ。」
広場にいる競技者の数は50人にも満たなかった。皆中間発表を映す画面に見入っている。
「さて、では全員揃いましたので、中間結果の発表です!」
係員のアナウンスの後、画面に結果が出る。

順位  点数 競技者
1位  50 シゲル
2位  45 タケシ
3位  44 ハナコ





10位 21 サトシ

「えっ?俺、二位だったのか・・・。」
「十位か・・・。結構頑張ったつもりだったんけどな・・・。」
二人は自分の順位に悲喜こもごもの表情。
「や〜あ、サートシ君〜。」
「この嫌味なしゃべり方は・・・。シゲル!!」
シゲルは颯爽とサトシの前に現れる。
「今は僕が一位のようだね。君も僕のライバルならこの点数の倍は取って追いかけてくれなきゃ。はっはっはっ!!」
シゲルは高笑いをしながら去って行った。
「くそーっ!!絶対見返してやるー!!」
「怒るな、サトシ。」
「だけど・・・。」
「お前は俺の下でハイグレ人間になって一緒に戦おう。」
「お前も敵じゃないか!!」
このバトル大会はロワイヤル。誰が誰に服従させられるか分からない恐怖の戦い。それゆえに知力のある者しか生き残れない。
「サトシ、タケシ君、あなたたちも上位とはやるわね。」
「ママ!!」
ハナコがサトシたちの横にやってくる。
「でもあなたたちはポイントの高い女の子を優先して育てているだけ。真に戦いを制するにはより好みせず与えられた戦力を最大限に活用するものよ。」
タケシはハイグレ図鑑をハナコに向けてデータを見て驚愕する。
「す、すごい!!男女共に本当に無駄のない育て方だ!!」
「でしょう?あなたたちも明日は頑張りなさい。ママは団体さんの人たちと一緒にいるから。」
そう言ってハナコは去っていった。
「なあ、タケシ。お前はどういう育て方なんだ?」
「そりゃーきれいなお姉さんを・・・っていかんいかん、ポイントの高い女性を中心に育てている。既にハイグレ人間を女性四人、男性一人を作ったぞ。」
「なっ!?俺は・・・一人も・・・。」
サトシはいかに自分の育て方が悪いかを思い知らされた。カスミ、ハルカ、ムサシは三人とも第二形態。ヒカリらは未だに第一形態だった。
「明日は絶対巻き返すんだ!!なあ、ピカチュウ!!」
ピカチュウはため息をついてサトシを見る。絶対に無理だという顔だった。

割り当てられた宿舎で夕食。その間はハイグレボールに入れられた人々も外に出され、一緒に食事をする。
「はああ〜なんでこんな格好でコジャリたちと食事なのよ・・・。まあ、ご飯はおいしいけど・・・。」
ムサシはナース服姿でぶつぶつ文句を言いながらスプーンを扱う手を速める。
「あっちは騒がしいわね〜。」
ヒカリがシゲルたちの座っているテーブルを見やって言う。
「あっちはハイグレ人間の女性が五人もいるからね〜。二人の男の人もハンサムで私の好みかも〜。」
ハルカが軽口を叩く。
「こっちではタケシが鼻の下伸びまくりだし・・・。」
カスミがため息をつく。タケシはゲットして進化させたハイグレ人間たちと戯れていた。

「いいなあ、シゲルもタケシも。俺はハイグレ人間に進化させたのは一人もいないし、カスミたちじゃなあ・・・。」
サトシは他のテーブルのハイグレ人間たちを羨ましそうに見つめる。
「な、なんですって・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
カスミは競泳水着姿でハイグレポーズを取る。ハルカも同様にハイグレポーズ。
「く、悔しいかも・・・・。服従ってなんて屈辱的なの・・・!」
ヒカリはあることに気づく。
「なんか、変だな・・・。あのハイグレ人間の人たち、嫌がってるわけでもなく、喜んで従っているような・・・・?」
ヒカリは一人その疑問がぬぐえなかった。



次の日の朝。ゲットされていない競技者は会場に集まった。
「ふあ〜、まだ眠いな〜。」
「サトシ、気合いを入れろ。今日は完全に競技者同士の潰しあいだ。そんなたるんだ状態じゃあすぐにやられるぞ?」
「分かってるよ。」
サトシはゲットした競技者の入ったハイグレボーズの数を確かめて会場に入る。

「皆さん、ハイグレボールに入れられた人も含めて朝食はお済みでしょうか?本日は厳しいバトルが予想されます。準備はいいですね?」
マイクを持った係員が会場を見渡して言う。
「この伝統の大会も創設以来幾十年。その伝統の大会に見事お名前を刻まれるのはどなたか!ここにいらっしゃる競技者も、今現在ハイグレボールに入っている競技者も共に優勝のチャンスはあります!気を抜かずに頑張ってください!それと・・・今大会にいらしたゲストのご紹介です!」
別の係員に先導されて壇上に登る女性たち。サトシたちにも見覚えのある顔だった。
「偶然シンオウ地方にいらしていたカントー地方とジョウト地方のジムリーダーの女性の方々がお越し下さいました!」
会場にどよめきが走る。これだけのジムリーダーがポケモン大会以外で揃うのは異例のことだった。
「そして、ジムリーダーの方々も本日バトル大会に参加されます!異例中の異例ですが・・・歴戦の凄腕トレーナーたってのお願いで実現しました!その特典として・・・ジムリーダーはゲットした時点でハイグレ人間として扱うことができます!ジムリーダー相手に不足はないという競技者の挑戦を待っています!」
ぺこりとお辞儀をしているのは、エリカ、ナツメ、アンズ、アカネ、ミカン、イブキの六人だった。
「よし、是非ともジムリーダーゲットしてポイントアップだ!!」
「しかし・・・彼女たちは強力だぞ?ポケモンバトルで勝った相手だからって油断は禁物だ。」
タケシは浮かれているサトシに取らぬ狸の皮算用にならないよう釘を刺す。

例によって出場者ごとに出発地点を指定される。サトシが係員に誘導された場所は昨日とは違っていた。
「ここが俺達の今日のスタート地点か・・・。」
競技開始の合図の花火がまもなく打ち上げられる。サトシとピカチュウは逆転優勝に望みをつなげて歩き始めた。



サトシはドラゴン使い・フスベジムリーダーのイブキと対峙していた。
「ふふ、あなたとこんな形で再戦することになるとはね。そのハイグレボール、根こそぎ頂いてあげる!」
「おっと、俺だってイブキさんをゲットさせてもらうさ!いけ、イサム!」
ハイグレボールから飛び出したのは小学生くらいの少年だった。
「へえ・・・ドラゴンタイプ、ね。なるほど、私に相性がいい子をぶつけてきたわね?でも、私もジムトレーナーを伊達でやっているわけではないわ!」
イブキが戦闘態勢をとる。
「イサム、たつまき!!」
イサムは竜巻を巻き起こす。しかし・・・
「そんなの無駄よ!!ドラゴンダイブ!!」
イサムはイブキの攻撃の前に怯んで反撃ができなかった。
「りゅうのいかり!!」
イブキが続けざまに技を繰り出してイサムをノックアウト。
「そ、そんな・・・。」
「ゲットさせてもらうわよ、イサム君。」
イブキはハイグレボールをポンと投げる。1・・・2・・・3・・・4・・カチッ!
「さあ、サトシ君。今度はこっちから仕掛けさせてもらうわ!!お願い、イサム君!!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
ゲットされたイサムは今度はイブキの命令に従ってサトシたちに向かってきた。
「こおりタイプがいない・・・。仕方ない、ヒカリ、君に決めた!」
「ハイグレ!!ハイグレ!!」
ヒカリははがねタイプ。ドラゴンとの相性は普通だった。
「相手もハイグレ人間レベル1、これからが勝負だ!!ヒカリ、メタルクロー!!」
「OK!!」
速攻でイサムにアタック。
「負けないわよ!!イサム君、げきりん!!」
「はい!!」
イサムの攻撃をヒカリはすんでのところでかわす。
「外した!?」
「今がチャンスだ!!ヒカリ、ラスターカノン!!」
イサムは大技の前に屈してノックアウト。しかし、イサムはサトシの所有から離れていたので再びゲットする権利はない。二人の所有から外れたイサムは普通の競技者に戻り、ハイグレボールを手にイブキに迫る。
「さあ、イブキさん!!もう一度勝負だ!!」
サトシはハイグレボールを入れ替え、ノーマルタイプのミナミを繰り出した。
「くっ・・・。二対一じゃ私でもきついわね・・・。逃げさせてもらうわ!!」
イブキは背を向けて逃げようとするが、なぜか足が進まない。
「ど、どうして逃げられないの!?」
「残念だったな、イブキさん。くろいまなざしはノーマルタイプの技だぜ?」
「そ、そんな!!この私が!!こんなあっさり負けるなんて!!」
イブキはそう叫んだのもつかの間、二人が同時に投げたハイグレボールによって吸引される。先ほどの戦闘で弱っていたので抗しきれない。しばし二つのハイグレボールが引き合った後、サトシのハイグレボールにイブキは引き込まれる。1・・・2・・・3・・・4・・・カチッ!!
「イブキさん、ゲットだぜ!!」

「さあ、イサム。俺と戦うのか・・・・・・?」
「いや、やめておくよ。サトシの強さは知ってる。僕も体制を立て直したら君にリベンジするよ。もっとも、それまでお互いにハイグレ人間になっていなければだけどね。」
そう苦笑してイサムは去って行った。

・・・・・・おや!?ヒカリのようすが・・・・・・!
おめでとう!ヒカリは花嫁にしんかした!

ヒカリは今の戦闘でスキルアップし、第二形態に進化。本人のお姫様願望を意識してかウェディングドレス姿になった。

「さて、と。イブキさんを出してみるか・・・。」
サトシはイブキをハイグレボールから出してみる。
「くうっ・・・!!なんて屈辱的な・・・じゃない・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
勝手に動いてコマネチポーズをしてしまう体に困惑しつつ、イブキがハイグレ人間となって出てくる。オレンジ色のハイグレ姿だった。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!あなたに従います!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
サトシは初のハイグレ人間ゲットに満悦の表情を浮かべていた。ポイントアップだけでなく、スタイルのいいイブキのハイグレ姿は目の保養になるからだ。

サトシたちの前に現れる一人の女性。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
黒髪をたなびかせている大人の女性。イブキをじっと見て沈黙している。
「ナツメッ!!ぐっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
イブキがハイグレポーズを取りながら同僚の顔を見る。
「イブキ・・・・あなた、何をしているの?」
「そ、それは・・・サトシ君に・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「・・・・。サトシ君、私と勝負・・・受けてくれるわね?」
溜息をついたナツメはそれだけ言って戦闘態勢を取る。
「望むところさ・・・。じゃあ、行かせてもらうよ!!カスミ、君に決めた!!」
サトシはイブキをハイグレボールに戻し、カスミを対戦相手として送り込んだ。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「カスミ、見かけないと思っていたらあなたも捕まっていたのね?ここで私も負けたらジムリーダーの名折れ・・・。全力で行かせてもらうわ・・・!!」
ナツメは目に闘志をたぎらせてジムリーダーが持つオーラを前面に出す。かつてサトシが苦戦をなめさせられた相手。その存在感は嫌でも感じ取ることができた。



「行け、カスミ!!みずでっぽう!!」
「ひかりのかべ!!」
ナツメはカスミのみずでっぽうを防御壁を張って防ぐ。
「ならば・・・たきのぼりだ!!」
「きゃっ!」
ナツメはカスミの突進で後方に突き飛ばされる。しかし・・・
「じこさいせい!!」
ナツメはエスパーの力で自分の傷を塞ぐ。
「こっちからもお返しよ!!サイケこうせん!!」
「きゃあああ!!」
眩い光線の前に目がくらんで動けなくなるカスミ。ナツメはそこへ容赦なく攻撃を続ける。
「サイケこうせん!!サイコキネシス!!しねんのずつき!!」
「いやあああああああ!!」
カスミは集中砲火に悲鳴を上げる。立っているのがやっという状態に追い込まれた。
「ふふふっ、やはり詰めが甘いわ・・・。勝負は一気に決着をつけるものよ。」
ナツメがとどめを刺そうと近づいてくる。
「くそっ、どうすれば・・・・。んっ?」
サトシは落ち着いて考えてみる。じこさいせいはエスパータイプのポケモンが使うが、実際はノーマルの技。関連している技を多少使えるのであれば・・・
「よし、いちかばちかだ・・・。カスミ、ハサミギロチン!!」
「えっ?そんなの・・・分かったわ!!」
カスミはナツメに両腕を広げて抱きつく。
「な、なにを・・・?」
「ハサミギロチン!!」
「きゃあああああああああ!!」
一撃必殺技がクリティカルヒット。ナツメはそのままガクリと力を失い、その場にへたり込んだ。

サトシはナツメの前にハイグレボールを突き付ける。
「ゲットさせてもらうぜ、ナツメさん。」
「ふふ、甘いわね・・・。その甘さが命取りよ・・・。」
「ピカピ!!」
ピカチュウが急いでボールを投げろとジェスチャーする。その瞬間、ナツメはその場からテレポートしていなくなった。
「くそっ!せっかく倒したのに逃がしたか・・・。ごめん、カスミ。せっかく戦ってくれたのに・・・。」
「いいのよ、別に・・・・。あ、何かしら、か、体がまた・・・・!?」

・・・・・・おや!?カスミのようすが・・・・・・!
おめでとう!カスミはハイグレ人間にしんかした!

カスミは白のハイグレ姿のハイグレ人間になった。
「ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
「よしっ!カスミも進化させたぞ!」
カスミはせっせと手を動かしてハイグレポーズを取る。
「くやしい・・・・!!いつもだったらこんな恥ずかしいこと・・・いやあああ!!ハイグレ!!ハイグレ!!ハイグレ!!」
カスミは嫌々ながらもハイグレポーズを取り続ける。

一方、ナツメは・・・
「はあ、はあ・・・。ここまでテレポートすれば・・・。まさか確率の低い一撃必殺技が当たるなんて・・・。とりあえず、次の対策を・・・。」
ナツメは考え事をしていてその後ろから忍び寄ってくる足音に気づかなかった。
「ふふ、こんなところに獲物がやってくるなんて・・・。ゲットよ!!」
「あ、あなたは・・・!!」
ナツメはその人物によって捕獲されてしまうのであった。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ナツメは黒のハイレグ水着を着たハイグレ人間になってしまった。



「ふう、ようやく一息つけるな・・・。」
サトシは森の切り株に座ってペットボトルの水を飲む。だいぶ太陽も高くなり、もうすぐ昼時になる。
「休憩ポイントで昼御飯を貰わないとな、ピカチュウ。」
「ピカッ!」
ピカチュウも喜びの表情を見せる。
しばらく歩くと、遠くに休憩所が見えてくる。
「あ〜、腹減った〜。早くご飯〜。」
「ふっふっふっ、そうは行かへんで!」
「えっ?待ち伏せ?」
昼食に向かうサトシとピカチュウを通せんぼするように立ちはだかる少女。
「アカネさん!?」
「や〜、久しぶりやね〜。」
「アカネさんも俺にバトルを挑んでくるつもり?」
「ああ、勿論や。そんためにここでまっとったんやないか。ほな、いくで!」
アカネがハイグレボールからポケモンを取りだす。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「コジロー!!」
アカネが取りだしたハイグレ人間候補はコジローだった。昨日ニャースと一緒に吹き飛ばされた後に捕まったらしい。サトシがハイグレ図鑑を向けてみると、くさタイプという答えが返ってきた。
「なら・・・ハルカ、君に決めた!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
セーラー服姿のハルカがハイグレボールから飛び出してコマネチをする。
「コジロー君、はなびらのまい!!」
「はっ!!」
コジローは体から花びらを発生させてハルカに攻撃する。しかし、相性が悪いので効かない。
「ハルカ!!かえんほうしゃだ!!」
「OK!!」
ハルカのかえんほうしゃの前にコジローはあっけなく力尽き、サトシにゲットされた。
「いや〜、倒れていた人を簡単にゲットしただけやあかんね〜。なら、こっからはウチも本気で行くで!!」
アカネ自身が身構える。
「アカネさんはノーマルタイプか・・・。よし、ハルカ、そのまま行け!!」
「あ、ちょと待って・・・!!」

・・・・・・おや!?ハルカのようすが・・・・・・!
おめでとう!ハルカはハイグレ人間にしんかした!

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ハルカは炎のごとき真っ赤なハイグレ姿でハイグレポーズを取る。
「恥ずかしいかも・・・・。じゃなくて、本当に恥ずかしい・・・!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

「へ〜、第三形態に進化したんか〜。ウチらジムトレーナーは元々の能力値が高めなんやけど、その子相手やとさすがに時間がかかるな〜。」
ジムトレーナーたちは実際のところ強い。それゆえにゲットしたら即ハイグレ人間というルールになっていた。
「ほんなら、行くで!!ほえる!!」
「えっ!?きゃ、きゃあああ!!」
ハルカはアカネのほえるの前にハイグレボールの中に強制的に戻される。そして、ノーマルのミナミとあくのセイジが引きずり出された。二人ともまだ第二形態だった。
「行くで!!ころがるや!!」
「えっ!?ば、ばかな・・・!!」
サトシが呆然としている間に二人はアカネの攻撃の前にノックアウトされた。慌てて出した相性のいいかくとうタイプの二人もやられてしまう。
「つ、強い!!」
「ほな、どうする?サトシ君の手持ちがどんどん少なくなってるよ?」
サトシの手持ちで残されているのは、カスミ、ハルカ、ヒカリ、ムサシ、イブキ、そしてコジローのみ。
「アカネさん、さっき言ってたよな。ジムトレーナーは強いって・・・。」
「そうや。他のみんなはどうしてるか知らんけど、そう簡単にやられることはないやろ。」
「実はさ・・・そのジムリーダーのハイグレ人間、一人持ってるんだ。」
「へっ?」
アカネは驚いた表情をする。恐る恐るハイグレ図鑑をサトシに向けて表情が驚きから恐怖に変わる。
「あ、あかんっ!!イブキはんに勝てるわけが・・・!!」
「行け、イブキさん!!」
サトシはイブキを繰り出す。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
イブキはハイグレポーズをしながら出てくる。
「まずい・・・っ!!テレ・・・・。」
「ナツメさんと同じ手を使わせるか!!イブキさん、りゅうせいぐん!!」
「了解!!」
ナツメのように逃げられる前にイブキに攻撃を命じる。イブキの強力な攻撃の前にアカネはノックアウトされてしまった。
「行けっ、ハイグレボール!!」
今度は油断せず、すぐさまハイグレボールを投げつける。
「いやあああああああああ!!」
アカネはハイグレボールの光に飲み込まれる。1・・・・2・・・・3・・・・4・・・カチッ!!
「アカネさん、ゲットだぜ!!」

「ハイグレッ♪ハイグレッ♪ハイグレッ♪意外と楽しいな〜これ。ハイグレッ♪ハイグレッ♪」
アカネはピンクのハイレグ水着に身を包み、楽しそうにハイグレポーズを取る。

昼食を済ませたサトシとピカチュウは更なるポイントアップを狙って道を進む。草原のエリアに入っていた。今のサトシの持ち点は41。
「だいぶ点数を稼いだな〜。でも、ママもタケシもシゲルももっとポイント稼いでるだろうし・・・。俺も負けてられないぜ!!」
「ピカピ!!」
相棒ピカチュウが指を指し示した先には・・・。
「ママ!!」
サトシの母・ハナコが倒れていた。
「サ、サトシ・・・・。」
「どうしたんだよ、このありさまは?」
「ふふ、全滅したのよ。ゲットしていたハイグレ人間も全員失って私自身が逃げるだけで手一杯。もう私には優勝のチャンスもあなたと戦う気力もないわ。せめて、私をゲットして息子の役に立たせて頂戴、サトシ。」
「・・・・・。分かったよ、ママ。」
サトシは少しためらったが、ハイグレボールを取り出して母親をゲットする。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!これからはサトシのために頑張るわ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ハイグレボールの中で回復したハナコはエスパータイプのハイグレ人間候補になってコマネチポーズを繰り返した。

「でも、誰がママを・・・。」
「その質問には私たちがお答えしますわ!!」
サトシの前に二人の女性が現れた。サトシが一目で顔見知りだと分かるその名前は・・・。
「エリカさん!!ミカンさん!!」
「サトシさん、あなたに恨みはありませんが・・・。ここでゲームオーバーになって頂きます!!」
二人は手元からハイグレボールを取り出して地面に叩きつける。その対戦相手にサトシは驚愕した。



ジムリーダーのエリカとミカンはアンズとナツメを繰り出した。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
アンズは紫、ナツメは黒のハイグレ姿でポーズを取る。
「ジムリーダーのハイグレ人間が二人相手か・・・。」
サトシは冷や汗が出てくるのを感じる。先程はその力を頼りにアカネに勝利しただけに、その力の恐ろしさは身にしみて分かっている。
「サトシさん、あなたはジムリーダーを三人持っていらっしゃいますね?それを大人しく渡していただければゲームオーバーだけは勘弁してあげますわ。」
エリカが唐突に取引を持ち出す。
「な、なにを言ってるんだよ?そんなことできるわけないじゃないか!!」
「あなたもシゲルさんとハナコさんと同じ事をおっしゃるのですね。」
「ママとシゲルも?どういう意味?」
「シゲルさんはアンズさんを、ハナコさんはナツメさんをハイグレボールに入れていらしたのであなたと同じ事を提案したのですが、残念ながら断られてしまいました。せっかく手に入れたポイントを失うわけにはいかないと。」
「で?」
「実力で奪わせていただきました。私とミカンさんのタッグの前に敵はございません。お二人とも全てのハイグレ人間候補を失いましたわ。」
シゲルもハナコも優勝候補の一角。それがジムリーダーの前には歯が立たなかった。
「なんでジムリーダーの確保にこだわるんだ?」
ミカンがサトシの質問に答える。
「私たちにも事情があるんです。例え伝統行事の異種バトル大会であってもジムリーダーが全滅しては恥・・・・。本音を言わせてもらうと、大会の後でキクコさんの雷が落ちるのが恐いんです。」
キクコはポケモンリーグ最高峰の四天王の一角にして最長老、今はトキワジムリーダー代理を兼ねている猛者。その人物像は頑固で、ジムリーダー全滅などという失態を演じれば激怒すること請け合いだった。
「確かに怒ると恐そうな人だからな・・・・。でも、俺だってバトルである以上、勝ちを目指させてもらう!勝負だ!」
サトシは決意を固めてバトルを申し込む。
「分かりました・・・。ならば、こちらも全力でお相手させていただきます。」
「私たちがジムリーダー最後の砦。必ず勝ちます!」
イブキ、ナツメ、アカネと一般参加者とは別格の強さを持つジムリーダー相手に苦戦していたサトシ。本当に勝てるのだろうか?その不安を頭の中で打ち消した。勝たねばならない。絶対に勝つ。そう心に誓う。

「ムサシ!!コジロー!!君たちに決めた!!」
サトシはハイグレボールから二人の第二形態のハイグレ人間候補を出す。
「あらあら、第三形態ではなくて第二形態と第一形態のハイグレ人間候補?間違えているんじゃありませんか?」
「いや、間違えてないよ。」
「大した自信ですね。なら、仕掛けさせてもらいます!!アンズさん、どくどくのキバをコジローさんに!!」
「はいっ!!」
エリカの命令に従ってアンズがコジローに突進する。
「コジロー!!リフレクター!!」
「はっ!!」
コジローは光の壁を作ってアンズの攻撃の効果を半減する。しかし、それでも相当な威力の攻撃だった。
「ナツメさん!!ムサシさんの弱点はエスパーです!!ねんりき攻撃を!!」
ミカンがナツメに命令する。
「いやあああああああああああ!!」
ムサシは効果抜群攻撃で空中に投げ飛ばされ地面に叩きつけられた。
「アンズさん!!どくづきですわ!!」
「ナツメさん!!サイコキネシス!!」
ジムリーダーの圧倒的な攻撃の前にムサシもコジローも息絶え絶えになる。
「さあ、もう終わりですの?止めを刺させて頂きますわよ!!」
「まだだ!!まだ勝負は終わってないぜ!!」
ミカンがサトシに尋ねる。
「ここから勝つ方法があるんですか?」
「そうさ。行くぞっ!!ムサシ!!ナツメさんにようかいえき!!」
「おうよ!!」
ムサシは口から強力な酸を吐き、それがナツメの胸に命中する。その攻撃の効果でハイレグ水着が溶けだす。
「きゃっ!!」
ナツメは胸を押さえてうずくまってしまう。ムサシはその隙にどくどく攻撃でナツメを弱らせる。
「コジロー!!アンズさんにあくまのキッス!!」
「了解!!」
コジローはキスをせまるポーズを取ってアンズにすり寄る。
「うううっ!!」
アンズはその気持ち悪さを前に卒倒してしまった。
「なっ!?」
「そ、そんなっ!!」
「よしっ!!コジロー!!ムサシ!!そのまま集中攻撃だ!!」
いかにジムリーダーといえども弱り切った相手に負けはしない。そのままナツメとアンズはノックアウトされた。
「行けっ!!ハイグレボール!!」
1・・・2・・・3・・・4・・・カチッ!!
「ナツメさんとアンズさん、二人まとめてゲットだぜ!!」
ゲットされた二人は今度はサトシの僕となってハイグレポーズを取る。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ち、父上に申し訳が・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ・・・ハイグレッ・・・もう・・・嫌・・・・こんな屈辱・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

・・・・・・おや!?ムサシのようすが・・・・・・!
おめでとう!ムサシはハイグレ人間にしんかした!

・・・・・・おや!?コジローのようすが・・・・・・!
おめでとう!コジローはホステスにしんかした!

ムサシは水色のハイグレ姿、コジローはホストの格好でハイグレポーズを取る。
「おのれっ・・・・ジャリボーイ・・・・あ、いや、ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「くそ〜〜〜なんで俺まで!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
二人は悔しそうに顔をゆがめる。こうしてロケット団も使いこなし、サトシはジムリーダー相手に勝ってしまった。



「さあ、後はエリカさんとミカンさんだけだ!!」
指をさされた二人はぞくりとする。今までジムリーダーを奪うために襲撃したシゲルとハナコには連戦連勝。なので、自分たちがハイグレ人間になることなど全く想像していなかったからだ。
「サトシさんはハイグレ人間を七人。ハイグレ人間のジムリーダーが大勢いては第一形態の私たちに勝ち目はありません。エリカさん・・・ここは生き残りに徹しましょう。」
「そうですわね。ミカンさん、先に逃げてください。」
「えっ!?二人とも逃げるべきじゃ!?」
「私は着物を着ているので早く走れません。なので、ここでサトシさんを食い止めて時間を稼ぎます。ミカンさんだけでも逃げて、競技終了時刻まで耐えてください。」
「わっ、わかりました。必ずジムリーダーの名誉は守って見せます!」
ミカンはエリカに背を向けて逃げ出した。それを追おうとするサトシの前にエリカが立ちはだかる。
「行かせませんわ。ここで私のお相手をなさってください。」
「ちっ!いいぜ!勝負だ、エリカさん!」
明日の百より今日の五十。目の前にいるエリカをゲットすることこそポイントアップへの近道。

「ヒカリ!!君に決めた!!」
サトシはハイグレボールからヒカリを出した。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ヒカリは花嫁姿でハイグレポーズを取る。
「あらあら、可愛らしいドレスですこと。私が白無垢なら釣り合いも取れたでしょうに。」
そう軽口を叩くエリカの顔は笑っていない。草タイプは鋼タイプに相性が悪い。ジムリーダーといえどもそれは同じ。
「ヒカリ!!メタルクロー!!」
「OK!!」
ヒカリが鋼のように固い爪でエリカに襲いかかる。エリカはたまらず吹き飛ばされる。
「ま、負けませんわ・・・。ねむりごな!!」
「避けろ、ヒカリ!!」
ヒカリは左に転がって避ける。
「そこですわ!つるのムチ!」
しかし、ヒカリには対して効果はいま一つだった。
「アイアンヘッド!!」
「きゃああああっ!!」
エリカは鋼鉄の頭突きの前に力尽きる。
「ふふ、負けても目的は達成しましたわ。ミカンさんさえ残ればジムリーダーの全滅は阻止できますわ。」
「今から追いかければ間に合うかもしれない。ミカンさんなら親友を置いて逃げるなんてできずに戻ってくるんじゃないかな。」
「・・・あり得ますわね。しかし、残念です。サトシさんにゲットされたらそれを伝えられません。」
「じゃあ、ゲットさせてもらうぜ、エリカさん。」
「負けた私に抗う権利はございません。ハイレグ姿でも花嫁姿でもご存分に。」
観念したエリカはハイグレボールに素直に収まる。1・・・2・・・3・・・4・・・カチッ!
「エリカさん、ゲットだぜ!」

・・・・・・おや!?ヒカリのようすが・・・・・・!
おめでとう!ヒカリはハイグレ人間にしんかした!

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレ人間になっても大丈夫!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ヒカリは青のハイグレ姿で恥ずかしそうにハイグレポーズを取る。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
黄緑色のハイグレ姿のエリカと一緒に仲良くしばしの間ポーズを取り続けた。



「エリカさん、ご無事でしょうか・・・。やっぱり、戻った方が・・・。」
ミカンは途中まで逃げたが、戻るべきか逃げるべきか迷っていた。
「でもでも、私が戻ってハイグレ人間にされたら全滅だし・・・。そしたら全員怒られるし・・・。ああ、でも、でもでも!」
ミカンは迷いに迷っていた。しかし、こうした場合に優柔不断なのが命取りになるのが世の常。
「見つけたぞ、ミカンさん!」
サトシとピカチュウはミカンに追いついた。
「ど、どうしてここが!?追われないようにジグザグに逃げてきたのに・・・。」
「ナツメさんの透視能力のおかげで近くにいることが分かったのさ。」
「やっぱり遠くに逃げていれば・・・。エリカさんは?」
「ゲットさせてもらったよ。」
サトシはハイグレボールからエリカを出す。ハイグレポーズを繰り返す彼女を見てミカンは落胆する。
「お気の毒に、エリカさん。仕方がありません・・・。勝負です!」
「望むところだ!ハルカ、君に決めた!」
サトシははがねタイプに強い炎タイプのハルカを繰り出した。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

「ハルカ、ほのおのうず!」
「了解かも!」
ハルカは生み出した炎で渦を作り、ミカンの体に絡める。
「きゃああああああああああああ!!」
ミカンに効果抜群。さらに逃げられなくなるという付加効果もついた。
「アイア・・・いやああああっ!!」
ほのおのうずに飲まれてミカンは攻撃技を繰り出せない。
「一気に決めるぞ!だいもんじ!」
噴き出した炎が大の字になってミカンを包む。そのままミカンは簡単に力尽きてしまった。ハイグレ人間第三形態の圧勝だった。
「も、もう、ダメです・・・。ごめんなさい・・・皆さん・・・。」
ミカンはそのまま気を失った。サトシはすぐにハイグレボールを投げる。1・・・2・・・3・・・4・・・カチッ!
「ミカンさん、ゲットだぜ!」
こうしてサトシは強力なジムリーダー全員の捕獲に成功した。

競技終了時間が刻々と迫る。サトシの今のポイントは84。本日の競技開始時点の実に四倍になっていた。
「シゲルもママも脱落。タケシはどうしてんだろうな・・・。俺ももう少しポイントを稼ぎたいけど、後30分か・・・。どうすればいいんだろう、ピカチュウ?」
ピカチュウはしばらく一緒に考えたが、突然T字路を左に曲がって走り出した。
「おい、どこ行くんだよ?会場はあっちだぞ?」
サトシは時間もないのでゴール地点に向かって歩いていたが、ピカチュウはそれとは反対側に走りだす。こっちにこいというジェスチャーをして、茂みを指さす。
「ピカ!チュウ!ピカピカ!」
「分かった分かった。カスミ、ムサシ、君たちに決めた!」
サトシはカスミとムサシをハイグレボールから出した。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「カスミはみずでっぽう、ムサシはどくのこなを草むらに巻いてくれ。」
二人が草むらを攻撃しようとしたその時、一人の人間が顔を出した。
「出るから攻撃しないでくれ!」
サトシの知っている人物だった。
「シゲル?何してるんだよ、こんなところで?」
「そ、それは・・・。」
シゲルは口をつぐんで言わない。明らかにまずいという顔をしている。
「お前、まさか隠れていたのか?」
「なぜそんなことをしなければならないんだい?僕は優勝候補ナンバー1なんだけどね。」
「嘘を付くな。手元にハイグレボールが一つもないじゃないか。全員やられたんだろ?」
「き、君にしては随分鋭いね・・・。」
シゲルの顔から冷や汗がだらだらと出てくる。
「ああ、俺も人から聞いたんだ。」
サトシはハイグレボールをシゲルに見せる。中を見なくても言いたい事は伝わったようだ。
「ハハハハ、四番目のサ〜トシ君がずいぶん成長したねえ。嬉しい限りだよ。」
「言いたい事はそれだけか?なら、ゲットさせてもらうぜ!」
サトシはハイグレボールをシゲルに投げつける。シゲルは吸引光線をからくも避ける。
「さらばだ、サトシ君!」
シゲルはそのまま逃走を図る。しかし・・・
「う、うわああああああああ!!」
サトシは成長させるために繰り出したハナコにサイケこうせんを放たせる。シゲルはそれをまともに食らってしまった。
「よし、弱ったぞ!今だ、ハイグレボール!」
1・・・2・・・3・・・4・・・カチッ!
「シゲル、ゲットだぜ!って、あんまり嬉しくないけど・・・。」
「こら、サトシ。シゲル君に対してそんなこといっちゃいけません。」
ハナコはサトシをポカリと叩こうとするができない。手を上げたがハイグレポーズをしてしまう。
「ハイグレッ!ハイグレッ!体が勝手に!ハイグレッ!ハイグレッ!」

・・・・・・おや!?ハナコのようすが・・・・・・!
おめでとう!ハナコはウェイトレスにしんかした!

ピンポーン。競技終了の合図が場内に鳴り響く。最終ポイントは87。サトシはハナコをハイグレボールに収め、会場へと戻った。



会場には今日の朝より少ない三十人くらいが集まっていた。手に手にハイグレボールを持っている。サトシも係員にハイグレボールを提出する。すぐに集計が始まり、結果発表会が始まる。
「よお、サトシ。お前も生き残っていたか。」
先に提出を終えたタケシがやってくる。
「お前も沢山ゲットしたみたいだな。仲良く結果を見るとしよう。」

「さてさて、ハイグレタウン伝統ハイグレバトル大会・・・・結果発表です!優勝者は誰か・・・十位から発表です!」
電光掲示板に顔写真とともに下から順に点数表示がなされていく。
10位 ヒロトシ 45
9位  ミナ   49





3位  ヒロミ  82

「3位が82!?だったら、俺はそれ以上ってことに・・・。あれ?タケシの名前がまだ・・・?」
「俺と逆のことを考えているな・・・。サトシの名前がまだない・・・。」
もったいぶった演出でじらす定番。なかなか発表しないが、ついに結果が。
「今回の優勝者はこの方たちです!」
「方・・たち?」
電光掲示板に表示された優勝者は・・・サトシとタケシ。二人だった。
「なんと、ポイント、進化計数、男女の優劣が全て同じ!ハイグレ化した女性10人、第二形態が男女一人ずつ、第一形態の男性が一人!このような結果はハイグレバトル大会でも稀です!この奇跡に惜しみない拍手を!」
場内にどよめきが走り、続いて盛大な拍手が二人に送られる。
「さて、この規定を発動するのは何十年ぶりか・・・。これよりサトシ選手とタケシ選手のプレーオフを開催します!」
両者ステージに上がるように指示される。二人は距離をとって相対する形になった。
「よく分からないけど、これもバトルなんだよな、タケシ?」
「ああ。何であれ、真剣勝負だ、サトシ!」
ここにサトシとタケシのプレーオフ選手権が始まった。

ルールは簡単。繰り出したハイグレ人間がコマネチポーズを取る。他の競技者(プレーオフ参加選手以外のハイグレボール中の選手は全員解放)総勢224、それに審査員も加わりどちらのハイグレポーズが良いかを判定する。競技者は一人1ポイントで合計224、審査員は5人で各々20ポイントで計100。合計324ポイントの過半数を得たら1勝。今回はハイグレボールが13人なので、先に7勝すればよいというルールだ。
「また変な勝負だな・・・。伝統ってなんかおかしい・・・。」
しかし、愚痴ってみても仕方がない。ただ目の前のバトルに集中するのみ。ここでは読み合いが全ての勝敗を分ける。
「さあ、勝負だ、タケシ!」
「望むところ!」
二人は勢いよくハイグレボールを投げつけた。

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
サトシは第一形態のシゲル、タケシはハイグレ人間のナナミを繰り出した。
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・。」
会場内には言いようもない静寂が訪れる。サトシの人選が誰にも理解できなかった。
「サトシ・・・なぜハイグレ人間を出さないんだ?」
「えっ?最初はお互い小手調べじゃないのか?」
ピカチュウが後ろで呆れた表情をしている。短期決戦にそのような小細工をするのは愚策。そういう顔だった。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「さあ、皆さん!判定を!」
結果は集計する前に分かっていた。324対0でタケシの圧勝。

「さあ、次だ!行け・・・・あっ!」
サトシは手が滑って別のハイグレボールを投げてしまう。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
サトシはホステスのコジロー、タケシはハイグレ人間のリツコを繰り出した。当然ながらタケシの圧勝。サトシは最初から2ポイントを失う劣勢になってしまった。
「(ここで俺は2ポイント先取。サトシの残りのハイグレ人間は10、俺は8。早めに決めにかかるに限る。後5ポイントを一気に狙おう。)」
タケシはそう頭の中で考える。自分が作ったハイグレ人間には自信を持っている。内心勝ちを決められてほくそ笑んだ。

タケシは第三のハイグレ人間を出す。スタイルの良いハイグレ人間に大きな歓声が上がる。
「サトシ、お前は誰を出す?」
「よし、エリカさん、君に決めた!」
サトシはハイグレ人間のエリカを繰り出した。先程より大きな歓声が上がる。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
エリカは黄緑色のハイグレ姿。恥ずかしそうにポーズをとる。
「なっ!?サトシ、お前ジムリーダーをゲットしていたのか!?」
「言ってなかったか?」
判定はサトシの圧勝。276対48。
「よし、どんどん行くぞ!」
サトシはアカネ、アンズ、イブキ、ナツメ、ミカンを続けざまに繰り出す。タケシのゲットしたハイグレ人間の容色は残念ながらサトシのそれに負けている。あっという間にポイントは6対2になった。

「サトシ選手、序盤のミスを取り返す猛攻を見せています!タケシ選手、なすすべなくがけっぷち!さあ、次で決まるか!」
司会者の実況もヒートアップする。
「よし・・・これで最後にしてやる・・・行けっ!!カスミ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
勢いよくボールを飛び出したカスミがポーズをとる。
「くそっ・・・・頼む、コトネ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
対してコトネは黒のハイグレ姿でポーズをとる。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
両者拮抗のハイグレ対決になる。結果は・・・・163対161でカスミの勝利。
「サトシ選手の勝ち!7勝によりサトシ選手の優勝!」
司会者が高らかに宣言する。
「やったー!!俺達の優勝だー!!」
サトシとピカチュウが喜んで抱き合う。サトシのハイグレ人間たちと会場の観衆たちが惜しみない拍手を送る。

「サトシ、完敗だ。まさかジムリーダー全員をゲットしていたなんてな・・・。それにカスミたちもいれば序盤のミスなんて関係ないってわけだ。」
「いや、ゲットできたのものタケシに勝てたのも運が良かっただけさ。」
「ふっ、それもお前の実力があってこそさ。だが、サトシ、一つ言ってもいいか?」
タケシは深刻な表情でサトシに相対する。
「うらやましい・・・・うらやましすぎる!!なんでこんなきれいなお姉さんたちをお前だけが独り占めしているんだ!!」
タケシが号泣する。ああ、やっぱりいつものタケシだ、と思わざるを得ないサトシだった。

「では、表彰式にうつります!!」
委員長から賞状と、そして副賞のポケモンコンテスト一式人数分、最後に目当ての商品であるマスターボールが渡される。
「マスターボール、ゲットだぜ!」
サトシが喜びのあまり頭上にボールを掲げた瞬間だった。先に吸盤の付いたつりざおが伸びてきてマスターボールを掠め取った。



「ニャーハッハッハッハッハッハッハッ!!マスターボールは頂きにゃ!!」
遠くの木の上からニャースが高笑いの声をあげる。手にはつりざおとマスターボールが。
「ニャース!!」
「最後に勝つのはロケット団にゃ。ムサシ、コジロー、逃げるにゃ!」
「お、おう!」
ニャースは木から飛び降りて二人と一緒に逃げようとする。
「待て、ムサシ、コジロー!」
サトシが叫ぶ。すると、二人は立ち止まってハイグレポーズをしてしまう。
「おみゃーら、何やってるにゃ!!」
「し、仕方無いんだよ〜。ハイグレ人間はご主人さまに絶対服従なんだよ〜。」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!あたしなんかこんな格好でやってんのよ!?コジローはまだましでしょ!?」
ムサシはハイグレ姿でせっせとコマネチをしながら苦悶する。

「ええい、こうにゃったら!」
ニャースが懐からリモコン式のボタンを取りだして押す。すると、遠くから地鳴りがしてくる。
「なんだ、これは!?」
会場全体が騒然となる。地鳴りがだんだんと大きく、音も近づいてくる。その音が最高潮に達した時、地面からハブネークの形をしたメカが出てくる。
「ロケット団最新式のメカにゃ!この会場もろともメチャメチャにしてやるにゃ!」
「ソーナンス!」
いつの間にかポケモンボールの外に出てきたソーナンスがいつもの文句を言う。
「ポチッとにゃ!」
メカの中に入ったニャースがボタンを押す。すると、メカの口の部分から強力な風が出て周りのものをなぎ倒す。
「うわあああああ!!」
会場のテントもステージも吹き飛ばされてしまう。観客やスタッフたちも強風の前に何もできず、右往左往するだけだった。
「くそっ、なんとかしなくちゃ・・・。」
「サトシ!!」
風の中をはいつくばってタケシがやってくる。
「お前、ポケモンは持っているか!?」
「何言ってるんだよ!最初に係員に預けただろ?持ってない!」
「そりゃそうだ・・・。でも、これじゃあのメカに勝てないぞ・・・。毎度のように電撃対策はしているだろうし・・・。」
今会場内にいるポケモンはピカチュウだけ。そのピカチュウも風で飛ばされないように必死に地面にしがみついている。
「くっ!!」
いきなり風が収まる。メカはサトシたち選手とは別の方向に進み、テントに置いてあるケースをこじ開ける。
「あっ、あれは・・・!」
中身は競技者たちのモンスターボール。その数は1000以上。ハブネークメカはそれを次々と飲みこんだ。
「にゃははは、これでボスからのご褒美がたんまりもらえるにゃ!」
「ソーナンス!」
ニャースはコックピットではしゃいでいた。

「そうだ、ハイグレボール!タケシ、お前も出せ!」
「そうか・・・!みんな、まとめて行けえ!」
今会場内でハイグレ人間を所有しているのはサトシとタケシだけ。他の競技者はすでにボールから解放されているからだ。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
サトシは11人、タケシは13人のハイグレ人間と候補を出す。
「あのメカを倒すぞ!みんな、総攻撃だ!」
「「OK!!」」
火、水、草、電気、エスパー、地面・・・。様々な攻撃が加えられ、その攻撃に耐えかねてメカは停止する。しかし・・・
「うわっ!!」
ハブネークメカが眩しく光る。外装がはがれおち、銀色のコーティングになる。
「これはロケット団新開発の超特殊合金にゃ!!そんな程度の攻撃では中身まで傷つけられないにゃ!!」
ニャースが高笑いする。新開発の兵器。普段のように簡単にはやられない。
「どうすればいいんだ・・・。」

「サトシ君!タケシ君!」
「委員長さん?」
この大会の実行委員長が走ってくる。
「すまない・・・。まさかこんな事態になるとは・・・。ポケモンボールも全て奪われるなんて・・・。」
「おじさん、そんな後悔より先にあいつを倒さないと!なんかいい方法はないの?」
「あの超特殊合金のせいで攻撃がまったく通じないんです!」
「ううん、そう言われても・・・待てよ?」
会長は頭の片隅にあった何かを思い出そうとする。
「そうだ!古より伝わりしハイグレ人間だけが使えるポケモン技が使えるはずだ!」
「ハイグレ人間だけが使える技?」
「いいかね?君たちの持っているハイグレ人間の中で選りすぐりの強さを持つ十人がハイグレポーズをとる。そのコマネチを繰り返すことでエネルギーを蓄積する。すると、何物をも寄せ付けない絶対的な力を生み出せるのじゃ。それを別のハイグレ人間に送ると絶対無敵の技を使うことができる。だが、そのためには十人が心を一つにしてハイグレポーズをとるので難しい。それゆえに失われた技なのだ。」
「でも、それを使えば倒せるんですね?」
「タケシ!迷っている時間はない!今すぐやるぞ!」
ハブネークは既に多くのモンスターボールをのみこんでいる。残りはあとわずか。時間は残り少ない。
「行くぞっ!!」

ハルカ、ヒカル、ムサシ、ナツメ、エリカ、アンズ、アカネ、ミカン、イブキ、コトネがカスミを囲むように円になって広がる。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
十人が心を一つにして一心不乱にハイグレポーズをとる。
「うわっ!あれがハイグレパワー?」
「なんて圧倒的なオーラを放っているんだ・・・。」
十人がコマネチをするたびにパワーがカスミのいる中央に溜まっていく。そのパワーは直径3mほどの球体になった。
「行くわよ・・・・あのメカを倒して・・・・!」
カスミがハイグレパワーを思いっきりハブネークに投げつける。
「な、な、な、な、そんなバカにゃー!!」
ハブネークメカの装甲を紙のように破る。
「ああ、モンスターボール!!」
ナツメとハナコ、それにタケシのハイグレ人間のエスパータイプの念力によってモンスターボールが全部外に運び出される。
「こ、これだけでも持って脱出を・・・。」
ニャースは奪い取ったマスターボールを片手に持ち、もう片方の手で脱出ボタンを押す。コックピットからパラシュートが飛び出し、上に投げ出される。
「ピカチュウ!!10万ボルト!!」
「ピカ!!」
待ってましたとばかりにピカチュウが電撃をニャースに浴びせる。手がしびれてマスターボールを下に落としてしまった。
「ああ!!」
「全員、まとめて攻撃をお見舞いしてやれ!!」
ハイグレ人間たちがニャース目がけて大技を繰り出す。
「やにゃ感じ〜!!」
ニャースは空の彼方へと飛ばされていった。

こうして最後に大騒動もあったがハイグレバトル大会は終わった。競技者は三々五々帰っていき、スタッフはニャースが壊した分も含めて後片付けに勤しんでいる。
「あれ?ムサシとコジローは?」
サトシはロケット団二人がいなくなっていることに気づいた。
「あいつらなら着替えを済ませてすぐにいなくなったぞ?」
「そうか・・・。今回はあいつらも活躍してくれたから御礼だけでも言いたかったんだけどな・・・。」
「まあ、またピカチュウを狙って現れるだろうからその時にでも言えばいいだろう。」
タケシがそう言って笑う。それがロケット団らしいところだからだ。

一方、ハイグレバトル大会に来たジムリーダーたちとは別行動でポケモンのトレーニングをしていた男性ジムトレーナーたちは生きた心地がしていなかった。
「あの子達、随分と派手にやってくれたようだね・・・。」
テレビニュースでハイグレバトル大会について映像が流れているのを凄まじい形相で見ているのは四天王のキクコ。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ジムリーダー達がハイレグの水着姿でコマネチをしている映像は全国に流れている。
「帰ってきたらたっぷりとお灸をすえる必要がありそうだね・・・。」
エリカやミカンが一番恐れていた事態は刻々と迫っていた。

サトシとタケシがしばらく待っていると、ハイグレ人間にされていた競技者たちが着替えを終えて出てきた。
「はあ〜、やっとハイグレ人間におさらばできるわ〜。」
「まったく、とんだ災難だったわね〜。」
口々にお互いに対してねぎらいの言葉をかけている。
「ね〜、サトシ〜、タケシ〜。」
カスミが満面の笑みを浮かべて二人に話しかける。
「なんだよ?」
その瞬間、サトシを両脇からハルカとヒカリが動けないように取り押さえる。
「ピカチュウは邪魔しちゃだめよ〜。」
「ピ、ピカ・・・。」
ピカチュウは女性たちのオーラを感じ取り、ただうなずくことしかできなかった。
「なんだよ、ハルカ、ヒカリ?な、なあ、タケシ、お前からも・・・。」
サトシが横を向くとタケシもコトネに羽交い絞めにされていた。
「実はね、二人にお願いがあるの。これよ!」
カスミは二着のハイレグ水着を取り出した。
「サトシもタケシもこれを着て欲しいかも〜。」
「えっ!?俺たちが着るの!?」
サトシがあまりの衝撃的なお願いに言葉を失った。
「で、でも、ほら、それは女物だし、きれいな女性が着ることで魅力を引き出す〜。」
タケシの弁解はヒカリの一言によって遮られた。
「大丈夫!二人ともよく似合うはずよ!」
ヒカリが大丈夫という時に限って大丈夫だったことはない。助けを求めようと他のメンツを見るが、ジムリーダー達は全員悪魔の笑みを浮かべている。
「観念しなさい、二人とも。私たち、帰ったらキクコさんにすごく怒られて罰を受けるの。でも、あなたたちだけ罰が無いのは不公平でしょう?」
イブキが二人にとどめの一撃を刺す。
「で、でも・・・。恥ずかしいし・・・。」
「それなら心配はいらない。僕が着替えさせてあげるから。」
シゲルがサトシの襟元をつかんで物陰に連れていく。タケシも同様に連行されていった。

しばらくして・・・・
サトシは青、タケシは緑のハイレグ水着に着替えさせられた。
「ほらほら、ハイレグ水着を着たらやることがあるでしょう?」
「く、くそーっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「お、俺もやらなきゃいけないのか!?ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
サトシとタケシはハイグレポーズをする。ハイグレ人間に性別は関係ない。ハイレグ水着を着てコマネチをすれば誰でもなれる。二人はその教訓を実体験で味わうことになった。


ハイグレバトル大会のニュースの後、ハイグレ人間が空前のブームになった。ジムリーダー達のバトル大会でのハイグレ姿が評判を呼んだからだ。町には真似をしてハイグレ人間になる若者が増えた。ハイグレ姿のジムリーダーのトレーディングカードも好評発売中。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
こんなあいさつ風景はいつものこと。ハイレグ水着を買う人が増え、日替わりで色を変えて楽しんでいる。
こうして、空前のハイグレブームは長期間にわたって続く。続くったら続く。

MKD
2009年11月12日(木) 18時02分21秒 公開
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■作者からのメッセージ
ポケットモンスターのハイグレ小説完結です。
ハイグレSSのように簡単にゲームはクリアできませんね。時間かかりそうだ〜。