恋姫†無双〜ドキッ★ハイグレだらけの三国志演義〜 |
深淵の闇。 薄暗い大広間。 その広い空間に、二人の男が立っていた。 二人の男の他には、部屋の中央に置かれた机、その上に置かれた水晶玉。 そして、男の脇に置いてある木箱以外は何もない部屋だった。 「さて……準備はいいですか?左慈」 二人のうちの一人、眼鏡をかけた男……于吉が、もう一人の男……左慈に呼び掛ける。 「……ていうか、本当にこんなことでいいのか?」 左慈が不安そうに……いや、怪しむような眼で于吉を見た。 「もちろんですとも」 于吉は妖しく笑う。 そして、箱の中から一着の衣装を取り出した。 箱の中には同じ様な衣装が何枚も入っていた。 「別世界の外史で手に入れた、この異常とも呼べるほどの力を持った衣装。この衣装を今回の外史に落とせば、簡単に事が済みます」 「へぇん……ていうか、それはなんだ?」 「おや、ご存じないのですか?」 于吉は衣装を広げて左慈に見せた。 「……だから、それはなんだよ」 「これは、ハイレグですよ」 「…………で?」 「で? とは?」 「それが役に立つのか?」 「勿論」 即答する于吉。 「…………」 「…………」 二人の間に長い沈黙が走る。 「納得できませんか?」 「……いや、もういい。お前が役に立つって言うならそうなんだろう」 「ありがとうございます」 半ば諦め口調の左慈を見て、于吉は満足そうに頷いた。 「とにかく、今回の外史はこれで終わらせます」 「まあ、俺は少しでも外史が消えてくれれば何でもいいがな」 左慈は憎むような眼で、目の前の水晶玉を見つめた。 「最近はあの外史を起点として、ネズミ算式に外史が増えてやがるからな。一つでも多く消えてほしい」 「…………」 于吉はじっと左慈を見た。 「……なんだよ」 「いやあ、妬いている左慈の顔もかわいらしいと思いまして」 「……どうしてそうなる」 「出番がないから、北郷一刀と絡めなくて拗ねているのでしょう?」 「……やっぱお前から殺すぞ」 左慈の眼に殺意が宿る。 「冗談ですよ。しかし、我等は真・恋姫†無双で出番がありませんでしたからね。私もそこには多少の恨みがありますし」 さりげなくメタ発言をする于吉だった。 「せめて一つの外史くらい、思い切り壊して差し上げましょう」 邪悪にほほ笑んだ于吉は、ハイレグを水晶に近付けた。 すると、ハイレグは水晶に吸い寄せられ、中へと消えていった。 「おっといけない。こちらも入れなければ」 そう言って于吉は、木箱から小さな銃のようなものを取り出した。 「さっきのよりは、武器って感じだな」 「こちらは、先ほどのハイレグの持つ力を研究し、そして形にしたものです」 于吉は手で小型の銃を弄びながら言った。 「ただ、出力の問題で衣装が持つ本来の力は出し切れませんでしたがね」 そのまま銃を水晶の上に落とす。 水の中に落ちるような波紋を立て、銃は水晶の中に消えていった。 「……これだけでいいのか?」 左慈は疑いの眼を于吉に向けた。 「ええ、あとは少し『調整』が必要ですが……これでもう大丈夫です」 「調整?」 「ええ、できるだけ都合のいいように」 「そうか……」 若干不満そうな顔をする左慈。 「別に我々が直接出向かずとも良い、ということです」 「……んなことはわかってる」 于吉はにやりと笑いながら、 「それとも、やはり北郷一刀に――」 「手前と一緒にすんなこのホモ野郎が!」 于吉の言葉が最後まで言い終わるより早く、左慈の手刀が于吉の首にめり込んだ。 「ぐふぉう」 地を擦りながら軽く数メートルスライドする于吉。 だが、さしてダメージはないのか、于吉はすっと立ち上がり、元の位置に戻った。 「ははは、相変わらず照れ屋さんですね」 「次は本気だからな」 「はははは」 于吉は笑いながら水晶玉に手をかざした。 「……ちっ」 于吉が『調整』に入ったことを感じた左慈は、舌打ちしつつも構えを解いた。 「〜〜〜〜〜〜」 そして小さな声で何かを唱えた。 「さて、これで完了です。あとは待つだけですよ」 「そうか」 「あの種がどのような形で、どのような大きさに育っていくのか……ふふ、考えただけで胸が躍りませんか?」 「さあな」 顔をそむける左慈。 「……ところで左慈?」 「なんだ」 于吉はにたりとした笑みを浮かべ、ハイレグをもう一つ取り出した。 「ちょっとでいいので、着てみませんか?」 「…………」 左慈は無言で于吉の顔面を殴り、その場から去って行った。 「ふーんふふーんふーん♪」 機嫌がよさそうに鼻歌を歌いながら、一人の少女が部屋に帰ってきた。 蜀でも……いや、三国でも有数の軍師、諸葛亮孔明――朱里である。 手には、新たに購入した房中術の本があった。 (やっと手に入った……新刊) 分厚いその本には、真・口淫艶技と書かれていた。 (これで、またご主人様と……) 自分の主であり想い人である北郷一刀の姿、そして彼との逢瀬を思い浮かべた。 ぽおっと顔を赤くする朱里。 (もっと勉強して、ご主人様にいっぱいご奉仕できるようにならなきゃ……) 「さて、と……」 椅子に座り、朱里は本を開いた。 「え?」 かちゃりと、何かが落ちる音がした。 あたりを見回すと、部屋の隅に妙な布のようなものが置かれていた。 (なんだろ……さっき見たときはなかったよね……?) 朱里は立ち上がってそれを見た。 「……?」 どうやら音を立てたのは、布の脇に落ちている小さな物体のようだった。 朱里はその物体を手に取った。 それは小さなおもちゃのような銃だった。 一刀がそばにいれば、それが何かはすぐにわかっただろう。 だが、この時代に拳銃など存在するはずもなく、朱里にはその物体の正体がつかめなかった。 結局、朱里はその小さな銃は机の上に置くと、紺色の布を手に取って広げた。 「これって……すく水?」 それは、以前川で遊んだ時に一刀が着せてくれたスクール水着と似ていた。 (でも……あれとはちょっと違う……?) それはスク水よりも急角度に切れ込みがあった。 「……はわ」 朱里は、そのハイレグをじっくりと見つめて赤面した。 このハイレグを着た人間の姿、そして、このハイレグを着た自分の姿を想像してしまったのだ。 「……ごくり」 (ちょっとだけ……着てみようかな) 普段なら不審に思うはずだったが、朱里は何かに取りつかれたかのように、その紺色のハイレグを身につけてみたい衝動に駆られていた。 気がつけばすでに服を脱ぎ始めていて、ほとんど下着姿同然であった。 下着を脱ぐには少しの躊躇いがあったが、朱里は突き動かされるように下着を脱ぎ、全裸となった。 「ふぁ……」 誰もいない部屋だったが、全裸になった羞恥心から、急いで朱里はハイレグを着込んだ。 (う、わ……) 姿見に映る自分の姿に恥ずかしがりながら、朱里はしきりに身体をもじもじと動かしていた。 サイズが小さいのか、幼い朱里の身体でもぴっちりと貼りつき、食い込んでいた。 少し動くだけでも、肌のあちこちが擦れて、妙な気分になってしまう。 「それに、この……」 朱里は何気なくハイレグ水着の急角度な切れ込みを指でなぞった。 すると―― 「はわっ!?」 びくりと朱里の身体が跳ねる。 (な、何!?) 驚いて朱里はあたりを見回した。 だが、朱里以外の存在はどこにもいなかった。 (なんなんだろう……今の……切れ込みをなぞった瞬間、誰かにお尻を触られたような……) もう一度、朱里は恐る恐るハイレグの布地と素肌の境目を指でなぞる。 「ふぁっ!」 再び身体に軽い痺れに似た快感が何度か走る。 (ま、また……) 今度は胸を軽く、だが確実に触れる感触があった。 (こすれる……せいかな) 普通の状態なら止めているところだったが、朱里は左右両方の切れ込みをなぞった。 「あっ……くぁっ、んっ」 指を動かした瞬間、胸や尻、腋や背中を一斉に撫でられ揉まれる感触が起こる。 朱里は身体の甘い痺れに耐え切れずによろけた。 慌てて倒れないように体勢を整えると、まるで股間を強調し、見せつけるようなガニ股姿になってしまっていた。 しかし、朱里はその体勢を恥ずかしがるどころか、その体勢こそが正しい姿勢のように思えていた。 「はぁ……はぁ……っ」 恥辱も忘れ、まるで自慰をするように夢中でハイレグのラインを指でなぞり続ける。 だが……。 「ふ、うっ……」 足りない。 身体を手で撫で回されるような感触はあるが、最初のような快感は感じられなかった。 (どう、して……?) 朱里はどんどん擦る指の速度を早めていった。 「くぁっ、ん……もう少し……」 指を早めれば早めるほど、ハイレグの上から、複数の手で弄られる感触が強くなっていく。 朱里は思い切り、今までの倍ほどの速度で、一気に切れ込みに沿って指を擦らせた。 「ひゅああぁっ!!」 先ほどまでのもどかしい快感ではなく、乳首を思い切りつねあげられるような感覚が朱里を襲う。 (すごいっ、気持ちいいぃ……) 指を何度も何度も早く動かしているうちに、いつの間にか指はハイレグから離れていた。 股間近くまで腕を下げ、ハイレグのラインに沿ってぐいっと引き上げる。 その他人から見たら明らかに奇妙な動作を、朱里は恍惚とした表情で続けていた。 そして、その動作を繰り返すたびにハイレグが蠢くような感触を感じた。 しかしそれは不快な感触ではなく、愛しい人に体を愛撫されているかのようだった。 (はぁ……あ、ご主人様……) それは一刀に抱かれた時の感触と似ていた。 朱里の頭の中で、一刀が優しくほほ笑んだ。 (はわわ……ご主人様、恥ずかしいです……) ハイレグという衣装で、ガニ股になり奇妙なポーズを取りながら照れる朱里。 妄想の一刀は微笑みながら、朱里の頬にキスをした。 ――大丈夫、とても可愛いよ、朱里。 幻影の一刀の声が響いた。 (あ……えへへ、嬉しいです) 朱里は一刀にキスされ、微笑みを返しながらも、腕の動作を止めなかった。 ――さ、もっと朱里の可愛いハイグレポーズを見せてくれ。 (え? はい、ぐれ……?) ――そうだよ、今朱里がしているのは、ハイグレって言うんだよ。 (そう、なんですか。こんなのっ、こんな気持ちいいの、どの艶本にも……載ってませんでしたっ) 感心する朱里に幻影の一刀はニコリとほほ笑んだ。 ――さあ、朱里、早く。 (は、はいっ) せかすような幻影の一刀の言葉に、朱里は動作を続けながら口を開いた。 「はい……ぐれっ。はい……ぐれっ。ハイッ……グレッ」 ぶつぶつと呟きながら手足を動かし続ける。 (あ……本当です……さっきより、も……) ハイグレと言葉にして繰り返すことで、歯車がかみ合うように動作がスムーズになっていく。 そして、身体中を駆け巡る快感も増していく。 「ハイグレッ……ハイグレッ……」 朱里の頭の中の一刀が、もっとハイグレしてほしいと囁く。 (はいっ、ご主人様っ、見て、私の……朱里のハイグレ、もっと見てください!) 「ハイグレっ、ハイグレっ、ハイグレっ、ハイグレっ」 ハイグレポーズを繰り返す毎に、ハイレグの与えてくれる愛撫も強さを増していく。 「あはぁッ! ご主人様……きもちいい……」 その愛撫は一刀が与えてくれるものだと思い込んだ朱里は、完全に身体と心を委ねていった。 口はだらしなく開き、一筋の唾液が顎を伝った。 乳首も完全に尖り、股間の染みも広がっていく。 「ハイグレッ! ハイグレッ!」 声が徐々に大きくなっていく。 「ハイグレ気持ちいいですっ!ハイグレハイグレぇ!」 (ご主人様、ご主人様ぁ! もっと、ハイグレさせてぇ!) ――なら、ちゃんと宣言しないとね。 (せんっ、げん……?) ――自分はハイグレ人間だって、大きな声で宣言するんだ。 (ハイグレ、人間……?) ――そう、朱里はもう俺のものだろ? 俺のためにずっとハイグレしてくれる、俺の奴隷……それがハイグレ人間なんだよ。 ハイグレの快感と、愛する一刀の言葉の虜になっている朱里は、考えるより早く、拒むことなく受け入れた。 (ハイグレハイグレ! 御意です! 私はもう、ご主人様のハイグレ奴隷! ハイグレ人間!) 「ハイグレ! ハイグレっ! 私、はぁっ、ハイグレ人間に、なりますぅ! ハイグレ人間朱里ですっ!!」 声高らかに宣言した瞬間、これまでの何倍もの快感……、一刀に挿入された時と同じか、それ以上の快楽が朱里を包み込んだ。 ――ありがとう、朱里。 幻影の一刀が満足そうにほほ笑んだ、その瞬間。 「ご主人様ァァァッ! もう駄目ですっ、ハイグレでイっちゃうううううぅッ!!」 身体の全てを使ったかの様な勢いでハイグレポーズを取り、そのまま朱里は達してしまった。 「イクっ! ハイグレ! ハイグレッ! ハイグレェェェェッ!!!」 さらに繰り返し二度、三度と絶頂を迎えた。 「はぁ……はぁ……ぁ」 朱里は恍惚とした表情で、床に倒れた。 ――これで朱里も、立派なハイグレ人間だね。 「ふぁい……ご主人様……私、ハイグレ人間になれましたぁ……」 ――朱里、愛してるよ。 「ぇへへ……ご主人様……だいすきれす……」 朱里は幻影の一刀に向けて幸せそうにほほ笑み、意識を失った。 「朱里ちゃん……どうかしたの……?」 日が沈みかけたころ。 部屋に戻った鳳統――雛里は、ぼぅっとした表情で座っている朱里に声をかけた。 「あ……、雛里ちゃん。なに?」 「何って、もうすぐ夕ご飯の時間だよ……って、どうしたのその格好!?」 立ち上がった朱里は、ハイレグのままだった。 (あわわ……なんで朱里ちゃん、部屋の中で水着着てるの? それにあの水着、なんだかちょっといやらしいよぅ……) 朱里の姿に顔を赤くする雛里だったが、朱里はまるでそのハイレグを昔から着ていたかのように着こなしていた。 「どうしたの? 雛里ちゃん」 いつもの服を着ているのと変わらない様子で、朱里は一歩雛里に近づいた。 朱里の妙な雰囲気に、雛里は後ずさった。 「し、朱里ちゃん、とりあえず着替えたほうが……」 雛里が言い終わる前に、雛里は光に包まれていた。 「きゃあっ!?」 光に包まれる雛里を微笑みながら見つめる朱里の手には、いつの間にか、あの小さな光線銃が握られていた。 「う……く……ふぅ……んっ」 様々な色に変化する光の中で雛里が未知の感覚に悶えている。 それは異様な光景だった。 雛里の服が徐々に光に溶け込むように薄れていく。 衣服も、下着も、まとわりつく光に侵食されるように消えていった。 そして、衣服が消える代わりに、光は雛里の身体に集まり、新たな衣服を形成していく。 徐々に光が薄れていく頃には、雛里は完全にハイレグ以外何も身に着けていない姿へと変わっていた。 「キャアッ!?」 自分の服がまったく違うものへと変化してしまったことに気がついた雛里は、反射的に両手で股間を隠すような姿勢を取った。 「朱里ちゃん? 何!? 何これ、どうなって……ふぁぁっ」 困惑する雛里だったが、すでにハイレグのぴっちりと締め上げるような感覚に、軽い快感を感じ始めていた。 身体をもじもじと揺すり、股間を抑えている手も、もじもじと動いていた。 足も震え、早くもガニ股になりかけていた。 「大丈夫だよ雛里ちゃん……とってもとっても気持ち良くなれるから」 朱里は頬を染め微笑み、雛里に近づいた。 「すぐに雛里ちゃんも……ご主人様に立派なハイグレ人間にしてもらえるよ……」 「ハイグレ……ハイグレ……ぐすっ、ハイグレ……」 強制的に服を朱里と同じ紺色のハイレグに変化させられた雛里は、しばらくするとハイグレポーズを取り始めた。 しかし、この表情は涙ぐんでいて、無理やりやらされているという顔だった。 「朱里ちゃん……ハイグレ、なんでこんな……ハイグレっ」 「おかしいなあ……」 朱里は首をかしげ、自分もハイグレポーズを取った。 「ハイグレっ、ハイグレっ、ハイグレっ!」 ハイグレポーズをするたびに、朱里の身体と心が安心感と幸福感で包まれる。 「はぁ……ご主人様……」 ぶるりと身体を震わせた朱里は、もう一度雛里を見た。 「ハイグレ、ハイグレ、ハイグレ……」 やはり雛里の顔は涙目で、ハイグレポーズもぎこちないものだった。 「う〜ん……やっぱり馴染んでないせい、かな?」 時間がたてばなんとかなるだろう。 「雛里ちゃん、ちょっと辛いかもしれないけど、これも雛里ちゃんを立派なハイグレ人間にするためだからね?」 そう言うと、朱里はハイレグの上に普段の服を身に付けた。 さすがにまだ他の仲間達に自分の正体を知らせるのは早いと思ったのだ。 「ゆっくり確実に……ですよね、ご主人様」 朱里はそう呟くと、雛里を残したまま部屋を出た。 一人残された雛里は、ハイグレポーズを続けさせられながら、姿見に映る自分の姿を見つめていた。 「ハイグレ……ハイグレ……ハイグレ……」 (うう、朱里ちゃんどうしちゃったんだろう……ハイグレ人間って何? なんで私こんな恥ずかしいことしなきゃならないの?) 「ハイグレ……ハイグレ……」 (とにかく、ハイグレ? この状況を何とかしないと……朱里ちゃん絶対様子がおかしかったし、ハイグレ) 「ハイグレ……ハイグレ……」 (ハイグレ……まずはこの……ハイグレ……やめないと……ハイグレ……) 「ハイグレ……ハイグレ……」 (でも……ハイグレ……止められない……ハイグレ……) 「ハイグレ……ハイグレ……ハイグレ……」 (ハイグレ……ハイグレ……ハイグレ……) 姿見に映る雛里の瞳から光が、すうっと消えた。 「あら、朱里ちゃん」 歩くたびに擦れるハイレグの快感が顔に出ないように気をつけながら朱里が歩いていると、廊下で黄忠――紫苑に出会った。 「あ……紫苑さん、こんばんは」 「はい、こんばんは。あ、そうそう朱里ちゃん。雛里ちゃんが呼びに行ったんだけど、会えたかしら?」 「あ、はい。でも、雛里ちゃんが少し疲れちゃったみたいなので、私が夕食を部屋に運んであげようと思って……」 「あら、そんな様子はなかったみたいだったけど……大丈夫?」 紫苑が心配そうに朱里の顔を覗き込んだ。 「ええ、少ししたら良くなると思います」 「そう、じゃあお大事にね。あ、そうそう……」 紫苑は片手に持っていた袋を朱里に渡した。 「これ、どこかのお店の人が朱里ちゃんに渡してほしいって、兵士さんに渡されたの」 「え?」 「あら、何か注文したんじゃないのかしら?」 朱里のキョトンとした表情に紫苑は首をかしげた。 「あ、えと……はい」 何だかわからなかったが、とりあえず朱里は頷いた。 「はい、じゃあどうぞ」 紫苑は朱里に包みを渡すと、そのまま去って行った。 「……なんだろ?」 朱里は周りに誰もいないことを確認すると、包みを開いた。 「わぁっ」 朱里は歓喜の声を上げた。 袋の中には、折りたたまれていたが、色とりどりのハイレグが入っていた。 そしてこのハイレグは、今自分の服の下で素肌を心地よく包み込んでいる物と同じ物だと朱里は確信した。 (こっちの色のほうが、雛里ちゃんに似合うかな? あ、こっちは月ちゃんに似合いそう……) そんな事を思いながら、朱里は夕食を取りに食堂へ向かった。 その送り主が誰かなど、今の朱里にとってはどうでもよいことであった。 「……雛里ちゃん、具合はどう?」 朱里が夕食のお盆を机に置くと、いまだハイグレポーズを繰り返している雛里に話しかけた。 「ハイグレ……ハイグレ……ハイグレ……」 雛里は虚ろな瞳でぶつぶつと呟きながら動作を繰り返していた。 その動作はなめらかで、実に自然な動きだった。 「良かった。雛里ちゃんもハイグレ人間になれたんだね?」 「ハイグレ……私は……ハイグレ人間……ハイグレ」 (けれど、ちょっと雛里ちゃんの様子が変かも……やっぱりこの変な器具のせいかな) 朱里は自分の服に隠してある銃を取り出して見つめた。 (これで変化させるのと、私みたいにちゃんと着るのじゃ何か違うのかな?) と、朱里が思案していた時。 突然雛里の体を愛撫していたハイレグが光りだし、そのまま消えてしまった。 「「えっ!?」」 驚く朱里と雛里。 「…………」 しばらく沈黙が続いた。 全裸にガニ股の姿勢のまま雛里は固まってしまったが、はっと我に返ったかのように瞳に光が宿った。 「あ、あれ……ハイグレ、ハイグレ?」 雛里は全裸のままハイグレポーズを何回か繰り返したが、どうにも様子がおかしかった。 何度やっても、雛里はハイグレポーズをうまくできなかった。 触角を切られた虫のように、ハイグレポーズを取ろうとするたびに腕がズレてしまったり、ふらついてしまうのだった。 「どうして……? ハイグレ、ぐすっ、はいぐれぇ……」 雛里は、初めと同じように泣き出しそうになってしまった。 だが、初めとは逆に、雛里は完全にハイグレを求めていた。 「落ち着いて雛里ちゃん、こっちのなら大丈夫だと思うから」 朱里は持っていた包みを開け、雛里のベッドにハイレグを並べた。 「くすん、本当……?」 「うん、ほら、こんなにいっぱいあるんだよ? どれでも好きなの選んでいいよ」 「わあぁ……こんなに」 雛里は全裸であることも忘れ、ハイレグの品定めを始めた。 少し間が空き、雛里は少し濃い紺色を選んだ。 「雛里ちゃん、それでいいの?」 「うん、朱里ちゃんとおそろいがいいから……」 雛里はほほ笑むと、いそいそと待ちきれない様子でハイレグを着込んだ。 その間に、朱里も服を脱ぎ、ハイレグ姿になる。 二人はおそろいのハイレグ姿になると、横に並び、揃って足を開いた。 「さ、雛里ちゃん」 「うん……ハイグレ!」 雛里は、思い切りハイグレポーズをとった。 「え、あ、これっ、ふああぁぁんっ!?」 その瞬間、雛里は背をのけ反らせながら快感に喘いだ。 「きもちいい……ハイグレきもちいいっ」 雛里の声に我慢できなくなったのか、朱里もハイグレポーズをとった。 「ハイグレ、ハイグレ! ね? 雛里ちゃん……気持ちいいでしょ?」 「ハイグレ、ハイグレ、うん、すごく気持ちよくて、ご主人様に抱かれてるみたい……」 二人はうっとりとした表情で手足を休まず動かしていく。 ハイグレポーズをする度にハイレグが微妙に蠢き、二人の快感をより高めていく。 すると――。 「あわわっ……ご主人様!?」 雛里は何もない正面を見て驚いていた。 「あ……ご主人様……」 とろんとした表情で微笑む雛里。 朱里が初めてハイグレをした時と同じように、雛里にも一刀が見えているのだろう。 「はぁんっ、ご主人様ぁ、ハイグレ、ハイグレ!」 雛里は嬌声を上げながらハイグレポーズを繰り返す。 「ハイグレッ、朱里も、もっとご主人様にハイグレッ、捧げますっ!」 朱里も雛里に対抗するかのような勢いで、身体を動かした。 二人はハイレグの愛撫に酔いしれながら、動作を大きく、激しくしていった。 「ハイグレ、ハイグレッ、どう雛里ちゃん。ハイグレ人間の素晴らしさがわかった?」 「うん……もう、ご主人様にしっかりハイグレ人間にしてもらえたよ……」 「ハイグレ! じゃあ雛里ちゃん、ちゃんとご主人様に、ハイグレ! 誓わないとね?」 「うんっ、ハイグレ人間雛里、完全屈服致しましたぁっ! ハイグレ、ハイグレッ」 二人は声と動作を揃え、シンクロしたかのように同時のタイミングでハイグレをした。 「「ハイグレッ!!」」 たったそれだけの行為で普段の何倍もの幸福感と快感に包まれ、二人はあっさりと絶頂した。 「「ああああぁッ! キャフフフゥンッ!!」」 身体を痙攣させながら二人は、お互いの顔を見合わせた。 「朱里ちゃん、今の……」 「うん……もう一回……」 朱里と雛里の二人は、揃えて何度もハイグレポーズをとった。 「「ハイグレッ! ハイグレッ! ハイグレェッ!!」」 その度に二人に異常なほどの快楽が襲い、二人を絶頂に誘った。 (もしも皆で一緒にハイグレできたら――) 朱里も雛里も絶頂の中で、全く同じことを考えていた。 (そのためにはもっと仲間を増やさないと……) 二人の頭の中では、一刀の前で一斉にハイグレポーズを取る仲間達の姿が見えていた。 「みんなだってハイグレ人間になったほうが絶対に幸せだもんね」 「そうだね、こんな気持ちよくてあったかいことを知らないなんて、勿体ないよね」 仲間を、ハイグレ人間を増やす――。 その決意を新たに、朱里と雛里はハイグレポーズに熱を込めていく。 「「ハイグレ! 私達二人で、いえ、皆で! ご主人様にいっぱいご奉仕致します、ハイグレッ!!」」 二人は幼い身体を震わせながら、ハイグレポーズを続けた。 「「ハイグレ、ハイグレ! 大好きなご主人様のために! ハイグレ!!」」 こうして、ハイグレの虜となった朱里と雛里は、夜が明けるまでその動作を止めることはなかった。 次の日の深夜。 見回りの兵士に見つからないように、だが、慣れずにこそこそとしているせいで逆に目立ちながら、朱里は廊下を歩いていた。 ハイレグの上から着ている服には、ハイグレ銃を忍ばせている。 「……さてと」 音を立てないよう慎重に、朱里は目の前の部屋へと入った。 暗い室内。うっすらと月明かりが照明になっている程度。 朱里は先程よりも更に慎重に、その部屋の人物を起こさないように寝室へと近づいた。 最大限の注意を払い、最小限の動きで、ベッドのシーツをゆっくりと退ける。 朱里は服から銃を取り出し、寝室で眠っている趙雲――星に向けた。 「……ハイグレ♪」 朱里は微笑みながら銃の引き金を引き、部屋が一瞬明るい光に包まれる。 「んっ……くふ……ぅ」 身体をハイレグに包まれていく感覚に、星は声を出して悶えたが、目を覚ますことはなかった。 やがて光が収まり、星の身体もハイレグ姿になっていた。 (……大丈夫だったかな?) 朱里の心配は目の前の星に対してではなく、先程の光だった。 予想以上に強い光は、きっと窓から漏れていただろう。 さすがにこの深夜に外を歩いている人間はそうはいないだろうが、万が一ということもある。 (今はまだ……知られたくはないし) 朱里としては、すぐにでも皆をハイグレ人間にして、その素晴らしさを味わってもらいたかった。 だが、仲間全員をハイグレ人間にするにはかなりの時間がかかってしまう。 洗脳するところを他の誰かに見られて事を荒立てられたり、拒絶されたりしては面倒なことになってしまう。 そう考えた朱里は、こうしてまずは『下準備』を始めたのだった。 「ふぅ……ぁ……」 星の寝息に艶が混じり始める。 仰向けの状態でも、足がゆっくりと開き始めていた。 「クスッ、星さん、どんな夢を見てるのかな?」 朱里が見ているうちに、星の足は完全に開き、腕は動かそうとしているのか、ゆっくり揺れていた。 「……ぐれ……はい……グレ……」 (そうそう、ハイグレ、ハイグレ) ぶつぶつと呟きながら、仰向けで不完全なハイグレポーズをする星。 その表情は朱に染まり、眠っていても興奮しているのがよくわかった。 「ふふっ、しっかりハイグレの魅力を感じてくださいね、星さん」 眠りながらもハイグレポーズを始めた星を見て満足そうに頷いた朱里は、部屋から出た。 この銃で出来たハイレグは、時間がたてば消えてしまう。 おそらくハイグレ人間でもなくなってしまうのだろう。 だが、ハイグレ人間としてハイグレに快感を覚え、染まっていたという事実は消えない。 朱里はまずこれでハイグレに対する抵抗感を薄めていくことにしたのだった。 眠りの中での洗脳なので効果は薄いかもしれないが、いつかは雛里のように自分からハイグレを求めるようになるだろう。 (さてと、次は月ちゃんと詠ちゃんかな……) ハイレグを着た二人の姿を想像しながら、朱里は部屋へと向かった。 「では、ご主人様。失礼します」 「ちゃんと仕事もしなさいよね?」 一刀の部屋を出た月と詠は、やや急ぎ足で自分らの部屋に戻ると、すぐに皺だらけのメイド服から着替えた。 新しいメイド服に着替えた詠は、安心したように胸をなで下ろした。 「なんとか誰にも見つからなかったわね……」 「でも詠ちゃん、別に誰かに見つかってもいいんじゃない?」 微笑みながら、月が問いかける。 「そうでもないわよ、紫苑や愛紗に見つかったら、きっと一日中騒いでたわ」 「くすっ、そうかもね……あっ」 微笑んでいた月はふと心配そうな顔をした。 「匂いとか、大丈夫かな?」 月がすんすんと身体の匂いを嗅いでいた。 「……大丈夫だとは思うけど……まだあいつの匂いが残ってるかも」 月の言葉に、詠も自分の身体の匂いを嗅いだ。 「あいつ、調子に乗ってボク達に思い切りぶっかけたからね……」 「わたしたちもおねだりしちゃったけどね……」 「まったく、奉仕するとは言ったけど、あんなことまで朝からさせられるとは思わなかったわ」 顔を赤くしながら、詠が呟いた。 「でも……すごく幸せだった……でしょ?」 「う……」 月の言葉に図星を突かれた詠は、ますます顔を赤くした。 「わたしは……ご主人様に愛されて、ご奉仕できて……今日もすごく幸せ」 「そ、そりゃ、ボクだって……あいつに抱かれて……悪かったってわけじゃないし……奉仕だってもっと……ごにょごにょ」 語尾を濁しながら詠は顔を俯かせる。 月はその様子をクスクスと笑いながら眺めていた。 「もっと詠ちゃんもご主人様の前で素直になればいいのに……」 「むう……」 詠は拗ねたように唇を尖らせる。 「そうすればもっともっとご主人様と……」 「あーーっ! もうその話はお終い! ほら月、仕事に行くよ」 「あっ、もう……まってよ詠ちゃん」 照れ隠しなのか大声を張り上げ部屋を出て行く詠を笑いながらも、月は詠の後を追って部屋を出た。 それからしばらくして、月と詠は部屋の掃除のためにもう一度一刀の部屋の前まで来たが、中の複数の声を聞いて立ち止まった。 「――以上が、今回の調査報告となります」 「なるほど……確かに、妙な話ねえ……」 「――ですから、もっと警備を固めて……」 「確かにそうするのが一番だろうけど、予算を……」 「――まずはその事について真意を……」 「軍議中なのかな?」 「こんな時間にやるってことは、何か事件でもあったのかも」 戸の前で立ちすくむ二人。 「……どうする? 詠ちゃん」 「んー……別に入ってもいいんじゃない? ボク達だって全くの部外者ってわけじゃないんだし、あいつに聞けばわかるでしょ」 「そうだね」 月は頷くと、戸をノックした。 「あの……失礼します」 部屋の中に二人が入る。 一刀の部屋にいたのは、一刀の他に、愛紗、紫苑、星、朱里の四人だった。 「おお、月に詠。何の用だ?」 「掃除に来たんだけど」 星の問いに詠が答える。 「今は軍議中だ、後にしてくれ」 愛紗が若干冷たく言う。 「愛紗には聞いてないわ」 詠が語調を強めながら愛紗に向けて言った。 「なっ……今は大事な軍議の真っ最中だと言っただろう!?」 「だからあんたには聞いてないって言ったのよ!」 「ちょっと詠ちゃん……落ち着いて」 声を荒げる二人に月が間に入る。 「月は黙ってて。だいたい、ボクだって軍師なんだから、軍議に参加する権利くらいはあるんじゃない?」 「お前は先程掃除をしに来たと言ったのだろう?」 「軍議をしてるとわかったならボクも参加するわ!」 「すでに軍師なら朱里がいるだろう」 「ボクの軍師としての力が信用出来ないっての!?」 「そうは言っていない。だが……」 「なによ!」 徐々に口論は強さを増していった。 「あらあら……」 「全く……」 「はわわ……」 「へぅ……」 その様子を他の四人は眺めているだけだった。 「ほら、愛紗も詠も落ち着け」 と、その喧嘩を収めたのは、部屋の主である一刀だった。 「はぁ……」 「むぅ……」 一刀の言葉に一応二人は口論を止めた。 「別に俺達は詠の力を信じてない訳じゃないさ。ただ、今回の事件はまだわからないことが多くて調査中なんだ」 「調査中?」 「はい……だから、実は私もほとんど出番がないんです」 朱里が笑いながら詠に紙を渡す。 「どれどれ……?」 詠が資料を月と一緒に眺めた。 「これって……」 「つまり、行方不明者が何人か出てるってこと?」 詠が資料の結論を口に出した。 「その通りだ」 星が頷く。 「まだこの付近では行方不明者は出ていないが、無視するには少し人数が多すぎる」 「それって、これからも行方不明者が出るかも……ということですか?」 月の呟きに一刀が頷く。 「そう。だけど、軍を率いて調査するには、まだ情報とかが不足してる状態なんだ」 「あまり気軽に軍を動かすものではないからね……」 「そう、と言うわけで、まずは数人で周囲の調査をしているということだ」 星が前に出た。 「なるほどね……」 「だから、詠の力を借りるのはこの事件が確定してからでも遅くはないだろうと思ったんだ」 「そうですね、詠ちゃんの頭脳は皆頼りにしていますよ」 一刀と紫苑の言葉に少し機嫌が良くなったのか、詠は胸を張りながら微笑んだ。 「ま、そういうことにしといてあげるわ」 詠の様子にほっとする月。 「と言うわけで二人とも、掃除は今度でいいから、お茶煎れてくれるか?」 「あ、はいっ」 「……わかったわ」 月と詠は頷いて、一刀の部屋を出た。 「はぁ……」 と、調理室に向かう途中、唐突に詠がため息をついた。 「どうしたの、詠ちゃん?」 月が詠の顔をのぞき込んだ。 「なんかいつもよりあいつが格好良く見えたっていうか……」 「え? 詠ちゃんも?」 「え……って、月も!?」 驚く詠に、月は顔を赤くしながら口を開いた。 「いつもと変わってないと思うのに……なんだか、ご主人様のお顔を見てるだけで、いつも以上にドキドキしちゃった」 「うん……ボクも」 顔を真っ赤にした二人が廊下を歩いていると、前から雛里が歩いてきた。 「あ……月ちゃん、詠さん。どこへ行っていたんですか?」 二人を探していたのか、雛里は二人の姿を確認すると駆け寄ってきた。 「どこって……あいつのところにお茶を持っていくところだけど」 「あっ、そうですか……」 雛里は一瞬残念そうな顔を浮かべたが、すぐに元の表情に戻っていた。 「それなら、後で朱里ちゃんの部屋に来てもらえませんか?」 「どうかしたんですか?」 月が首を傾げる。 「えっと、新しい房中術の本が手に入ったんですよ」 「え? ……あ」 月よりも早くの反応を示してしまい赤面する詠。 「ふふっ。今度のはご主人様の一番お気に入りになるかもしれないんです」 「本当ですか?」 月も興味を強く示していた。 「ええ。だからお仕事が終わったら、お見せしますね」 雛里はにっこりと笑いながら去っていった。 「……新しい房中術か」 「これでもっとご主人様にご奉仕できるね」 「……ボクは別にあいつにしてあげようなんて思ってないんだから」 「もう、詠ちゃんったら」 詠の言葉に笑いながら、月と詠はお茶を運んで行くのだった。 |
吟狐
2010年01月01日(金) 21時17分07秒 公開 ■この作品の著作権は吟狐さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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