ひだまりスケッチ☆☆☆ やまぶき高校ハイグレの怪

夏休み初日。学校へ出勤する吉野屋。部活の生徒以外は誰もいない校舎へと入っていく。
「はあ〜、せっかくの夏休みなのに〜。生徒たちは皆遊びに行ったり遊びに行ったり遊びに行ったりしてるのに。」
「お黙りなさい。そもそも吉野屋先生が仕事もせずにフラフラしているのがいけないんです。そもそも今日は日直でしょ?」
一緒に出勤してきた桑原先生がピシャリと言う。
「桑原先生の無慈悲〜。意地悪〜。」
「何とでもいいなさい。とにかく、出張中の校長先生が帰ってくるまでに仕事を片付けておくのよ。」
桑原はそれだけ言うとそそくさと職員室へと入って行った。
「はあ、仕方無いか・・・。仕事をしよう・・・。」
吉野屋は憂鬱に思いつつも職員室で書類整理を始めた。しばらくその作業をしていると、お昼になる。昼食を取りに他の教師たちはいなくなる。
「今がチャンス!!」
吉野屋は周りの視線を感じないのをいいことに、屋上へ行く。素早く水着に着替えて誰もいないプールを泳ぎだした。
「あはは〜、気持ちいい〜。やっぱり暑い日は外で泳ぐのが一番〜。」
吉野屋は背泳ぎでプールの中を闊歩する。水がちょうどよく暖まっているのですごく気持ちが良い。
「このまま水と一緒になって溶けてしまいそう。なんて至福の時なのかしら。」
惰力に任せて水の上に浮かんで空を眺める。すると、空を上から下へ横切って飛んでくるへんなものを見つけた。
「何かしら、あれ。」
その姿を視認できた時、吉野屋は不思議に思った。パンストを被ってオマルに乗って銃を担いでいる男が二人。その後ろにはハイレグ姿の一人の少女が同じようなオマルに乗ってやってくる。その三体は吉野屋の目の前に着陸した。
「な、なんですか、あなたたちは!?」
「突然のご無礼をお許しください。私はレイン。ハイグレ魔王様の特務部隊に所属する者です。」
何の事だかさっぱり分からない。
「この度は地球侵略のための下準備でやってい参りました。」
「地球侵略?これは何かのドッキリテレビなんですか?」
「まあ、論より証拠。説明するより体に覚えさせたほうが早いですね。」
レインが右手を振る。やれという合図だ。お付きの兵士が肩にかけている銃を下ろして照準を合わせる。
「な、なんの冗談ですか!?どうして私が殺されないといけないんですか!?」
「殺しはしません。ハイグレ人間になっていくだえけです。」
兵士二人が銃から光線を出す。その光線はまっすぐ吉野屋の体を捕捉する。
「きゃ、きゃあああああああっ!?」
プールの中で彼女はもだえ苦しんだ。今まで着ていたビキニがいつの間にかハイレグ水着に変わっていた。
「こ、これは!?」
吉野屋は自分が着ているピンクのハイレグ水着に驚きを隠せなかった。
「うふっ・・・・くっ・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
急いで岸に上がって足を曲げてガニ股になり、手をまた下に当ててコマネチをしだした。本人はなぜだか分からない。しかし、段々それが心地よくなってくる。
「私は・・・・ハイグレ人間。」
「そうです。あなたはハイグレ人間M03−0013号。あなたの任務は分かっていますね。」
レインは吉野屋に問いかける。聞いた事もない任務がすらすらと口から出てきた。
「私はハイグレ魔王様が地球人をハイグレしやすくするために手引をするためのスパイ。」
「そうです。あなたはこの学校を拠点にし、来たるべき時に備えるのです。」
「分かりました。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
吉野屋はハイグレポーズで挨拶をし、別の場所に種を蒔きに行くレインらを送る。そして、スパイとなった彼女はやまぶき高校を制圧すべく行動を開始した。



吉野屋はひとまず服を付けて一般人に偽装することにした。ハイレグ姿でいたいという衝動を抑え、仲間作りをする事を優先するためだ。
「最初のターゲットは・・・・あの人ね。」
夏休み初日ということもあり、やまぶき高校内には人が少ない。彼女は何の気なしに保健室へと足を向けた。
「失礼しま〜す。」
吉野屋はいつものように遠慮なく保健室の中に入った。机では桑原が仕事をしていた。
「吉野屋先生、またサボってるのね。今日という今日は〜。」
「お仕事中ですよ〜。」
「どこがよ。」
桑原はため息をついた。本当にこの人は・・・・という思いでいっぱいだった。
「ですが、教師としての仕事ではありません。スパイとしての仕事です。」
吉野屋は懐にしまっていたハイグレ銃を取り出して桑原に向けた。
「おもちゃの銃なんかで私を驚かそうなんて無理よ。早く仕事に戻りなさい。」
「本物なのに〜。なら、体に教えてあげます!えいっ!発射!」
吉野屋は桑原に向けてハイグレ光線を撃った。
「きゃああああああっ!?な、何よ、これ!?」
桑原は座っていたパイプ椅子を弾き飛ばして大の字になった。みるみるうちに白衣とその下に着たスーツが白のハイレグ水着に変わった。光線が収まるとサンダルと靴下を履いたままの状態で着地した。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
桑原は驚きの表情をしていたが、すぐに慣れてハイグレポーズを繰り返した。
「さあ、桑原先生。私と一緒にハイグレ魔王様がご到着になる前に先遣隊を作りましょう。」
「了解しました、隊長!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

ガラガラと保健室の扉が音を立てて開く。一人の女子生徒が書類を持って中に入ってきた。
「失礼します。桑原先生はいらっしゃいますか?」
教師二人は入口からは白のカーテンにさえぎられていて見えない。なので、ハイグレ人間に気づかずに中に入ってくる。
「あの、日直の先生のハンコが欲しいんですけど〜。」
その女子生徒はカーテンの中から教員用の机を覗き見る。ハイグレ姿の桑原を見てその生徒は驚愕した。
「あの、桑原先生!?なんですか、その格好は!?」
「あら、夏目さん。いらっしゃい。」
吉野屋が代わりに夏目に挨拶する。桑原はそのやり取りに見向きもせずハイグレポーズをしていた。
「何をやっているんですか?その、吉野屋先生じゃなくて桑原先生がこんなことをしているなんて・・・・。」
夏目は目のやり場に困って目をきょろきょろさせる。その彼女に吉野屋は優しく笑いかけた。
「桑原先生だけじゃありませんよ。私もです。」
そう高らかに宣言して服を脱ぎすてる。下には先程と同じピンクのハイレグ水着を着ていた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
夏目は二人の異常行動に嫌な予感がした。後ずさって逃げようとする。
「し、失礼します!!」
書類を前に持ち、背を向けて急いで走り去ろうとする。その背中に吉野屋はハイグレ銃を向けた。
「きゃあああああああああっ!!」
ハイグレ光線が当たった夏目は書類を落とし、その場で緑色のハイレグ水着に着替えさせられた。
「なっ!?信じられない・・・・!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
夏目は膝を曲げガニ股になり、ハイグレポーズを取り出した。

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!私もハイグレ魔王様のために働かせて下さい!!」
夏目はハイグレポーズを取りながら吉野屋に指示を求めた。
「ハイグレ人間に一人一丁手にすることができるハイグレ銃。その力を使ってこの高校を勢力下に置きましょう。夏目さんも頑張ってください。」
吉野屋、桑原、夏目の三人は各々ハイグレ銃を手にする。
「さあ、出動よ。私と吉野屋先生は校舎内を上下から。あなたは校庭で部活をしている生徒たちをハイグレ人間にしなさい。」
「はい、分かりました!」
既に服を着て偽装するということを捨て、純粋にハイグレ人間としてやまぶき高校の洗脳のために行動を開始した。



一方、ひだまり荘のメンバーは昼食を終えて画材屋に出かけるためにアパートを出ていた。
「よし、全員いるね。んじゃ、行こうか。」
沙英とヒロを先頭にして六人は外に出た。目の前にはやまぶき高校がある。
「あら、あの子達何をやってるのかしら?」
ヒロが何気なく校庭を見て呟く。六人の目にはハイレグ水着を着てコマネチをしている生徒たちが映っていた。
「おやおや、これは新しい体操ですかな?」
宮子が興味を持って校庭の中に入っていく。
「あっ、待って、宮ちゃん!!」
ゆのも追いかけていく。他の四人もそれに続いた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
校庭で部活をしている陸上部とサッカー部の生徒たちは男女に関係なくハイレグ姿で運動靴を履き、汗だくになってコマネチをしていた。
「あの、何やってるんですか?」
乃莉が話しかけてみる。しかし、応じない。
「暑くありませんか?そんな汗かいてると体悪くしますよ?」
なずなが話しかけてみる。やはり、無反応。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
二十人くらいが三々五々散らばってポーズをしている。
「なんなんでしょう、これ?」
「分かんない・・・・。職員室に行って聞いてみよう。」
昇降口から中に入って上履きに履き替える。しかし、中に入っても異様な叫び声が聞こえてくる。恐る恐る中に進んでみると、廊下で女子たちがハイレグの水着姿でポーズを取っている。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
私服姿で入ってくる六人にはお構いなし。ずっと同じポーズを繰り返している。
「あらあら、校庭の制圧を終えて戻ってきてみれば・・・・。飛んで火にいる夏の虫とはこのことね、沙英!!おほほほほほっ!!」
六人が後ろを振り返るとそこにはハイレグ姿の夏目がいた。ハイグレポーズを取りながら喋る。
「あんた、何やってんの?」
「分からないの?ハイグレ人間の挨拶のポーズよ。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
夏目は手をクロスさせてハイグレポーズをとった。
「全員大人しくしなさい。ハイグレ人間にしてあげるから。」
夏目はハイグレ銃を構えた。
「あんた、暑さで頭がおかしくなったの?」
「ふっ、なんとでもいいなさい。ハイグレ人間になれば嫌でも自分の今までの愚かさに気づくでしょう。それっ!!」
夏目がハイグレ銃の引き金を引く。赤い光線がビュンビュン飛ぶので、六人は姿勢を低くして避けた。
「ちょっ、何やってんの、夏目!?良く分かんないけど、危ないでしょう!?」
「ちょこまかと避けないでよ!!ハイグレ光線が当たらないじゃない!!」
目標を切り替えてバンバン撃つ。あちこちの壁に反射して危うく当たりそうになる。宮子は当たるすんでのところで頭を引っ込めて回避した。が・・・・
「うわあああああああああああっ!!」
宮子ではない別の人に当たっていた。
「大家さん!?」
ゆのが驚いて声を上げる。やまぶき荘の大家がラーメン屋のケースを落として大きな音が上がる。本人は悲鳴を上げて狭い廊下で大の字になった。大家の体を包むように光線が光り、収まるとオレンジ色のハイレグの水着姿になっていた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
大家は大きな体を揺らしながらハイグレポーズをとった。
「今、大家さんが一瞬でハイレグ姿に!?」
「ひ、ひいいいっ!!」
乃莉となずなも自分の目を疑った。現実ではありえないことが目の前で起こった。
「これがハイグレ光線の力。貴方達も潔くハイグレ人間になることをお勧めするわ。って言っても聞かないだろうから、勝手にさせてもらうけど。発射!!」
夏目は先ほどよりもペースを上げて銃を乱射する。六人は元来た道を引き返す。しかし、昇降口には校庭にいたハイグレ人間たちが追いかけてくる。六人は夢中になって走り続けた。



「なんだかよく分からないけど、とにかく警察を・・・・!!」
乃莉がポケットから携帯電話を取り出して110番を押す。
「あれっ!?かからない!?」
画面を見てみると全然違うボタンを押していた。もう一度落ち着いてかけ直す。
「やっぱりかからない!?どうして!?」
その質問に答えたのは前に立ちふさがっている人物。
「あら、分からない?それはこの学校がハイグレ人間の支配下にあるからよ。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「桑原先生!?」
桑原は白のハイレグ水着をたくし上げ、ハイグレポーズ。
「この学校に足を踏み入れたらハイグレ人間にならない限りは電話なんて通じないわよ。大人しくハイグレ人間になりなさい。」
桑原はハイグレ銃を構えた。六人はびくっと震えて避ける姿勢を取る。
「うふふふ、追いつきましたよ、皆さん。さあさあ、先生たちと一緒にハイグレ人間になって楽しくお勉強しましょう。」
後ろからは吉野屋が校内の制圧を終えてやってきた。挟み撃ちにされる前に階段を上る。
「よし、散らばって校門に集合!!全員散開!!」
沙英が叫ぶ。六人は別々の場所へと散らばっていった。


ヒロはハイグレ人間化した生徒たちから隠れるために調理室に入った。
「ここなら勝手も分かるし、なんとかやり過ごせそうね。」
ヒロは調理台の下にある押し入れスペースに身を縮めて中に入る。他の荷物が体のあちこちに当たって痛いが、贅沢は言っていられなかった。
「くっ・・・もっとダイエットしておけば良かった・・・・。苦しい・・・・。」
調理室の中に入ってきた生徒二人は机の下やカーテンなどは確認したが、足下の押し入れに入っているとまでは考えず、そのまま出て行った。
「はあ、なんでこんなことに・・・・。しかも、少しお肉がついちゃって気になるのに・・・・。せめてハイレグ着るんだったら痩せている時に・・・。」
押し入れの扉にもたれかかってそんな妄想にふける。そこへ刃物の飛ぶ音がする。一瞬のうちにヒロはその場から動けなくなった。
「なっ!?何これ!?」
飛んできた数本の包丁がヒロの着ているワンピースを壁に打ち付けた。破こうともがくが、力が足りないので抜け出せない。
「ハイグレ人間になっていない生徒、みっけ。」
包丁を何本も手に持った大家が目の前に立っていた。
「あんたのことだからここに逃げてくるだろうとは思ったんだ。さあ、ハイグレ人間になってもらうよ、ヒロ。」
「い、嫌ですっ!!大家さん、目を覚まして!!」
大家はヒロの訴えを鼻で笑った。
「目を覚ますのはあんただよ、ヒロ。ハイグレ人間こそがあたしたちの本来の姿なんだよ。」
タバコを加えた大家は身動きの取れないヒロにハイグレ銃を撃った。
「いやあああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!」
ヒロの体を拘束していたワンピースが消え、包丁だけが壁に残る。ヒロ自身は赤いハイレグ水着に着替えさせられた。
「う、うそっ・・・・!!私のお肉が消えてる!?」
苦痛に顔を歪めながらもヒロは水着の上から自分のお腹を触って驚く。
「ハイグレ人間になればダイエットなんてしなくても、ずっと理想の体型でいられるよ。ほら、立った立った。」
「はい!!私、ハイグレ人間になって良かったです!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ヒロは自分の理想のスリムな体型に喜んでハイグレポーズをした。



なずなはハイグレ人間たちから身を隠すために音楽室に逃げ込んだ。
「怖いよ・・・・怖いよ・・・・お父さん・・・・お母さん・・・・。」
音楽室の扉がガンガンと音を立てる。ハイグレ人間たちが何か入ろうと鍵ごと破壊しようとしているのだ。
「うわああああああんっ!!助けて・・・・誰か・・・・!!」
その時、ハイグレ人間たちの攻撃がピタリと止んだ。
「どうし・・・て?」
なずなは恐る恐る扉に近づき、鍵穴から外を覗いてみる。
「あれは・・・音楽の先生?」
覗いてみると、ハイグレ人間になった音楽の先生が鍵を持って近づいてくるのが見える。慌てて鍵が開けられないように抑える。
「くっ!!」
音楽教師が鍵穴に差し込み、ガチャガチャと動かす。なずなはありったけの力を振り絞ってそれに負けないように押さえる。
「嫌・・・ハイグレ人間になるなんて絶対嫌・・・・」
その一念だけで勇気を出して力を出す。
「そこまでだ。」
「観念しなさい。」
後ろを振り返るとなずなはハイグレ人間の生徒たちに囲まれていた。
「えっ?どうして?」
ちゃんと音楽室の扉の鍵は持っているのになぜ?なずなは指さされた方を見てみる。
「そ、そんな・・・・。」
音楽室の扉を開けようとしているのは囮でその間に準備室を回って生徒たちがなずなの後ろに回り込んでいた。
「あ、あ、あの・・・・。」
なずなは腰が抜けて動けない。そこに一斉掃射されたハイグレ光線が命中する。
「きゃあああああああああああああ!!」
なずなの体が宙に持ち上がる。そして、両手両足を大の字に広げて苦痛の叫び声をあげる。なずなは黄緑色のハイレグの水着姿になっていた。
「は、恥ずかしい、こんな格好・・・・。」
その場で身を捩らせて倒れこむなずな。しかし・・・・
「嫌、駄目、なんで・・・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
なずなは無意識のうちにがに股になり、コマネチを繰り返してハイグレッと叫び続けた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!楽しい・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
普段内気で消極的な彼女には斬新な世界。なずなはハイグレ人間になって普段とは逆の世界へと足を踏み入れていった。

沙英は校舎裏を疾走中。迂回して校門に至る作戦に出た。
「夏目の奴・・・・どこまで追ってくるのよ。」
夏目に見つかって地獄の果てまで追いかけてくるような追撃を受けていた。
「待ちなさい、沙英!!ハイグレ人間になりなさいよ!!」
ハイグレ銃を後ろから数発発射するが、お互いに走っている途中なので当たらない。
「誰がそんなへんてこな水着を着るのよ。お断り。」
「胸の小さいあんたでも似合ういい水着じゃない。」
「くっ・・・・余計なお世話だ!!だいたい、水着着てるのになんで靴と靴下履いて腕時計までしてるのよ。変態親父か。」
夏目は問答無用でハイグレ銃を両手に持って前に構える。
「どうやらハイグレ魔王様の素晴らしいお力が沙英にはまだ分からないみたいね。いいわ、その身をもって知るがいい!!」
夏目が沙英に向けて精密射撃。
「うわっ!!」
沙英は身をのけぞらせてすんでのところで避けた。バランスを崩したところを狙い撃ちにしてくるが、それを地面を転がってかわす。
「そりゃそりゃそりゃそりゃ!!」
「うわっ・・・くっ・・・・とっ・・・・。なんであいつは汗ひとつかかずに攻撃出来るのよ・・・・。」
沙英は外の暑さに体が悲鳴を上げて汗が滝のように流れ落ちてくる。しかし、一方の夏目はまったく汗をかかず、また、暑そうな素振りも見せない。
「ふふふっ、ハイグレ人間になればどんな環境でも快適に過ごせるのよ。砂漠でも南極でも平気な体になるのよ。」
「あんたねぇ。人間は暑いときには暑い、寒いときには寒いっていうのが普通なの。そんな生活嫌だよ。」
「そう?その割には沙英、あなたもうフラフラじゃない?ハイグレ人間になって楽になりなさいよ。」
「うっ・・・・うるさっ・・・・・。」
沙英は最後まで憎まれ口を叩くことができなかった。水分不足で体が脱水症状気味になり、その場にへたり込む。
「あっ・・・・・うっ・・・・・・。」
「今治療してあげる。ハイグレ人間への改造手術よ。」
夏目は胸を押さえて座り込んでいる沙英の前に立ち、ハイグレ銃の引き金を引いた。
「いやああああああああああああああああああっ!!」
沙英のスレンダーな体が激しく光る。着ていたTシャツとジーンズが青いハイレグ水着に変化する。今までのラフな格好から一転してパツパツのハイグレ姿になった。
「うっ・・・・うそっ・・・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
沙英は自分に起きたことを認識する前に思考回路が乗っとられた。ハイグレ人間として沙英は生まれ変わり、今までのグロッキー状態を忘れてハツラツとした表情でハイグレポーズを繰り返した。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「おほほほっ!!沙英もこれで私たちの仲間入り!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」



乃莉はコンピューター室に潜伏していた。ハイグレ人間となったクラスメイトたちに追われてやむなく校舎の隅っこにあるこの部屋に隠れていた。
「どうしよう。このままじゃ出られないよ。」
この部屋は一階にあるわけではないし、窓から出ようにも外には歩けそうな場所も無い。袋の鼠だった。
「この部屋じゃ隠れられるのが机の下くらいしか・・・。」
ガチャリと扉が開く。中に入ってきたのは桑原だった。
「見つけたわよ!無駄な抵抗はやめなさい!」
「うわっ!見つかった!」
桑原は言うが早いかハイグレ光線を乃莉に向けて撃ってくる。
「なんで避けるのよ!」
「ハイグレ人間なんてなりたくありません!」
「恥ずかしいのなんて最初だけ。すぐに慣れるわ。」
話し合いが通じる相手ではないと悟り、さっさとスピードを出して逃げる。廊下にいるハイグレ人間たちの攻撃を体を張って避け、今度は放送室に逃げ込んだ。
「ああ、もう・・・・。こんなのゲームの世界だけだと思ってたのに・・・・。」
乃莉のやっているPCゲームの中にゾンビや妖怪のいる学校を冒険するものはあった。しかし、それが現実になるとは少しも考えていなかった。
「乃莉ちゃん・・・・乃莉ちゃん・・・・。」
「なずな!?無事だったんだね。」
放送室の扉の向こうからなずなの声が聞こえてきたので、急いでドアを開く。しかし、乃莉はなずなの姿を見た途端に後ろへと下がっていった。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「なずな・・・あんた・・・ハイグレ人間に!?信じられない。」
普段のなずなでは露出の多い水着姿でコマネチをするなど考えられない。それ程までの変化だった。
「乃莉ちゃんもハイグレ人間にしてあげるよ。こっちにおいで、乃莉ちゃん。」
「嫌だよ、そんなの。えっ!?きゃ、きゃあああああああああああああっ!!」
狭い放送室の中で乃莉は精一杯広げてハイグレ光線を浴び続けた。
「うわっ!?何よ、これ!?こんなの恥ずかしいよ・・・・!!」
乃莉は自分の着ている黒いハイレグの水着姿を見下ろして赤面した。
「恥ずかしくなんかないよ。ほら、一緒に、ハイグレ、ハイグレ。」
「だ、だめ、逆らえない・・・・。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
乃莉となずなはハイグレポーズで友情を深め合った。

ゆのと宮子は敵の包囲を脱して校庭を横切って校門にまっしぐらに走っていた。
「み、宮ちゃん待って!」
ゆのは宮子に手を引かれて自分の限界以上のスピードで走っている。
「何いってるの、ゆのっち。早く逃げないとハイグレ人間にされるよ!」
今はまだ追ってきていないが、すぐにハイグレ人間の生徒たちがやってくるだろう。その前に外に出なければならない。
「なんで携帯が使えないんだろう?これじゃあ助け呼べないよ。」
「きっとやまぶき高校自体にバリアが張ってあるんだよ。」
「そんなバカな・・・・。」
しかし、ゆのにはそれを否定できなかった。ハイグレ人間、光線、おかしくなった生徒たちを目の当たりにしていると正常な感覚が麻痺してくるからだ。
「あれは愛しの校門!!それっ!!」
宮子がゆのの手を離し、先程よりも足早に校門をくぐり抜けようとした。しただけだった。
「宮ちゃん!?」
前から横っ飛びに宮子が飛んでくるのに面食らうゆの。そのまま二人は激突して地面に投げ出された。
「どうしたの、宮ちゃん?」
「これは・・・・。校門にもバリアが張ってありますな。」
宮子は開いている校門の上の空間に手をかざす。すると、バウンドクッションのような音がした。そして、手を当てた場所の空気が波を打って広がった。
「えっ!?じゃ、じゃあ、出られないの!?」
ゆのも慌てて周りの空間を手で触ってみる。上から下まで全てに空気の壁が出来ていた。
「これは参りましたな〜。」
「ひどいよ・・・・。このままじゃ私たちハイグレ人間に・・・・。」
「ええいっ!!壊れろ!!壊れるのだ!!」
宮子が空気の壁に向かって何度も体当たりを繰り返す。しかし、実体のない壁には何らダメージを与えることはできなかった。

「あれっ?ゆのさん?宮子さん?何やってるの?」
「智花ちゃん?」
校門でずっと粘っているゆのと宮子の前を智花が通りかかった。
「もう・・・せっかくの夏休みに遊びに来てあげたのに、みんないないんだもの。お姉ちゃんたち、校舎の中にいるんだよね?」
「だ、だめ、智花ちゃん。ぶつかっちゃうよ!」
「へっ?なんのこと?」
事情を知らない智花はつかつかと二人のいる方に歩み寄ってくる。
「それよりも智花ちゃん。199じゃない、119じゃない・・・110番。警察呼んで!」
智花はゆのが何を言っているのか分からず、そのまま校門の前に来た。
「あっ、私も学校の中入っていいよね?」
智花は普通の速度で空気の壁がある場所を通り抜けた。
「あれ?なんで?確かに壁があるのに。」
ゆのは分からなかった。智花は通り抜けてたしかに自分のそばにいる。
「もう、二人で私をからかってるんだね?そんなわけ・・・・あれ?」
智花がゆのたちの手のあるあたりを触ってみる。彼女の手が空気の壁に跳ね返された。
「えっ!?うそっ!?なんで!?」
智花はパニック状態に陥り、思いっきり空気の壁を叩く。
「うふふふ、そこはハイグレ人間になっていない人々をご招待するための一方通行の壁なんですよ。入ったが最後、ハイグレ人間になるまで出られません。」
ゆの、宮子、智花の前に吉野屋が立ちはだかった。



「さあさあ。光線を浴びて先生と一緒にハイグレポーズの授業をしましょう。」
「先生、どうしちゃったんですか!?なんでそんなことを!?」
「私全ての装飾を脱ぎ捨てて水着一枚で己を表現する。茶の湯に通じる侘び寂びの心がありますね。」
何を言っているんだ、この人は。三人は内心ドン引きしていた。
「先生。私たちをハイグレ人間にしてどうするの?」
「ハイグレ人間になれば分かることですが、地球征服のために共に戦いましょう。そして、ハイグレ魔王様を地球にお迎えするのです。」
智花は全く状況を把握していないので吉野屋に不用意に近づいていく。
「うわ〜、先生スタイルいい〜。羨ましい〜。」
「だ、だめだよ、智花ちゃんっ。吉野屋先生に近づいたらハイグレ人間にされちゃうよ!」
「ハイグレ・・・人間?」
ドンッ。その瞬間、吉野屋が智花に密着した状態から放ったハイグレ光線が炸裂。彼女の小さい体を包み込んだ。
「きゃあああああああああああっ!!」
智花の身につけていたブレスレットを残して半袖のブラウスとハーフパンツがピンクのハイレグ水着に変化した。
「何が起きたの!?い、いや、こんな格好・・・・!!」
智花はもじもじして赤面した。
「うふふ、智花さん。恥ずかしいことはありません。ほら、一緒に、ハイグレ、ハイグレ♪」
「智花。お姉ちゃんがお手本見せてあげるから。ほら。」
吉野屋の横に沙英がやってきて、智花の前でハイグレポーズを取る。
「うううっ・・・・ハイグレ、ハイグレ、ハイグレッ!!」
最初は嫌々ハイグレポーズを始めたが、すぐに楽しそうな顔をしてコマネチをし始めた。姉と一緒に並んでハイグレポーズ。
「嘘っ・・・・沙英さんまで!?」
「それだけじゃないみたいだね。」
沙英と智花に気をとられていたゆのははっと周りを見回してみる。沙英だけではなかった。乃莉、なずな、ヒロが周りを囲んでいた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

二人はその場でハイグレ人間にされず、捕虜として体育館の舞台袖に連れていかれる。
「ねえ、宮ちゃん。私たち、助かるのかな?」
「多分みんなの前で見せ物にされるんだよ。ハイグレ人間にする過程を観察するんじゃないかな。」
「えっ?じゃあやっぱりハイグレ人間にされるの?」
「恐らくね。」
ゆのは自分の頭から血の気が引いてくのが分かった。やっぱり自分は改造されてしまうんだ。お父さん、お母さん。ごめんなさい・・・・。心中でそんなことを考えてしまった。
「ゆのさん、宮ちゃん。壇上に上がってもらうわよ。二人は何色かしら〜。」
「見せ物にするのは可哀相だけど、ハイグレ魔王様に抵抗した罰だから、しっかり受けるんだよ。」
ゆのと宮子はヒロと沙英にロープで縛られ容疑者のようにして壇上に連れていかれた。そこではハイグレ銃を構えた乃莉となずなが待っていた。
「さ〜て、皆さん。皆さんがどうやってハイグレ人間になったのか、この二人を使って見てみたいと思いま〜す。しっかり見るんですよ〜。」
吉野屋がマイクを使ってハイグレ人間の生徒たちに話している。
「じゃあ、ハイグレ化をぱっぱとしちゃって下さ〜い。」
吉野屋の命令を受けて乃莉となずなが目標をロックオンする。
「のののののの乃莉ちゃん!?本当に撃つの!?」
「当たり前です。ゆのさんと宮子さんだけハイグレ人間になってないなんておかしいですから。」
「なずな殿、お慈悲を・・・・!!」
「慈悲の心で宮子先輩をハイグレ人間に生まれ変わらせてあげます♪」
二発のハイグレ光線がゆのと宮子に寸分違わず命中した。
「きゃああああああああああああっ!!」
「うわああああああああああああっ!!」
二人は自分を束縛していたロープを引きちぎって大の字になった。二人の服が徐々にハイレグ水着に変わっていく。
「み、宮ちゃ・・・・・・。」
ゆのは自分が白のハイレグ水着を着ているが、まだ精神だけは保っていた。隣の宮子を見る。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「洗脳早っ!!」
宮子は既に黄色のハイレグ水着を着たハイグレ人間に生まれ変わり、大きな胸を揺らしながらコマネチをしていた。
「はううううっ!!もう・・・・・・体が・・・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」



やまぶき高校がハイグレ人間の勢力下におかれて一週間後。ゆの達はハイグレ魔王直属の兵士として活動していた。普通の人間になりすまして潜入し、空を飛んでいるパンスト兵だけでは処理しきれない人間たちのハイグレ化を遂行していた。本日の任務はパンスト兵が手こずっていた桃月学園という高校に潜入し、そこの生徒たちをハイグレ人間にすること。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
そこら中でハイグレ人間にされた生徒たちがコマネチをしている。
「第一部隊は三階に突入!第二部隊は旧校舎へ!第三部隊は裏門を制圧!全員ハイグレにしてあげて下さい!」
吉野屋隊長の号令と共に部下の生徒たちは動き出す。
「宮ちゃん!私たち旧校舎に突入だって!」
「了解!私たち二年生が一番の成果をあげよう!」
「うん!」
ゆのと宮子は二年生なので第二部隊所属。ハイレグの水着姿で校内を走り抜け、旧校舎に隠れている生徒たちを次々にハイグレ光線を浴びせていった。
「ゆのさん、宮子さん、私たちはあっちから行くよ!二人はそっちをお願い!」
クラスメイトの真美たちが大きいハイグレ銃を担いで正面の廊下を斉射する。ゆのと宮子は小さめのハンドガンタイプを手にし、一つ一つ教室の扉を開けて中を確認した。
「いたっ!発射!」
「きゃあああああああああああっ!?」
中に隠れていた生徒たちにハイグレ光線を命中させた。彼女らは悲鳴をあげてハイレグの水着姿になった。
「ハイグレ人間・オブ・ジ・イヤーです・・・!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「いややややややあああっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
6号さんこと鈴木さやかと桃瀬くるみはゆのの目の前でハイグレポーズを繰り返した。
「おお、ゆのっちもあの遠距離でやるねえ。」
「宮ちゃんは?」
「えへへ、三人もいっぺんにハイグレ人間にしちゃったよ。」
後で分かったことだが、宮子がハイグレ化したのは橘玲、片桐姫子、上原都だった。

「ねえ、沙英。ハイグレ魔王様の部隊に入ってから私痩せたと思うの。」
「ハイグレ人間になったら太りも痩せもしないでしょ?」
「もう・・・・気分だけよ。あっ!人間よ!まだ人間がいるわ!」
ヒロと沙英の第三部隊は裏門から逃げようとする生徒を追撃し続けた。

「乃莉ちゃん、ここから先に進めないよ。」
「エアガンで抵抗するとはやってくれるわね。でも、ハイグレ人間にそんな攻撃は通用しないわ。なずな、私に遅れずについてきて!」
「う、うん・・・・私、頑張る・・・・・。」
「全員突撃!」
この学校をハイグレ人間の社会へと解放するため、第一部隊は勇猛果敢な突撃を開始した。

夕方・・・・・
「最後の人間を発見しました。これからハイグレ化します。」
ゆのは通信機を片手に持ち吉野屋隊長に連絡をとる。
「ご苦労様。最後の一人をハイグレ化したら戻ってきて下さい。」
通信機の電源を切り、ゆのはハイグレ銃を構える。
「はうはう〜。」
ロッカーの中に隠れていた小柄な金髪教師は泣きべそをかいていた。宮子がロッカーからひきずり出す。
「なんなんだよお前ら。先生だぞ〜。はうはう〜。」
ゆの、宮子、ヒロ、沙英、乃莉、なずなに囲まれて逃げ場がなかった。
「私たちが誰かって?もしかして知らないの?」
宮子がなぜこんな簡単なことが分からないのかという顔をする。
「知る訳ないだろ・・・!いきなり学校に来てどんどん生徒たちをハイグレ化して・・・・!自分たちのやっていることが分かってるのか!」
「うふふふ、分かってますよ。ハイグレ魔王様の素晴らしい世界作りのお手伝いです。」
「そうそう。ほら、見て下さいよ。素晴らしい光景が広がってるじゃないですか。」
沙英が指さした先には校庭でハイグレポーズを取っている生徒や教師たちの姿が。全員で一心にハイグレと叫んでいる。
「ひいいいっ!!」
乃莉となずなの攻撃の前にちびっ子教師・レベッカ宮本はハイグレ人間に改造された。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

ハイグレ魔王直属・やまぶき部隊は日本各地に潜入してハイグレ化を遂行し続けた。その中でも美術科の女性だけを集めたアマゾネス部隊は精強を誇り、数々の困難なミッションをこなした。ハイグレ人間を次々と生み出す彼女たちはハイグレ・エンジェルと呼ばれている。



MKD
2010年01月26日(火) 17時10分42秒 公開
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ひだまりスケッチ☆☆☆用リメイク完了です。最後まで読んでいただきありがとうございました。