魔法少女リリカルなのはStrikerS 管理局の白いハイグレ魔王

部屋の窓から朝日が差し込む。外では小鳥の囀る声がやかましい。高町なのはは億劫そうにベッドから体を起こした。前日の夜遅くまで勤務をしていたのでまだ体が睡眠を欲していたが、両頬を叩いて眠気を覚ました。
「よし、今日も頑張ろう。」
ベッドには一緒にフェイトとヴィヴィオがいる。二人ともまだ眠っている。
「ほら、二人とも、起きて。朝ごはんの時間だよ。」
「う、うん・・・・。おはよう、ママ。」
「おはよう・・・・・なのは。ふああああ。」
ヴィヴィオとフェイトが起き上がって目を擦ってあくびをする。
「二人とも、そんなだらけてちゃ駄目だよ。ほら、着替えて朝ごはん!」
「なのは、厳しすぎ・・・。」
二人はしぶしぶ着替えをして顔を洗う。なのはは一人で先に済ませていた。
「なんで制服着てるの?なのはは今日はお休みでしょう?」
「えっ?ああ、そうだったね。すっかり忘れてたよ。」
なのはは管理局の制服を着ていた。休日があまりないので、仕事人間のなのははすっかり忘れていた。
「ヴィヴィオとお買い物に行く約束〜。」
ヴィヴィオが少し不満そうな目でなのはを見る。
「あはは、ごめんごめん。なのはママはちゃんとヴィヴィオとお買い物に行くからね。」
なのははヴィヴィオを宥め賺して私服に着替え直す。

「じゃあ、フェイトちゃん、はやてちゃん。スバルとティアのことはお願いね。」
「任せとき〜。今日はしっかりと羽を伸ばすんやで?」
「なのは、ヴィヴィオ、いってらっしゃい。」
はやてとフェイトに見送られながら、なのははヴィヴィオの手をつないで外に出た。
「ママ、今日はどこに行くの?」
「そうだね。デパートに行こうか。」
「お子様ランチ食べてもいい?」
「うん、お昼になったら食べようね。」
そんな日常的な会話がなのはには新鮮に感じた。戦闘、戦闘と毎日血で血を洗うような任務に当たっているのが嘘のよう。しかし、ヴィヴィオに笑顔を向けながらもなのはは気づいていた。自分たちをつけている怪しげな気配に。

その気配はどこまでもついてきた。移動中もデパートの中でヴィヴィオがはしゃいでいる時も、レジで商品を買っている時も。そして、今こうしてレストランでお昼ごはんを食べている時も。スカリエッティ一味を逮捕した今、ヴィヴィオは普通の少女。狙いは自分だろうとなのはは悟った。
「ヴィヴィオ。ママ、ちょっとトイレに行ってくるね。」
「うん。ヴィヴィオ、お利口にして待ってる。」
なのははヴィヴィオを残して自分たちをつけている気配の源に歩み寄った。気配は一人だけ。動かずになのはを凝視している。
「少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
なのはは肌身離さず持っている自分の身分証明書を相手に見せる。フードを被ったその人は黙ってなのはについてきた。黙って屋上に上がり、広場のベンチに座る。
「ここなら今の時間は誰もいません。正体を明かして頂きますよ。」
なのははフードの人に飛びついて顔を確認しようとした。が、その前にその人物はフードを脱いだ。なのはその顔を見て驚きのあまり腰を抜かしてしまった。
「えっ・・・・どうし・・・・・て・・・・・!?」
「・・・・・・・・・・・。」
その人物が無言のままに動く。ハンドガンをなのはの胸に密着させる。引き金を引かれたが、それを避けることはできなかった。直撃したが、血が飛び散ったり内臓が削られたりという痛みは走らなかった。体を赤い光りが包み込み、なのはの着ている洋服に作用した。
「きゃあああああああああああああああっ!!」
洋服が白のハイレグ水着に変化した。なのははその場でハイレグ姿になって立ちすくんだ。
「い、いや・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
なのはは抗おうとしたが、抗えなかった。手と足が自分の意志と正反対の動きをする。膝を曲げてコマネチをしだした。
「せ、精神魔法・・・・・。心が乗っ取られる・・・・。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

「これから貴方は私の代わりにハイグレ魔王となりなさい。そして・・・この世界をメチャクチャにしなさい。」
「はい、仰せのままに。ハイグレ魔王としてこの星の全てをハイグレ人間の世界に作り替えます。」
「まず邪魔なのは時空管理局。それを服従させるのよ。」
「はい。全てを我らの物に。」
ハイグレ人間・なのはは話に夢中になっていて気付かなかった。ヴィヴィオが物陰から見ていることに。
「大変・・・・フェイトママに知らせなきゃ!」
ヴィヴィオは一目散にデパートの中を走り出した。


「本当なの・・・!信じて!」
機動六課本部に戻ってきたヴィヴィオはフェイトとはやてに訴えた。
「う〜ん。そんなこと言われたかて信じられるわけが・・・・。」
「ヴィヴィオ。本当に本当なの?」
「うん!」
二人は困惑した。嘘をついている目ではないが、かといって信じられる内容ではなかった。同じ問答を繰り返していると、部屋にグリフィスが慌てた様子で入ってきた。
「た、大変です!」
「どうしたんや、グリフィス君?」
はやてがグリフィスに続きを言うように促す。
「そ、それが・・・・。収容所が襲われて収監中のスカリエッティ一味と更生教育中のナンバーズたちが集団で脱走しました。」
「な、なんやて!?誰が収容所を襲ったんや?」
「そ、それが・・・その、なんといいますか・・・・。目撃証言では高町一等大尉とのことです。今までに見たことの無い魔法を駆使し、次々と職員や囚人を襲って操っているとのことです。」
「なのはが!?どうして!?」
そのことを考える暇も無く、緊急警報が鳴る。すなわち非常事態が発生した。すぐに近くの画面を切り替える。
「なのはちゃんとナンバーズが一緒に居る・・・・。しかし、なんちゅう格好を・・・・。」
なのはとナンバーズはハイレグの水着姿で空を飛んでいた。
「はやて!すぐに迎撃準備を!」
「何やよう分からんけど・・・・。総員戦闘配備!敵の来襲に備えるんや!」
はやてが号令を下した。目標は仲間のはずの高町なのは。



対侵入者用のシールドを機動六課の周囲に三重に張り巡らせた。しかし、なのはとナンバーズの集中砲火の前にはただの時間稼ぎにしかならない。その前に早急に態勢を整えることが不可欠だった。
「・・・というわけや。管理局に応援を頼んであるから、協力して敵を撃破するんや。」
作戦室で全員でブリーフィングを開始した。
「はい!質問です!」
スバルが手を上げる。許可を得て立ち上がり、質問した。
「なぜなのはさんが?」
「それについてはヴィヴィオの方が詳しいわ。」
作戦室に特別に入っているヴィヴィオがフェイトに促されて自分が見たことを語る。
「えっとね、ママが帰ってくるのが遅いから、ヴィヴィオ、屋上に行ったの。そうしたらママが知らないおばさんに撃たれて体がすごく光ってたの。それで、水着姿にされちゃった。魔王になるとか機動六課を襲うとか話してたよ。」
「そのおばさんって知らない人なの?」
「うん。でも、なのはママは知ってる人だったみたい。すごく驚いてた。」
フェイトは胸の中がざわりとする気がした。自分も知っている人の気がする。そんな気がした。
「フェイトさん?どうかしたんですか?」
「なんでもないわ、エリオ。心配しないで。」
フェイトは心配そうに見ているエリオに優しく笑いかけた。

なのははナンバーズを率いて第一・第二結界を突破した。
「ああ、もう面倒くさいなあ・・・・。時間ばかりかかっちゃう。せっかく皆をハイグレ人間にしてあげようと思ってるのに。」
なのははレイジングハートから魔法攻撃をしてシールドを攻撃する。ナンバーズも及ばずながらも助力する。そうこうして時間を潰していると、東の空に時空管理局の部隊の飛行戦隊が見えた。
「シールド・・・突破!」
機動六課の周囲の結界を完全に解除した。
「ナンバーズの皆はあっちの大部隊を牽制して。クラウディア艦内にいるクロノ君とアコース査察官以外は対して強くないから大丈夫だと思う。全員ハイグレ化しちゃって。」
「ハイグレ魔王様は?」
「私は機動六課内に潜入。私の方が中の勝手には詳しいから全員ハイグレ化してくるね。」
「分かりました。お気をつけて。こちらは我々ハイグレ親衛隊がお引き受けします。」
ウーノは他のナンバーズの妹たちを引き連れて飛行戦隊へと向かっていった。

「あらあら、騒々しいわね。何かあったの?」
作戦室にリンディとカリム、その後ろにシャッハが畏まって入ってきた。
「母さん?騎士カリム?なんでここに?」
「何って、今日は機動六課がちゃんとお仕事をしているかの査察の日じゃない。たった今着いたところよ。」
リンディたちは今の騒ぎに全く気づいていなかった。
「何か不測の事態でも発生したのでしょうか?」
シャッハがいち早く異変を察知して尋ねた。手早く事情を説明する。
「嘘・・・・。だって、私には何の報告も・・・・。」
リンディは驚いて携帯電話を取り出して本部にいる部下にかける。しかし、完全に本部が慌てているらしく、全く通じなかった。
「騎士カリム。はやての限定解除の許可を。」
フェイトがはやての能力限定の解除権限を持っているカリムに頼む。
「分かりました。非常事態ゆえ混乱を鎮めるまでの間、能力限定を完全に解除します。」
「私からもフェイト隊長、シグナム副隊長、ヴィータ副隊長の能力限定解除を承認。」
カリムとはやての承認により、はやて、フェイト、シグナム、ヴィータの能力限定が解除された。その瞬間、機動六課の建物がぐわんと大きな音を立てて揺れた。
「第三シールド突破されました!目標を正面玄関に確認!」
シャーリーが画面に正面玄関を映す。
「スターライトブレイカー!!」
玄関は監視カメラごと吹き飛んだ。



なのはは吹き飛んで床で粉々になっているガラスを踏みつけ中に入る。
「よお、なのは。随分と派手にやってくれたじゃねえか。」
「ヴィータちゃん。」
玄関前で待ち構えていたのはヴィータ副隊長だった。
「・・・・そのグラーフアイゼン。はやてちゃんに能力限定の解除をしてもらったんだね?」
「ああ。本部壊滅の非常事態だからな。今のアタシならお前と互角以上に戦える。何に操られてるかは知らねえが、アタシが目を覚まさせてやるぜ!」
ヴィータが先に動いた。グラーフアイゼンを両手に持ち、加速して一気に距離を詰める。
「ラケーテンハンマー!!」
「ぐはっ!?」
なのはは避けきれずに攻撃が直撃し、外に吹き飛ばされた。
「その薄い格好じゃ持たねえぞ。ま、その方が制圧する手間が省けていいがな。」
ヴィータはグラーフアイゼンを一振りして両手に持ち直す。
「ギガントハンマー!!」
ヴィータが大技・ギガントハンマーを繰り出した。それより威力の低いラケーテンハンマーを避けられなかったなのはにダメージを与えられる・・・・はずだった。
「なっ!?」
なのはは片手でグラーフアイゼンを止めた。
「ふ〜ん。この程度なんだね。限定解除でどれだけ強くなっているのかと思ったけど。」
「そんなバカな!!AAクラスに抑えられてるお前に跳ね返せるはずが・・・!!がはああっ!!」
ヴィータはなのはの魔法攻撃によって壁に打ち付けられ、吐血した。そのままヴィータの首を締め上げて持ち上げる。
「今の私はハイグレ魔王。AAA+のヴィータちゃんよりずっと強いの。」
「くそっ・・・・限定解除されてないからと思って甘く見た・・・・!!ライトニング隊を呼び戻さねえと!」
「フェイトちゃん、いないんだ。この建物の中で私と互角に戦えるのははやてちゃんだけかな。ああ、そうだ。リンディさんと騎士カリムもいたんだっけ。少しは私を楽しませてくれるといいんだけど。ハイグレ人間へのしがいもあるし。」
なのはは一方的に喋りながら、レイジングハートをヴィータに向ける。
「この光線を浴びたらハイグレ人間になるの。ヴィータちゃんもこれからお仲間さんだね。」
「誰が・・・そんなの・・・・なるかよ・・・・・。」
ヴィータは息が絶え絶えになりながらも、憎まれ口を叩く。
「そういうこと、ハイグレ光線を浴びてからも言えるかな?ハイグレ光線発射!!」
なのははふっと笑ってハイグレ光線を発射した。
「う、うわあああああああああああああっ!!」
なのはが締め上げていた手を放すと、ヴィータは大の字になって悲鳴を上げた。ハイグレ光線がヴィータを包み込み、彼女の小さい服が赤いハイレグ水着に変えられた。
「ヴィータちゃん、魔王様に服従のポーズだよ。」
「ううっ・・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「うん、いい子だね、ヴィータちゃん。」
「くうっ・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ヴィータはなのはの前でハイグレポーズを続けた。

「な、何なの、あの技!?」
アルトがモニターの前で絶句した。画面に映るヴィータはハイグレ人間になってポーズをしている。
「ヴィータ副隊長がやられた!?限定解除してるのに・・・!」
ルキノも驚きを隠せなかった。能力限定の有る無しで戦闘力に大きな差があるはずなのにそれを覆されてしまった。
「なのはさんが動き出しました。司令室に向かっています!!」
シャーリーの報告も悲壮に満ちている。
「あかん・・・・。ライトニング隊をナンバーズ撃退に行かせたのは失敗やったか・・・・。」
「すぐにライトニング隊に連絡します。」
「こちら司令部、こちら司令部・・・・。」
局員たちが慌ただしく動き出す。
「はやてママ・・・・。なのはママ、ずっと悪い人になったままなの?」
「安心しや、ヴィヴィオ。私とフェイトママとで元に戻してあげるで。」
はやてがあやしていると、リンディとカリム、シャッハが戻ってきた。
「本部もハイグレ人間に襲撃されて機能停止みたいね。こっちにいることにするわ。」
「このような事態になることは予言にありませんでした。仕方ありません。」
リンディとカリムの顔にも焦燥の念が浮かんでいる。
「八神部隊長。ここではあなたが上席です。なんなりとご指示を。」
「なら、ヴィータ副隊長と一緒に下にいったスバルとティアの救援を頼むで。あの二人になのは隊長の相手はきつすぎるわ。」
「分かりました。」
シャッハははやての依頼を受け、下へと向かった。
「私も行くわ。シャッハさん一人だとなのはさんの相手はきつそうだわ。」
「私も参ります。戦闘はしばらくぶりですが、少しはお役に立てると思います。行きましょう、シャッハ。」
リンディとカリムもシャッハの後を追って部屋を出た。



スバル・ナカジマとティアナ・ランスターは逃げ場を失って途方に暮れていた。
「どうしよう、ティア。このままじゃあたしたちまでやられちゃう!」
なのはは次々と隊員をハイグレ人間にしながら近づいてくる。下手に顔を出せば魔法の餌食になる。
「スバル〜ティアナ〜どこに行ったのかな〜。ハイグレ人間にしてあげるからでておいで〜。」
なのはがレイジングハートを片手に二人のいる方に近づいてくる。
「打って出るしかないね。」
「なのはさんに勝てるわけがないでしょ!?」
「でも、このままじゃ二人ともヴィータ副隊長みたいにハイグレ人間にされるだけだよ?」
「なら、私が幻影魔法で囮を作るから、スバルは先に撤退。後で追いつくから。」
「う、うん。分かった。」
ティアナは得意の幻影魔法・フェイクシルエットで自分とスバルの幻影をいくつも作り出した。それを四方に走らせる。なのははすぐにどれが本物か判別がつかないのか立ち止まったままだった。
「シューティングシルエット!!」
幻術に撹乱・攻撃用の実体弾を混ぜてなのは目掛けて撃つ。
「よし、今のうちに・・・・。」
ティアナは自分の攻撃の成果を確信して幻影が消えないうちに後ろへ下がっていく。
「えっ!?」
ティアナの足にバインドの魔法がかけられていた。魔法でできた輪が彼女の足の動きを封じる。
「まだ甘いなあ、ティアナ。」
ティアナのすぐ後ろになのはが立っていた。
「私がなんで反撃もしないでいたんだと思うのかな?ずっとエリアサーチしてティアナの居場所を探ってたんだよ。」
「あっ・・・あっ・・・あっ・・・・。」
後ろからレイジングハートを突きつけられてティアナは恐怖のあまり声が出なかった。
「ティア!!今すぐ助ける!!」
スバルが猛スピードで走って戻ってくる。
「邪魔しないで、スバル。今からティアナをハイグレ人間にしてあげるんだから。」
レイジングハートからハイグレ光線が出る。ティアナの体を一気に飲み込んだ。
「きゃあああああああああああああっ!!」
ティアナの体が光ってオレンジ色のハイレグの水着姿にされてしまう。
「ティアナは凡人なんかじゃないよ。立派なハイグレ人間なんだから。」
「はい!ありがとうございます!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ティアナは嬉しそうにハイグレポーズを取り出した。
「ティ・・・・ア・・・・。」
スバルは目の前でハイグレポーズをしているティアナを呆然と見る。
「さあて、お次はスバルの番だね。」
なのははレイジングハートをスバルの方に向ける。
「どうして・・・なのはさん・・・。どうしてハイグレ人間なんて変なのに操られてるんですか!」
「操られる?私の意志だよ。ほら、見て、このハイレグ水着。素晴らしいでしょ?これが人間の本当のあるべき姿なんだよ。」
「なのは・・・・さん・・・・・。」
スバルの目から自然と涙が出てきた。自分にレイジングハートが突きつけられても全然避けようという気も起きないくらいに精神的に打ちのめされていた。
「スバル。一緒にコマネチしようね。」
「うわああああああああああああっ!!」
スバルの体がハイグレ光線の力で光る。戦闘機人のスバルにも通用するのか、点滅して戦闘服を青色のハイレグに水着に変えていた。
「ううううっ・・・・・いやだ、よ・・・・・。」
「スバルは戦闘機人だから定着に時間がかかるんだね。でも、いいんだよ。ゆっくりハイグレ人間になればいいんだから。」
「は、はい・・・・。き、きた・・・・。ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
スバルは大手を振ってハイグレポーズを取り出した。



「遅かった・・・・!」
スバルがハイグレ人間にされているところに駆けつけたリンディ、カリム、シャッハの三人。
「次の相手はあなた達三人ですか。いいでしょう。お相手させて頂きます!」
なのははレイジングハートを前にかざしながら三人に近づく。
「(シャッハ。少し時間を作りなさい。私がその間に洗脳解除の古代魔法を詠唱するわ。)」
「(私も呪文詠唱するわ。シャッハさん、お願いね。)」
「(承知しました、騎士カリム、リンディ提督。)」
シャッハはなのはの注意を引くためにあえてなのはの間合いに入って剣を構えた。カリムはその間に詠唱を始める。
「なのはさん。今の貴方の行いは自分の意志ではありません。単にデパートの屋上で襲われた時にそう洗脳されたに過ぎません。一体誰がそう命じたのですか?」
「それは今はどうでもいいことですよ、シスターシャッハ。ハイグレ人間になって共通意識を持てば自ずと分かることです。」
「そうですか。なら、私から申し上げることは何もありません。参ります!!」
シャッハは大刀をなのはに向かってまっすぐ振り下ろす。なのはもレイジングハートの魔力でそれを防ぐ。
「ぐううっ!!」
「はああっ!!」
なのははシャッハの剣を押し返そうと、シャッハはそのままなのはに押し込もうと全力を出す。
「よし・・・詠唱完了!シャッハさん、下がって!!」
リンディがカリムよりも先に呪文を詠唱し終えた。シャッハが下がるとすかさず魔法を放った。
「上級幹部権限を行使!!デバイス機能の一時凍結!!」
その瞬間、レイジングハートの機能が停止した。
「本来は屋内でのデバイス暴走対策の技よ。なのはさんたちにはまだ教えていなかったわね。」
「くっ・・・・。」
「これでハイグレ光線とやらも使えないわ。後はカリムさんに洗脳を解いてもらいましょう。」
「分かりました。素直に従います・・・・なんって言うと思ったら大間違いですよ?」
なのはは早口で呪文を詠唱する。すると、何も無い空間に光が現れ、銃の形になってなのはの手の中に収まった。
「それは?」
「ハイグレ銃よ。こうして使うんです。」
油断して近づきすぎていたリンディの腹にハイグレ銃を撃ち込む。
「きゃあああああああああああああああっ!!」
「提督!?」
シャッハはあまりの眩しさに一瞬目がくらんで閉じてしまう。すぐにまた目を開けると、リンディの服装が大いに変わっていた。
「うううっ・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
リンディは水色のハイレグ水着姿でポーズを始めた。
「提督!?うわっ!!」
リンディしか見ていなかったシャッハは自分の背後にスバルとティアナがいることに気がつかなかった。
「放しなさい!!放して!!」
シャッハはもがいたが、ランクが下のハズの二人相手にびくともしなかった。
「魔王様、今のうちに!」
「シスターシャッハにハイグレ光線を!」
スバルとティアナがシャッハを押さえつけながら言う。
「分かってる。ハイグレモードリリース。うん、こっちの方が使い易いね。行きますよ、シスターシャッハ!!」
レイジングハートの凍結がリンディに解除され、シャッハにハイグレ光線を浴びせる。
「いやあああああああああっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
シャッハはハイグレ光線を一身に浴び、紫色のハイレグの水着姿になってコマネチを始めた。嫌そうな顔をしているが、すぐに慣れてしまうもの。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「後は騎士カリムだけですね。覚悟はいいですか?」
なのはは呪文詠唱を続けているカリムに目標を定めた。レイジングハートを向けてハイグレ光線を増幅する。
「覚悟をするのはそちらの方ですよ、なのはさん。呪文詠唱を終わりました。行きます!!洗脳解除!!」
カリムは洗脳解除の呪文を放った。
「この呪文は魔法では避けられません。必ず洗脳を解けるようになっているんですよ。」
シールドの展開をしたが、それをすり抜けてなのはの体を捉える。
「いやああああああっ!!」
なのはの体を捉えて離さず、洗脳解除の魔力が送られ続ける。
「魔王様!!くそーっ!!私が身代わりになります!!」
ヴィータがやってきてカリムとなのはの直線上に割り込んだ。他のメンバーもそれに続いて自分が洗脳解除の魔法を浴びた。
「くっ・・・これではなのはさんに魔力が・・・・ぐっ・・・・。」
カリムは十分な魔力をなのはにも他のメンバーにも行き渡らせることができずに魔力を使い果たしてしまった。
「危なかった・・・・。騎士カリム、これからはその魔力を私のしもべになって使ってもらいましょう。」
魔力を失って抵抗できなくなったカリムにハイグレ光線を浴びせた。
「いやあああああああああああああっ!!」
カリムの黒い修道服が黒のハイレグ水着に変わった。
「無念です・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」

「あかん・・・・。あかんで・・・・・。もう私が出るしか・・・・。けど、私は接近戦苦手やし・・・。」
はやては親指の爪をかんでイライラしながらモニターを見ていた。その間にもなのはは階段を登ってこちらにやってくる。
「ねえ、ザフィーラ。」
「なんだ、シャマルよ。」
はやてたちの後ろに控えていたシャマルがザフィーラに話しかけた。
「なのはちゃん、どうしてこんなに簡単に上がってこられるのかしら・・・。」
「勝手を知っているのだ。訳もなかろう。」
「それに、隊長陣しか知らないはずのスカリエッティ一味の聴聞会情報。管理局のお偉いさんたちも一緒に集まっているタイミングでなんで・・・。都合が良すぎるわ。」
スカリエッティ一味は更生組と収監組で分かれ、さらに収監組は別々に隔離されている。それが本日極秘裏に一同に集められて聴聞会が開かれていた。
「つまり、ヴィヴィオが見た不審な女以外に協力者がいると?お前の推測が正しいなら、なのはに逐一情報を与えている内通者がこの中にいることになるが。」
「それが分かれば苦労は・・・・。っ!?」
シャマルはあれこれ考えを巡らせ、一つしかない可能性に気づいた。
「バインド!!」
シャマルは正確にその人物を拘束した。



「何をするんですか、シャマル!?」
リイン曹長はバインドの魔法をかけられて動きを封じられた。
「はやてちゃんの側にいて管理局本部と機動六課の動きを知ることができる立場。それに、なのはちゃんが今日非番であることを知り、ライトニング隊をナンバーズ撃退に向かわせるよう進言した人物。それは全部リインちゃんよ。」
シャマルの指摘通り、それらを全て知り、かつ実行していたのはリインだけだった。
「それがどうして私を拘束する理由になるのですか?」
「あなたは昨日は非番。そして、出かけた時になのはちゃんを襲った女性によってハイグレ化されている・・・そうよね、リインちゃん?」
リインフォースは目が泳いだ。しかし、思い直したように笑い始めた。
「今頃気づくとは遅いですね。その通りです。全てはハイグレ人間の世界を作るため・・・。えいっ!!」
リインは バインドを解いて服を脱ぐ。下には白のハイレグ水着を着ていた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「リインちゃん、私らをだまし取ったんか!?」
はやては驚愕した。自分の最も近い場所にいるリインが裏切っていたことに。
「はやてちゃんを不意打ちするつもりでしたが、計画が狂ってしまいました。強硬手段に訴えさせていただ・・・き・・・・。」
リインは最後までしゃべることなく、その場に崩れ落ちた。ザフィーラが当て身を食らわしたのだ。
「主はやて。手加減はしてある。」
ザフィーラがリインをくわえて部屋の隅に連れていき、そこに隔離した。
「これで情報が漏れることはなくなりましたね。できれば、リインフォース空曹長に黒幕の正体を聞いておけばよかったんですが。」
グリフィスの発言にはやても同意した。この事件の黒幕は誰なのか?これほどまでに強いハイグレ人間に対抗するにはどうすればいいのだろうか?
「その答えは侵入者に聞けばいいことやで。」
はやては含み笑いをする。その時、司令室の扉が吹き飛び、管理局の白い魔王が部屋に入ってきた。


機動六課の救援要請を受けたライトニング隊より先に周辺に部隊を展開していた陸士108部隊は機動六課本部の建物内に入った。ゲンヤ・ナカジマ三佐が勝手を知っているギンガを指揮官に命令して向かわせたものだった。
「第二小隊はエリアB、第三小隊はエリアCより司令室へ。第一小隊は私に続いて下さい。」
「「了解!!」」
三方に分割して司令室に向かわせることにした。ギンガは10人を率いて中央階段から上の階に上った。
「(スバルは無事かしら・・・・?)」
ギンガは胸中で妹の心配をしていた。任務中とはいえ、気に掛かるのは最愛の妹のこと。ヴィータがやられたという報告が入っていたので、なおのこと気になった。
「ナカジマ陸曹!!敵発見!!ハイグレ人間です!!」
他の隊士たちがデバイスを敵の方に向ける。ギンガたちに歩み寄ってくる青色とオレンジ色のハイレグの水着。その水着を着ているのは・・・・
「スバル!?ティアナ!?」
敵はハイグレ人間にされたスバルとティアナだった。無言のままハイグレ銃を構える。
「攻撃開始!!」
隊士たちが次々に魔法攻撃を始めた。しかし、その攻撃は全く二人に当たらない。
「全員・・・ハイグレ人間になれ!!」
「ハイグレ光線発射!!」
「うわっ・・・・!!」
ギンガは廊下中に広がる光線に一瞬視界を奪われる。そして、恐る恐る目を開けると他の隊士が全員ハイグレ姿になっていた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
隊士たちは男女に関係なくハイレグの水着姿でポーズをしていた。
「う、うそっ・・・・。たった数秒で・・・・。」
ギンガは眼前の光景に目を疑った。先程まで戦っていたハイグレ人間たちはこれほどまでに強くなかったというのに・・・。
「ギン姉、一緒にハイグレを着ようよ〜。」
「ギンガさん以外は全員ハイグレ人間になってるんですよ?」
「えっ・・・・他の隊士たちも・・・・?」
第二小隊も第三小隊も既に他のハイグレ人間たちによって洗脳されていた。
「ハイグレ光線発射!!」
「あっ・・・・あっ・・・あっ・・・・。」
あまりの衝撃的な事実に避けるという術を失ったギンガ。彼女の体にハイグレ光線がクリーンヒットした。
「きゃああああああああああっ!!」
ギンガの体をハイグレ光線が包み、茶色のハイレグ水着へと彼女の服を変えていた。
「嫌・・・私も洗脳されるの・・・・・くううっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ギンガはコマネチをしたいという衝動を押さえることなどできず、ハイグレポーズを始めた。


「結構時間がかかっちゃったな〜。ハイグレ魔王ってのも結構大変な仕事だね。でも、こんなにやるがいのある仕事もないかな。」
部屋に入ったなのはは部屋の中を眺め回して悪魔の笑みを浮かべた。
「ヴィヴィオは悪い子だね。なのはママに黙って帰っちゃうんだもの。少しお仕置きが必要かな。」
「ひいいっ・・・・ママ、怖い・・・。」
「でも、今日のところは許してあげるよ。ハイグレ人間になれば、ね。」
ヴィヴィオはなのはがレイジングハートを自分に向けるのに対してただ震えるのみだった。
「なのはちゃん・・・いい加減にしや。本気で怒るで?誰に操られてるのか知らんけど、私が目を覚まさせたる。」
はやてが魔道士モードに変身する。
「SSの限定解除だね。いくらハイグレ魔王の私でもAAの状態で戦うのはかなりきついな。だから、こうさせてもらうよ。弱い方から、ね。」
なのははデバイスをシャマルの方に掲げてハイグレ光線を撃ち出した。
「守って・・・風の護盾!!」
シャマルがシールドを展開する。
「だ、ダメ・・・・防ぎきれない・・・・きゃあああああああっ!!」
シャマルの作った盾を粉々に砕き、ハイグレ光線が命中した。
「いやああああああああああああああっ!!」
シャマルの体が黄緑色のハイレグの水着姿に変わった。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」



「シャマル・・・・!?」
シャマルははやての目の前でハイグレポーズを繰り返しているだけの存在に成り下がってしまった。
「次は誰にしようかな〜。じゃあ、目が合ったからヴァイス君とアルトにしようかな。」
なのはは部屋を見回して一番最初に目が合ったアルトとヴァイスに標的を定めた。
「そうはさせへん!」
はやてが防御魔法を展開。ハイグレ光線を防いだ。
「ザフィーラ!!今のうちに皆をここから避難させるんや!!シャマルの二の舞にはさせへん!!」
「承知しました、主。」
ザフィーラはヴィヴィオを口にくわえ、自分の背中に乗せる。
「みんな、こっちよ!」
シャーリーがボタンを操作して非常脱出用の扉を開く。アルト、ルキノ、グリフィス、ヴァイスが次々に脱出口から外に出て行った。シャーリー、ザフィーラ、ヴィヴィオもそれに続く。部屋に残されたのはハイグレ人間にされたシャマルをのぞいてなのはとはやてだけだった。
「これで私も安心して戦えるわ。なのはちゃんの目、覚まさせたる!」
はやては呪文の詠唱を開始した。
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、ミストルティン!」
石化魔法ミストルティンでなのはの動きを封じにかかる。なのははシールドを張って防ぐ。
「なら、これはどうや?遠き地にて、闇に沈め!」
デアボリック・エミッションの魔法陣を展開して後ろからの遠隔攻撃。
「さすがにこの戦力差はきついね。SSだもの。」
「そやな。限定解除の許可が出せるんは私だけやし、いくらハイグレ魔王とかいうて強うなっても9ランクはきついやろ。」
「でもね、私も負けるわけにはいかないんだよ。はやてちゃんもハイグレに着替えてもらわなくちゃ。」
なのはの目がギロリと光る。セクハラモードのはやてと同じ獲物を狙う目つきだった。
「私は目的のためなら手段を選ばない・・・。それははやてちゃんも良く知ってるよね。」
なのははレイジングハートを上に掲げる。
「ディバインバスター!!」
天井を魔力でぶち抜いた。穴からは青い空が見える。なのははその穴から外へと出て行った。
「ま、まさか・・・!」
はやてはなのはの意図にいち早く気づき急いで後を追った。

市街地を逃げるヴィヴィオたち。ザフィーラとヴァイス以外は戦闘要員の頭数に入らない。なので、今防いでいるハイグレ人間たち以外に強力な敵がやってきたらアウトの状態だった。
「見つけた・・・。みんな、ハイグレ人間にしてあげる・・・!」
なのははヴィヴィオたちの集団に向けて特大クラスのハイグレ光線を放った。はやてはハイグレ光線とヴィヴィオたちの間に割り込んだ。
「かかったね、はやてちゃん。」
シールドを張ってハイグレ光線を防ごうとするはやて。守ることにばかり気を取られ、地上のハイグレ人間たちが撃ってくるハイグレ光線にまで注意が回らなかった。
「し、しまっ・・・・!」
すぐには回避行動ができない。そのままはやての体にハイグレ光線が直撃した。
「きゃああああああああああっ!!」
はやての白い魔導服が黒いハイレグ水着に変わっていた。
「く、悔しい・・・・ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
はやては空中でハイグレポーズを始めた。



その頃ライトニング隊は機動六課近くにいた。
「シグナム、次元航行隊はあのままで良かったのでしょうか?」
「心配はいらない。我々であらかたのナンバーズを捕縛したし、後はクロノ提督の采配なら問題はないだろう。それよりも主はやてはご無事だろうか・・・?先程から主の気が途絶えているが・・・。」
何よりも主のことが気にかかるシグナムの顔に焦りの表情が浮かぶ。
「フェイトさん、シグナム副隊長。あれを見てください。」
エリオが六課の屋上を指さす。大きな穴が開いていた。
「大きい穴ですね。かなり激しく戦っていたみたいですね。入ってみましょう。」
「皆がハイグレ人間にされてて危ないかもしれない。私とシグナム副隊長が先に入るから。二人はフリードリヒに乗って待ってて。」
「はい、分かりました。」
フェイトとシグナムは穴から隊舎の中へと入っていった。中でハイグレと叫ぶ声が聞こえる。その声の主はリインフォースUとシャマルだった。
「やはりか・・・・。お前たち、操られているのだな?気の毒だ。」
「そんなことないわよ、シグナム。ほら、楽しいわよ。ハイグレ、ハイグレッ!!」
「フェイトさんもシグナムもハイグレ人間になりましょう。」
リインフォースがハイグレ銃を手にする。後ろからもハイグレ人間が来てフェイトとシグナムを取り囲む。
「母さん・・・スバル・・・ティアナ・・・あなた達まで・・・・。」
「テスタロッサ。エリオとキャロを連れて先に行け。甘ったれたお前では仲間と戦うことはできまい。ここは私が食い止める。」
「で、でも・・・。」
「行け。でないと、管理局はおろかミッドチルダを飲み込み、他の世界へと侵食していく危険がある。なのはの洗脳を解き、この危機を救うんだ。」
フェイトは後ろ髪を引かれる思いだったが、穴を逆戻りしてエリオとキャロを連れてなのはの捜索に向かった。

「管理局の崩壊と陸士部隊の全滅・・・・。騎士カリムの予言はスカリエッティではなくハイグレ魔王のことを指していたのだな。まさか身内同士で争うことになるとは思わなかったが。」
シグナムは静かに剣を構えた。右に水平に保ち、剣を振るう機会を伺う。
「私にハイグレ光線など効かぬ。当たらねばよいだけのことだ。」
全部避けきる自信があるシグナムは眉一つ動かさずじりじりと間合いを詰める。
「さすがはシグナム。心に隙が無いわね。」
「当たり前だ。死線はいくつも越えている。この程度で動揺するわけがない。」
シグナムの答えにシャマルが含み笑いをしている。何かおかしい。シグナムは少し気にかかった。
「シグナム。お前に一ついいことを教えてやるぜ。はやてはなあ、ハイグレ人間になったぞ。」
「な、何!?それは本当か・・・!?」
今まで平静を保っていたシグナムの心に揺らぎが出る。それもかなり大きく。
「はやてちゃんの気が途絶えているところで分かるはずです。シグナムはそれを認めたくないだけです。」
リインフォースが止めの一言。はやての気が途絶えているのはやられたから。シグナムはそれをただ認めていないだけだった。
「惑わされるな・・・・。主はやて、すぐにお助けに参ります・・・!はああああっ!紫電一閃!」
シグナムが破れかぶれに剣を一閃する。しかし、いくら剣をふるっても誰にも当たらない。
「騎士シグナム、剣に迷いがあります。ハイグレ人間になった私たちにそんな攻撃は通じません。」
シャッハによってレヴァンティンを弾き落とされてしまった。シグナムは力なくその場に座り込む。
「やれ・・・・。私の負けだ。」
「潔いわね、シグナムさん。んじゃ、洗脳っと。」
リンディがハイグレ光線を浴びせる。
「主はやて・・・私はいつも貴方の側に・・・・。ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
シグナムはピンクのハイレグ水着を来て魔王よりも先にはやてへの忠誠を誓った。


「うふふ、ザフィーラさん、ヴァイス君。いつまでそうしているつもりかな?早くハイグレ人間になって楽になっちゃいなよ。」
なのはは追い詰められながらも抵抗しているザフィーラとヴァイスをいたぶって遊んでいた。その後ろではシャーリーたちがヴィヴィオを守りながら震えている。
「なのはさんの目、なんて邪悪な色をしているんだ。こいつぁ本物の悪魔・・・いや、魔王だ。」
「無駄口を叩いている暇があったらどんどん撃て。なのはは無駄話をしながら倒せるほどやわではない。今は特にな。」
「分かってますって。行くぞ、ストームレイダー!!」
ヴァイスは自分の体力の続く限りスナイプショットを撃ち続ける。
「なんで皆そんなにハイグレ人間になるのを嫌がるのかな?気持ちイイのに。ああ、そうだ。これが終わったら今度はフェイトちゃんをハイグレ人間にしてあげないと。ってわけで急ぐから、そろそろお遊びはおしまい。」
なのはは魔力を一気に解放する。
「クロスファイアーシュート!!」
「ぐああああああああああっ!!」
ヴァイスとザフィーラはなのはの砲撃の前に吹き飛ばされた。
「さあ、ヴィヴィオ。なのはママと一緒にハイグレ人間になって楽しいことしよう?」
「い、いや・・・・。」
ヴィヴィオは怯えて泣き出した。いつものママじゃない・・・。それが怖くて仕方なかった。
「グリフィス君。邪魔しないでくれるかな?」
「ぐはっ!?」
後ろからなのはに拳銃を撃とうとしたグリフィスを魔法で吹き飛ばした。
「シャーリー、アルト、ルキノ。何の真似かな?」
ロングアーチの三人がヴィヴィオの前に壁を作った。
「子供を守るのは大人の勤めです。ヴィヴィオを撃つなら私たちを先に撃ってください。」
シャーリーが毅然とした表情でなのはを睨みつけた。
「仕方ないなあ。早くハイグレ人間になりたいなら素直にそう言えばいいのに。なら、先にハイグレ人間にしてあげる。」
なのはは三人にハイグレ光線を発射。ヴィヴィオを守ってハイグレ人間にされてしまった。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
シャーリーはピンク、アルトは茶色、ルキノは紫のハイレグの水着姿で整列してハイグレポーズをした。
「これで邪魔者はいなくなったね。さあ、ヴィヴィオ。ハイグレ人間に・・・なれ!!」
なのははご執心だったヴィヴィオに向けてハイグレ光線を放つ。
「きゃああああああああああああっ!!」
ヴィヴィオはありったけの声を上げて叫ぶ。ヴィヴィオが一度つぶった目を開けると、そこには・・・・。
「フェイトママ!!」
フェイトがなのはのハイグレ光線を防いだ。エリオとキャロも竜に乗ってやってきた。
「ヴィヴィオ、怪我はない?フェイトママが来たからもう安心だからね。」
「ママ〜、怖かったよ〜。」
ヴィヴィオはフェイトに抱きついて泣きじゃくった。
「なのは・・・いつも言ってたよね。喧嘩をしないと分かりあえないこともあるって。きっと今がその時だよ。なのはと目いっぱい喧嘩して、あなたを止める!!」
なのはとフェイトは目を合わせて火花を散らせた。
「確かに、仲間と戦うのはすごく嫌だね。でもそんな悩み、ハイグレ人間になったらバッチリ解決。楽しみだなあ、フェイトちゃんのハイグレ姿。ヴィヴィオとはやてちゃんと一緒にコマネチしようね。」
なのはは戦闘モードでレイジングハートを前に構える。

「フェイト〜!!」
遠くの空から飛んでくる赤髪の女性。
「アルフ?」
アルフは昔の大柄の女性の姿でやってきた。最近は魔力の燃費を良くするために子供姿でいることが多かったため、久しく見ない姿だった。
「アルフ、無事だったんだね。皆やられてどうしようかと思ってたところだよ。」
「あたしがフェイトを置いていくわけないだろ?ああ、そうそう。ユーノからの伝言。17時まで時を稼いでって。そうすれば全ての片が付くって。」
今の時間は16時47分。後13分。
「上等。エリオ、キャロ。はやてがこっちに近づいているのを感じる。アルフと一緒に耐えて。」
「わ、分かりました。全力を尽くします!行こう、キャロ。」
「ハイグレ人間にされても平気平気〜。すぐに元に戻せるって話だから。」
キャロが不安そうな表情をしているのでアルフが言う。
「は、はい・・・。でも、その・・・。エリオ君の前だと・・・少し恥ずかしい・・・・。」
「全く。そんなんじゃいつまでたってもエリオと一緒にプールや海なんていけないぞ〜。」
キャロをからかってアルフが面白がる。それもはやてと戦う前に緊張を解すため。
「行くよ、二人とも!!」
アルフが二人を先導して空へと上がっていった。



「ハーケンスラッシュ!!」
フェイトはバルディッシュでなのはに斬りかかる。
「プロテクション!!」
なのはは防御をしようとしたが間に合わず、思いっきり吹き飛ばされた。
「トライデントスマッシャー!!」
「ストレイトバスター!!」
二人の砲撃魔法の威力が中間点でくすぶっている。
「ママたち、すごい・・・・。」
ヴィヴィオは陰から二人の戦いを見守っていた。

エリオ、キャロ、アルフの三人ははやての圧倒的な攻撃力の前に手も足も出ていなかった。
「部隊長、強い・・・・。三人がかりで戦ってるのに・・・・。」
「私の魔法の力じゃ傷ひとつつけられないよ・・・・。」
「現役引退4年のブランクは大きすぎる・・・・。」
三人の魔力を結集してもSSかつハイグレ化してパワーアップしているはやてに太刀打ち出来る状態ではなかった。
「残念やなあ。ハイグレ人間にそんな攻撃は効かへんよ。ここはそうやなあ〜。少しなのはちゃんみたいにSプレイしてみようかな〜。」
はやてが邪悪な笑みを浮かべて三人をじろじろと見比べる。
「よ〜し。地球式・迷った時の神頼みや。だ・れ・に・し・よ・う・か・な・て・ん・の・か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り。よし、決まりや。」
はやては一番右にいたアルフにハイグレ銃を向けた。
「まずはアルフや。ハイグレ人間になりや!」
「うわっ!?バインド!?汚いぞ!!」
アルフは避ける権利すら与えられず、ハイグレ光線をもろに浴びた。
「うわああああああああっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
アルフは空中でオレンジ色のハイグレ姿にされ、コマネチを始めた。
「さて、次は〜と。エリオ、行ってみよか。」
「えっ・・・ぼ、僕ですか・・・・?」
「ハイグレ人間は男女関係無しや。特にエリオみたいなまだ可愛い男の子はよう似合うと思うんやけど。論より証拠や。試してみよ?」
はやてはエリオの拒否の返答を待たずにハイグレ光線を発射した。
「うわあああああああっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
エリオは自分の髪の色と同じ赤のハイレグ水着を着てポーズを始めた。
「エリオ君!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
エリオはキャロの悲痛な声に耳を貸すことはなかった。
「最後はキャロやな。安心しや。ハイグレ人間になったら私が胸を揉んで大きしてやるさかい。」
「そういう心配じゃありません・・・!」
「ハイグレ光線・・・発射!」
はやての攻撃の前にキャロもハイグレ光線を浴びせられてしまった。
「いやあああああああああっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
キャロは白いハイグレ姿でコマネチをした。
「エリオ・・・キャロ・・・・アルフ・・・・ごめん・・・・。」
フェイトは三人が遠くでハイグレ人間にされてしまったことを念話で感じた。
「後3分・・・・なのはの攻撃に耐えればユーノが何とかしてくれる・・・・。」
フェイトは自分に言い聞かせるようにヴィヴィオをかばいながらなのはの攻撃に耐えていた。


ユーノはハイグレ人間のはびこる街中に潜入してハイグレ魔王を倒すための準備をしていた。彼の通信機に通信が入る。クロノ・ハラオウン提督だった。
「こっちの艦隊配置は完了した。いつでもいいぞ、ユーノ。」
クロノはクラウディアの艦長席に座って軌道衛星上で次元航行隊5隻の指揮を取っていた。
「ああ、そのまま待機していてくれ。僕ももうすぐ終わる。」
通信機越しにユーノが言う。
「ヴェロッサ・アコースよりユーノ・スクライア司書長へ。陸士部隊の残存人員を集められるだけ集め、武装隊にも応援を頼みました。なんとかいけそうです。」
「ありがとうございます。では、予定通り00分ジャストで。」
「分かりました。全部隊に連絡します。」
それだけ言ってユーノはヴェロッサとの通信を切った。
「さて、無限書庫にあった使い古しの魔法だけど・・・・。頼むから成功してくれ・・・・。」
ユーノはそれだけを願ってなのはたちのいる場所の近くで呪文の詠唱を続けていた。

「ぐっ・・・!!」
フェイトは魔力を消費しすぎてだんだんなのはの攻撃の前に押されてきた。
「まずい・・・・。力を使いすぎた・・・・。」
逆になのはは汗ひとつかいていない。ハイグレ魔王のなせる技か。
「きゃっ!」
フェイトはなのはの砲撃の力でとうとう吹き飛ばされた。
「フェイトママ!」
ヴィヴィオがフェイトの元に駆け寄ってくる。
「だめ・・・逃げて・・・・。ヴィヴィオもハイグレ人間にされちゃう・・・・。」
息も絶え絶えにフェイトはヴィヴィオに逃げるように言った。
「嫌だよ。フェイトママも一緒じゃなきゃ嫌。」
ヴィヴィオはフェイトを置いて逃げることはできなかった。
「なら、仲良くハイグレ人間にしてあげる。」
なのはは二人にレイジングハートを向けた。そして、ハイグレ光線を増幅する。
「んっ・・・・何?」
なのはは周囲の異変に気づいてハイグレ光線を撃とうとするのをやめた。周囲の空間が歪んでいるのを感じる。なのはたちのいる場所の周りの空間が円形になって光り始めた。魔法陣が描かれている。
「フェイト!!ヴィヴィオを連れてなのはの側から離れるんだ!!」
建物の影から顔を出したユーノがフェイトに叫ぶ。とっさにフェイトがヴィヴィオを連れて魔法陣から外に出た。
「アコース査察官!!お願いします!!」
ユーノは通信機でヴェロッサに指示を飛ばした。すると、魔法陣の周りに長距離型の魔法の光が集まってくる。魔法陣と連動して白く光り、なのはの頭上に大きな直径100mの球体を作り出した。
「な、何なの、これ!?」
なのはは呆然とするだけで何もできなかった。
「クロノ、頼む!!」
通信機越しに今度はクロノに指示を出した。
「ああ、分かっているさ。全鑑同時射撃!!撃てえええええっ!!」
5隻の戦艦から一斉に砲撃を開始。空上から魔法の球体を撃ち抜いた。破裂した球体の光がシャワーのようになのはに降り注ぐ。
「きゃああああああああああっ!!」
なのはの体に刺さっては消えていく光。吸収されてなのはの体が光る。そのままなのはは気を失った。


「ユーノ・・・。これはやりすぎなんじゃ・・・・。」
「ママ、大丈夫なの?」
フェイトとヴィヴィオは地面に横たわって寝ているなのはを心配そうに見守っている。
「平気だよ。僕がクロノとアコース査察官に協力してもらってかけたのは洗脳解除の呪文。騎士カリムが使うやつより強力で何人たりとも避けること能わず。これでなのはも元通りさ。」
ユーノがなのはの頭を自分の膝の上に乗せながら言う。
「はやてや他の皆は?」
「無限書庫で調べた限りでは、この手の洗脳はトップさえいなくなれば行動性を失う。定めし同じポーズを繰り返すだけの無害な存在さ。時間はかかるけど全員元に戻せるよ。」
「良かった・・・・。」
フェイトもヴィヴィオも安堵した。その時、なのはの眉が動いた。
「う、うん・・・・。」
なのははユーノの膝の上でゆっくり目を開ける。
「あれ、私、どうしてこんなところに・・・・。」
「なのはママ、元に戻ったんだね?」
ヴィヴィオが泣きじゃくりながらなのはに飛びついた。
「どうして泣いてるの、ヴィヴィオ?何か悲しいことがあったの?」
「なのは、全然覚えていないの?」
フェイトが問いかけた。
「覚えてるって何を?って、うわっ!私、こんなところでなんて格好してるの!」
自分が白いハイレグ水着を着ているのに驚いて大声を上げてしまった。
「ははは、今頃気づいたんだ、なのは。」
「ユ、ユーノ君!?私、なんでユーノ君の膝の上で寝てたの!?」
「本当に何も憶えていないんだね。洗脳されてて自分の意思じゃないし、仕方ないか。」
ユーノもほっとして笑い出した。
「もう、なんで三人とも笑ってるの?なんでこんな所でこんな姿でいるのか全然分かんないよ・・・。」
「よく似合ってるよ、なのは。最近あまり会ってなかったから気付かなかったけど、スタイルが前よりよくなってるから。」
「なななな、何言ってるの、ユーノ君!?」
「あ〜、ゴホン、エヘン。」
フェイトがあからさまに咳払いをして二人の間に割って入った。
「イチャイチャしたいなら人目の無いところでやってよ。ヴィヴィオの教育上もよろしくありません。」
「あはは、ごめん・・・・。」

フェイトとユーノは今までなのはがやっていた事を掻い摘んで話した。
「う、嘘・・・・。私がはやてちゃんや皆を襲っていたなんて・・・・。皆になんて言って謝ろう・・・。っていうか、こんな被害出しちゃってどうしよう・・・。」
なのはは今後の不安が次々と頭の中に振って湧いてきた。
「心配ないよ。なのはは操られてただけなんだから。私が何とかする。」
「ありがとう、フェイトちゃん。」
「そういえば、なのは。なのはを洗脳したのって誰?私もヴィヴィオから話を聞いたけど、なのはの知っている人だったんでしょ?」
「うん。フェイトちゃんもユーノ君も知っている人。それは・・・・。きゃっ!!」
なのはが最後まで言い終える前に倒れた。空からの魔法攻撃だった。
「誰!?えっ・・・・嘘・・・・。」
なのはを砲撃した人物を見てフェイトは驚愕した。驚きのあまり目を見開いている。それはユーノも同じで、信じられないという表情だった。
「高町なのは・・・使えない小娘ね。やはり面倒でも私が出るべきだったかしら・・・・。」
「あ、なのはママを襲った人!」
空から降りてきた中年の女性は地面に着地した。
「久しぶりね、フェイト。十年ぶりかしら。」
「プレシア母さん・・・。」



十年前の海鳴市の事件の際にアルハザード行きを強行し、なのはらとの激闘の末に虚数空間へと消えた犯罪者プレシア・テスタロッサ。顔つきが少し変わってはいたが、かつての面影を残す美女であった。
「母さん・・・なんで・・・あなたが・・・・。」
「死んだと思っていたのかしら?ふふ。私はこの手でアリシアを蘇らせるまでは死んだりしない。病気だろうと暗殺者だろうとはねのけて生きてきたわ。」
プレシアは苦労を重ねてこれまで生き延びてきた。別の次元に飛ばされ、血を吐くような努力をしてきた。その苦労が顔ににじみ出ている。
「私はハイグレ魔王と出会い、新たな力を手に入れたわ。ハイグレ光線を使って人々をハイグレ人間にし、支配する力。これでミッドチルダをハイグレ人間の支配下にするかわりに、彼らの科学力でアリシアを蘇らせるの。」
プレシアは狂気に満ちた高笑いをした。ハイグレ魔王に協力する見返りがアリシアの蘇生だったのだ。なので、是が非でも邪魔な時空管理局を叩き潰さねばならないのだ。
「フェイト・・・まだ戦える?」
「難しいよ。なのはと戦っていたのでだいぶ魔力を消費しちゃったから。ユーノは?」
「僕も魔法陣を描くのに結構使ったからね。そもそも攻撃魔法を使えないから魔力残ってても役に立たないけどね。」
二人は肩を落とした。なのはをハイグレ魔王の状態から洗脳を解いてもそれ以外に敵が出てくる事までは想定していなかった。なのはを元に戻せばそれで終りだと状況を甘く見ていたのだ。
「フェイトママ・・・ユーノ先生・・・・ヴィヴィオたち、どうなるの?」
「ごめん、ヴィヴィオ。ママたち、もう戦えないの。」
フェイトが力なく言う。悔しそうに唇をかむ。
「出来損ないの娘にしては物分りのいいことね。さて、逃げないように全員にバインドをして、っと。」
ヴィヴィオはそれでも諦めず、まだハイグレ人間になっていないメンバーの元に行った。
「ザフィーラ!!ヴァイス陸曹!!グリフィスさん!!」
必死に呼びかけるが、三人とも気を失ったままで起きない。
「さあて、ハイグレ人間になって今までの罪を懺悔してもらいましょうか。」
「母さん・・・。なんでハイグレ人間なんかの手先に・・・・。」
フェイトは泣いて母親を見たが、プレシアはそのようなことは些事と一生に付して、ハイグレ光線をフェイトとユーノに浴びせた。
「きゃあああああああああああっ!!」
「うわあああああああああああっ!!」
二人は一瞬のうちにハイグレ光線の力でハイグレ人間に作り替えられた。
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
フェイトは黒、ユーノは緑のハイレグ水着を着てポーズを取り始めた。
「なのはママ!!なのはママ!!」
ヴィヴィオは恐怖で震えながら今度はなのはを起こした。
「う、うん・・・・・。」
失神していたなのははヴィヴィオに揺すられて目を覚ました。
「ああっ・・・プレシア・・・さん・・・・!!」
「ようやく目を覚ましたわね。あなたはハイグレ魔王失格。せっかくチャンスをあげたのに失敗してしまった。以前の私なら失敗は許さなかったけど、今の私は違うわ。いいこと?ハイグレ兵になって一からやり直すの。」
「嫌だよ、そんなの・・・。」
なのはは拒絶の意思を示して頭をふった。
「口答えしないで、この小娘!!」
プレシアはなのはの頬を打った。
「ぐうっ・・・・!!」
「なのはママを苛めないで!!」
ヴィヴィオが両手を広げてなのはの前に立った。
「面白いこと考えたわ。フェイト、このオッドアイの子をハイグレ人間にしなさい。この小娘の前で。」
「や、やめて!!」
なのはは立ち上がろうとしたが、バインドの魔法をかけられてその場から動けなくなった。ヴィヴィオはフェイトに持ち上げられて、じたばた暴れている。
「ヴィヴィオ。ハイグレ人間になろう?ね?怖くないから。」
「い、嫌・・・・。フェイトママ、やめて・・・!!」
「ハイグレ人間って気持ちいいし、楽しいんだよ。いい子だから。」
「いやああああああああっ!!」
ヴィヴィオはフェイトの発射したハイグレ銃に当たって両手両足を伸ばして悲鳴をあげた。
「ううっ・・・・・。ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
ヴィヴィオはピンクのハイグレ姿でコマネチを始めた。すごく楽しそうに。
「ヴィ、ヴィヴィオーーーーーーー!!}
なのはの悲痛な叫びが天へと上っていった。
「どう?守りたいものを守れなかった気持ちは?」
「ううっ・・・・・・・。」
なのはは子供のように泣きじゃくるだけだった。
「あなたが十年前は持っていなかった気持ちよ。親だけが持てる特別な感情。」
「ううっ・・・・ヴィヴィオ・・・・・。」
「忘れなさい。ハイグレ人間になれば全て忘れられる。つらいことも悲しいことも全部。私みたいに。」
プレシアは服を脱ぎ捨てて自分もハイグレ姿になって言う。
「だから、あなたももう一度ハイグレ人間にしてあげるの。敵としてではなく、見方として貴方を理解してあげるわ。」
今まで見せたことの無い慈愛に満ちた表情で諭すプレシア。
「さあ、ハイグレ人間になるのよ!!」
プレシアはなのはにハイグレ銃を撃った。なのはは元々ハイグレ姿だったが、悲鳴を上げて抵抗した。
「い、いやああああああああっ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」



月村すずかとアリサ・バニングスはパニックになった群衆と共に海鳴市の中を逃げ惑っていた。
「すずか、なんなのよ、あれ!!訳わかんない!!」
「アリサちゃん、落ち着いて。とにかく逃げよう。」
市内は現在は無法地帯と化していた。どこから現れたのか分からないが、謎の集団が人々を襲いハイグレ人間に変えている。月村家・バニングス家も襲われた。二人は大学に行くために外出していたので難を逃れた形だ。
「士郎さんや美由希さんまでやられちゃうなんて・・・。忍お姉ちゃんと恭也さんはドイツだし・・・。」
「なのは達がいれば・・・。あんな奴らやっつけてくれるのに!」
「無理だよ・・・。三人とも遠いところでお仕事してるんだから。」
二人は詮無いことを言い合いながら街の中を走った。駅でも学校でもスーパーでもそこら中にハイグレ人間がいた。全員コマネチをしてハイグレと叫んでいる。
「きゃっ!!」
すずかが他の人に押されてバランスを崩して転倒。その後ろからパンスト兵がハイグレ銃をすずかに向けた。
「すずか!!」
「誰か助けてえええええ!!」
すずかが大声で叫ぶ。
「スターライトブレイカー!!」
すずか達の大声で叫び声がした。その瞬間、すずかを狙っていたパンスト兵三体は地面にたたき落とされた。
「すずかちゃん!!アリサちゃん!!無事!?」
「「なのは(ちゃん)!!」」
すずかとアリサの前に立っていたのは高町なのはだった。
「私たちもいるよ。」
「二人とも無事みたいで何よりや。」
フェイトとはやても後ろからやってきた。幼なじみ五人が一同に会した。
「助けに来てくれたんだ・・・。よかった〜。」
「私たち運がいいね、アリサちゃん。」
二人は胸をなでおろして無事を喜んだ。
「アリサちゃんもすずかちゃんも本当に運が良かったね。」
「もう少し遅れてたらあのパンスト兵たちに先にハイグレ人間にされてたかもしれないからね。」
アリサとすずかはゾクリとした感覚に襲われた。なのはとフェイトはなんの話をしているんだろう?
「ねえ、なのは、フェイト。アンタたち、何の話をしてるわけ?きゃっ!!」
アリサとすずかははやてによってバインドをかけられた。
「はやて・・・ちゃん?」
「私らが良かったって思うとるんは自分らで親友をハイグレ人間にしてあげられるっちゅうことや。」
なのは、フェイト、はやての三人が服を脱ぎ捨てた。
「あんたたち、ハイグレ人間にされてたの!?」
「今頃気づいても遅いよ。ハイグレ人間になるのが二人の運命なんだよ。」
フェイトが二人の前に立ち、ハイグレ銃を突きつけた。
「いやああああああああっ!!」
「きゃああああああああっ!!」
二人は抵抗する術もなく、ただハイグレ人間にされるのみであった。
「なんて屈辱・・・・!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「信じてたのに・・・!ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
アリサは黄色、すずかは青色のハイレグ水着を着てポーズを取った。
「あはは、親友をこの手でハイグレ人間にしてあげられるなんて最高の気分だね。」
「私たちハイグレ兵の一番の幸福よね、なのは、はやて。・・・・はやて?」
フェイトが横を向くと、はやてが膝をついてうなだれていた。ショックを受けた表情をしている。
「すずかちゃんもアリサちゃんも前より大きゅうなっとる。なのはちゃんもフェイトちゃんも私が揉んでるから成長しとるし・・・・。そういえば、スバルやティアナにも追いつかれそうやし、ギンガは同じくらいやし、このままだと私の立場が・・・・。」
はやては自分だけがバストサイズが向上していないことにショックを受けていた。
「はやてちゃん。ハイグレ人間に胸は関係ないんだよ?」
「そうだよ。ハイグレ人間はそんな俗事を気にしちゃダメ。」
「そ、そうやな・・・。気にせんとこう。ほな、次の仕事に行くで、二人とも!」
はやては本当はまだ気になっていたが、気にしていないふりをして海鳴市のハイグレ化任務に戻った。



「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
機動六課前で地球征服を祝って祝勝会を開いた。
「楽しいね、エリオ君。」
「そうだね、全部ハイグレ魔王様・プレシア様のおかげだよ。」
エリオとキャロは仲良く並んでハイグレポーズをした。
「ねえ、ティア。部屋でハイグレ水着以外の水着を処分してた時にこれを見つけたんだけどさ。」
「ああ、ビキニね。それがどうしたのよ?」
「後で二人でこっそり着てみようよ。ハイグレ水着ばっかりだと飽きるし。」
「まあ、少しなら。ばれなきゃいいいわよね。」
そんな内緒話をしていたスバルは後ろから近づく存在に気がつかなかった。
「ねえ、スバル、ティアナ。」
「「ひいっ!?なのはさん!?」」
二人はなのはに驚いて悲鳴に近い大声を上げてしまった。
「ハイグレ人間がハイグレ水着以外の服装をするなんて許されると思ってるのかな?」
「ああっ、えっと、あの、その・・・・。」
「少し・・・・頭冷やそうか?」










「って、ちょっとちょっとっ!私たち大人の女性の出番がないじゃないの!」
「仕方ないよ、マリエルさん。StrikerSだと私たち、ほとんどアウトサイドの脇役だもの。」
「エイミィさんはいいじゃない。映画に出られたんだから。私なんて絶対にはしょられるキャラよ?」
「クロノ君にハイグレ姿を見せる描写とか欲しかったのに・・・。」
「あたしだって、シグナムと一緒にハイグレポーズをするシーンが欲しかった。このアギト様のハイグレ姿をな!」
「いいわ、ここで三人でやりましょう。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
「「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!」」
MKD
2010年02月12日(金) 21時18分44秒 公開
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