戦いの日々とハイグレの日々

「ハア・・ハア・・・・。」
私は夜の街を走っている。理由は簡単・・・
『逃げても無駄だ。』
ハイグレ人間に追われているっていえば納得してくれるよね?
しばらく走っていると、私はT字路に差し掛かった。
「えっと・・・右ね!」
私が曲がった先にはハイグレ人間が光線銃を構えていた。
「そんな!?」
私は光線銃で撃たれ、一瞬で赤いハイレグ水着姿になった。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私はハイグレ魔王様のために忠誠のポーズをとった。
そう、ハイグレ人間になったのだ。






「ハア・・・シュミレーション終了だ。」
『ビービービー、シュミレーション終了、シュミレーション終了。』
広い部屋に響く機械音と共に私は私服姿に戻った。
「ハイグレッ!はい・・・ぐれ・・・あれ?」
呆気にとられている私のもとに一人の男性が近づいてきた。
「何をやっているんだお前は。」
「・・・・い、今のはケアレスミスです。」
「ほう?曲がる先に誰かいるか確認せず突っ走るのがケアレスミスだと?」
うっ・・・痛いところを突かれた。
「でも確認なんてしてたらハイグレ人間に追いつかれちゃいますよ。」
「だ・か・ら、お前は駄目なんだ。」
「だって・・・・。」
男性はため息をつく。
「だってじゃない!お前がどうしてもって言うから上のランクの奴が使うはずのシュミレーションシステムを借りてやったのに今のミスは何だ!!」
「ひっ!・・・ごめんなさい・・・・。」
「やれやれ、お前は子供たちの世話でもしてくれれば助かるんだがな。」
「それは嫌です!私は戦わなくちゃいけないんです。」
男性は首を横に振る。
「美優、そろそろあきらめてくれないか?」
「嫌です!」
私と男性が言い合っていると、白衣を着た男性が来た。
『光輝さん、ランクUの方々がシュミレーションシステムを使うので、世界観のセッティングをしてほしいのですが。』
「了解した。・・・美優、これはお前の為でもあるんだ。」
二人は部屋から出て行った。
「私はどうしても譲れないことがあるの・・・・。」
名乗り遅れたけど、私の名前は『美優』ロングヘアで黒髪です。え?シュミレーションとか何の話だって?説明すると長いんだけど聞く?・・・聞きたくない!?ダメ、ここまで話したんだから聞いてもらう。三ヶ月くらい前だったかな・・・・



高校二年生の私はいつものように朝、ベッドで目を覚ました。
そこに一人の少女が来た。
「お姉ちゃん、朝ご飯できてるよ。」
「あ、ごめん。」
私の部屋に入ってきた少女は私の妹の『留美』中学二年生。
「お姉ちゃん、今日は部活の朝練じゃなかった?」
「部活?・・・・・・・・・あぁーーーーーーーー!!」
いつものように部活の朝練を忘れる朝。

「何か言い訳はあるか?」
私は顧問の中田先生に正座をさせられている。しかもグラウンドで。
「はい、あります。」
「言ってみろ。」
「時計が壊れてました。」
私はグラウンド二十周させられました。

「ふぅ、疲れたよぉ。」
私は走り終えた後、木陰で休んでいた。もうほとんどの生徒は校舎内に入っているだろう。
「さてと、私もそろそろ教室に行こう。」
私は立ち上がったが何か見える。

1ハイレグ水着を着てコマネチのような動作をしている中田先生
2おもちゃのような銃を持っているハイレグ水着を着ている人
3パンスト?を被っている痛い人。それになんか乗ってる

「全ておかしいと思う。」
あ、学校に来た生徒が中田先生の見てはいけない姿を見て固まっている。
『きゃあああ!』
「え!?撃ったよね?先生が生徒を銃で撃った・・・・。」
『ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!』
着ている服がハイレグ水着に変わった!?
それに・・・・・撃たれた生徒が中田先生と一緒にコマネチをしてる・・・・
「美優、どうしたの?」
私に少女が近づいてきた。私の親友『花梨』ちゃん。
「中田先生がかなり重症で・・・・。」
「また朝練遅刻して怒られたんでしょ。だからって中田先生のことを悪く言ったらだめだよ。」
「あれを見ても?」
「・・・・・・・・・・。」
男なのに女物の水着を着ている中田先生を見て花梨ちゃんは動きが止まった。
「ごめん、美優が正しいね。」
「わかってくれてよかった。それにしても何かの学校行事とは考えにくいよね。」
「この状況で学校行事かもしれないと思える美優は大物だね。」
あれ?何かバカにされたような・・・
「それよりほかの先生を呼んでこようよ。」
「そうだね・・・って、中田先生がこっちに近づいてくるよ。」
「ごめん、私は今日早退ね。」
花梨ちゃんが学校の外へ走り出す。
「待て、お前たち!ハイグレ人間になれ!!」
気づいたら私も全力で走りだしていた。

やっとの思いで中田先生から逃げ切った私と花梨ちゃん。
「美優、何があったの?」
「私が聞きたいくらい。」
只今私たちは公園で待機中。
『ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!』
『ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!』
「美優、水着を着ている人がたくさんいるように見えるのは私が疲れているからよね?」
「だったら私も疲れているみたいね。」
「「・・・・・・・。」」
『あの子たちハイグレ人間じゃないわよ!』
私と花梨ちゃんはそれぞれ自宅に向かって走り出した。

「・・・・ただいま。」
「ハイグレッ♪ハイグレッ♪あら?美優、学校は?」
夢であってほしい。私のお母さんが年も気にせずハイレグ水着姿でコマネチをしている。しかも色がピンクっていう・・・
「いってきます。」
私は回れ右をして外に出ようとする。
「美優、ハイグレになってないのね?」
「・・・・・・・私はハイグレです。」
苦し紛れに出た言葉がこれだった。
「じゃあ服を脱ぎなさい。」
「私はうそをつきましたーーーー!!」
私のお母さんまで重症だった。
もう頼りになるのは花梨ちゃんしかいない。

『ピンポーン』花梨ちゃんの家のインターホンを押した。
「はい、どちら様?・・・美優。」
花梨ちゃんが出てきてくれた。
青いハイレグ水着姿で・・・・・
「花梨ちゃん?」
「ハイグレッ♪どうして美優はハイグレ人間じゃないの?ハイグレッ♪」
花梨ちゃんも楽しそうにコマネチをしている。
「急用を思い出したから。」
「美優もハイグレ人間にしてあげるよ。」
今日私は五回も走った。

とうとう逃げ場がなくなった私は街外れに来ていた。
「あ〜あ、皆に何があったんだろ・・・・。」
「お姉ちゃん?」
私は留美と感動の再会をした。
「留美〜〜〜!」
『人間がいるわよ!』
再会時間五秒。
「逃げるよ、留美。」
「うん。」
私と留美は走り出す。

「きゃっ!」
私は転んでしまった。
「お姉ちゃん!」
私はハイレグ水着を着ている人に銃を向けられて・・・
「嫌っ!」



・・・・・・撃たれてない?



「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「留美!!」
私が見たのは水色のハイレグ水着姿で苦しそうにコマネチをしている留美だった。
「に・・げて・・・・ハイグレッ!」
「・・・・・・・私の妹に何するのよ!!」
私はハイレグ水着を着ている人に向かっていく。
「バカか!!」
私は男性に突き飛ばされた。
「誰よあんた。」
「いいから行くぞ!」
私は半ば強引に手を引っ張られていった。

「あんた何者よ!」
「話すのだるいんだよ。」
なんて奴。
「留美を見捨てるなんて。」
「ハイグレ人間になったらもう敵だ。」
「ハイグレ人間?」
「もう説明とかだるいっての!」
走ること五分、私たちは変な研究所とでもいうのだろうか。そんな所に着いた。
「博士!まだ生き残りがいたぞ!」
「ほう、そうか。」
ん?どう見ても白髪のおじさんだよね?
「うむ、名はなんと申す?」
「・・・・美優。おじさん、今何が起きてるの?」
「おい、お前、博士に失礼だぞ。」
「構わんよ。美優殿、今地球のほとんどがハイグレ魔王支配下に置かれておる。」
支離滅裂だね。
「何言っているんですか?昨日まで何もなかったのに。」
「まぁ三日で地球のほとんどを制圧されたからの。」
「からかっているんですか?」
「そう思うかね?」
私は少し考える。
「皆の変わり様を見たら信じるしかないよね・・・・。」
「だったら、行ってこい!」
「何処によ!!」
私は最近の科学が発達し過ぎていると思う。目の前に変な装置がある。
「これで行くんじゃ。」
「だから何処によ!!」
「いいから行け!」
私は変な装置の中に入れられた。
「ちょっと、意味が分からないわよ!」
「・・・・また、会えるといいな・・・・。」
「え?」
私はその後のことを覚えていない。気がついた時には・・・
「まだ無事だった人間がいたのか。」
光輝さんと出会っていた。



ここはかなり広い建物・・・建物とも言えないくらい広い。
ハイグレ魔王に支配された世界の他にある、この建物以外何もないような所。あの変な機械でここに来れるらしい。非現実的だと思うけど、ハイグレ魔王がいるんだからこれぐらいはあってもおかしくない。
ここにいる人は皆ハイグレ人間にならず、生き残った?人たちだ。
かなりの人数がいるらしい。あの博士の所以外にも研究所はあるらしい、だから無事な人も多い。
そして、シュミレーションのことだけど、子供には勉強をさせ、女性や老人は子供の世話、若者の半分はハイグレ魔王と戦うための武器などの研究。
もう半分は実際に戦う者たち。
そして私は子供の世話をするはずだったのだが、妹を助けたい、その一心で戦う方に入れた。
つまり、シュミレーションというのはハイグレ魔王と戦うことができるかを試す特訓のようなもの。詳しくは後で。
実力を認められたものは偵察に行ったらしい。
まぁ、ランクTの人しか行けないだろう。
ランクというのはT〜Xまであって、数が少ないほど実力があり、数が多いほど弱い。私は・・・・Wに近いXだよ。

私たちは普通の生活は送れている。
この北海道なみにでかい建物はどうやって作ったんだろう。
あんまりそういうところを突っ込むのはやめておこう。
「おう、美優。」
「あ、光輝さん。」
紹介が遅れたがこの茶髪のチャラそうな男は『光輝』かなり機械に詳しく、シュミレーションシステムの管理をしている。
「あの、光輝さん。」
「シュミレーションはやらせねぇぞ。」
考えが読まれていた。
「でも・・・・。」
「悪いけど、ランクTのメンバーがシュミレーションをするんだ。」
そこに、私と同い年くらいの少女が来た。
ランクTの『杏奈』さん。青髪でとっても可愛いが・・・
「あら、光輝さんとXじゃない。」
私のことを悪く思っているという欠点がある。
「私ランクはXだけど、美優って名前があります。」
「どうでもいいわ。光輝さん、シュミレーションを行うので実践室に来てくれますか?」
「いいですよ。」
「じゃあ先に行って待ってます。」
杏奈さんは去っていった。
「光輝さん、ランクTのメンバーが終わってからならシュミレーションをしてもいいですか?」
「・・・・やれやれ、だったらランクTの実力を実際に見るんだな。」
光輝さんは実践室へ歩き出す。当然私もついて行く。

実践室に入った、私と光輝さん。
「何でXがいるのよ。」
杏奈さんは嫌な目で私を見てくる。
「いや、美優にはランクTの実力ってものを知ってもらう必要があると思ってな。」
「それはそうですわね。ランクXのくせに出しゃばられると頭にきますからね。」
すごく悔しいけど、何も言い返せない。
「さぁ、杏奈さん、シュミレーションを開始する。」
「はい、いつでも。」
今だから説明します。
シュミレーションとは人間の意識を飛ばし、ハイグレ人間たちと戦わせる。
つまり実感型ゲーム的、痛みも感じるからね。
でも、シュミレーションでした動きなどは体に染み付くから効果はある。
体験者の進行状況はモニターで見れる。
だからハイグレ人間にされると光輝さんにハイレグ水着姿が見られてしまう。
私はもう十回近く見られた。恥ずかしいけど、仕方のないこと。
「始まったぞ、美優、しっかり観とけよ。」
私はモニターに目を向ける。
杏奈さんの動きには全然無駄がない。
「よし、エリア突破、クリアだ。」
あっという間に私がハイグレ人間にされたエリアをクリアした。
「どうかしら?少しは格の違いってものを知った?」
「・・・・わ、私だって。」
張り合おうとする私に光輝が・・・
「やめておけ、美優と杏奈さんはレベルが違いすぎる。」
どうしてだろう・・・特訓をしても杏奈さんに追いつけない。
「そうね、美優だっけ?あんたの実力を見てあげるわ。」
「え!?」
「できるでしょ?私と同い年なんだから。」
上から目線で私を見てくる杏奈さん。
「杏奈さん、美優は一回もクリアしたことがないんだから。」
「そうですよね、ランクXですものねぇ。」
「・・・・・やってやろうじゃない。」
「おい美優。」
「光輝さん、シュミレーションを行ないます。」
私だってやればできるはず。
「美優、ハイレグ水着姿をランクTのメンバーに見られていいのか?」
「いいです、クリアしますから。」
「・・・・シュミレーションを開始する。」
本日二回目の私の挑戦が始まる。



「うーん、朝?」
留美は朝、起きました。
「ハイグレッ!留美、学校よ早く起きなさい。」
ピンクのハイレグ水着姿のお母さんが留美を起こしに来ました。
「あ、お母さん、ハイグレッ。」
留美はお母さんに挨拶をした。え?おはようじゃないのって?挨拶はどんな時でもハイグレッ!だよ。
「もう朝の八時になるわよ。」
「え!?大変!」
留美は急いで準備をします。ハイグレ魔王様のために戦う立派な戦士を目指して勉強をするから。
「留美、朝ごはんはしっかり食べなさいよ。」
「わかってるよお母さん、ハイグレッ!」
「留美は偉いわ。美優は何処をふらついてるのかしら。」
「お母さん、お姉ちゃんは留美がハイグレにしてあげるから。」
そう、お姉ちゃんもハイグレ魔王様の僕にしてあげなくちゃ。
「そのためにも今は勉強をしなさい。」
「ハイグレッ!勉強も必要だけど、ハイグレ魔王様のために戦うなら強くもならなくちゃ。」
「そうね、留美の夢はハイグレ魔王様に忠実な戦士よね?」
「うん、留美、頑張るね。」
留美は朝食を済ませて、学校へ向かう。
「あ、留美ちゃん。」
登校中、留美は花梨お姉さんに会いました。青いハイレグ姿で揺れるお胸が素敵です。
「花梨お姉さん、ハイグレッ!」
「ハイグレッ!留美ちゃん、美優は見つかった?」
「帰ってこないんです。三ヶ月も何処に・・・・。」
「そう・・・早く美優もハイグレ人間になるといいね。」
「そうですけど、お姉ちゃんは留美がハイグレにしたいんです。」
留美がハイグレ人間になった時に決めたことですから。
「いい目標ね、頑張って。」
「ハイグレッ!!花梨お姉さんも頑張ってください。」
「ハイグレッ!いついかなる時もハイグレ魔王様のために!」
留美は花梨お姉さんと別れ学校へ。

クラスに入った留美のもとに友達の『美咲』が来ました。黄色のハイレグ姿で可愛い。
「留美、ハイグレッ!」
「ハイグレッ!美咲。」
「留美、今日も頑張ろうね。」
「そうだね、強くならなくちゃね。」
ハイグレ魔王様が地球を侵略成功してから学校には一日二時間体を鍛えてる、体育となっている。ハイグレ魔王様の立派な戦士になるためです。
「る、留美ちゃん・・・。」
留美のもとに来た少年は『亮』君、オレンジのハイレグ姿で優しい子。
「あ、亮君、ハイグレッ!」
「は、ハイグレッ。」
「どうしたの?調子でも悪いの?」
「あの・・・さ、今日の放課後、話があるんだけど。」
留美に話ってなんだろ?
「いいよ、放課後ね。」
「う、うん!」
亮君は慌てて教室から出て行った。
「留美、そろそろ授業が始まるよ。」
「そうだね。」
留美たちが席に着くと、担任の先生『島崎』先生が教室に入ってきた。紫のハイレグ姿、あの足の長さは本当に羨ましいな。
そして、授業が始まり、あっという間に二時間目。
「留美、次は体育よ。」
「よーし、頑張ろう。」
留美は体育館に向かった。

「はい、今日は光線銃を使います。」
今日は光線銃の練習か・・・・
「では、練習を始めます。的を狙って撃ってください。」
「「「ハイグレッ!」」」
留美はなかなか的に当てられない。
「うーん・・・難しいな。」
「留美、どうしたの?」
美咲が留美の所に来た。
「光線銃って扱いが難しくて。」
「だめじゃない、光線銃の扱いは常識だよ。」
「コツとかないの?」
「私がやってみるね。」
美咲は簡単に的を撃ちぬく。
「あら、美咲ちゃん上手ね。」
「ハイグレッ!先生、ありがとうございます。ハイグレッ!」
「美咲は光線銃の扱いが上手・・・・。」
留美はどうしても光線銃を使うのが苦手。
あっという間に体育の授業は終わった。

ハイグレ魔王様のために勉強をしていると時間なんて早い。放課後になった。
「美咲、ハイグレッ!」
「ハイグレッ!また明日ね。」
留美は亮君に呼ばれ屋上へ。
「留美ちゃん、俺・・・俺さ・・・。」
「緊張してるの?」
「大丈夫。・・・俺とデートを・・・・。」
デート!?
「どうかな?留美ちゃん。」
「ハイグレッ♪ハイグレッ♪喜んで。」
亮君だったら嬉しいくらい。
「やった、ハイグレッ!」
「なんか亮君のハイグレも可愛いね。」
「か、可愛い!?・・・ハイグレッ!ハイグレッ!」
一段と気合の入ったハイグレを見せる亮君、かっこいいなぁ・・・
「じゃあ明日でどう?」
「ハイグレッ♪ハイグレッ♪いいよ。」
「ハイグレッ!また明日。」
亮君は帰っていった。
「留美も帰ろっと。」
留美も学校を出た。

帰り道・・・商店街の方が騒がしい。
「なんだろ?」
大勢の人が集まっている。
「あれは・・・お母さん。」
留美はお母さんに駆け寄った。
「ハイグレッ!留美。」
「ハイグレッ!お母さん、何してるの?」
「それがね、あれを見て。」
お母さんが指をさす先には携帯電話のような物が落ちてる。
「あれがどうかしたの?」
「さっき誰かが落としていったみたい。それでね、人間の物みたい。」
「人間が潜り込んでるの!?」
「そうみたい、それでパンスト兵様たちがこの辺一帯を調査しているのよ。」
人間が・・・お姉ちゃんに関係があるのかな?
「でも、許せないね。ハイグレ人間のふりをするなんて。」
「そうね、人間は洋服なんて物を着ているなんて恥ずかしくないのかしら。」
ハイレグこそが正装よね。でも・・・これはチャンスかも。
「お母さん、留美は先に帰ってるね。」
「ハイグレッ!気をつけなさいよ。」
「ハイグレッ!わかってまーす。」
留美はこれからやるべきことがあります。
人間を捕まえれば夢に一歩前進です。



「ここは三階に隠れた方がいいわよね。」
私の今挑戦中のエリアは私の通う学校のシュミレーション。
「美優・・・まだ未熟なのに無理しやがって。」
「本当ですよね光輝さん。ランクXだということを自覚してほしいわ。」
杏奈さんは嫌味風に光輝さんに話しかける。
「何だ?杏奈さん、俺に言いたい事でもあるのか?」
「知っているんですよ、あなたがランクXのあの子だけ特別扱いしていること。」
「何の話だ。」
「あら?しらばっくれるのかしら?空き時間があればあの子にシュミレーションシステムを使わせているじゃない。」
「・・・・・空き時間なんだから構わないだろ。」
「いいえ光輝さん、私はもっと強くなりたいのです。これから空き時間は私のために使ってくれませんかぁ?」
杏奈さんはとっても愛らしい顔で光輝さんに迫る。
「それはできない。」
「ランクTの私の方がシュミレーションシステムをフルに発揮できると思うのですが。」
「美優は妹のために頑張っているんだ。」
「いいんですか?個人的な意見でシュミレーションシステムを使わせて。」
「・・・・・・・・・美優は成長するはず。」

私は学校エリアの三階の教室に身を潜める。
「ここなら時間は稼げる。」
『こんな所にいたのね。』
「見つかった!?どうして!?」
『動きがぎこちないわねぇ。』
「きゃああああ!!」
私は光線銃で撃たれ、赤いハイグレ水着姿にされた。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私はハイグレ人間になった。ハイグレ魔王様の僕になれた。

「シュミレーションをしゅうりょ・・・。」
光輝さんがシュミレーションを終了させようとするが、杏奈さんに腕を押さえられ、終了できなくする。
「杏奈さん、何の真似だ。」
「うふふ、光輝さん、ランクTのメンバーにあの子の無様な姿を見てもらいましょう?」
「ふざけるな、美優の気持ちを考えろ。」
光輝さんは杏奈さんに押さえられている腕を動かそうとする。
「あの子にはそれぐらい恥ずかしい目に合わないとわかりませんから。ほら、皆、光輝さんの腕を押さえて。」
ランクTのメンバーが光輝さんの腕を押さえる。
「おい、お前ら、いい加減にしないとシュミレーションシステムの使用を制限するぞ。」
「だったら私たちも光輝さんがあの子を特別扱いをしていることを上の方に言います。」
「・・・・・くっ。」
「ハイグレッ♪ハイグレッ♪あはは♪ハイグレって気持ちいいな♪」
私はハイグレを笑顔で繰り返している。
「光輝さん、もし空き時間を私のために使ってくれるならシュミレーションを終了させますけど?」
杏奈さんは光輝さんに提案をする。
「・・・・・・わかった。」
「シュミレーション終了。」
『ビービービー、シュミレーション終了、シュミレーション終了。』
機械音が部屋に響く。そして私も私服姿に戻る。
「ハイグレッ♪ハイグレッ♪はい・・・・あ・・・私・・・・。」
「これでわかったかしら、所詮ランクX、私たちとは格が違うのよ。」
ランクTのメンバーは私に冷たい視線を浴びせて去っていった。
「・・・・光輝さん。」
「もういい、美優は戦闘メンバーから外れろ。」
「嫌です!今日も空き時間練習します。」
「これから空き時間は杏奈さんが使う。」
光輝さんは私の顔を見ようとしない。
「え!?どうして・・・・。」
「・・・・ランクTが優先されるのは仕方ないことなんだ。」
「・・・・・・光輝さんのバカ!!」
私は実践室から出て行った。
「・・・・・・美優。」

「やっぱり私に留美を助けるなんて無理なのかな・・・・・。」
落ち込んでいる私のもとに黒髪の男性が来た。私より三歳くらい年上だろう。
「やぁ、美優ちゃん。」
「誰ですか?」
「ランクTの『翔』さ。」
そういえばさっき実践室にいたような・・・
「それで、ランクTの方が何の用ですか?バカにしたければすればいいじゃないですか。」
「君のハイレグ姿、とても可愛かった。」
「変態!!!」
心の底からそう思った。
「それで、君は僕のパートナーになってほしい。」
「じょ、冗談じゃありません。」
パートナーというのは戦闘役の人に連絡などのサポートをする人。
「だって君はこんなに可愛いんだから戦うのでなく、僕のために動いた方がいいじゃないか。」
すごくムカつく。
「とにかく嫌です。」
「シュミレーションシステムも使えなくなったのにこれから何をするんだい?」
「・・・・・・・・。」
「だったら僕と勝負をしようじゃないか。」
「勝負?」
「一騎打ちのシュミレーションで。」
シュミレーションは普通一人でしかできないが一騎打ちシステムは二人でできる。お互いが光線銃を持ち、先に光線にあたった方の負け。このトレーニングはランクU以上でないと使えない。
「もし君が勝ったら僕のシュミレーションシステム使用時間を君にあげよう。」
「え!?」
これって千載一遇のチャンス。
「そのかわり、僕が勝ったら君こと美優ちゃんは僕の物になる。」
「変たーーーーーーい!!」
今度は寒気までした。
「どうだい?ここで逃げたら美優ちゃんは二度とシュミレーションができなくなるよ。」
「・・・・・・・いいわよ、絶対に勝つから。」
「これで君は僕の物だ。」
「・・・・・・この人、いつか捕まるんじゃない?」
とにかく、何が何でも負けられない。
「では、勝負の日はどうします?」
「今すぐでもいいわ。」
「それは駄目ですよ!!」
私のもとに少女が走ってきた。私より一歳年下の『華奈』この子、ランクWなんだよね・・・
「華奈、どうしてだめなの?」
「今の美優先輩では勝敗は目に見えてます。少し時間が必要です。」
「・・・・何も言い返せない。」
ランクXの私ではランクTに勝てないのは当然だろう。
「了解、わかったよ、勝負は美優ちゃんが都合のいい日にしよう。」
へんた・・・翔さんは去っていった。
「まったく、美優先輩は何を考えてるんですか?」
「でもさ、変態・・・翔さんが。」
「相手の挑発に乗ってる時点で駄目なんです。」
私の方が年上とは思えない。
「それじゃあ行きますよ。」
「えっと・・・何処に?」
「トレーニングルームです。」
トレーニングルームとは腕力や脚力を鍛える実践室とは違った場所。

「はい、美優先輩、まずは腹筋百回。」
「あの・・・足を鍛えるべきじゃ?」
「五秒以内に始めないと倍にしますよ。」
私は腹筋百回やるはめに・・・
「次は背筋百回で、その次は腕立て伏せ百回。」
「勘弁して・・・。」
「そんなに二百回にしてほしいんですか?」
無駄に筋肉をつけてもスピードが落ちるだけでは・・・?
「はい、準備運動終了。」
「・・・今のが準備運動?」
「問題ありますか?ランクTに勝つにはこれくらい余裕でできてもらわなくては。」
私の常識が通じる世界ではなさそう。

私はかなりハードな特訓をした。
「最後は水泳です。」
「・・・初日だし、見逃してくれない?」
「そうですか、まだまだ特訓がしたいのですか・・・。」
顎に手を当て、困る華奈。
「って、待ってよ、誰も特訓がやりたいなんて言ってないよ。」
「特訓のし過はかえってマイナスになります。今日は水泳をしたら終わりです。」
「待って、話を聞いて。」
「特訓が終わった後に聞きます。」
それって意味ないよ。
「はいはい、行きますよ。」
私は強制的に女子更衣室に連れて行かれた。
「さぁ、服を脱いでください。」
「ねぇ華奈。」
「・・・何ですか?」
「今、ハイレグ水着を持ってなかった?」
華奈は間違いなくハイレグ水着を私に着させようとしてるな・・・後ろに隠しているのが見えた。
「しし失礼ですね、私はいつでも美優先輩の味方ですよ。」
「ふーん・・・じゃあ、後ろ向いて。」
「・・・こうなったら実力行使です!!」
華奈が私に飛びかかってきた!?
「嫌ああぁぁぁぁぁ!!」



「何処にいるんでしょう・・・。」
留美はハイグレ人間になりすましている人間を探しています。そう簡単に見つからないとは分かっているのですが・・・
「留美ちゃん。」
島崎先生が留美に声を掛けてきました。
「あっ、島崎先生。ハイグレッ!」
「ハイグレッ!どうかしたの?何か様子が変よ?」
「えっと、人間が紛れ込んでるとの話を聞いたもので。」
「え!?人間!?ハイグレを拒む、あの人間?」
島崎先生は授業でもよく言っていた。ハイグレの快感を理解しようとしない人間はそれだけでも犯罪並みだって。留美もそう思うけど、その中にお姉ちゃんがいるってことだけが気掛かり。
「そうです、愚かな生き物の人間です。」
「・・・・・警察は動いてるのかしら。」
「動いているらしいです。」
さっきから警察官をよく見かけるから間違いないはず。
「それなら平気ね。留美ちゃんも気をつけなさい。」
「ハイグレッ!それでは。」
留美の捜索は無駄でしょうか?確かに街中を当てもなしに探すのは無謀でしょう。
つい街外れまで来ちゃった。
「・・・あれ、何だろう。」
留美は研究所のような建物が気になりました。
「行ってみようかな。」
留美は研究所の前に着いた。
「中から声が聞こえる。」
「直にこの研究所も見つかる。」
「博士、研究所を捨てるんですか?」
留美は気づきました。この中にいるのは人間。それに、もうすぐここから脱出する、だとしたら逃がす訳にはいきません。
「突撃!!」
留美は研究所の中に正面から突っ込んでいきます。
「げっ、博士、ハイグレ人間だぜ。」
「落ち着くのじゃ。」
やっぱり人間。なんて酷い格好。
「ハイグレッ!人間なんて存在価値がありません。二人とも素敵なハイグレ人間にしてあげます。ハイグレッ!ハイグレッ!」
「博士・・・どうする?相手は一人で女だぜ、なんとかなるんじゃないか?」
「お主はここの機械を壊して脱出するんじゃ。」
「おいおい、相手は女だって。それに博士をおいて行くなんてできないぜ。」
「ここの機械を壊さねば悪用されかねん。お主には大事な仕事を任せるのじゃ。」
何か相談している二人の人間。
「ハイグレッ!とにかくここで終わらせます。」
留美は光線銃を取り出す。扱いには慣れてないけど、きっと平気。
「博士・・・。」
「頼んだぞ。」
「あぁ。」
男の子の方が奥に走っていく。
「逃がしません。」
留美は男の子を狙って光線銃を撃ちました。
「あぶねぇ!」
「かわされましたか・・・。」
「ハイグレ人間よ、お主の相手はわしじゃ。」
博士と呼ばれていたおじさんが留美の前に立ちはだかりました。
「邪魔ですよ。」
「お主はハイグレ魔王に操られとるだけじゃ。」
「・・・今、なんて言いました?」
「お主は洗脳されている、ハイグレ魔王さえ倒せばもとに戻れる。」
「・・・・・・・許せません。ハイグレ魔王様に洗脳?留美はハイグレになれて幸せなのです。人間になんてもう戻りたくありません。」
ただでさえ酷い物を着ているというのに、よりにもよってハイグレ魔王様を侮辱するなんて・・・
「やはりハイグレ人間になってしまった者には何を言っても無駄か。」
「ハイグレッ!留美は本気で怒っちゃいました。」
留美は光線銃を乱射しました。
「くっ・・・。」
人間は壁際に隠れましたか・・・さっさとハイグレになればいいのに。
「ハイグレッ!どうしたんですか?隠れていては何もなりませんよ。」
「・・・・・そろそろ機械は全て壊し終えたじゃろう。」
「壁際に隠れたまま動かないなんて、運動不足ですか?ハイグレッ♪」
留美は壁際に隠れていた人間を追い詰めました。
「・・・・あいつはきっとやってくれるじゃろう。」
「ハイグレッ!これからはハイグレ魔王様のために生きるのです。いいですね?」
「ぐわああぁぁぁ。」

「博士・・・・・・俺がしっかりしないとな。」

「ハイグレッ!それでは、警察にこの研究所の報告をお願いします。」
「ハイグレッ!了解です。」
留美はやりました。人間をハイグレにしました。早くお姉ちゃんもハイグレ人間にしたいです。



「美優先ぱーい!特訓は終わってませんよぉ!」
「・・・・・・行ったかな?」
私は華奈を振り切り、ハイレグ水着を着させられるのは免れた。
「さてと、この後はどうしようかな・・・。」
部屋で休むってのもいいんだけど・・・
「シュミレーションシステムを早く使いたいな。」
私は所長室の前で足を止めた。え?所長って誰って?この建物を仕切ってる人、美人だけど怖いんだよね。年は三十位?
「あれ?中で誰かと話してるみたい。」
私は扉に耳をあてる。
「光輝、話とは何だ?」
(光輝さんが所長と話してるの?)
「美優と翔がシュミレーション勝負をするというのは・・・。」
「そういえばやるって言ってたわね。それに何か問題が?」
「何でランクTの翔がランクXの美優と勝負をするんですか?」
「そんなのどうでもいいじゃない、そのランクTの子の使用時間なら文句言う必要ある?」
「不自然だって言ってるんです!何か賭けごとでもしてるんじゃないかとか。」
うわ・・・光輝さんが言ってること当たってるし。
「賭けごとか・・・保障は?」
「ありません。でも、今回の試合は認め難いです。」
「確かに賭けごとにシュミレーションシステムを使わせる訳にはいかないな。」
「どうせ美優のことだから、シュミレーションシステムの使用時間を手に入れるためにこんなことを・・・。」
『グサッ』私に何かが刺さったような・・・
「話はわかった。だが、光輝、お前はどうして美優という奴に肩入れをしている。」
「どうして急にそんなことを?」
「失礼ながら私が話をさせてもらいました。」
部屋の奥から杏奈さんが出てきたようだ。
「言わないっていう話だったろ。」
「所長に変な交渉をしたからです。」
「変ってなんだ!今回の件はあまりにも実力差がありすぎるから・・・。」
「そこまでだ。光輝、次こんなことがあったら覚悟しておけ。」
「・・・・・・・。」
「さて、シュミレーションをしたいので実践室まで来てくれますか?」
「・・・・・・・・。」
やばい、部屋から二人が出てくる。どこかに隠れないと・・・
私はきっと見つからないと、隣の部屋に逃げ込んだ。
「・・・・杏奈さん、今回の美優と翔の試合の件を君は望んでないか?」
「あら、言いがかりをつけるんですか?」
「言いがかりじゃない、本当のことだ。」
「また所長に怒られますよ?」
「言いたかったら言えばいい。そうしたら君の練習時間が減るよ。」
「・・・・・・とにかく、その試合については何も知りません。」
光輝さんはどうして私がシュミレーションシステムを使うのを拒むんだろう?
「・・・ハア、わかった。」
二人は実践室に向かってったようだ。
「とにかく、今日はもう遅いし、ランクXのメンバーと合流しよっと。」
基本的に部屋はランクごと、性別ごとに分かれる。私はランクXの女子と同じ部屋。まぁ当然なんだけど・・・

「今帰りました。」
「おっ帰り〜美優。」
部屋に戻った私を迎えてくれたのはとにかく元気な少女『里央』なんていうか、第一印象は赤髪のショートヘアというド派手さ・・・かな?
「もうすぐ夕食だっていうのに今日も光輝さんにアピールをしてたの?」
「・・・里央、光輝さんはね、最っっっっっ低な男だから!!」
「美優?怒ってるの?」
別に里央に怒ってるわけじゃないのに気まずそうにしてる・・・
「あ、ち、違うの、里央に怒ってなんていないからね。」
「そう?・・・よかった。」
「何があったんだ?」
次に私に近づいてきた少女は男っぽい喋り方の『純玲』同い年、見た目はちっちゃくて可愛いんだけどね。
「純玲ちゃん、何でもないよ。」
「なっ!ちゃんを付けるなっていっただろ!」
「本当に美優さんは元気ですね。」
最後に私に近づいてきたのは見た目も性格もおっとりしている『涼香』こういう子のハイレグ姿は興味があるけど、おしとやかなイメージは壊れてしまう。
っと、この三人が私と同じのランクX。皆個性的、でも私と三人の違うところは・・・
「さーてと、美優も帰ってきたことだし、夕飯までなんかしようぜ。」
「トランプならあるよ〜。」
「それなら時間が潰せそうですね。」
そう、この三人は戦う気なんてない。一応戦闘メンバーということにはなってる。そうすれば楽だからって。
「ちょっと皆、たまには特訓でもしたら?」
「美優、何言ってんだ?ランクXの俺たちが特訓したって無駄だぜ?」
「そうそう、気楽にいこ〜よ〜。」
「そうですよ、焦っても仕方ありません。」
駄目だ・・・この三人に何を言っても・・・
「そんじゃあ何すっか。」
「七並べなんてどう?」
「いいですね。」
「三人とも、特訓を・・・。」
「・・・だったら七並べで美優が勝ったら特訓をしてやるよ。」
「いいわよ、受けて立つわよ。」
これでも七並べは得意・・・得意っていうのかな?
「それじゃ、美優が負けたらどうすっかな。」
「そうですね・・・明日一日ハイレグ姿で過ごしてもらうというのは?」
「お〜それいいね〜。」
「え!?」
ちょっと待って、ハイリスクもいいところだよ・・・
「その勝負中止!」
「ほい、美優のカード。」
私にトランプが渡された。え〜っと、七はあるかな?・・・・って
「違ーーーーーう!」
「どうした?七がなかったのか?」
「賭けるものに差がありすぎるって。」
「・・・大差ないと思うけど。」
「そう思える君たちは大物だよ。」
「よし、七は四枚出たな。それじゃあ始めようぜ。」
出た・・・人の話は聞かないで勝手に流れを進めるっていう古典的なパターン。
「とにかく、私はこんな勝負は受けません。」
私は部屋から出ようとする。
「美優先輩、戦う相手に背中を見せるとはいけませんよ。」
「なんで華奈がいるのよ!」
私の行く手を阻む華奈。
「大切な物を賭け合う先輩達・・・なんて素晴らしいんでしょう。」
「・・・もしかして華奈が里央達にハイレグを・・・・。」
「さぁ、先輩、美しく負けて、美しいハイレグ姿に。」
「私が勝ったらもうあきらめてよ。」
「当然です。」
私はトランプを見る・・・
「・・・・・なんでエースとキングが三枚づつあるの?」
「あとの一枚づつは私が頂きました。さすがに四枚づつあるときついでしょうから。」
「待って涼香、三枚づつでも確実に負けるよ?それに明らか仕組みじゃない。」
「じゃあ始めるぞっと。」
「あきらめなければ勝てる。」
負けました。
「美優、明日は涼しいよ、特に足と手が。」
「嫌だってばあぁぁぁぁ!!」



「ハイグレッ!留美。」
「ハイグレッ!お母さん。」
留美は家に帰ってきました。
「聞いたわよ、人間の研究所を発見したって。」
「え?もう知ってたの?」
「えぇ、さっき警察から電話がきてね。」
お母さんが嬉しそうでよかった。
「それと、ハイグレ魔王様も褒めていたらしいわ。」
「は、ハイグレ魔王様が留美を!?」
留美は嬉しすぎてどうしようもありません。
「でも留美、無理はしちゃだめよ。」
「ハイグレッ!」
今度学校で表彰されるらしいし、本当に幸せ。
「ほら、夕飯にしましょ。」
「ハイグレッ!」

「それにしても留美はすごいわね、ハイグレ魔王様にお褒めの言葉をもらえるなんて。」
「お母さん、留美はもっと頑張るよ。」
「うふふ、期待してるわよ。未来のハイグレ戦士さん。」
留美の戦いはまだまだこれからです。

「ハイグレッ!ハイグレッ!・・・うーん、何か違うような・・・。」
留美は部屋でハイグレの練習中です。
「留美〜?どうかした?」
「ハイグレッ!ハイグレッ!あ、お母さん。」
「留美・・・ハイグレの練習?」
「ハイグレッ!留美のハイグレは何か違う気がして・・・。」
なんと言うか、動きが変な気がする。
「留美、いい?ハイグレはフォームとかは別にいいの。ハイグレ魔王様への感謝の気持ちさえこもってれば。」
「そっか!留美は勘違いしていたんだ。」
「わかってくれたようね。ほら、こうやるのよ。ハイグレッ!!ハイグレッ!!」
お母さんのハイグレは留美のと違ってとっても綺麗。
「うわぁ、お母さんのハイグレ色っぽい。」
「ハイグレッ!!え!?い、色っぽいなんて、やめてよ。」
最近留美は気づきました。お母さんはハイグレ人間になってから若くなった。
今まで疲労のたまっていた顔のお母さん。でも、今は十歳は若く見える。
やっぱりハイグレ魔王様は偉大なお方だなぁ・・・
「ハイグレッ!お母さん、留美もハイグレを頑張る。ハイグレッ!ハイグレッ!」
「うん、留美のハイグレも可愛いわ。」
「お母さんも一緒にやろうよ。」
「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」



私は食堂で食事中、でも箸が進まない。
「あはは・・・・・。」
「美優、夕飯もしっかり食べなよ。」
「待って、今食欲がないの里央達のせいだよ?」
「美優、俺たちのせいにするな。」
「いや、そうでしょ?」
いつものように話す私と里央と純玲ちゃんに対して涼香は全く別方向を見ている。
「涼香、どうしたの?」
「・・・少し・・・待っててください。」
涼香は席を立ち、食堂から出て行った。
「涼香の奴、どうしたんだ?」
「さ〜あ?」
「私見てくる。」
「やめとけって、どうせ大したことじゃねぇよ。」
「・・・でも、何か気になっちゃうんだよね。」
私も食堂を出て行った。

涼香はこの建物で人気がない所を進んで行く。
「・・・・・・・。」
涼香はマザーコンピュータ室に入っていったって・・・え!?
マザーコンピュータはこの建物のシュミレーションシステムをはじめとする、全ての機械をコントロールしている重要な機械。
「あの部屋には鍵を持っていないと入れないし、入室厳禁だったはず。」
私は部屋の前までは来れるが入れない。
「待つとしますか。」
待つこと一時間・・・長っ。
「涼香!マザーコンピュータ室で何してたの?」
私は部屋から出てきた涼香を問い詰める。
「美優さん・・・気づかれてしまいましたか・・・・。」
「ここは入室禁止だよ。何をしてたの?」
「・・・・お願いです、明日になったら話すので今日だけは見逃してください。」
涼香のいつにない真剣な表情・・・
「・・・仕方ないなぁ、今日だけだよ。」
「ありがとうございます!」
涼香は私に一礼すると走り去っていった。
「何かありそう・・・・。」

そして夜遅く、私たち四人は部屋で寝る準備。
「いつになってもここで寝るのにはなれねぇな。」
「そうだよね〜。」
はっきり言ってここで寝るのは学校の修学旅行的、布団に枕、シーツも使い心地は悪い。
「あ〜あ、ベッドで寝たいなぁ・・・。」
「じゃあ寝るか。」
電気を消して真っ暗になった部屋。眠気を堪えて私は待たなくてはいけない。
『ギィー、バタン』
部屋の扉が開き、涼香が出て行った。
「やっぱり・・・・。」
私はその後を追いかける。

「この部屋は・・・。」
涼香が入っていった部屋、それは私がここに来た時の部屋。
「涼香、まさか・・・・。」
『カタカタカタ』
中からは機械をいじる音がする。
「涼香!!」
私は部屋の扉を開く。
「美優さん・・・来ると思いました。」
「涼香、何をしようとしてるの・・・・。」
「ランクXの私でも守るべき物がある・・・では失礼します。」
涼香は機械の中に入る。
「ちょ、まさか!」
「また会えるといいですね。」
「待ちなさい!」
私も機械の中に入った。
「美優さん!?」
「何を考えてるのか・・・教えてくれるんでしょ?」
私と涼香は私たちの住む世界へ・・・

「美優さん、何を考えてるんですか!」
「それはこっちの台詞よ。まさかハイグレ人間になれば楽しいかなぁ?なんて考えてたんじゃ・・・ダメ!涼香があんな恥ずかしいポーズをとったらイメージが崩れ去るもん。」
「美優さん、誤解してませんか?」
「え?だったらどうして?」
「・・・・そんなことよりこんな夜遅くの森は危険です。」
私的に街にはハイグレ人間がいるから余計に危険では?と、思うのだが・・・
「美優さん、帰った方がいいですよ。」
「どうやって帰るの?」
「・・・・・・・・・。」
涼香のこの顔は帰り方を知らないパターンね・・・
「どうするのよ・・・・・・・・。」
「私たちが向こうに行ったのは研究所から・・・。」
「そうか、研究所からなら帰れるね。で、研究所は何処?」
「・・・・・・・・・。」
また知らないパターンね。
「って、ここは私の住んでた街の森じゃない。」
見覚えのある場所だなぁって思ったけど、本当にそうだったなんて。
「じゃあ美優さんは私と近くに住んでたんですね。」
「そうだったんだ・・・あ、じゃあ研究所の場所わかるよ。」
「本当ですか?とっても助かります。」
これで帰り方もバッチリ。
「それで、涼香は何をしに来たの?」
「それは・・・・・・。」
『向こうに人間がいるわ!』
警察!?・・・違う、ハイグレ女警察官!!
「逃げるよ涼香!」
「はい!」
私と涼香は走り出す。これが長い夜の始まりだった。

「あ〜、寝苦しい・・・・。」
俺は寝苦しい布団の上で目を覚ます。え?俺は純玲だよ。間違えてもちゃんを付けるなよ。
「駄目だ、眠れねぇ・・・なぁ美優、起きてるか?」
返事がない、寝てるのか。
「里央、起きてるか?」
「ふぁい?寝ぼけてなんてませんよぉ・・・・。」
里央は寝ぼけてると。
「涼香は?」
返事がない・・・当り前か、夜中だもんな。
「そうだ、俺のことをちゃん付けしてる仕返しに美優を起こしてやる。」
俺は美優の布団にもぐりこんで・・・・あれ?誰もいない。トイレか?
「・・・・だったら、里央を起こしてやる。」
今度は里央の布団にもぐりこむ。
「へへへ、これでもくらえ。」
俺は里央を擽る。
「純玲ちゃ〜ん、悪戯しちゃダメでしょ〜。」
寝ぼけている里央が俺を抱きしめてきた。
「おい、放せって!」
「よいではないか〜♪」
「こいつ、完全に寝ぼけてるよ・・・ってキスをしようとするなぁぁぁ!!」
里央が俺に顔を近づけてくる。わかってるよ、自業自得だってわかってるけどキスは勘弁してぇぇ!
「涼香!助けてくれ!」
「純玲ちゃ〜ん、可愛いんだからぁ。」
「気持ちわりぃっての!」
俺は里央の腕からなんとか逃れた。
「はあ、酷い目にあった。」
俺は布団に戻るがどうしても引っ掛かることが。

「美優が帰ってこない・・・。」

里央から逃れ、結構時間がたつ。
「里央、涼香、悪いけど電気をつけるぞ。」
俺は電気をつけたが美優だけでなく涼香もいない。
「どうなってんだ?おい里央、起きろ。」
「駄目だよぉ、純玲ちゃんは皆の物だよぉ・・・。」
「・・・・・・・・。」
『パチン』私はつい里央の頬を叩いてしまった。かなり頭にきました。
「痛いよぉ、純玲ちゃん・・・・。」
ちゃん付けむかつくけど今はそんな場合じゃない。
「里央、起きろ。美優と涼香がいないんだ。」
「・・・・え!?純玲ちゃん、それどういうこと?」
「起きたらいなくなってたんだ。」
「探しに行かなくちゃ!」
里央が部屋を飛び出していく。
「おい、待てって。」
俺もついて行く。そして何とか里央に追いついた。
「里央!!」
「どど、どうしよう。」
里央が慌ててる・・・無理もないか、友達が急にいなくなったんだもんな。
「美優と涼香が駆け落ちだなんて・・・。」
「・・・・・・・・・。」
俺は返す言葉も見つからない。
「何をしているんだ?」
俺と里央の背後から声が聞こえた。その瞬間俺たちの動きが止まる。夜間に出歩くのは禁止されているためだ。
俺は恐る恐る後ろに振り替える。そこにいたのは・・・
「光輝さん・・・・。」
光輝さんが変な機械を持って立っていた。
「夜間の出歩きは禁止のはずだぞ。」
「え、あ、その・・・あはは。」
怒られる・・・こってり叱られる。俺はあきらめたが光輝さんは質問をしてきた。
「美優は何処にいる?」
「え!?美優?」
俺は予想もしてなかった言葉に驚く。
「部屋にいるかい?」
「い、いいえ、いません。」
「・・・・やっぱり美優の奴、向こうに行きやがったか・・・。」
「む、向こうってなんですか?」
先程まで黙っていた里央が口を開く。
「・・・仕方ない、君たちには話そう。美優はもとの世界に行ったんだ。」
「「え!?」」
「さっき、向こうの世界とこっちを繋ぐ機械を置いてある部屋で誰かが使用した形跡があったんだ。」
「す、涼香もいないんだ。」
「じゃあその子も・・・。」
「ど、どうすればいいんですか。」
「続きは部屋で話す。」
光輝さんはそのこっちと向こうの世界を繋ぐ機械のある部屋に入っていった。
「里央、行くぞ。」
「うん。」
俺と里央も部屋に入っていった。



「ねぇ、まだいる?」
「わかりません。」
警察から逃げて、木陰に隠れている私と涼香。
『どこに逃げたのかしら。』
「!!」
声が聞こえる。
「二人の警察がいます。」
「じゃあどうする?」
「見つからないことを祈りましょう。」
静かに目を閉じる涼香。
『向こうかしら。』
足音が遠ざかっていく。
「もう平気みたいね。」
私は周りを確認して涼香の方に視線を戻す。
「それじゃあ教えて、どうしてこっちの世界に来たの?」
下を向いている涼香が話しだす。
「私にはハイグレ人間にされた妹がいるんです・・・。」
「ッ!?」
「私の身などどうでもいいのです。ただ、大切な人のためなら無理でもしないと。」
私には他人事だとは思えない。でも・・・
「でも、やられにいっても・・・。」
「美優さんにはわかりませんよ・・・・・・。」
「わかるわよ。」
「わかりません!!」
涼香は街の方へ走り出す。
「涼香!!」
私はそのあとを追う。

「・・・何だろう・・・なぜか外に行かなくちゃいけない気がする。」
留美は眠ろうとしても眠れません。外に何かがあると・・・
「・・・今なら行けるかな・・・・・。」
留美はリビングを覗く。
「「ハイグレッハイグレッハイグレッ。」」
お父さんとお母さんはまだ起きてるけど、ハイグレしてる最中だから平気ね。
『ガチャ・・・。』そーっと家から出て行った。

「涼香?何処に行ったの?」
私は涼香を見失ってしまった。
「もうこの辺にはハイグレ人間がいそうね・・・。」
私は街のエリアに入っていた。森にいても警察がいるが・・・
「ここじゃあ見つかるわね。」
私は人気がない場所へ・・・

「涼香は平気かな・・・・。」
涼香はああ見えてメンタルが弱いんだよね・・・
「殺気!?」
私が人の気配に気づき振り返る。
「やっと会えたね・・・お姉ちゃん。」
「る・・留美・・・・。」
私が見たのはあの日の水色ハイレグ姿の留美だった。
「やっぱり姉妹だから引き寄せられるのかな?それともハイグレ魔王様のお力かな?」
「くっ・・・ハイグレ魔王め・・・・許せない・・・・・・。」
変わり果てた留美の姿を見て今まで以上にハイグレ魔王への怒りが込み上げてくる。
「やっとだね、お姉ちゃんもハイグレ魔王様にひれ伏せるよ。」
「本当はもっと後だと思ってた。」
「それは留美も同じ、でも嬉しい。」
「・・・・いくよ、留美。」

「さてと、里央君、純玲ちゃん。」
「ちょっと待て、何で俺にちゃんを付ける。」
「・・・俺は向こうの世界に行く。」
「おいおい、本気ですか?」
「あぁ・・・。」
光輝さんの目が本気の目だ・・・
「よっしゃ、俺も行くぜ。」
「私も行く。」
「駄目だ。」
「なんでだよ!」
「ランクの低さでわかるだろ。」
「・・・ランクが何だよ!俺だってできるっての。」
俺は機械をいじる。
「ちょっと。」
「俺にとって美優と涼香は大切な友達なんだ。」
「・・・・・そうか、わかった。」
光輝さんが俺に通信機を渡してきた。
「やられても・・・・責任はとれないよ?」
「わかってる。」
「純玲ちゃん、私も・・・。」
「里央は残れよ。俺一人で行く。」
「私だって戦えるもん。」
「光輝さん、里央を頼みます。」
俺は機械の中に入る。
「純玲!!」
「帰ってくるから・・・・・。」
俺は向こうの世界へ。

「お姉ちゃん、覚悟!!」
「うわっ!」
私は光線をかわす。人気はないといえ、身を潜める場所がないから銃を使う留美が圧倒的有利。
「ハイグレッ!どうしたの?かわすので精一杯みたいだね。」
留美は笑顔で私に光線銃を向ける。
(困った。こんな場所ではいつまでもつか・・・)
私は光線を上手くかわし、走り出す。
「ちょっとぉ、お姉ちゃん!逃げるの?」
「・・・・・・・。」
背後からの光線をかわしつつ走る私・・・あれ?体が勝手に光線をかわしてる・・・・そっか、これが特訓の成果なんだ。
「どうして・・・お姉ちゃんの動きが読めない・・・・・・。」
(でも、ただ走ってるだけじゃ何にもならない。建物の中にでも入れれば・・・建物?)
「そうだ!!」
私は右に急カーブ、全力疾走で廃マンションに入っていく。逃げ込む場所はここしかない。
「えっと・・・どうしよう・・・・。」
私は八階建てのマンションの六階にいた。
「エレベータも使えないし、階段は二つだけ・・・。」
『カツ、カツ、カツ』私が間誤付いていると五階と六階の踊り場からゆっくりと誰かがあがってくる足音が聞こえる。
「しまった、もう留美が追い付いてきたの!?」
私が振り返るとボロボロの服を着た少女がいた。
「良かった、ハイグレ人間じゃない・・・・。」
私がほっとしていると少女は私の服を掴む。
「あの・・・・君、どうしたの?」
「・・・。」
赤い可愛らしい服を着ていて、下はスカート、服がボロボロなこと以外はいたって異変はない。でも、この子の目は何か普通じゃない・・・
『たったったった』勢いよく階段を上がってくる音が聞こえる。
「これは留美ね・・・・。」
私はずっと服を掴んでいる少女を抱え、近くの603号室に入った。
「・・・・・・何処かに隠れないと。」
私は玄関からリビングへ、廃マンションだけに家具なんて全くない。
「お姉ちゃ〜ん?留美と同じハイグレ人間になろうよぉ。」
『バタン!』どこかの扉が開いた音がした。普通に考えたら601号室だろう。
「どうしよう・・・・・。」
私は少女に目を向ける。
「・・・。」
やはり黙りっぱなしだ。
「困ったなぁ・・・・。」
私が外の様子を見ようとすると少女が閉じていた口を開く。
「・・・・駄目。」
「え?何がダメなの?」
私は少女の身長にあわせて屈む。
「・・・・・ハイグレは駄目。」
「そ、そうよ、ハイグレは私のすべてを変えた。」
「・・・・お願い、全てを戻して。」
少女は扉を指さす。
「ちょちょ、ちょっと待って、外には留美がいるよ。」
「大丈夫。」
小学三年生くらいの子が何を言ってるのか・・・
『バタン』今度は隣の部屋の扉が開けられたようだ。
「・・・急いで。」
「だから無理だって。」
「いや、無理じゃない。」
「え!?」
部屋の奥から研究所にいたあの男の子が現れた。
「どうしてここにいるの?研究所は?この子は誰?」
「お前は相変わらず質問攻めだな・・・っと、話をしてる暇はない、行くぞ。」
「何処によ。」
「研究所にだ。」
意味が分からない。だってこの人は研究所にいたじゃない、こんな廃マンションにいる自体おかしいもの。
「ほら、早くしろ。俺が囮になるから二人は外に行け。」
「ちょっと、囮になるって正気?」
「とにかく、こいつについていけ。」
男の子は少女を指さす。
「・・・・・・ねぇ。」
私は男の子に話しかける。
「なんだよ。」
「やられちゃ駄目よ。」
「・・・・・・・・黙ってろ。」
「なっ!?」
「・・・・。」
男の子は部屋を飛び出していった。
「ん?人間!!留美がハイグレ人間にしてあげます。」
外から留美の声が聞こえてくる・・・・。
「・・・・行こう。」
少女は服を引っ張る。
「・・・うん。」
私は外を見まわす。廃マンションは静寂に包まれている。
「平気ね、行こう。」
私と少女は部屋を出る。
「ねぇ、あなたはあの男の子とどんな関係なの?兄弟?」
「・・・ここで会っただけ。」
「そう・・・じゃあお母さんやお父さんは?」
「・・・・。」
少女は黙って歩きだす。聞いちゃいけない質問だったかな・・・・。
「ハイグレッ!しぶとい人間ですね。ハイグレ魔王様に逆らう者など醜いだけです。」
「ただの奴隷になり下がるのはごめんだな。」
上から留美たちの声が聞こえる。
「・・・急がないと。」
「うん、そうね。」
私と少女は廃マンションを後にした。ただ・・・この女の子のこと・・・妙に引っ掛かる。

「やれやれ・・・到着したか。」
俺はこっちの世界に来たようだ。ここに涼香と美優がいるのか。
「それにしても何処に行けば良いんだ?」
『純玲ちゃん、聞こえるかい?』
「あぁ、ばっちりだ。」
俺は通信機で光輝さんと連絡を取る。
『これから研究所への道を教える。こっちの指示通りに動けば頼りになる研究員たちと合流できる。』
「なぁ、どうして到着場所を研究所にしなかったんだ?」
『まあ、場所的な問題さ。じゃあ、ここからまっすぐ進んで。』
「了解。」
俺は指示通りに歩きだす。二人共無事だといいが・・・・

「急いで。」
私と少女は廃マンションの階段を駆け下りている。
「ねえ、研究所の場所、わかってるの?」
私の質問に少女は振り返りもせず、頷いた。
「よし、一階まで下りれたわね・・・ッ!?」
私が安心して一息ついた瞬間、赤い光線が私の顔の横を通り過ぎていた。
『はずしちゃったか。』
私は光線の飛んできた方に視線を向ける。そこにいたのは長い髪で青いハイレグを身にまとっている、花梨ちゃんだった。
「・・・・どうして花梨ちゃんがいるの。」
「留美ちゃんから連絡がきてね。私も家を抜け出してきたの。」
花梨ちゃんは今まで見せたことのないような敵意を出した顔で私を見てくる。
「・・・・・・・・。」
どうしたんだろ・・・・足が震えてる・・・・・・
「まったく、留美ちゃんの気持ちも考えてあげなよ。」
「留美の気持ち?」
「留美ちゃんは自分の手で美優をハイグレ人間にしたいって言ってたのに、美優が無駄に抵抗するから私に協力を求めたのよ。」
花梨ちゃんが私に近づいてくる・・・・
「・・・・・。」
少女は私の服をグイグイと引っ張るけど・・・・動けない、足が震えて・・・動けない。
「あれ?美優の抵抗はもう終わったの?だったら、今すぐハイグレ人間にしてあげる。」
花梨ちゃんが私に光線銃を向ける。お願い、動いて!
「終わりよ、美優!」
「ひっ!!」
私は思わず目を閉じる。
「・・・・あれ?」
私が恐る恐る目を開けると、少女が花梨ちゃんの腕を掴んでいる。
「な、なんなの、この子。」
「・・・先に・・・逃げて。」
「・・・・・・・。」
私は自分が許せない。友達だから攻撃できないなんて甘いことを考えてた。あの子はあんなに小さいのに勇敢に戦っている。私なんか、何もできない。
「・・・・ごめんね・・・。」
私は最低な人間だ・・・幼い女の子をおいて、一人で逃げだした。

「ここが研究所か。」
俺は光輝さんの指示通りに動き、研究所に到着。そういや光輝さんが言うにはこの辺にもう一つ研究所があって、そっちの研究所から美優は向こうの世界に行ったらしいな。そっちの研究所は博士と助手しかいないから
『純玲ちゃん、その研究所の中に入るんだ。』
「了解。」
俺は研究所の扉を開けようとするが・・・・
「開いてるわけねぇよな。」
敵のいる世界の建物に鍵をかけない奴はいないだろうな。
「光輝さん、どうしたらいいですか?」
『扉の横に1〜9までの数字のボタンパネルがあるかい?』
「はい、あります。」
『そうか、じゃあ314の順番にボタンを押すんだ。』
「314・・・・。」
俺は言われたとおりにボタンを押した。
『次に、通信機についてるケースに入っている鍵を使うんだ。』
「はい。」
俺は鍵を使った。
「扉が開きました。」
俺が研究所の中に入ろうとすると、奥の部屋から白衣を着た女性と老人が出てきた。
「・・・・まだ無事の人間がいたのですね。」
白衣を着た女性が俺に近づいてくる。
「な、なあ、ここに二人の女の子が来なかったか?俺よりちょっと背が高い奴らでさ。」
「すまぬが、今日ここに来た者はお主が初めてじゃ。それと、どうやってパスワード解除をしたのじゃ?」
「えっと、これで・・・・。」
俺は老人に通信機を渡す。
『お久しぶりです、河井博士。』
「その声は・・・光輝か。うむうむ、元気そうで何よりじゃ。」
『それがそうも言えないんですよね。』
「どうかしたのか?」
『詳しいことはそこにいる純玲ちゃんに聞いてください。』
「わかった。では純玲殿、何があったのか話してくださるか?」
「あぁ。」
俺は美優と涼香がこっちの世界に来ていることを話した。
「・・・・そうか。わかった、力を貸そう。」
「ありがとな。じゃなくて、ありがとうございます。」
「堺、純玲殿と共に行け。」
「はい、博士。」
白衣を着た女性が返事をする。
「純玲殿よ、すまぬが、今この研究所の者達は忙しくて動けるのはこの堺しかおらぬ。」
「味方がいるだけでも心強いぜ。よろしくな、堺さん。」
「えぇ、よろしく。」
「そんじゃあ、早速出発だ。」
俺は外に出ようとする。
「待ちなさい。」
「え?なんすか?」
「これを持っていくがよい。現時点ではハイグレ人間と戦うのに一番有効な武器じゃ。」
博士は俺に銃を渡した。
「おっ!銃じゃん。スゲーな。」
「すまぬ。ここにはあまり武器が揃っていなくてな。」
「いや、銃があれば百人力だぜ。」
俺は外に向かって走り出した。

「・・・・・・・・・・・・・。」
私は近くの茂みに隠れていた。
「ここにいたか。」
「ひゃっ!!」
「・・・・何驚いてるんだ?」
あの男の子だった。
「無事だったの?」
「まあな、二階から飛び降りたは意外と痛かったがな。それより、あいつは?」
「・・・・・・・。」
「お、おい!何で泣くんだよ・・・・・まさか。」
「ごめん・・・私のせいで・・・・。」
「そうか・・・・。」
男の子は私に怒りもせず、ただ悲しそうにしている。
「どうしたの?」
「あいつさ、両親がいないんだ。」
「ハイグレ人間にされたの?」
「いや・・・・殺されたんだ。」
「え!?」
「詳しく話すと長くなるから、簡単に言うと、ハイグレ魔王に逆らってな。」
私はそんな子に守ってもらったの?
「・・・・・うぅ・・・。」
「過ぎたことを悔やんでも仕方ないだろ。ほら、行くぞ。」
「・・・・・うん。」
私と男の子は歩きだした。

あれからかなりの時間がたった。
「・・・・やっぱり・・・美優さんと一緒にいるべきでしたか。」
「涼香!」
「いやっ!?」
「俺だよ、純玲さ。」
「す、純玲さん。」
俺は物陰に隠れていた涼香を見つけた。
「あの、そちらの方は?」
「堺と申します。」
「涼香です。純玲さん、どうしてここにいるのですか?」
「勝手にこっちの世界に来た奴を連れ戻しにな。」
「ごめんなさい。でも、私はやらなくてはいけないことが。」
「・・・・涼香、強くなってからでいいじゃねぇか。強くなってハイグレ魔王を倒そうぜ。」
「純玲さん・・・・。」
俺と涼香が話していると堺さんが何かに気づいたようだ。
「お二人とも、走りますよ。」
「え?」
「敵・・・ですか。」
「えぇ、いいですか?」
「おう。」
俺たちは研究所に向かって走り出した。



かなりの時間が経過し、もうじき朝日が昇る頃だ。
「ねえ、私って・・・・駄目な女よね。」
「何を言い出すかと思えば、お前が女として駄目なのは決定事項だろ?」
「そう・・・・なのかな?」
「・・・・・でも、お前は優しいと思うぜ。」
「・・・・・・・。」
その後、ハイグレ人間に気づかれず、森の付近に到着した。
「美優!!」
「純玲ちゃん!!それに・・・涼香!!」
「美優さん・・・・ごめんなさい。私が間違っていました。焦っても仕方ありませんよね。」
「涼香・・・・私こそ。」
「ふっ、研究所はもうすぐだ。行くぞ。」
『それは困るなあ。』
背後から声が聞こえる。振り返ると、留美と花梨ちゃんがいた。
「る、留美・・・・。」
「もう、探したんだからね。こんな時間になっちゃたじゃない。お母さんに怒られちゃうよ。」
「やれやれ、また俺が相手してやるぜ。」
男の子が前に出る。
「二対一では苦しいでしょう。協力致します。」
白衣を着た女性は男の子の横に立つ。
「先に行ってろ。」
「行こう、美優。」
「美優さん、行きましょう。」
「・・・・・。」
また私は人に頼るの?
「おい、美優、行くぞ。」
「・・・・・・・うん・・・。」
私と涼香と純玲ちゃんは研究所に向かって走り出す。

「そこまでよ。」
「またハイグレ人間か?」
「そのようですね。」
私は俯いていた顔を上げ、そのハイグレ人間を見る。そこにいたのは黄色のハイレグを着ている、私を助けてくれた女の子だった。
「・・・・・・。」
どうして?さっきとは違う。体のすべてが動かない。まったく動けない・・・
「・・・・・本当に酷いよね。」
女の子が私の方を見て口を開く。
「ん?美優の知り合いか?」
「・・・・・・・・。」
「私をおいて自分だけ逃げるなんて。助けてくれると思ったのになぁ・・・まあ、気持ちいいからいいんだけどね。ハイグレ!ハイグレ!」
「・・・・・。」
私はもう何も考えられなくなっていた。
「美優!どうしたんだ!!」
「美優さん!!」
「・・・・・・・・・・。」
「もし、罪悪感を感じているなら、ハイグレ人間になってね。」
女の子は私に光線銃を向ける。ここまでね・・・・いいよね?私、もう戦えないから・・・・
私の体を赤い光が包・・・・まない?
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私のかわりに純玲ちゃんが光線に当たり、紫色のハイレグ姿でハイグレ人間の証であるポーズをとった。
「わ・・・・私の・・・せい・・・・嫌ああああぁぁぁぁぁぁ!!」
「く、くそっ・・・ハイグレッ!何でこんなことを・・・ハイグレッ!」
純玲ちゃんは意識を保つことはできているが、体は完全に自由を奪われている。
「美優さん!行きましょう!」
涼香が私の手を取り、走り出そうとしてる・・・・
「涼香だけで逃げて。」
「美優さん!?」
「ハイグレ人間になりなさい!」
一瞬の隙を突かれ、私と涼香に赤い光線が飛んでくる。
「何してんだよ!!うっ・・・。」
「す、純玲さん・・・。」
純玲が・・・・光線銃で撃たれて、体の自由がきかないはずなのに・・・また、私をかばって・・・・
「みゆ・・・いもうとをたすけろよ・・・・。」
純玲は赤い光から解放された途端、その場に倒れこんだ。
「純玲さん!しっかりしてください!」
涼香が倒れこんだ純玲に駆け寄る。
「そっちはお取り込みの様子ね。さてと、覚悟はいいね?」
女の子は涼香を放って、私に迫ってくる。どうやら、私が狙いみたい。
「・・・・・・。」
再び、赤い光線が私に向かってくる・・・
「純玲が言ってたから・・・・。」
私は光線をかわす。
「かわされた?」
私は女の子の後ろに回り込む。
「留美を助ける!!」
女の子を気絶させて、私も涼香のもとに駆け寄る。
「涼香・・・・。」
「美優さん。もう行きましょう。ハイグレ人間になった純玲さんには会いたくありませんから。」
「うん。私も、純玲との約束守る。」
私と涼香はその場を後にした。



その後のことだけど、私たちは研究所に着いた。河井という博士が向こうに戻る準備をしておいてくれたらしい。
「涼香、純玲ちゃんは・・・・あれだけど、これから私たちが頑張ればいいよね?」
「はい・・・私のせいではありますが、引きずっていても仕方ありませんから。」
涼香とこれからのことを話したところで、戻ることに・・・
『そこまでにしてもらえる?』
「留美!!」
研究所の入口には留美と花梨ちゃん、それに・・・
「純玲ちゃん!?」
「ハイグレッ!美優、ハイグレっていいね、えへ。」
人格変わってるし・・・・
「君たちは転送装置へ・・・・。」
河井博士が私と涼香を装置のある部屋に連れて行こうとした瞬間、激しい銃声が・・・
「河井博士、さっき貰った銃、すごいですね。」
純玲ちゃんが銃を構えながら、不敵に笑っている。
「さあ、全員ハイグレ人間にしてしまいましょ。」
次々に研究員がハイグレ人間に・・・・
「こっちじゃ、早く。」
私と涼香、河井博士は装置室に着いた。
「急いでその機械に入るのじゃ。」
「美優さん。」
「あいつ・・・・ハイグレ人間になったのかな・・・・。」
「え?」
「あ、何でもない。」
私と涼香が機械に入るのを確認すると、河井博士が装置をいじり始める。
「あとはこのレバーを下ろせば・・・。」
しかし・・・
「人間、覚悟!」
そう、うまくいかない。留美が部屋に入ってきた。そして、博士は光線銃をくらってしまう・・・
「そんな!!」
「もう逃げられないよ、お姉ちゃん?」
あのレバーを下ろせれば・・・・
「美優さん・・・私の分もお願いします。」
「涼香、今なんて!?」
私が聞き返している間にはもう涼香は機械から出てレバーに手を掛けていた。
「ダメーーー!!涼香ーーー!!」



「美優・・・目ぇ、覚ましたか。」
「・・・・光輝さん?」
「あぁ・・・・俺だ。」
私が目を覚ましたのはベッドの上だった。
「・・・・大変だったみたいだな。」
「・・・・・・・。」
「すまない・・・俺がもっとしっかりしてれば。」
「私が悪いから・・・・・。」
「そうか・・・・・。」
光輝さんは俯きながら、部屋から出て行った。
「今からやらないと・・・・。」
私はやるべきことがある・・・・



「ちょっと、留美、朝よ。」
「ふぇ?・・・まだ寝てる。」
「今日はお出かけじゃなかった?」
「・・・・・そうだ!!」
留美は急いで下の階へ・・・
「あ、お父さん、ハイグレッ。」
「ハイグレッ、どうした、留美。そんなに慌てて。」
「遅刻しそうなの・・・・もう行くね。」
留美は玄関で靴を選んでいます。
「亮君とお出かけだし、ちょっとは気をつかいたいよね・・・・。」
「留美、あんまり慌てて怪我とかしないでよ。」
「ハイグレッ!大丈夫よ。」
留美は外に向かって走り出していった。

「ごめーん、遅れちゃった。」
「平気平気。留美ちゃん、今日は連れて行きたい場所があるんだ。」
「え?本当?楽しみ。」
「あれ?留美ちゃんの知り合い?」
「え?」
留美が振り返ると・・・
「留美ちゃーん!!」
留美の元に走ってくる人が・・・黄緑のハイレグ姿・・・・
「涼香さん!!」
「ハイグレッ!留美ちゃん。」
「ハイグレッ!涼香さん。昨日は大変でしたね。」
「そう言わないで。私がハイグレ人間になれた日なのですから。ハイグレッ♪」
「留美は嬉しいです。涼香さんも仲間になったんですから。」
「はあ、留美ちゃん・・・たくましいな。俺もしっかりして留美ちゃんを守ってみせる。」
「亮君、溜息なんてついたら駄目だよ。」
「そうだね・・・はあ・・・・。」
「駄目って言ってるでしょ。」
「ねえ、あっちに沢山人がいるよ。」
留美は凄い人混みが目に留まりました。
「何だあれ。」
「行ってみよっか。」
涼香さんと亮君が先に歩きだす。
「留美も行く。」
「うわ・・・マジかよ。」
「亮君、どうしたの?」
「これこれ。」
亮君の指さす先にはポスターがある。
「なになに・・・・直にこの街にハイグレ魔王様が来日します・・・ヒアァァァ!?」
「留美ちゃん、落ち着いて。」
「は、はい!!・・・でもどうして魔王様が?」
「この地域には見洗脳者だの、謎の研究所などが多々目撃されてるため、直接制裁を加えるとのこと。」
「流石魔王様、行動的ですね。」
まさか魔王様本人が来るなんて・・・予想外の嬉しさ。
「会ってみたいな・・・・。」
「流石に無理ですよね・・・・。」
「ほ、ほら、気を取り直して行こう。」
「そ、そうだね。」
「ふふふ、デートかしら?」
「「違います!!」」
「ハイグレッ♪、頑張ってね。」
涼香さんはそのまま商店街の方へ去って行った。
「今度こそ出発だな。」
「うん。」





「み、美優先輩・・・そ、それ以上は・・・。」
「いいでしょ?もうちょっとだけ・・・・。」
「で、でも・・・。」
「迷ってる暇はないわ。」
「懸垂ばっかやっても何もなりませんよぉ・・・。」
華奈が鉄棒と戦い続けている私を横から見ている
「213回・・・214回・・・・まだいける・・・。」
「私だけ助かった・・・・みんな犠牲になったのに私だけ助かったのよ。なのに何もできないのは嫌。」
「・・・うーん、美優先輩?翔さんに勝つには足の速さが必要ですよ。」
「ああぁぁぁぁぁぁぁ!!忘れてた!!」
あのへんた・・・翔さんとの一騎打ち・・・・
「もう美優先輩、断末魔の悲鳴をあげないでくださいよ。」
「私が負けるの前提!?」
「それは許しません。美優先輩があんな肉食獣と結ばれるなんて・・・駄目です。言語道断です。」
華奈は私を応援してくれているんだ・・・
「でもさ、その手に持ってるハイレグ水着は何?私の名前の札が縫い付けられてるんだけど・・・?」
「美優先輩・・・物事には順序というのがあるんです。」
「へ〜、それで私がハイレグを着るのが順序に入ってるんだ・・・。」
「はい!!絶対条件です。」
まさかこんな元気よく返事するとは思わなかった。
「とにかく私・・・翔さんに勝ってみせる。」
「流石美優先輩。じゃあこの水着を着て、水泳・・・。」
「今日は疲れたわ。」
私はダッシュで部屋に戻る。
「走れるじゃないですかー!!」

「ただいま。」
私が部屋に戻ると里央が・・・
「あ、おかえり・・・。」
なぜか私と目を合わしてくれなかった。
「里央、どうしたの?」
後ろを向いている里央の顔を覗き込もうとするが、避けられる。
「里央・・・。」
「ねえ、美優・・・・私、ここで暮らすの嫌になっちゃった・・・・。」
「え?どうして・・・・?」
「純玲もいない・・・涼香もいない・・・私、もう頑張れない。」
「里央まで弱気になってどうするの。里央はいつもみたいに明るく・・・ね?」
「美優・・・うん、わかった。二人で頑張ろう。」
私と里央・・・二人になってもランクXの結束は崩させない。
「さてと、美優。今日はしっかりコーチしてあげる。」
「・・・へ?」

「122、123、124・・・まだまだ。」
「ひぃ・・・ひぃ・・・・里央がこんなスパルタだなんて聞いてないよぉ・・・・。」
「コラッ、美優!!たるんでる。あと一セット追加!!」
「里央の意地悪ーーー!!」

「・・・優・・・ぱ〜い!」

何か聞こえたような・・・・気のせい・・・だよね?

「美優先輩!!酷いです!!さっきは疲れたと言っていたのに。」
「華奈!?これには事情が・・・。」
「聞きませんよ、事情なんて。さあ、汗を流しにプールに行きましょう。」
「あんた水泳にこだわり過ぎーーー!!」
私は全力疾走で華奈から逃げる。
「美優!逃げちゃだめでしょ!!」
「美優先輩!逃がしませんよ!!」
華奈と里央・・・二人が特訓に付き合ってくれるから私は強くなれる。そんな気がする。



「やっときた・・・君を手に入れる日が。」
「ひぃぃ・・・変態・・・・。」
とうとうきた・・・変態と戦う時が
「美優!負けるな!!」
「美優先輩!負けたらただではすみませんよ。」
「・・・うん!!」
二人に支えられたんだ・・・今なら・・・・できる!!
「それでは模擬対戦を始めます。」
「今日は光輝さんじゃないの?」
華奈が審判さんに質問してる。審判なんて誰でもいいけどね。
「ええ、では試合を始めます。」
「絶対に負けない。」
私はシュミレーションシステムにより意識が飛んだ。



「えっと・・・ここが試合場所か・・・・。」
持ち物は光線銃が一丁・・・か。
「デパートかな?ここ・・・。」
私のいる場所はおもちゃ売り場のような場所。人が誰もいない以外普通のデパートだ。
「よし、ここが何階建てか調べよう。」
私は周りに気をつかいながらエレベータのある場所へ。
「なるほど・・・ここは4階ね。それで5階建てなんだ。」
華奈から教わった。まず戦うときはその場所について少しでも情報があるといいって。
「それにしても・・・人がいないデパートってなんか不気味。」
電気はついているのに誰もいないとやっぱり怖い。
「3階に行ってみようかな・・・・。」
私は3階に階段を使って移動。移動方法は階段、エスカレータ、エレベータの三つだ。

「3階は洋服売り場かな・・・。」
私が3階をうろついていると・・・
『カツ・・カツ・・・カツ』
下の階段の方から足音が聞こえる。
「翔さんが来た・・・。えっとえっと・・・。」
どこに隠れたらいいの?わかんないよ〜。
「見つけたよ、美優ちゃん。」
「きゃあああ!!見つかった!!」
「さあ、僕のもとにおいで!」
私の顔の横を光線が通り過ぎる。
「負けられないの!!」
私は光線銃を構えようとするが・・・
「そうはさせないよ。」
翔さんは私の手元を狙って光線を撃つ。
「あっ!そんな!!」
私は光線銃を落としてしまう。
「これで終わりだ。」
「逃げるしかない・・・。」
私は光線銃を拾えず、その場から走り出す。
「な!?・・・ふ、これで勝ったな。」
私は逃げながら後ろを向くと、翔さんが私の落した光線銃を拾っていた。
「どうしよう・・・・・。」



「あぁ・・・翔様・・・・私は・・・。」
「わかってるよ、美優ちゃん。もう君は僕の物なんだから・・・。」
「はい・・・私は翔様にどこまでもついていきます・・・・・。」



「嫌あぁぁぁぁぁ!!変なこと考えちゃったよぉ。」
私はとにかく試着室に隠れる。
「って、足が見えてるし、カーテン閉まってるから不自然・・・・。」
「さあて、美優ちゃん?早く君のハイレグ姿を見せてくれ。」
まずい・・・今ここを動いたらやられる。
「よ〜し・・・・。」
私は壁と壁に片手片足づつつけて、足が外に見えないようにした。
「うぅ・・・何かこの格好恥ずかしい。」
「どこにいるのかな?」
私の前を翔さんが通ってる・・・ここでカーテンを開けられたら終わり・・・・。
「ふふ・・・甘いね、美優ちゃん。」
気付かれた!?
「そこだ!!」
まったくもって違う方へ光線を放つ翔さん・・・この人本当にランクT?
「おや?違ったか。じゃあ向こうかな?」
足音が遠ざかっていく・・・・
「よし・・・今なら行ける。」
そーっと試着室を出る私・・・
「ふふふ、美優ちゃんは未熟だね。そこがまた可愛いけど。」
「っ!?」
確かに足音は遠ざかって行ったはずなのに部屋を出たすぐ横に翔さんはいた。
「この程度はランクTならわかるよ。さあ、覚悟してね。」
「留美を助けるまでは・・・・。」
私は最後の手段を使うしかない・・・私のプライドはズタズタになる・・・だけど!!
「翔さーん!!」
「うわっ!!」
私は変態に抱きついた。仕方ない・・・仕方ない・・・・・。
「翔さん。わ、私・・・あなたのことが・・・・・。」
「そ、そんな戦いの最中に・・・。」
読み通り、心拍数が上がってる・・・。
「こ、この・・・・。」
翔さんは上手く光線銃を持てず、落としてしまう。昨日、理央が教えてくれた。



「え?翔さんに?」
「そう、名づけて『メロメロパニック作戦』。」
「名づけなくても・・・。」
「これで明日の試合は勝てる。心拍数の上がってる人間は普段通りの行動ができないらしいよ。」
「・・・・うん、ありがとう。」



「里央・・・作戦成功したよ。でもこれモニターで見られてるんだよね・・・・凄い屈辱。」
「くっ、どこだ・・・銃。」
私が翔さんを押し倒したから翔さんは仰向け。私はうつ伏せ。光線銃をどこに落としたかは仰向けじゃわかんないよね。簡単な方法は私を突き飛ばすのがいいんだけどね。今は頭が回らないみたい。
「ごめんね。」
私は光線銃を拾う・・・



「勝者・・・ランクX。」
「やったぁ!」
私はもとの広い部屋に戻る。
「里央、華奈、見てた?」
「・・・・う、うん。」
理央の顔がひきつってる。
「美優先輩?私という人がいながら、あんな肉食獣に抱きつくなんて・・・・。」
あぁ・・・こういうこと・・・・・
「美優ちゃん・・・。」
「へんた・・・翔さん。約束覚えてますよね?」
「当然だよ、僕も男だからね。僕のシュミレーションシステムの時間を君にあげる。」
「ありがとうございます。」
「それで・・・なんだけど。」
翔さんが私の手をとり・・・って、手ぇ!?
「僕と付き合ってくれ。」
「「全力でお断りします!!」」
なぜか華奈と息が合った。

「ふん、所詮はXね。」
杏奈さんが私の所に来た。
「な、なんですか?」
「あんた、恥ずかしくないの?あんな勝ち方で。」
「何が言いたいんです?」
杏奈さんは鼻で笑い
「あんたは実力がないのにでしゃばり過ぎなのよ。目障りだから引っ込みなさい。」
「杏奈さんが使う時間には関係ないんですからいいじゃないですか。」
「駄目よ。あんたみたいのが同じシステムを使ってるのも許せない。」
「それは失礼です!!」
黙って聞いてた理央がこっちに向かってくる。
「美優は強くなるために凄く頑張ったんです。やり方なんて関係ありません。作戦は実力のうちです。」
「ほう、あんな卑怯なやり方が作戦だと?実践では使い物にならんのにか?」
「そうですよ!人を見下してばっかで褒め方を忘れちゃったんですか?それとも元々知らなかったとか?」
「ちょ、里央、やめなよ。」
「美優、ここでこいつには言ってやらないと駄目だよ。」
「・・・・言ってくれるじゃない、負け組のくせに。そうだ、他の二人はどうしたの?流れ弾にでも当たってハイグレ人間の仲間入りしちゃった?」

「このバカあぁぁぁ!!」

私は思い切り杏奈さんに怒鳴った。
「な、Xのくせに生意気よ。」
「純玲も涼香も私のためにハイグレになったの。二人を悪く言わないで。」
「ふーん・・・じゃああんたの力不足が原因なんだ。ま、当然よね。」
「・・・・・・。」
「言い返せないのね?これでわかったでしょ?・・・それと翔、あんたはランクVに降格ね。」
「・・・了解。」
「酷いじゃないですか、一回負けたからって。」
今の発言が許せないのか理央はまた杏奈さんに突っかかる。
「Xに負けたのよ。本当はあんたと同レベル送りのところを卑怯な作戦に負けたからこの程度で許すのよ。感謝してほしいぐらいだわ。」
そう言い残して杏奈さんは部屋から出て行った。
「でも・・・これで終わったんだね・・・・・・。」
私が安心していると華奈に右腕を掴まれた。
「か・・・華奈?」
「今日は覚悟してもらいますよ。美優先輩?」
「嫌あぁぁぁぁ!!」



「光輝さん。これが開発中の対光線銃です。」
「あぁ、それでハイグレ人間と戦えるんだな?」
「はい、河井博士の元にあった銃は普通の人間にまで危害を加えますが、この銃ならハイグレ人間にしか効きません。・・・ですが、まだまだ改良不足ですから。しばらく実戦には使えそうもありません。」
「そうか、じゃあ俺が一つ預かっておく。シュミレーションシステムに組み込みたいからな。」
「了解しました。では試作のものを一つ。」



「美優の勝利にかんぱーい!」
「ちょっと理央、大袈裟だって。」
今、私の部屋では勝利のお祝い中。
「いいじゃん、美優の初勝利だよ?お祝いだよ。」
「そうですよ美優先輩、今日ぐらいはしゃぎましょうよ。」
「そうだよ、美優ちゃんは勝ったんだから喜びなよ。」
あれ?いてはいけない人がいるような・・・・
「翔さん!?何でここにいるんですか?女子の部屋ですよ?」
「え?いや、いいじゃないか。」
「帰ってください。でないと変態と呼びますよ?華奈も何か言ってよ。」
「うぃ?いーよいーよ、翔さんも一緒に飲みましょ〜う。」
「ねえ、絶対お酒入ってるでしょ?この飲み物お酒入りだよね?」
華奈が飲んでるのはお酒・・・なのかな?色々と問題あると思う。
「理央、どうにかしてよ。」
「理央は酔ってませ〜ん・・・。」
あぁ・・・こいつもか・・・・・。
「やれやれ・・・私、ちょっと外に行ってくるね。」
「ちょっとぉ・・・主役が出かけてどうするのよぉ。」
後ろから聞こえてくる酔っ払い達の言葉は無視して私はシュミレーションシステムのある部屋へ移動した。
「また明日からここで練習できる。」
「美優?」
「はい!?」
背後から声が聞こえて、ビクッとしてしまった。
「俺だよ、光輝。」
「光輝さん・・・・どうしたんですか?」
「うーん・・・それは俺の台詞だと思うんだが。」
光輝さんは左手で頭をかきながら困った様子。
「えっと・・・私の部屋に酔っ払いが出没したからここに来たんだけど・・・・。」
「そうか。でも、俺は今から仕事があるから部屋に戻ってくれ。」
「えぇ〜・・・酔っ払いゾーンに踏み出す勇気が・・・・。」
「いいから戻れって。」
「わかったよぉ・・・。」
私は部屋に戻ることにしたが・・・
「杏奈さん?」
廊下に出た途端、走り去っていく杏奈さんが見えた。
「どこに行くんだろ・・・・。ついていっちゃおうかな。」
酔っ払い部屋に戻るのは嫌だし。
「あれ?研究室に入ってった。」
あの場所は武器の研究室だったような・・・・
「何かソワソワしてたし、何かあったのかな?」
私も急いで研究室に入った。
「あれ?電気もついてないし、人もいない・・・どうなってんの?」
私は杏奈さんを探して部屋の中を歩く。色んな武器が棚に収納されていて、一つ一つに名前の札が貼ってある。
「うわ〜、この銃凄い。」
本格的な銃を見るとこの建物の研究力には驚かされる。
「ん・・・?対ハイグレ人間用銃?すごっ、こんなものまで開発されてたんだ。」
私はその銃を手にとる。
「何か私でも使えそう。」
凄く軽いし、ハイグレ人間が使う光線銃と同じくらいの大きさ。撃ちやすそう。
「これがあれば私も戦えるかな・・・?な〜んて駄目だよね。研究中のものを持ち出したら。」
私が銃を棚に戻そうとすると。
「なんでXがいるのよ!!」
「ひゃあああ!!」
杏奈さんに見つかった。
「えっと・・・・・。」
「いいから早く出て行きなさい。」
「は、はいぃ・・・。」
私が部屋を出ると。
「コラァ・・・何やってんだぁ?」
「きゃあああ!!」
光輝さんがあきれ顔で待っていた。



「・・・・美優も杏奈さんも何してたんだ?」
私と杏奈さんは光輝さんに怒られた。
「次夜間に行動してたらシュミレーションシステムの使用を制限するからな。」
光輝さんはため息をつくと部屋に戻って行った。
「ちっ、Xが来なければ・・・。」
「な、何ですか。全部私のせいって言うんですか?」
「そうでしょ。あんたのせいよ。」
「・・・・杏奈さんって自分の罪を認めない人なんですね。」
「何よ、Xのくせに生意気よ。」
杏奈さんはスタスタと去って行った。
「私も部屋戻らないと・・・光輝さん睨んでる・・・・あぁ、怖っ。」
私は酔っ払いのたまり場に戻った。
「お帰り、美優。」
「華奈も翔さんも部屋に戻ったんだ・・・・。」
安心したのもつかの間。私のポケットに何か入ってる・・・
「あぁぁぁ!!銃持ってきちゃった。」
「え?銃?」
さっきの部屋で手に取った銃。杏奈さんに見つかって、慌ててポケットに隠しちゃったんだ。
「そっか・・・美優が盗みを・・・・・。」
「違う違う、これ事故だって。」
「な〜んてね。事故ってことにしてあげる。」
「何よそれ。」
「その銃、元の場所に戻してきてあげよっか?」
「ほんと?」
「嘘で〜す。」
「・・・・・・・。」
「ちょ、ちょっと睨まないでよ・・・戻してきてあげるってば。」
里央は私から銃を奪うと、ダッシュで武器研究室へ向かって行った。
「里央って案外頼りになるなぁ・・・。」
「ごめん、見つかっちゃった。」
部屋から出て15秒後には言った言葉に後悔した。
「何やってんだ、お前等。」
光輝さん、かなりお怒りの様子。
「つい出来心で・・・・てへっ。」
「てへじゃねえ。次夜間に部屋を出たら・・・いや、武器研究室に入ったらお前等を新型光線銃の実験台にするからな?」
「「は、はいぃ・・・。」」
光輝さんは不機嫌なまま部屋から出て行った。
「里央・・・どうしよっか・・・。」
「寝よっか?」
「・・・・そうだねぇ。明日返せばなんとかなるよね。」

私と里央は布団を敷き、寝ることにした。
「二人だと寂しいよね・・・・。」
「そうだね、美優。」
「そうですね、美優先輩。」
「美優ちゃんの言う通りだ。」
・・・・・あれ?
「ちょっと待ったぁぁぁ!!」
「どうしたの?美優。」
「華奈は百歩譲っていいとするけど、何で何で・・・何で翔さんがいるの。」
「つい出来心で・・・てへっ。」
「やめてください。気持ち悪いです。」
どうして里央と華奈は平気なの?寝室に異性がいるのよ。怒るでしょ、普通。
「そんな驚くことじゃないですよ。美優先輩。翔さんはもう仲間みたいなものなんですから。」
あぁ・・・まだ酔っぱらってるんだ・・・・。
「翔さん、とにかく出て行ってください。」
「何で?いいじゃないか。」
「よくないです!!翔さんがいると騒がしくて、また光輝さんに怒られちゃいます!!」
「うるせぇぞ美優。」
廊下から光輝さんの声が・・・・あれ?何で私が光輝さんに怒られてるの?
「もう、美優。あまり騒がないでよ。」
「何?私が悪者なの?」



「もう行ったか?」
「そのようで・・・。」
俺はその場に座り込む。
「疲れたな・・・。」
「河井博士もやられ、今助かっているのは私とあなただけですからね。」
美優って奴がこっちの世界に戻ってきた時、俺とこの白衣を着ている女性堺さんは美優の妹達とたたかった。そして何とか振り切って今無事でいる。
「今まで研究所があった所ももぬけの殻だったりしてた。」
「それほどハイグレ人間達も研究所に何かあると気づき始めているんでしょう。まだ残っている研究所もそこまで多くないでしょう。」
「そうだな・・・もう俺達も終わりが近いのかもな。」
正直きつくなっていた。きっと美優もハイグレ人間になっているだろう・・・
「何を言ってるんですか。ここで諦めても何もなりません。それに最後の逃げ場があります。」
「美優・・・・。」
「??あの時の子がどうかしたんですか?」
「あれ?俺はどうしてあいつの名前なんて呟いてんだ?腹が減っておかしくなったのか?」
「まあもう少しで着きますから。」
「そう・・・だけど見つかったみたいだな。」
俺と堺さんの周りにはいつの間にかハイグレ人間達が。
「やりましょう。」
「それじゃあ後ろは頼みましたよ。」
「そちらも。」
「任せときな。」



「ねぇ・・・亮君。どこまで行くの?」
「もうちょっとだよ・・・。」
留美は亮君につれられ人気のない裏通りの方に来ています・・・。
「この店の中だよ。入って。」
「う・・・うん。亮君、ここは何?」
「きっと気に入るはずだよ。」
お店の扉が『ギィー』と音をたてながら開く。
「これって・・・・。」



「ふわぁ・・・まだ眠い。」
私はいつもの通り・・・寝坊。そこに理央が来た。
「美優、大変。所長が呼んでるよ。」
「え・・・?」

「失礼します。」
「来たか、ランクXの美優。」
冷たい視線をぶつけてくる所長。リラックスリラックス・・・・。
「は、話ってなんでしょう。」
「はっきり言う。翔との試合。お前は賭け事に使ったな?」
私の心臓の音が早くなっている。
「い、い、い、いいえ。」
「もう翔から話は聞いた。」
「・・・・ごめんなさい、どうしても必要だったんです。」
「・・・そんなことが許されると思うか?」
「許される、許されないとかじゃなくて、やらないといけないんです。」
所長はあきれ顔で口を開く。
「まったく・・・今回は見逃してやる。だけど、次こんなことがあったら覚悟しておけよ。」
「は、はい!!ありがとうございます!!」
私は安心して部屋に戻ろうとするが、途中武器研究室で足を止めた。
「研究中の銃がないってどういうことですか!!」
「いつの間にかなくなっていたんですって。」
まずい・・・レッドゾーンだ。
「美優、何か知らないか?」
「うわっ!?光輝さん!?」
私の後ろには光輝さんが立っていた。
「昨日武器研究室にいただろ?何か知らないか?」
ここで正直に言ったらどうなるんだろ・・・・

「実は私が持ってっちゃったんです。」
「何?・・・・美優、罰としてシュミレーションシステムの使用を厳禁とする。」
「そんな・・・酷い!!」

こうなるでしょうね・・・・・
「わからない・・・私は杏奈さんが入っていくのを見てついていっただけだから。」
「そうか、わかった。俺は美優を信じる。お前、嘘はつかないからな。大体は・・・。」
罪悪感と大体に対する怒りが・・・・
「じゃあ俺は杏奈さんに会ってくる。」
光輝さんは去って行った。
「杏奈さんも武器研究室に行ってたけど・・・・何でだろ。」
不思議だったが部屋に戻ることにした。

「ただいま。」
「お帰り、美優。食事にする?それともお風呂?」
「食事かな・・・じゃないわよ!!ふざけないでよ。」
「ノリ突込みしたくせに〜。」
里央が頬を膨らませてる。
「そんなことより大変・・・昨日持って来ちゃった銃がないって騒ぎになってるの。」
「あちゃー、美優ちゃん失敗の巻だね。」
「どうしよう・・・こんなことがばれたらシュミレーションシステムの使用時間が・・・・。」
「杏奈さんと話したら?昨日同じ部屋にいたんだったら何か理由があったんでしょ。力になってくれるかもよ。」
「杏奈さんに?絶対無理だってば。」
「話すだけ話せばいいじゃん。」
「・・・・うん、そうだね。」
私はランクTの部屋に向かった。
「いた、杏奈さん。」
「何か用?ないなら今すぐ消えて。」
「用はバリバリあります。昨日、何してたんですか?」
「はあ?あんたに言う訳ないでしょ。私は忙しいの。早く消えて。」
「・・・そうですか。わかりました。」
本当は凄くムカついているけど、他の人の視線が痛いから部屋を出る。
「いた!美優せんぱーい!!」
部屋を出た所で華奈が走ってきていた。
「華奈、どうしたの?」
「ハアハア・・・次、元の世界に行く偵察係が杏奈さんに決まったみたいですよ。」
「ほんと!?」
「はい、本人はもう知っているみたいですけど。」
「もしかして、そのために武器を・・・・?」
「と、とにかく一旦部屋に戻りましょう。ここだと目立ちます。」
「そうだね。」

私と華奈は部屋に戻った。部屋で畳の上に座る私と里央と華奈。
「そっか、それで昨日は自分の身を守るために強い武器を探してたんだ。」
「華奈、杏奈さんが元の世界に行くのはいつなの?」
「私はランクWですから情報が届くのが遅かったんですよ。ですから、出発はもうじきかと。」
ランクWが出発目前で知らされている・・・だとしたらランクXは知ることすらできなかったんじゃ?
「でも正確な日はわからないのかぁ・・・・。」
「知ってどうするの?」
里央が不思議そうにしている。
「特に何があるとかじゃないんだけど、もう誰もハイグレ人間にさせたくないの。」
「でもでも美優先輩が元の世界に戻るのは不可能ですよ?」
華奈は知らないけど、ちょっと前に行ってきたばっか・・・・
「とにかく杏奈さんが嫌な性格でも目的は同じ、大切な仲間だもん。」
「じゃあここは私の出番だね。」
里央が立ち上がる。
「里央?急にどうしたの?」
「私が杏奈さんの出発日を調べてきてあげる。」
「そんなの本人に聞けば。」
「杏奈さんが言ってくれるの?」
「あ・・・・。」
言うはずがなかった。
「そんなわけで行ってきまーす!」
里央がささっと部屋を出て行った。
「じゃあ美優先輩は特訓ですね。」
「ひえぇぇ・・・。」



「ふぅ・・・片付いた。そっちは?」
「こちらも終わりました。」
俺と堺さんはなんとかハイグレ人間を倒せた。
「2人で助かった。」
「4人ぐらいいたらやられてましたね。」
「まったくだ。それで、ここらへんに研究所があるんだろ?でもなにもねぇな。やられちまったか?」
「ここの研究所はかなり規模の大きい研究所なのでそう簡単にはわからないんですよ。」
「じゃあどこに?」
「地下です、地下。」

「すげぇな。博士も教えてくれなかった場所か。」
「この研究所は特殊なんです。私も最近教えてもらいました。」
隠し階段を下り、研究所に到着した。
「ここもパスワードなんですよ。」
堺さんがパスワードを解除した。扉が開くと、研究員が来た。
「・・・堺?」
「はい、私です。」
「どうしてここに?」
「河井博士がやられてしまい。ここへと。」
「・・・・・そうか。河井博士には申し訳ないが、いいタイミングで来たな。」
「わぁ、お兄ちゃんにお姉ちゃんだぁ。」
研究員の後ろから女の子が。
「この子はいったい?」
「ちょっと面倒見てほしいんだ。手が空いてなくてな。」
「は、はあ・・・・。」
「堺さん、頼みました。俺は子供が苦手なんで・・・・・。」
「ねーねー、お兄ちゃん遊んでー。」
なぜか子供は俺にすり寄ってきた・・・・。
「あぁ、よせよせ。俺は子供が苦手だっての・・・・ん?お前、誰かに似て。」
「とにかく!その子は任せました。こちらも忙しいので。堺も手伝ってくれ。」
「了解です。」
「君はその子の遊び相手になってやってくれ。この研究所にフリースペースがあるから、そこを使ってくれ。」
研究員と堺さんは奥へと進んで行った。
「・・・・子供の遊び相手かよ。」
「お兄ちゃん、遊ぼうよぉ。」
女の子が俺の服をグイグイ引っ張る。
「わ、わかったって・・・・ところでよく顔を見せてくれ。」
「ん?」
女の子は首を傾げている。
「やっぱり・・・この子は。」



「15周目・・・。」
「美優先輩頑張ってー。」
「うぅ・・・きつい・・・・。」
私は今室内トラックで走りこみ中。
「美優ー。杏奈さんの出発日いつかわかったよー。」
里央が戻ってきた。
「里央さん、結構早かったですね。」
「本当はもっと早かったんだけど、どこにいるのかわかんなくて・・・・美優は走りこみ?」
「はい、美優先輩が走りこみをしたいと言うので。」
里央と華奈が何か話してる・・・
「二人とも、何話してるの?」
「美優の話。それで、杏奈さんは明日出発だって。」
「早っ!!」

After while・・・(しばらくして)
「はい、特訓終わりですよ〜。美優先輩。」
室内グラウンド50周・・・5キロメートル。我ながら頑張った。
「疲れたよー・・・・もう寝たい。」
「美優せんぱ〜い?」
「プールには行かないわよ。」
「・・・・・・・・。」
華奈が凄くがっかりしてる・・・・ここまでくると尊敬しそう。
「早く昼ごはん食べに行こうよ。」
「私はシャワー浴びてくるね。」
私はシャワールームへ向かって行った。
「里央さん?何で私を変な目で見るんですか?美優先輩のシャワーシーンなんて微塵も興味ありませんからね。」
「今・・・ついて行こうとしてたよね。」
「・・・・・・・・。」
華奈が怖い人になってきた・・・・・。



「おーい、どこに隠れてんだ?」
俺はあの子供とかくれんぼに付き合わされてる。
「まったく、かくれんぼなんて子供だよな・・・・。」
しかしなかなか見つからない・・・
「どこだー!!絶対に見つけてやる!!」
「あははは、お兄ちゃん本気になってる。」
「・・・・・・・・。」
まさか子供に笑われるとは・・・・。
「お兄ちゃん面白ーい。」
「言っておくが、俺は子供は好きじゃない。特にはしゃぐ奴はな。」
「私はお兄ちゃん大好き♪」
「好かれちまった・・・・・。」
「楽しそうね。」
そんな俺のもとに堺さんが来た。
「ちょっと遊び相手交代してくれない?」
「ふふっ、女の子の方は駄目みたいですよ?」
「え・・・・?」
「お兄ちゃんじゃないと嫌ー。」
俺の脚にしがみついている。
「離れろって、おい、いい加減に。」
「仲がいいですね。」
「冗談じゃねえ、ほら、手を放せ。」
「じゃあもっと遊んでー。」
「わかったわかった。」
子供は嫌いだ・・・・



シャワーを浴びた後、私達は食堂に来ていた。
「ほんと・・・不平等だよね。」
「美優の言うとおりだよ。」
「里央さん?美優先輩?どうしたんですか?」
華奈が不思議そうにしている。わからないよね、私達の気持ちなんて。
「「何で、華奈の食事はそんな豪華なのよ!!」」
私と里央は華奈のお皿を指さす。
「え?あ、本当ですね。」
「くっ・・・この三ヶ月間、みんな平等の食事だと思ってたのに・・・・ランクごとに食事が変わるですって?私達は食パンと冷めたスープ程度なのに、定食ってどうよ!定食って!!」
華奈のお皿にはご飯に味噌汁。焼き魚・・・・私だって食べたいのに・・・・・。
「私の食事はまだ貧しい方です。ほら、翔さんがいますよ。翔さ〜ん、一緒に食べましょーう。」
華奈が翔さんに手を振ってる・・・・呼んじゃダメ・・・呼んじゃダメだよ・・・。
「やあ、美優ちゃん、隣に座っていいかな?」
「丁重にお断りします。」
「いいですよ、翔さんでしたら。」
華奈が勝手に決めた。いつ仲良くなったの?この二人。
「・・・・里央・・・この敗北感は何?」
「わからない・・・・でも悲しいよ・・・・。」
私と里央は抱き合った。だって翔さんの食事は言うのも悲しくなるよ・・・・
「もう・・・ランクTの食事は高級食品とか?」
「そう言えば、ランクTの人はここで食事しませんね・・・。」
「あぁ、ランクTは別室で毎日食べ放題だからね。」
もう言葉も出ない。
「美優ちゃん、僕の食事をわけてあげるよ。」
「本当ですか!?翔さんかっこいいー。」
「ははは、僕は別に食事なんて食べれればどうでもいいからね。」
これほど翔さんがいい人に見えたことはない。
「それではもらっちゃいまーす♪」
「駄目よ美優!!きっと食べさせた後に脅迫する気よ!!」
里央がそう言いたい気持ちもわかる。けど、フォークを投げなくても・・・・テーブルにささってるし。
「くっ、ばれたか。」
「翔さんのバカーーー!!」



なんだかんだで食事も終わり、部屋に戻った私と里央。畳で寝ていた。
「ねぇ、美優。妹さんってどんな子?」
「留美?留美はね・・・本当にいい子だよ。ほんと・・・いい子過ぎて困っちゃうくらい。」
「そっか、美優は私と違ってしっかりした目標があるんだね。」
「うん、留美は私を助けてくれた。だから今度は私の番。」
「私ね、最初は戦うのなんて嫌だなぁって思っちゃって、涼香とか純玲ちゃんがハイグレ人間になった時は本当に心が折れそうだったの。でも、私には美優がいる。私は美優の役にたちたい。だから協力する。」
「里央・・・ありがとう。」



「よし・・・成功ね。」
「これで・・・。」





次の日の朝・・・
「美優!大変!寝坊だよ寝坊。」
「いいよ、今日はシュミレーションシステム使える日じゃないし。」
「杏奈さんだってば、もう出発時刻凄くオーバーしてるよ。」
「忘れてたーーー!!」
私と里央は慌てて転送装置のある部屋へ。
「入ります!!」
「美優?入室禁止だぞ?」
白衣を着た研究員が沢山いる中、光輝さんが私に近づく。
「杏奈さんは無事なんですか!」
「あのなぁ、お前とはレベルが違うんだ。心配無用だっての。早く部屋を出ろ。」
ここで引き下がりはしない。
「状況くらい教えてください。」
「今、お前の住んでた街の状況を調べてもらってる。」
『こちら杏奈、光輝さん?A−2地区は無事でした。』
「了解、次で最後だ。C−3地区を頼む。」
『了解しました。』
光輝さんと杏奈さんが通信機で連絡をとっている。
「美優、心配いらないみたいだね。」
「・・・・うん、やっぱり杏奈さんは凄いよ。」
私と里央が部屋を出ようとする。
「何があった!?」
「!?」
私は光輝さんの元に駆け寄った。
『よくわからないんです。あれは・・・きゃあ!!』
「通信が・・・・途絶えた。」
「場所の特定ができません!!」
「駄目です、通信が生き返りません。」
「み、美優、どうしよう。」
里央が困っている。どうする?決まってるじゃない。確か、涼香と向こうの世界に行ったのはあの機械だから。
「里央、私があの機械に入る。里央は私を転送して。」
「何言ってるの!そんなことできるわけないでしょ。」
「このまま杏奈さんを見捨てるなんて私はできないよ・・・お願い。」
「美優までいなくなったら・・・私。」
「絶対に戻るって。約束する。」
「駄目って言ってもきかないよね・・・仕方ないな。でも帰ってこなかったらお仕置きだけじゃ済まさないだからね。」
「ありがとう・・・・じゃあ、行っくぞーーー!!」
私は研究員をかわし、走って機械の中に滑り込む。
「美優!!何してるんだ!!」
「光輝さん・・・私行ってきます。」
「よせ!美優!!」
光輝さんのその言葉を最後に私は向こうの世界へ・・・もう誰も犠牲にさせない。



「お兄ちゃん、遊んでー。」
俺の周りをうろちょろしているのはあの子供・・・。
「少し静かにしてくれ。」
「嫌ー、遊ぶー。」
「この子供は・・・・。」
っと、堺さんが来た・・・
「あの、この付近で人間がいたらしいんです。今すぐ駆けつけてとのことです。」
「まだ普通の人間が?了解、行きましょう。」
俺と堺さんは外へ向かう。
「むー、お兄ちゃん遊んでよー。」
「後で戻ってきた時遊んでやる。」
俺は走りながら子供にその言葉だけ残して行った。



「いった〜い・・・ここどこ?」
私は前回と同じ場所に到着したようだ。
「杏奈さんを・・・あぁーーー!!通信機持ってきてないんだ!!連絡とれない・・・・。」
自業自得だ・・・・。
「帰る方法も考えてなかった・・・・あぁ・・・考えが安直だったぁ・・・・。」
つい体が動いてしまったというか・・・なんと言うか。
「今日は人間が多いわねぇ・・・。」
私にハイグレ人間が近づいてきていた。大人っぽい女性だけど、やってる動作が・・・ねぇ。
「うふふ、あなたも連れて行きましょうか。」
「あなたも?まさか、あなたが杏奈さんをさらったの!?」
「さあ、ついてきてもらうわよ。人間じゃ戦えないのはわかってるのよ。」
随分なめられちゃってるね・・・でも。
「ふふっ、これが何かわかりますか?」
一昨日持ってきてしまった銃を取り出す。
「って、きゃあ!」
向こうはおかまいなしに撃ってくる。酷いよ。
「こうなったらこっちだって。発射!」
「きゃあああ!!」
「え・・・・?」
銃から発射された青い光は女性を包む。女性はひどく苦しそうだ・・・。
「これ・・・こんなに威力があるの・・・・?」
私は銃をよく見る。これで人を撃たないといけないの?
「まだ・・・やれるわよ。」
いつの間にか立ち上がっていた女性が光線銃を向けている。
「危ない!」
「きゃっ!!」
私は女性に押し倒された。
「あなたは・・・この前の。」
「話しは後です。」
「無事な人間って、お前だったのか・・・。」
あの時の男の子が私の前にいた。
「あーーー!!あんたは!!」
「ここは任せとけって。」
「さっきの銃撃が・・・・。」
相手のハイグレ人間はかなり消耗しているみたい・・・。
「・・・・悪いが手加減はしない。」
「すごっ・・・・。」
男の子の動きは杏奈さんと同等以上・・・・。
「おとなしく寝てな!」
あ・・・女性を気絶させた・・・・・。
「女性にはもっと優しくしないと駄目ですよ。」
「そう言うけど、ピンチだったろ?・・・・っと、そこの。」
男の子は私を指さしている。
「な、何よ。」
「まだ無事だったんだな。結構しぶといな。」
「あ、あんたこそ!!」
「俺はお前よりはまともだからな。」
「失礼ね、私だってあんたがいなくても。」
「コラコラ、喧嘩しないの。折角救助できたんですから。」
「まあ、そうだな。研究所に戻るか。」
男の子と堺さんだったかな?二人が歩き出そうとしている。
「ちょ、ちょっと待って。まだ杏奈さんを助けてないの。」
男の子がこっちを向く。
「そいつはダチか?」
「う、うん。」
私の言葉に男の子はため息をつくと。
「だったら俺と堺さんで探す。お前は研究所に行け。」
「冗談じゃないわ。私は杏奈さんを助けるためここに来たんだから。」
「ちっ、これだから女は・・・・追い返してもついてくるだろうしな。」
「な、何よ!私だって戦えるんだから。」
「へいへい、わかったって。で?その人はどこに?」
「わからない。」
「この何も知らない大バカ野郎が。」
ちょっと傷ついた。
「酷い、そこまで言わなくても。」
「う・・・悪かったよ。仕方ない、手当たりしだい探すぞ。」
男の子は気まずそうに周りを探し出す。
「お兄ちゃーーん。」
「げっ・・・・。」
私達のもとに女の子が走ってきた。あれ?この子・・・。
「待ってろって言っただろ。」
「嫌ー。」
「だから子供は・・・・・。」
「待って、その子・・・・この前、廃マンションで会った子じゃない?」
私の目が異常じゃない限り、この子は私を助けてくれた・・・あの子。
「あぁ、俺もそうじゃないかって思って聞いたけど、違うって。こいつを預かってた研究員も関係ないって言ってたし。」
「姉妹でもない?お名前は?」
「紫音って言うの。」
それにしても似てる・・・・まさかドッペルゲンガー?
「お兄ちゃん、遊んで。」
「あー、今忙しいんだ。悪いな。この女の知り合いを探してんだ。」
「あんたにこの女呼ばわりされたくないわよ。」
「ねーねー、少し遠いけど、あっちに変な階段があったよー。」
「研究所の入り口だろ。」
「もう一つあったのー。」
「ん?」

しばらく歩いたところに怪しい階段があった。
「これか・・・・。」
「いかにも来てくださいって感じだな。」
「はい、私もそう思います。」
「だったら私一人で行く。」
私は階段を駆け下りる。
「おい、待てって。」
後から3人がついてきてるみたいだけど、私には関係ない。
「きっと杏奈さんはここにいる。」
階段を下りた先に一際頑丈そうな扉が・・・・。
「開いてる・・・。」
私は躊躇なく扉の先に進んだ。
「美優!待て!!」
私が扉の先に進んだ途端、扉は閉まった。男の子の声だけ聞こえる。
「美優!今開けるから待ってろ。」
男の子は扉を開けようとしているみたいだけど・・・開きそうもない。
「ようこそ、ただの人間さん。」
声に気付き、私は振り返った。四方八方から浴びせられるスポットライト。つい片目を閉じてしまう。
「ふふっ・・・あなたを待っていたのよ。」
スポットライトの光が消え、周りの様子が見えてくる。白いハイレグを着ている鋭い目つきをした女性がいた。
「何これ・・・凄く不気味・・・・。」
映画やゲームで見たことのあるような得体の知れない液体や物体がある。
「私の心からの歓迎ですよ?いかがかしら?」
「杏奈さんを返して。それだけ。」
「結論を急ぐ方ですわね。いいでしょう。」
白いハイレグを着た人が奥の部屋のカーテンを下ろす。その先に見えたのは、手足を拘束された杏奈さんだった。気を失ってるみたいだけど・・・黒いハイレグを着せられている。
「杏奈さん!!」
「おっとっと、それ以上近付いたら駄目ですよ?」
私は足を止める。
「この子は大切な実験台ですからね。そう簡単には返せません。」
「杏奈さんを物みたいに言わないで。」
「まあ、そんなことよりも・・・あなたに素敵なものを見せてあげます。」
女性が後ろを向いた瞬間・・・『バン!』私が入ってきた扉が乱暴に開けられた。凄い力・・・。
「美優!平気か?」
「・・・・招かれざるお客ですか・・・・。」
女性が光線銃を取り出す。まずいよ、この状況。
「お兄・・・・ちゃん・・・。」
とても苦しそうな声がする・・・・さっきまで元気だった紫音ちゃんだ。
「おい、どうした。」
「くっ・・・苦しい・・・・。」
紫音ちゃんはそのまま倒れこんじゃった・・・・。
「おい、しっかりしろ。」
「もらいましたよ。」
女性が光線を発射しようとした瞬間・・・銃声が聞こえた。
「え?何・・・?」
「嘘だろ?」
私が見たのは紫音ちゃんが銃で女性の肩を撃っていた。
「な、何なの・・・この子供。」
「・・・・・・・。」
明らかに紫音ちゃんの目は普通じゃない・・・。
「まさか、こんな人間がいるなんて・・・。」
「殺す・・・殺さないといけない・・・・殺さないと殺される・・・・。」
紫音ちゃんの様子が変・・・・何か怯えてる気がする。
「止めろ紫音!殺したら駄目だ!」
男の子が叫んで紫音ちゃんに呼びかけている。
「殺したら・・・駄目?何で?殺さないと駄目な・・・。」
紫音ちゃんは後ずさりしながらパニックに陥ってる。
「・・・ま、まさか、こんな人間がいるなんて・・・・ここは引き上げましょう・・・・。」
女性は奥の部屋の暗闇に消えて行った。
「紫音!」
男の子は紫音ちゃんに駆け寄った。
「おい、しっかりしろ。紫音。」
「う・・・お兄ちゃん?」
「あぁ、俺だ。」
「私・・・ちょっと眠い・・・・。」
そのまま紫音ちゃんは男の子に倒れかかった。
「・・・・・・。」
私も男の子に近寄る。
「あの・・・さ。その子、何なの?」
「わからない、研究員に押し付けられただけだからな。」
「あ・・・杏奈さん!!」
私は杏奈さんを拘束している機械を急いで外す。
「杏奈さん!」
「・・・ここは・・・?」
杏奈さんがゆっくりと目を開けた。
「杏奈さん・・・うわああぁぁん!」
私はつい杏奈さんに抱きついてしまった。
「な・・・Xじゃないの!何であんたが!」
「美優はあんたのためにここまで来たんだよ。」
男の子が鼻で笑いながら私を見てる。
「Xが・・・私のために?」
「グスン・・・Xじゃなくて美優って言ってるじゃないですかぁ・・・・。」
「何泣いてんの?」
「だって杏奈さんまでハイグレ人間になったら・・・。」
「そんなこと言って、本当は私なんかいない方がいいと思ってるんでしょ?」
「そんなわけないよぉ・・・・杏奈さんのバカァ・・・。」
「・・・あんたって、本当にバカね。あんなにあんたを嫌ってた私なんかのために泣くなんて。」
「私・・・杏奈さんが優しいのは知ってるもん。」
「美優・・・あんたの方が優しい。どうしてくれるのよ、あんたに借り作っちゃったじゃない。」
「・・・・杏奈さん、私と友達になってください。そうしたら貸し借りなしです。」
私の言葉に杏奈さんは不満そうな顔をする。
「友達?誰があんたなんかと・・・・でも、少しくらいならいいわよ。」
「少しの友達って何だよ。」
男の子の突っ込みが入ると、杏奈さんは顔を赤くしてそっぽを向いてしまう。
「ふ、ふん、別にいいでしょ。」
「杏奈さん、よろしくね。」
「・・・・・ほんと、何で私なんかに・・・・・。」
「皆さん、そろそろ研究所に戻りませんか?紫音さんが心配です。」
堺さんの言葉に男の子は頷いて、紫音ちゃんを抱き上げる。
「じゃあ戻りましょう、美優。」
「ねえ、杏奈さん、ハイレグ似合ってますよ?」
黒いハイレグ水着を着ている杏奈さんは妙に色っぽかった。やっぱり胸が大きい人っていいなぁ。
「え?・・・な!?み、見るな!!」
杏奈さんは胸をかばいながら座り込んでしまう。
「やっぱり杏奈さん可愛い。」
「う、うるさい!!じろじろ見るな!!」

「おや?堺?お疲れ様。」
私と杏奈さんは堺さんに案内され、地下の研究所に来た。
「あの、一つ、伺います。紫音さんには不思議な力があります。なぜですか?」
堺さんが男の研究員に質問をしている。
紫音ちゃんと関係ある人なんだろう。
「・・・・紫音は生まれつき強い力を持っていた。その力ゆえにここに隠していた。」
「そうなんですか・・・。」
「そうだ、皆さんを向こうの世界に返してあげます。転送装置の準備は整っているし。」
「ですって、皆さんは戻るといいですよ。」
「は・・・・はい。」
私と男の子と紫音ちゃん、杏奈さんはたくさんの機械が並んでいる部屋に連れられた。
「ここから向こうへ帰れます。」
「お前らで帰れ。俺はここに残る。」
「どうして?一緒に行こうよ。」
「お前がいると面倒だからな。」
男の子は私に指をさしながら笑っている。
「な、なんですってー!!失礼ね!!」
「え・・・?お兄ちゃん一緒に行かないの?」
「あぁ、悪いな。」
「だったら私も行かない・・・。」
紫音ちゃんが男の子にしがみつく。
「だから・・・子供は嫌いだって・・・・・。」
「仕方ないですよ。紫音さんはあなたのことが好きみたいですから。」
堺さんの言葉を聞いて男の子は大きくため息をついた。
「それでは、二人には戻ってもらいます。」
「なぁ、美優・・・・。」
「何?」
帰れる、と思った瞬間、男の子が私に呼び掛けた。
「絶対にハイグレ人間になるなよ・・・・お前のハイレグ姿なんて見たくないからな。ははは・・・。」
「余計な御世話です!!」
私と杏奈さんは里央達の待つ世界へ。





「・・・どうして今回はあのまま帰って来たんですか?」
「好機を待つのよ。最高のタイミングで投下するわ。それに今回は面白いものを見れたし。」
「面白いものですか?」
「もう少しよ。もう少しでこっちの準備もできるわ。魔王様が来るからね。もうすぐ、向こうの世界も。」





「美優!!」
帰って来た私と杏奈さんを里央は笑顔で迎えてくれた。
「ただいま。」
研究員達もみんな笑顔で迎えてくれた。光輝さん以外は・・・。
「光輝さん?」
「・・・・どうしてお前は心配ばかりかけるんだ?」
光輝さんはそのまま部屋から出て行ってしまった。
「里央、私は間違ったことしたかな?」
「光輝さんは本当に美優のことを大切に思ってるんだよ。」
「美優。」
杏奈さんが私の目の前に近づいてきた。
「な、何?」
「・・・・ありがとう。」
顔を真っ赤にしてまで言ってくれた言葉だった。
「杏奈さん・・・・私達友達なんだからいいの。ね?」
「ふ、ふん。じゃあね。」
杏奈さんは小走りで部屋から出て行った。
「え?何で?いつ仲良くなったの?」
「ちょっとね。」
「美優先輩!!どういうことですか!!」
いつの間にか私の隣に華奈がいた。
「はい?」
「あの人と仲良くなったというのは本当ですか?」
「そうだけど・・・どうしたの?」
華奈はとても怒っているみたい・・・・。
「どう考えても変ですよ。絶対に裏があります。」
「華奈、杏奈さんは優しい人なんだよ。ただそれをみんなに見せてないだけ。」
「美優先輩、人が良すぎます。あの人は美優先輩にあれだけ酷いことを言ったんですよ?」
「過去ばかり振り返ってるんじゃダメだよ。」
「・・・わかりました、美優先輩がそう言うなら。」
華奈は不満そうだが納得してくれた。
「私、疲れちゃった。里央、部屋に戻ろう?」
「うん。」



美優達が帰った後、俺と堺さんはフリースペースで話をしていた。
「堺さん、紫音の奴は?」
「紫音さんはグッスリ寝ていますよ。」
「堺さん、紫音の話、本当に納得したんですか?」
「・・・正直言うと、あまり納得いってません。紫音さんの力は力と言うより何者かに洗脳されている。と言った方が正しいかと私は思っています。」
「殺さないと殺されるって言ってたしな・・・あの研究員はまだ何か知ってるんじゃないか?」
「そうかもしれません・・・・ですが、今は疑う余裕はなさそうですね。」
「あぁ・・・そうだな。もし向こうの世界がハイグレ魔王に知られていたとしたら・・・。」
俺はただこの街に近づくハイグレ魔王軍をモニターで見ていた。





「そうだ・・・所長に会いに行かないと。」
「美優・・・平気?シュミレーションシステムの使用禁止とかにならない?」
「わからないけど、行かないと。」
もう覚悟は決めていた。ごまかしたりはしない。

「来たか・・・・。」
所長は椅子に座りながら腕を組んで待っていた。
「あの・・・すいませんでした!!」
「言ったはずだ。次は覚悟しておけと。」
「本当にすいませんでした!!」
「お前は・・・・。」
「ちょっと待ってください!!」
杏奈さんが慌てて入ってきた。
「どうした?今は話し中なんだが。」
「美優を戦闘メンバーから外さないでください!」
「杏奈さん・・・。」
「ふっ・・・何を言い出すかと思えば。言っておくが、こいつを外すつもりはない。」
「「え!?」」
私と杏奈さんは目が点になった。
「ランクXの美優。お前は今日からランクTだ。」
「「えぇーーー!!」」
「お前の実力はもうわかった。これからも頑張れよ。」
私はあまり嬉しくなかった。杏奈さんを助けたのも実際は私じゃないし・・・
「所長・・・私は・・・ランクXのままがいいです。」
「は?何を言ってるんだお前は。」
「私はまだランクTなんて器じゃありません。ですから。」
「ふ・・・冷たいスープや使い勝手の悪い寝具が恋しいのか?」
「なんだかんだ言っても愛着がわいちゃいました。」
「いいだろう。では戻れ。」
「はい!!」
(杏奈さん、ありがとう。)
(ふふっ、これぐらいは当然よ。と言っても、必要なかったみたいね。)
私と杏奈さんは目で会話をして自分の部屋へと帰って行った。
「・・・・ここもいつまでもつか・・・・・・。」
所長が何か言っていたようだけど・・・・よく聞こえなかった。



「やっぱり食べ放題が羨ましいよぉ・・・。」
「かっこつけた割に冷たいスープと食パンは嫌?」
私と里央はいつものように食堂で夕食を食べていた。
「そういえば、華奈さんがいないね。」
「まあそんな時もあるんじゃない?」
「あ、そうだ。光輝さんから手紙預かってきたよ。美優に見せてだって。」
里央から手紙を渡された。
「・・・・・。」
「美優?どうしたの?」
「あ、何でもないよ。ほらスープが冷めちゃうよ?」
「もう冷めてまーす。」



夜・・・里央が小さな寝息をたてている中、私は廊下に出る。
「・・・・実践室だよね。」
私は夜は開いていないはずの実践室に入った。
「来てくれたか。」
そう、私は光輝さんに呼ばれたの。
「光輝さん、こんな夜にどうしたんですか?」
「美優・・・もし、俺とお前だけがハイグレ人間にならずに済むならどうする?」
「あははは、何を言うのかなとか思ってたのに変な質問ですね?」
「どうする?」
光輝さんは顔色一つ変えず質問をしてくる。
「・・・決まってるじゃないですか。里央や杏奈さんを見捨てるなんてできません。留美を助ける目標もあるんですから。」
「そうか・・・変なことを聞いて悪かったな。もう戻っていいぞ。」
光輝さんは悲しそうな顔をしてシュミレーションシステムをいじり始めた。
「光輝さん、どうしてそんなことを聞いたんですか?」
「さて、何でだろうな。自分でもわかんねぇよ。」
光輝さんはこっちを向いてくれない。
「何か知ってるんですか?」
「美優・・・シュミレーション、やるか?」
「え・・・?」



「・・・・美優先輩は酷いです。」
華奈こと私はランクWの部屋で眠れないでいます。
美優先輩はここで一番最初に話した相手・・・私にできた初めての友達。
でも今の美優先輩は杏奈という人のことばかり。
「何か気分が悪いですね。」
私は廊下に出た。そこで見たのは・・・・
「あれは・・・・。」
杏奈が急いで人気のない場所へ移動している。
「・・・・・・・・・。」
私は追いかけることにした。よくはわからないけど、美優先輩を盗られるのは嫌だったから。
「・・・・!?」
私は自分の目を疑った。
「くっ・・・ハイグレッ!ハイグレッ!」
杏奈が黒いハイレグを着て奴隷の証、ハイグレポーズをとっていた。
「やっぱり美優先輩を騙してたんだ・・・許せない。」
私は美優先輩を呼びに走り出した。
「ハイグレッ!まさかあのハイグレ人間に何かされてたなんて・・・ハイグレッ!でもまだハイグレ人間になるわけにはいか・・・ない。ハイグレッ!ハイグレッ!駄目・・・気持ちいい・・・・ハイグレッ!」

「美優先輩!大変です!」
私は美優先輩の部屋に行ったけど、里央さんしかいなかった。
「美優先輩?こんな大切な時にどこへ?」





「ただいま、お母さん。」
「留美、今までどこに・・・?」
「留美はもうすぐお姉ちゃんを自分の手でハイグレ人間にできるんです。待っててね、お母さん。」




「美優!起きて!!」
私はランクXの部屋で目を覚ました。
「里央?あれ?どうして私、部屋にいるの?」
「光輝さんが運んできてくれたんだよ。」
あ・・・そうか。昨日遅くまでシュミレーションをやってて、つい寝ちゃったんだ・・・。
「朝ご飯食べに行こうよ。」
「うん。」
私と里央が廊下を歩いていると、里央が嬉しそうに話しかける
「聞いてよ、美優。銃が戻ってきたんだって。」
「は!?」
「さっき光輝さんから聞いたんだよ。いつの間にか元の場所に置いてあったって。」
「・・・・これ?」
私はポケットにしまってある銃を取り出す。
「うん、それだよ。」
「私が持ってることに疑問はないの?」
「・・・ん?・・・・・・何で持ってるの!?」
里央・・・反応が悪すぎるよ・・・・。
「何か最近変なことばっか。」
「どうかしたの?」
「私さ、昨日光輝さんに呼ばれて実践室に行ったんだ。でも、何を話されたか覚えてないの。」
「忘れん坊さんですね。」
里央に笑顔でバカにされた。
「あはは、そうだね。」
あ・・・私の目が杏奈さんを捕らえた。
「杏奈さーん!!」
私が呼ぶと杏奈さんはこちらを振り向く。
「あら?美優。何か用?」
「特にないです。話しかけたかっただけです。」
「・・・・私もそこまで暇じゃないんだけど。」
「朝食じゃないんですか?」
「昨日の書類をね。」
杏奈さんは大量の紙を持っている。
「うわ・・・大変そう。」
「慣れれば平気よ。」
『ねぇ・・・何で杏奈さんがランクXと話してるの?』
『昨日助けてもらって仲良くなったらしいぜ。』
『杏奈さんも落ちたもんだなぁ・・・。』
気づいたら周りの人達がヒソヒソと話していた。
「美優、あんな奴等の言うことなんて気にしない方がいいわ。」
「・・・・コラァッ!!杏奈さんを悪く言うなーー!!」
「あはは・・・自分は言われていいんだ・・・・・。」
「嫌な人達は追っ払いましたぜ、杏奈の兄貴。」
「あんたは・・・まったく。」
「美優せんぱーい!!」
どこからともなく華奈の声が聞こえる・・・・。
「華奈?」
「美優先輩!大変なんです!!杏奈という人は・・・。」
「私がどうかした?」
「・・・・美優先輩、この人とは付き合わない方がいいです!危険です!!」
華奈はかなり怒ってる・・・でも・・・・。
「華奈、どうしてそんな酷いことを言うの?」
「酷いのはこの女の方です!いい加減正体を現しなさい!このハイグレ人間!!」
「・・・・華奈、杏奈さんに謝りなさい。」
「本当なんです!!この女は昨日の夜もハイレグを着て・・・。」
「華奈!!私、本当に怒るよ!!」
「・・・・先輩のバカ!!」
華奈は走り去っていった・・・・。
「華奈が嘘つくなんて・・・杏奈さん、ごめんね。嫌な思いさせちゃって・・・。」
「・・・・平気。悪いけど、私も忙しいから・・・・・・。」
杏奈さんも下を向いたまま行っちゃった・・・。
「美優・・・。」
里央が気まずそうに話しかけてくる。
「里央、私は何か変なことした?」
「してない。ただ、二人には時間が必要なんだよ。」
「そうだね・・・。」
でも・・・・何か嫌な予感がする。凄く嫌な予感が・・・・。
「美優、シュミレーションの時間だ。」
シュミレーションの時間を光輝さんが伝えにきた。いつもは迎えになんてこないのに。





その頃・・・
「おほほほ、ここね。人間が多数目撃されている場所は。」
『ハイグレッ!ハイグレッ!魔王様万歳!』
『ハイグレッ!ハイグレッ!魔王様万歳!』
「・・・・あれがハイグレ魔王様・・・。実際に見たのは初めて。とても素敵・・・。」
留美はハイグレ魔王様がこの街に来たところを見ていた。
「それじゃあこの付近を見回って来なさい。」
パンスト兵様が街中に飛び始める・・・。
「早く時がたたないかな・・・。後少しなのに。」
留美は遠くからしかハイグレ魔王様を見ません。理由があるのです。
「そろそろ時間よ。」
留美のもとに白いハイレグを着た女性が迎えにきた。
「はい、わかりました。」
「光輝の奴もとうとう覚悟を決めたみたいだし。もうすぐあなたのお姉さんも。」
やっとです・・・やっとお姉ちゃんをハイグレ人間にできます。
長かった・・・もう終わる。





「よし、いいぞ美優。」
「ハア・・・ハア・・・やった。」
私は特訓を続け、シュミレーションシステムをクリアした。
「まさか・・・ここまで成長するとはな。」
「ハア・・・ハア・・・・光輝さんのおかげです。」
私がそう言うと、光輝さんはなぜか悲しそうな顔をした。
「美優・・・ちょっとこっち来てくれ。」
「何ですか?」
私が光輝さんに近づこうとした時・・・。
「美優・・・・俺はお前だけは助けたいんだ。」
「え・・・?言ってることの意味がわかりません・・・。」
私がなんと言っても光輝さんは淡々と話す。
「奴の・・・ハイグレ魔王の侵攻はもう始まってしまった。」
「意味がわかりませんって!!」
「・・・・・・俺がハイグレ人間と繋がっているって言ったら納得できるか?」
私は自分の耳を疑った。
「・・・・嘘・・・ですよね・・・・・?」
私の言葉を聞いて光輝さんは静かに首を横に振った。
「だから美優だけは助ける。俺と来い。」
「みんなを見捨てろって言うんですか!!」
「この戦いに終止符がうたれる。これでもう争いは起きなくなるんだ。」
私は今まで生きてきた中でここまで悔しかったことはない。
ここに来た時、不安だった私に元気をくれたのは光輝さんだった。
留美のことを心配して泣きそうだった時も光輝さんは励ましてくれた。
なのに・・・騙されていた・・・・・。
「本当はな・・・もっと早くここは落とせた。」
「・・・・・・・。」
「ただ、情けないことに俺には美優が必要だと思ってしまっている。だから、お前だけは巻き込まないようにしようとした。だけど、気付いたらここでの生活が気に入っちまったんだ・・・美優との関係を壊したくなかった。ほんと、中途半端な奴だ・・・俺は。」
「それでも・・・・・・。」
「俺が繋がっていたのは一人のハイグレ人間だった。だけど、そのハイグレ人間がここを攻撃すると言いだした。もう・・・待てないって。」
「・・・・・・わかりました。」
「・・・行こう、美優。」
光輝さんは辛そうに私を呼ぶ・・・だけど、そんなの・・・・
「・・・・お断りします。私にも大切な人達はいます!!!」
「美優!わかってくれ!!ハイグレ魔王に勝てる人間なんているはずないんだ!!」
私は光輝さんの言葉なんて聞かない。
「もう私は光輝さんを信じられない!!」
「そうか・・・じゃあ仕方ない・・・・・。」
「・・・うっ!!」
私は腹部を殴られその場で意識を失った。
光輝さんが凄く悲しそうな顔をしていたのだけ覚えている・・・・。





留美は今、研究所にいます。
先日杏奈というお姉ちゃんの友達を監禁していた部屋に。
「いい?留美、あなたがやることは一つ。あの忌々しい小娘を消すこと。私の体に傷をつけたあのガキを。」
白いハイレグを着た女性はかなり怒りを露わにしている。
「ハイグレッ!わかっています。そこから向こうの世界に行き、お姉ちゃんを・・・・。」
「それにあの杏奈という女ももうすぐハイグレ人間に転向するわ。それで内側から破壊する。」
留美は与えられた命令をこなす。
それだけで目的は達成させられる。
「行きなさい。今のあなたならできるわ。」
「ハイグレッ!お任せください。」
留美は紫音という名の少女を消します。
「それに・・・あの小娘の姉も見つけたし・・・・・。」





「お兄ちゃ〜ん、遊んでよ〜。」
「あー、うるさい、うるさい。」
座っている俺の背中にのしかかり駄々をこねる紫音。
心配してやったのにこれだと割に合わない。
・・・あれから俺は少し考えた。

まず、紫音を俺に預けた研究員。
奴は紫音が元々強い力を持っていたと言っている。
だけど、紫音は正直、操られているような感じだった。
それに廃マンションで会ったあの子にも似ている。
なのに、研究員は姉妹でないと言い張っている。
「紫音、あの研究員とはどこで会ったんだ?」
「う〜んと・・・覚えてないや。いつの間にかここで暮らしてたんだぁ。」
紫音は笑顔で答える。
だけど、あの研究員を信用はできそうもない。

次に、あの白いハイレグ姿の女。
美優のことを知っているようだった。
何か奴と美優には接点があるのだろうか。
そして、紫音は奴を見た途端に撃ちぬいた。
因縁か・・・もしくは誰かに命令されたのか・・・・・。
「紫音、この前の奴のこと、何か知っているのか?」
「この前?美優お姉ちゃん?杏奈お姉ちゃん?」
・・・・?もしかして、あの時のことは覚えてないのか。
「あぁ、何でもない。」
覚えてないなら今はそのままの方がいいだろう。
紫音だってショックを受けるに違いない。

だけど・・・俺の考えに間違いがなければ・・・・・。
きっと研究員と美優のことを知るハイグレ人間は何か関係があるはずだ。
それで、研究員は紫音を使って何かしようとしている。
それが何かまではわからないが、紫音を道具か何かと思っている最低な野郎なんだろう。
もう地球が侵略されきるまで時間が残ってない。
何か手を打たなければ大切な人を守ることが出来ない。

「ねーぇー、遊んでよぉー。」
紫音がかなり退屈そうにしている。
「紫音・・・しばらく一人にしてくれ。」
「いや〜。」
「頼むから。」
「むぅ〜、わかったよぉ。」
ふてくされた様子の紫音はフリースペースを出て行った。





ふふふ、こちらの考えは完璧だ。
俺は地下研究所の重要室でパソコンをいじっている。
誰も入れないようにロックもかけて、ここなら人間の改造もできる。
そろそろ紫音もあの少年になつくだけの人形になっただろうか?
あの少年を外に出動させれば紫音はついていく。
そうすれば紫音はハイグレ人間を見つけ次第破壊する。
俺がそう作り変えた。
簡単だった、両親が目の前で死んだのを見た人間は心を自分の殻に閉じ込める。
そんな奴にきっかけを与えれば使いこなすことができる。
紫音もそうだった。



あれはハイグレ魔王がこの地球に来る少し前のことだ。
奴が来るのはわかっていた。だから必要な素材を探していた。
人気のない路地裏で・・・・。
「ねぇ・・・お母さん・・・・お父さん・・・・・・。」
紫音は血まみれで倒れている両親に話しかけ続けている。
小さいから死んだということも理解できずに。
女の子が着るような可愛らしい洋服もスカートも血にまみれていた。
「どうして返事してくれないの?お母さん!お父さん!」
「どうしたんだい?」
俺はそんな紫音に話しかけた。
「お、お母さんと・・・お父さんが・・・・返事してくれないの・・・。」
大粒の涙を流しながら俺に訴えかける紫音。
眼は赤くなっていて、ずっと泣いていたようだ。
「君の両親はね・・・・殺されたんだよ。」
「殺された・・・?」
泣き続ける紫音に俺は笑顔で話しかける。
「そう、もう君に話すことも、抱きしめることもできない。」
「何で・・・・何でぇ・・・・・。」
まだ涙を流し続ける紫音。
「君の両親が殺した奴・・・俺は知っているよ。」
「誰?・・・・誰なの?」
俺の脚にしがみついて犯人を教えてと言い寄ってくる。
「知りたいならついてきなよ。憎いだろ?君から両親を奪った奴が。」
「・・・・・・・・・・。」



それから紫音には色々吹き込んだ。
君の両親を殺したのはハイグレ魔王。
君が恨むべき者はハイグレ魔王。
全てはハイグレ魔王のせいだと。
子供は純粋だから助かる。
紫音はすぐに俺の言葉を信じた。
俺の命令に従う人形の完成だった。
そしてハイグレ魔王を倒すことが紫音の目的となった。
でも、今の紫音では倒せない。
だから作り変えた。対ハイグレ人間ようの人間に。
俺の操り人形の紫音は実験体になるのも喜んだ。
そう、これでハイグレ魔王と戦える。
だが、問題は一つ。
俺が紫音を作り変えたと知られたら俺はハイグレ魔王と戦うための研究員になるどころか警察の手で御用。
俺に忠実な子供の時点で怪しまれる。
それだけは避けなければ。
俺はかなり悩んだが、あることに気づいた。
堺とあの少年が河井博士の研究所を出て、俺の研究所に向かっている。
これは使える。あの少年にだけなつくようにすればいい。
ハイグレ人間を見つけるとハイグレ魔王への怒りを出させれば兵器になり、俺は誤魔化せる。
そのために紫音の記憶を消し、純粋な子供に戻す。
ただ・・・・引っかかっていることがある。
紫音に似ている少女?
紫音を手に入れた時、近くには他の人間はいなかった。
なのに・・・・姉妹がいるだと?
そんなはずはない・・・・俺の計画は完璧なのだから。
そうだ・・・俺はこの星を救った英雄になる。
人間共を操るのはハイグレ魔王じゃない、この俺だ。

あの白ハイレグを着た女も動き出しているみたいだ。
さぁ、始めようか。俺の道具・・・・紫音でハイグレ魔王を消してみせる。





「あの、美優を見なかった?」
「あぁ、里央ちゃん。見てないけど、美優ちゃんに何かあったのかい?」
私は翔さんに聞いてみたが知らないみたい。
「おかしいな・・・さっき、光輝さんに呼ばれてシュミレーションをしにいったと思ったんだけど、実践室にいなかったんですよ。」
さっきからあまり時間はたってない・・・・終わったということはないだろう。
「・・・・・最近、光輝さんの様子・・・・おかしくないかい?」
「ふぁい!?」
翔さんがあまりに突然な質問をしてきたので情けない声を出してしまった。
「美優ちゃんとよく話すなぁって。」
何だ、そんなことか。
それは変とかじゃない。翔さんが美優に好意を寄せているからそう見えてしまうんだろう。
「それは気のせいだと思いますよ。」
「そうかな・・・・さっき光輝さんとすれ違ったんだけど、凄く険しい目をしていたような。」
「あはは、翔さんは本当に美優のことが好きになったんですね。」
「嘘だと思っていたのかい?」
ジト目で私を見てくる。
怖い、怖い・・・・・。
「・・・・って、光輝さんとすれ違ったなら言ってくださいよ。どこですか?」
「えっと、所長室の付近だったよ。」
「ありがとうございます!」
私は所長室に向かって走り出す。
なんでだろう・・・・美優が遠くに行ってしまう気がした。





「あ、杏奈さん?何の真似ですか!?」
どうしたのかしら?ランクTの仲間が私を見て怯えている。
私が黒いハイレグを着ているのがそんなにおかしいかしら。
「ハイグレッ!ハイグレッ!何の真似って、私はハイグレ人間よ?ここを支配するよう命令された身。あなた達もハイグレになりなさい!!」
「きゃああぁぁぁ!!」
私は今からここの侵略を開始する。
全ては偉大なるハイグレ魔王様のために。





「失礼します・・・・。」
私は所長室に着いた。
「お前は・・・ランクXの美優の知り合いか。」
所長は椅子に座ったまま話しかけてくる。
「ここに・・・光輝さんが来ませんでしたか?」
「光輝・・・・がどうかしたのか?」
「美優と光輝さんがいないんですよ。」
『所長!大変です!!転送装置が無断で使用されていたようです!!』
廊下から誰かの声がする。
そんなことより・・・転送装置って、まさか・・・・。
「む・・・・光輝の奴が何か仕掛けてきたか。あいつは最近様子がおかしいとは思っていたが・・・・。」
所長が険しい顔をしている。
光輝さんと美優が脱走した?
美優が・・・私を裏切った?
一緒に頑張ろうって言ったのに・・・・。

『緊急連絡!緊急連絡!』

所長の通信機に連絡が入る。
「緊急連絡?一体何があった?」
『南エリアが襲撃されています!ハイグレ人間が混じっていたのです!』
「何!?被害はどうなんだ?」
『次々にハイグレ人間が増えています!ランクTが奇襲をくらったせいでこちらでは手に負えません!!まずい、こっちのエリアにも攻めて・・・きゃぁぁああ!!』
通信が切れたみたい・・・・。
「おい・・・応答しろ!何があった!!」
『ハイグレッ♪ハイグレッ♪ハイグレッ♪』
通信機からはハイグレコールしか聞こえなくなっていた。
「くそっ!!」
所長は床に通信機を投げつけている。
「ランクTから落としてくるとは・・・いつだ・・・・いつ、スパイが潜り込んできた!!」
私が思うには杏奈さんしかいない。
今までだったら私も疑わなかったはず。
でも、今の私は他人を信じることができそうにない。
「所長・・・・もしかすると、杏奈さんが。」
「杏奈か・・・・なんてことだ。ランクXの里央だったな?子供たちの救助をしてくれ。」
「え?今何て?」
「二度言わせるな。これからもとの世界への退避活動を行う。この部屋に無事のものを集めろ!」
「部屋が狭すぎませんか?」
「ここに集めるのは北エリアの奴だけだ。他の奴等は転送装置がある部屋から退避させる。」
「わかりました!」
「私はここで準備をする。緊急用の転送装置で向こうの研究所に避難するんだ。」
私は所長室を飛び出し、北エリアの子供たちを助けにいく。





『付近にハイグレ人間を感知』

機械音が俺に知らせてくれる。
それにしても、もう来たか。
俺はフリースペースへと移動する。
少年は何か考え事をしているようだ。
「あれ?紫音はどこですか?」
俺の質問を聞いて、少年はこっちを向く。
「今は一人で遊んでいる。それで、何か用ですか?」
「この付近にハイグレ人間が現れた。直ちに向かってもらいたい。少し様子を見てきてくれればいいんで。」
俺の頼みを聞いてまた考え事を始めた。
「・・・・・わかった。」
少年は立ち上がると研究所を出て行った。
あとは紫音を奴のもとに向かわせる。
そうすれば、そのハイグレ人間も消せる。
そしてあの白ハイレグを着た女も消せば、残るはハイグレ魔王になる。
俺の思惑通りだ。
あの少年をハイグレ魔王のもとへ送れれば俺の勝ち。
「ふふふふ・・・・ははははは!!」
笑いが止まらない。
俺がこの地球の支配者となるのだからな。
「・・・・・・どうしたのぉ?」
「!?」
紫音に見られてしまったか。
まぁ、関係ないことだ。
「あの男の子が外に出て行っちゃったんだ。」
「え!!私も行く!!」
紫音は慌てて外に向かう。
本当によくできた道具だよ、紫音は。





俺は研究員に頼まれた通りに外へ出た。
かなり雨が強い。
すぐに服がびしょぬれになった。
霞んでいて遠くまで見えない。
「あの研究員は何を考えているんだろう。」
ただ、外で雨に降られながらボーっとしていると誰かが歩いてくるのが見える。
水色のハイレグを着た少女・・・・俺はあの子を見たことがある。
美優の妹だ・・・・・・。
「ハイグレッ!見つけましたよ、お姉ちゃんをハイグレ人間にする邪魔した人間さんですよね?」
どうする・・・・ここでこの子と戦うのか?
やるしかないか・・・・・。
「お兄ちゃーーん!!」
「!?」
嫌な予感がする・・・・。
俺が振り返ると紫音がすぐ後ろにいた。
「何で来たんだ!今すぐ戻れ!!」
俺が言い聞かせようとした時には紫音の目は完全にあの時の目に変わっていた。
「・・・ハイグレ人間は殺さないといけない・・・・・私の憎むべき敵・・・・・。」
「紫音!!よせ!!」
俺が止めても紫音は聞こえてないかのように銃を美優の妹に向けて撃つ。
なんとかかわせたみたいだけど・・・・。
「はっ!?本物の銃!?・・・・なるほど、この子が紫音ですね。留美もあなたを倒さないといけないんですよ。」
今度は美優の妹が銃から光線を放ってくる。
「・・・・許さない・・・・・ハイグレ魔王を・・・・・ハイグレ人間を・・・・・。」
紫音は右へ左へと動き、軽く光線をかわす。
こんな動き・・・・普通の女の子ができるはずない。
元々持っていた力なんてありえない。
何かあるんだ・・・・こんな戦いをさせてはいけない。
でも・・・・どうすればいい・・・・・。
俺の耳には雨の降る音しか聞こえなくなっていた。





『ピチャ・・・・』
私の額に水滴が落ちてきた。
「・・・・ここはどこ?」
私が目を覚まして体を起こすと、周りは何もない殺風景な場所だった。
どこかの地下みたいだけど、電気はついていて明るい。
「よう・・・美優。」
「光輝さん!?」
私のすぐ横に光輝さんは座っていた。
ただ、悲しそうな表情のままだった。
「美優、ここはハイグレ魔王のいる宇宙船のある都市の地下。そう、新宿の地下だ。」
奴は新宿にいたのか・・・・。
「光輝さん・・・・どうしてこんなことをしたんですか!!」
「俺と繋がっているハイグレ人間が俺達を人間のままでいられるように話はつけてくれているらしい。これでいいんだ。これで・・・・。」
いいと言っているのに光輝さんの顔は凄く暗い。
「いいわけない・・・光輝さんも本当はそう思っているんですよね?まだやり直せます。もう一度、私と・・・・。」
「やめてくれ!!」
「光輝さん・・・・・・・。」
「もう手遅れだ・・・・杏奈さんが既にハイグレ化を始めているはずだ。」
・・・・・・・・え?
「杏奈・・・・さん?何で杏奈さんが。」
「美優が杏奈さんを助けに行った時には杏奈さんはハイグレ人間になる運命だった。向こうの世界を内側からハイグレにするため。」
「それじゃあ・・・・私が杏奈さんを助けに行ったから・・・・・。」
「あぁ・・・・そうだ。」
私が杏奈さんを連れて帰って来たのに怒っていたのはこうなることがわかっていたから・・・・?
「だから・・・もういい。このまま終わりにしよう。」
「そんなの尚更ダメですよ!!私のせいで里央や華奈、翔さん、他のみんなも危険な目にあっている。それなのに私だけ助かるなんて最低な人間です!!」
私は地下を走りだす。
新宿からなら、あの街外れは遠くない。
「やめろ!美優!!もう手遅れだ!!」
光輝さんも後から追いかけてきてる。
でも立ち止まらない。諦めたりはしない。
向こうの世界にいる大切な人達を見捨てない。



外は大雨だった。
マンホールのような出口から地上に出た私はすぐに走りだす。
ハイグレ魔王のいる宇宙船が見えた。
でも・・・空でも飛べなければ私はあの場所までたどり着けない。
それに今は戦う術がない。
今目指すのは私と杏奈さんを向こうの世界に戻した機械のある研究所。
雨が降っているからか、パンスト兵とハイグレ人間をあまり見かけない。
とにかく無我夢中で走った。



「・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・・。」
私はやっと街外れにまで到着した。
髪も服もズボンも濡れに濡れていた。
体温もかなり下がっているのか凄く寒い。
でも・・・研究所に着く直前、白のハイグレ人間が待っていた。
「やっと来たわね・・・・・。」
そのハイグレ人間は傘もささずに私を待っていたようだ。
私を親の敵のように睨んでいた。
彼女のハイレグもびしょぬれだった。
「そこを通してもらいます。」
「あんたさえ・・・・いなければ・・・・・・。」
女性は下を向く。
声が震えている・・・・・。
「あんたがいなければ!光輝が戸惑うこともなかった!!私の計画は成功するはずだった!!」
急に前を向き私を鋭い視線で睨む。
その目からは殺意しか感じなかった。
「私は光輝だけをこっちの世界に呼んだの。でも、光輝は美優を守りたいだの救いたいだの。私のことを考えずに!!どうせ、光輝もハイグレ人間にしたのに!!」
「え?それって・・・・・。」
「あんたは気づかなかったの?ハイグレ魔王様が人間のままなんてお許しするはずないでしょ。だから光輝をうまく言いくるめて、私が光輝をハイグレ人間にする。」
つまり・・・この女性は光輝さんを騙していた?
助けると言って・・・・最後には洗脳する・・・・それがこの女性の計画・・・・・。
「どうしてそんな酷いことを・・・・。」
私は俯きながら女性に聞く。
「どうして?私は光輝のことが好きなの。そのためなら他の人間なんてどうだっていいのよ。」
「あなた・・・・最低ね・・・・・・・。」
私の言葉に女性は怒りだす。
「最低ですって!?あんたこそ光輝を奪った。許せない、あんたなんて・・・・。」
女性は拳銃を私に向けてきた。
「これで光輝はあんたじゃなくて私に振り返るはず。」
「・・・・・・それで満足?」
「当然よ、私の願いが叶うんですもの。」
私はこの女性が可哀想で仕方ない。
愛情がここまで歪んでしまっている・・・・。
本当はこの人も純粋に光輝さんを愛していたはずなのに。
きっとハイグレ人間にされた際にこうなってしまったのだろう。
「さぁ・・・・死んで!!」
銃弾が私に向かって飛んでくる。
でも、かわせないや・・・・。
私は目を閉じる。
ここで死ぬんだ・・・・留美、ごめんね。
銃声が灰色の空に響いた。





「だから・・・心配かけんなって・・・・言った・・・・・だろ・・・・。」





私の心臓の鼓動が速くなる。
目を開けると、光輝さんが私の前に立っていた。
「光輝さん・・・・・?」
「やっぱり変わらねぇ・・・・美優・・・・・俺は・・・お前のことが・・・・・。」
私の目の前で光輝さんは静かに目を閉じながら倒れた・・・・・。





そうだ・・・・光輝さんと出会ったあの日。



「何だ、お前。無事な人間にしては足遅そうだな。よく生き残ったもんだ。」
「むぅ、いきなりバカにするなんて失礼ですよ。」
膨れっ面の私に対して光輝さんは鼻で笑ってきた。
「おっと、言い忘れていた。俺の名前は光輝。ここで研究員の一員として働いている。」
「私は・・・・美優・・・・。」
留美のことを思い出して急に暗くなった私を光輝さんは心配そうにしてくれた。
「お前も家族や友人をやられたのか?」
私が小さく頷くと光輝さんが私の頭を撫でてきた。
「みんなそうさ。俺も同じだ。平気だって、俺がいるからな。」
それから光輝さんはみんなと打ち解けられない私に話しかけてくれた。



「美優、まだ暗い顔してんのかよ。ほら、飯を食えば元気出るって。」



「おい、泣いてんのか?心配するな、俺は美優の味方だ。」



「美優・・・・俺はお前だけは助けたいんだ。」





「どうして・・・かばったのよ・・・・・こんな奴のために・・・・・。」
女性が声を震わせながら光輝さんを見ている。
「あんたのせいよ!あんたのせいで光輝が死んだのよ!!」
再び女性は拳銃を向けてくる。
でも・・・・怖いと言うより悲しい。
「あなたの愛はそんな風に歪んだままでいいんですか?光輝さんを騙してまでハイグレ人間にしようなんて・・・それが本当に光輝さんを好きな人がすることですか?」
そうか・・・そうだったんだ。
「う、うるさい!あんただって光輝に騙されたんじゃない!!」
「まったく違うわ。あなたと光輝さんは・・・・光輝さんの嘘はね。私を思ってくれた嘘。あなたのは自分のことしか考えてない嘘。」
光輝さんは私のことを守りたかったんだ。
私が留美を守りたかったのと同じように。
「黙りなさい!あんたを殺す!!」
「一つ言っておくわ。あなたは光輝さんを殺した・・・・・・その事実だけは拭えない!!」
光輝さんのしていたことは間違っていた。
でも、それは私への光輝さんの思いだった!!
「・・・・・・うぅ・・・・どうして・・・・・どうして、私は・・・・・いやあぁぁぁ!!」
女性が拳銃を向ける。
「まさか!?・・・ダメ!!」
再び銃声が響いた。
今度狙われたのは私じゃない・・・・。
女性は自分の腹を撃ちぬいていた。
「もうすぐ・・・会えるよ・・・・・光輝・・・・・。」
女性は微かに笑っていた。
そのまま女性も地面に倒れた。
「・・・・・・・・・・・・・・。」
私は何も言えなかった。
ただ雨が降り続ける中、女性の白いハイレグは腹部だけ血で赤く染まっていた。
「・・・・・・光輝さん。」
私は光輝さんの横に駆け寄り話しかけるが返事はない。
「聞かせてよ・・・・お前のことがの後は何て言うはずだったの?ねぇ・・・・。」
私は光輝さんに話しかけ続けるが返事は返ってこなかった。
「私は・・・・光輝さん・・・・大好きだよ・・・・・酷いこと言ったけど・・・・光輝さんのこと・・・本当に好きだった・・・・。」
だけど・・・・もうあの優しかった光輝さんはいない・・・・。
「一人にしないで・・・嫌だよ・・・・。」
何でだろう・・・泣いちゃダメなのに・・・涙しか出てこないよ・・・・。
「う・・・・う、うわぁぁぁああああああん!!」
私に降りそそぐ雨が異様に冷たく、痛かった。
しばらく光輝さんに抱きついたまま離れられなかった。



データ
http://
2010年08月01日(日) 02時46分05秒 公開
■この作品の著作権はデータさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
物語が終盤入って一気に書きたくなる。
今回の更新分です。

ハイグレ好き様、コメントありがとうございます。
これからも勢いを詰まらせないように努力します。
完結も近いと思います。