風の吹く街と約束と



「ねぇ、話しって何?」
「・・・私、もうすぐ引っ越すの・・・・。」
「どこに・・・?」
「遠い所・・・・それでね、これ・・・あげる。」
「わぁ・・・綺麗な髪飾り。」
「私とお揃い。これを持ってればまた会えるって。」
「ありがとう、大切にする。」



「私のこと・・・・忘れないでね。」


















「いつまで寝てんだぁ?」
私は目を覚ました。ただ見えてるのは雲一つない快晴の空。
ここは私のお気に入りの場所。私が通ってる学校の屋上だ。
「おい、返事ぐらいしろよ。」
突然、私の視界に男の子が入ってきた。
「きゃっ!!」
あまりに突然だったからつい大きな声を出してしまった。
「何だ?お前らしくねぇな。」
ツンツン頭のいかにもサッカー少年っぽい男の子が白い歯を見せて笑ってる。
私と同じクラスの『秀人』特に仲がいいわけではないが
私が屋上に来た時、先にいるってこともしばしばあった。
「秀人?何か用?」
秀人は笑いながら缶ジュースを渡してきた。
「もうすぐ夏休みだからって毎日授業サボってんじゃねぇよ。これでも飲めば頭が冴えんじゃないか?」
「余計な御世話ですぅ。」
秀人って一言余計なのよね。まあ、授業サボってるのは本当なんだけど。
「職員室でも噂になってるぞ、井原の奴はまた屋上か、ってな。」
「変な噂がたったもんだね・・・。」
「来年から受験生だろ?もっと自覚しろよ。じゃな。」
秀人は左手を挙げ、校舎内に入って行った。
「秀人だって受験生のくせに。」
秀人から渡された缶ジュースは私の好きな飲み物だった。
「あいつもいいとこあるじゃん。」
つい笑みがこぼれてしまった。
やっぱり屋上の風は気持ちいい。肩までかかる私の自慢のロングヘアが風にふかれていた。

私の名前は 『井原 愛夏』 高校二年生。走ることが好きで陸上部に所属している。
まあ、二年生になってから殆ど部活に出ていない。
関東大会までいけたのにもったいないって何人にも言われたっけ。
両親は大手企業で働いていて最近会ってもいない。

私が教室に戻ると勢いよく私のもとに走ってきた少女が。
青みのかかった黒色ショートヘアでピンッと主張しているアホ毛が目立つ。私の親友『土田 詩織』だった。
手足が細長く、身長も低いと言うかちっちゃい。中学生に間違われそうな見た目ながら胸の発育は私よりいい。
「愛夏どこ行ってたの?って決まってるよね。屋上でしょ〜?」
詩織はにこっと私に笑いかける。
そう言えば・・・この笑顔がきっかけだったな・・・。





この高校に入学してから二週間がたち、友達同士のグループができ始めている時期。
でも私はいつも屋上にいるからかクラスメイトには敬遠されていた。
「・・・・・・。」
私が曇り空の下、立っていると後ろから声をかけられた。
「何見てるの?」
私が振り返ると女の子は私に笑顔を見せてくれた。
「空・・・・かな。」
「あはは、何それ〜。曇ってるのに〜。」





それからは詩織、毎日私に話しかけてくれてたな・・・・。
「そうだけど?それがどうかした?」
私の素っ気ない態度がおかしかったのか詩織は声を出して笑う。
「あははは、愛夏って一日一回は屋上に行ってるよね。退屈しないの?」
「するわけないじゃない。してたら行ってないわよ。」
「それもそうだよね。」
段々近づいてくる夏休み。部活に行く気にはなれない。
無駄な時間を過ごすくらいなら屋上で風に当たってた方がいい。

「愛夏〜、一緒に帰ろ〜。」
授業が終わるとすぐに詩織は寄って来た。
「詩織?悪いけど私は今日も屋上で・・・。」
「おいしいパン屋さんがあるんだって。行こう行こう。」
私は詩織に半ば強引に連れて行かれた。

「ここだよ、ここ。すっごく美味しいパンがあるって。」
商店街の隅にひっそりと建っているパン屋。
「早く入ろうよ〜。」
子供みたいにぴょんぴょん飛び跳ねる詩織。
その度にチャームポイントのアホ毛が揺れてて、つい頭を撫でてあげたくなる。
「わかったわかった。」

『カランカラン』
店の中には犬や猫のぬいぐるみが置いてあって可愛らしい。
「いらっしゃいませ〜。」
奥の方からイソイソと出てきたのはとても綺麗な女の人だった。
「うわぁ・・・綺麗・・・・・。」
詩織が口を開けっ放しにして女の人をじっと見ている。
とても長い髪を後ろで束ねポニーテールにしている。パンのことはよく知らないけど衛生面を考えてだろう。
そして白いエプロンをつけて、優しそうな目をしている。
昔のお母さんにも少し見えた。それほど優しいお母さんと言う言葉が似合う人なんだろう。

「何にしますか?」
笑顔のまま首を傾げる女の人。そのままポニーテールも揺れる。
「詩織、何にする?」
私が置いてあるパンを見た後、詩織の方に向きなおすが詩織は女の人の方ばかり見ていた。
「詩織?何のために来たのよ。」
「え?あ、ごめん。」

・・・少しの時間が経ち。
「ありがとうございましたー。また来てください。」
お店を出ると詩織はご機嫌で鼻歌を歌っていた。
「詩織、さっきの人に見とれてたけど、どうかしたの?」
「うーん・・・私はあんなお母さんになりたいなぁって。」
詩織は子供っぽいってよく言われるから大人の女性に憧れるんだろうな・・・。
「それじゃあ、私帰るね。」
「え〜、待ってよ〜。愛夏の家に行っていいでしょ?」
詩織が私の腕を力強くつかみ放そうとしない。
「な、何で?」
「彩ちゃんに会いたいの。」
彩とは小学6年生の私の年の離れた妹だ。
「止めといて・・・彩は織になついちゃってるから。」
「えぇ〜。行く、もう決めた。」
詩織は言い出すと効かない。仕方ない、連れていくか。



「ただいま。」
私の家は何か嫌だからあまり友達を入れない。
詩織は愛夏の家じゃないと嫌って言って今じゃよく来る始末。
「彩ちゃ〜ん!いる〜?」
「詩織お姉ちゃん?今行く〜。」
彩が二階から勢いよく階段を下りてくる。
大きな瞳をしていて、紅葉みたいな手には私もよく癒されている。
前髪が二重になっていてM字を描いてる髪型。インテークがよく似合っている。
正直、私はこの髪型にできる彩が凄いと思う。何か抵抗が・・・。
「彩ちゃん、元気にしてた?」
「うん!詩織お姉ちゃんの方は?」
「私も元気一杯。」
何か詩織と彩の方が姉妹に見えてしまうほどだ。
私は人付き合いが得意ではないから友達もなかなかできないでいた。
だから詩織との出会いは私の生活を変えた。
「あ、そうだ。愛夏お姉ちゃん、さっき美幸お姉ちゃんから電話があったよ。」
「姉さんから?」
私には妹と姉が一人ずついる。『美幸』姉さんは大学生で全寮制の学校に通っている。
凄く頭がよくて両親からも期待されている。私には関係ないけど。
「それで何だって?」
「う〜ん・・・よくわかんないの。美幸お姉ちゃんの周りの音がうるさかったし、美幸お姉ちゃんも慌ててたから。」
彩が少し困った表情をしている。
「美幸姉さんがね・・・大学に通い出してから電話なんてしてこなかったのに。」
はっきり言うと美幸お姉ちゃんは私と彩のことをあまり好きではなさそう。
勉強してるときもよく邪魔しちゃって怒られてたし。
「ほらほら、あまり考えてばっかいても仕方ないでしょ。パン買ってきたんだし、みんなで食べようよ。」
「本当?やった〜。」
詩織と彩はキッチンに向かう。
「もう・・・あの二人は。」
私も家にあがり、キッチンへ向かった。
「詩織と彩は座ってなよ。何か作ってあげるから。」
私は冷蔵庫の中身を確認しながら思う。
もうすぐ夏休み、詩織が一緒に海に行こうと言ってた。
海か・・・潮風が気持ちいいんだろうな。
なんだかんだで楽しみな私はそれが表情に出てしまっていた。
「あれ?愛夏嬉しそうだねぇ。どうしたの?」
「べ、別に・・・。」



「愛夏、また明日ね。」
時間はすぐに過ぎる。
辺りが暗くなっているのに気づいた詩織は慌てて玄関に向かった。
「バイバイ、詩織お姉ちゃん。」
「バイバイ彩ちゃん。」
詩織は扉を開けると走って帰って行った。
「それじゃあ彩はお風呂入って寝なさい。」
「はーい。」
彩は小走りで風呂場へ向かって行った。
「ふふっ・・・。」
私は風呂場に入っていく彩を確認すると、二階に上がった。
ベランダに出て夜風に当たる。今夜の風は強く、なびいている髪を手で押さえる。
風にばっか当たってバカじゃないの?とか言われることも多いけど関係ない。
私は好きなことは隠さないって決めてる。
自分に嘘ついても楽しくなんかないから。

でも私の生活は本当に満足できるものなのだろうか?
最近はそんなことばかり考えてしまう。
理由は自分でもわからなかった。

「お姉ちゃん、お風呂空いたよ〜。」
彩がバスタオルで髪を拭きながらベランダに出てきた。
「彩、髪が濡れたままベランダに出たら駄目って言ったでしょ。風邪ひいちゃうわよ。」
「平気平気、今日暖かいもん。」
バスタオルを肩にかけて、私に笑顔を見せる彩。
風呂に入ったからセットされていた髪がクシャクシャになっていた。
「彩ったら・・・。じゃあ私はお風呂入ってくるから、彩はもう寝なさい?」
「うん!」
彩は自分の部屋に入って行った。
「満足・・・していいよね。」
私はいつものようにベッドで寝ることにした。





あっという間に朝はきたが、妙に体がだるい。
「おはよう・・・彩・・・・・。」
「ど、どうしたの、お姉ちゃん?」
彩が心配そうに私を見ている。
彩は早起きだから髪の毛のセットにはこだわっている様子。
もうしっかり整っていた。
それに引き替え、私は寝ぐせでボサボサだ。
「もう学校行くね〜。」
彩は鞄を持って家を出て行った。
私も早く行かないと・・・と思いつつも眠い。
「学校面倒だな・・・・。」
一度溜息をつくと、学校の準備を始める。
今日はいい天気なんだし、昼休みには屋上に行こうっと。
私も支度を済まし、家を出た。
やけに暑い。夏だし当然か。
私は早足で学校に向かった。
「えっと・・・今何時かな?」
私の血の気が引いていく。
もう授業始まっている・・・・。
私、出席日数危ないのに。
急ごう、急ごう、急ごう。
私は走りだすが、学校の近くに来ると、前から誰かが走ってくる。
同じクラスの女の子だ。
「井原さん!助けて!」
クラスメイトは私に助けを求めてくる。
「何があったのか説明してくれない?」
「パンスト被った奴がみんなをハイグレにして!」
どうしよう・・・まったく意味が分からない。
「そういうことは警察に言ってね。」
できる限りの笑顔で言う。
「警察の人もハイグレにされちゃったの!」
「は・・・・?」
「いやっ!!来た!!」
クラスメイトが怯えている。
私が視線を前に戻すと、とんでもない奴がいた。
パンスト被ってオマルに乗っている変質者がいた。しかも飛んでいるし。
それに・・・銃を持っている!?
これはまずい、もしかして犯罪者?
「いやよ!私はあんなの嫌!!」
クラスメイトが私を置いて逃げようとする。
パンストを被った奴は持っている銃で逃げているクラスメイトを撃った。
「!?」
私は突然の出来事で動けない。
撃たれたクラスメイトが黄色のハイレグ水着姿になっていた。
「何・・・?何で・・・・!?」
「いやぁ・・・・ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
今度はコマネチを始めた・・・。
でも、苦しそう。このパンストを被った奴の銃に撃たれたせい?
「うっ・・・・・。」
パンストを被った奴の次の獲物は私だ・・・。
撃たれたらこの子同様あの姿にされる。
でも、逃げる余裕もない。
「伏せて!!」
背後から声が聞こえた。
私は慌てて伏せた。
それと同時に銃弾がパンスト被った奴の乗り物に命中した。
壊れたオマルは遠くに飛んで行った。
「もう平気よ。」
私は立ち上がり、声のする方を向いた。
そこには赤髪で長髪の女性が立っていた。
おそらく20代後半だろう。
「あの・・・助けてくれてありがとうございました。」
私が頭を下げてお礼を言うと、女性は表情一つ変えず言う。
「いいのよ。この辺も危険ね。事情の説明もしたいから、ついてきてくれる?」
女性は私の返答も待たず、走り出す。
私も急いで後を追いかける。
「どこに行くんですか!」
走りながら質問をするが、答えてくれない。
と思ったら女性は私の通う学校に入っていく。
「え・・・・?」
私もついていくが、一体どこに行くんだろう。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
グラウンドにも校舎内にもハイレグ姿の人ばかり。
男でもあんな姿にされて、コマネチをしている。
「こっちよ、早く!」
女性に誘導されて、校舎内でも人気の少ない場所にきた。
ここは倉庫の近くだから人が寄り付かない。
「この部屋よ。」
女性が入って行ったのは体育祭で使う用具などが保管されている部屋だ。
もう長いこと使われていないはず。
「うわっ、ほこりっぽい。」
物にほこりが被っている。
かなり不快な場所だ。
「ここに蓋があるでしょ。」
女性が床を指さす。
確かにマンホールのようなものはある。
「この中よ。急ぎましょう。」
女性はマンホールの蓋を開けて中に入っていく。
梯子がかかっているみたいだけど、少し不安。
「何しているの、早く入って来なさい。」
「・・・・・・。」
私も渋々梯子を下りて行った。
しばらくすると、変わった場所に着いた。
辺り一面が白い部屋だった。
扉がいくつかあって、ここが中心なんだろう。
「この部屋よ。」
女性が開けようとしているのは随分と頑丈そうな扉だった。
「あのぉ・・・あなたは誰ですか?」
私の質問に女性は軽くため息をつく。
「あたしに名前なんて聞かないで。」
そういうと女性は部屋の中に入って行った。
「・・・・・・・・。」
私も後に続いた。
中に入ると、でかいモニター画面とその前に立派な机、それに革の椅子がある。
椅子はモニターの方を向いていて誰が座っているかわからない。
その横にはロングヘアで金髪のメイド服?を着た女性がお辞儀をする。
「ようこそいらっしゃいました。愛夏様ですね、お話は伺っています。」
「私のことを知っている?」
「それについては私がお話しします。」
澄んだ声が聞こえたと思ったら、革の椅子がこちら側を向く。
そこには私と同い年くらいの女の子が座っていた。
髪は黒で凄く長い髪の毛をしている。
「あなたは・・・・誰ですか?」
「私は『相沢 一香』この施設の第一責任者です。」
はい?この施設?
「ここって何ですか?今、何が起きているんですか!?」
つい私は取り乱してしまう。
「落ち着けって。」
私が入ってきた扉が開く。
そこには秀人が立っていた。
「な、何であんたがいるのよ。」
「そっちの女性とばったり会ってさ。ここに案内してもらったんだ。」
秀人は私と同じ女性に案内してもらったらしい。
「それでは話を戻します。今、地球はハイグレ魔王に侵略されています。お二人は相手の武器を見たと聞いたので、ハイグレ人間についての説明は必要ありませんね。」
一香さんが話し始めた。
「ハイグレ人間って、あの水着を着せられた?」
「はい、その通りです。あの姿にされた人間はハイグレ魔王の言いなりになってしまいます。それで、私達はそれに対抗するため、研究を始めました。」
「研究?ここが研究所とでも言うの?」
「いいえ、ここは本拠点との連絡のために用意した、いわば避難場所です。」
なるほど・・・一香さんの言うことは大体わかった。
「でも、ここは学校よ?公共の施設にこんなものを作っていいの?」
「相沢家の御令嬢だからだろう。」
秀人が何か言った。
相沢家の御令嬢?何それ。
「お前、知らなかったのか?一香さんの祖父はこの学校の校長だぞ。それに父親は海外で活躍している。相沢家は大富豪だ。」
「え?それ本当ですか?」
秀人の方を向いていた私が一香さんの方に視線を戻す。
「はい、そうです。ですが、そんなことはどうでもいいのです。ここは避難場所にすぎません。いつ見つかるかはわからなくて危険なのです。本来なら今、私もハイグレ魔王撃退用の研究所にいるはずだったのですが、ハイグレ魔王軍が攻めてきたのが早すぎたのです。そのせいで父とも連絡がとれなくなり、ここに隠れることしかできなくなったのです。」
「それじゃあここで待つの?」
私が質問をすると、メイドさんの方が答える。
「いいえ、今日の深夜に本拠点への移動を開始します。ですから、今は雇わせていただいた、そちらの方に無事な人間の救助活動を行っていました。」
私を助けてくれた女性って凄い人なのか。
それで私と秀人は助けられたんだ・・・。
でも・・・何か引っかかる。
「そうだ!彩は!彩は無事なの!」
「落ち着け、俺と一緒に彩ちゃんも救助された。今は部屋にいる。」
秀人が私をなだめる。
「よかった・・・彩に何もなくて本当によかった。でも、詩織は無事かな・・・・・。」
「土田のことはわからねぇ。まだ逃げてるかもしれないし、もう・・・・。」
詩織・・・怖がってないかな・・・・。
今も追われてるのかな・・・。
「・・・ではあたしは引き続き救助活動を行います。」
女性はそのまま出て行った。
「親族やお友達のことは気がかりでしょうが、今は部屋でお休みください。レイシア、お二人を部屋に。」
「はい、一香様。」
メイドさんは私と秀人を連れて、部屋を出た。
さっきの白い中心の部屋でメイドさんが挨拶をする。
「申し遅れましたが、私は一香様にお仕えする『レイシア・ギルディード』です。」
外国人だったんだ・・・・そういえば、瞳の色も青い。
「私は井原愛夏。こっちは秀人。」
「名前だけ言うな。」
秀人にあきれ顔で突っ込まれた。
「愛夏様、秀人様、それではお部屋に。」
レイシアさんがさっきと違う扉を開く。
そこには彩が退屈そうに椅子に座っていた。
彩は私と秀人に気づくと走ってきた。
「愛夏お姉ちゃん、秀人お兄ちゃん。」
「彩・・・よかった。」
私はギュッと彩を抱きしめた。
「愛夏お姉ちゃん・・・苦しいよぉ・・・・・。」
彩はバタバタもがく。
「あ、ごめんね。彩が無事だったのが嬉しくて。」
私と彩が話していると秀人がレイシアさんに話しかけた。
「あの・・・俺も外に出てはダメですか?」
「・・・・あまり好ましくはありません。ですが、私はそのような権限を持ち合わせていません。それなりの理由があるのでしたら、お止めはしません。」
「じゃあ俺は行かせてもらいます。」
秀人が真剣そうな表情で部屋を出て行った。
私も詩織のことが心配。
ああ見えて内面もろい子だからな・・・・。
「レイシアさん・・・。」
私も外に行くと言おうとすると、彩が私を不安そうに見ている。
「彩、私もちょっと外の様子を見てくるね。」
「嫌だよ・・・行っちゃやだ。」
彩が泣きそう・・・・。
でも、私でも詩織や誰かを救えるなら行きたい。
「彩、わかって。詩織を助けたいでしょ?」
「うぅ・・・でも・・・・・。」
「愛夏様、もしよかったらこれを。」
レイシアさんが私に銃を渡してきた。
「あの・・・これで撃つんですか?」
いくらなんでも本物の銃で撃つなんてできない。
「これはアクショントリモチガンでしたっけ。そのようなものだと伺いました。直接怪我をさせるものではないので、護身用にお持ちください。」
「あ、ありがとうございます。」
これがあれば、きっとなんとかなる。
それに、武器を持ってない秀人も心配だし、私が行かないと。
「レイシアさん、彩をお願いします!」
私も部屋を出る。
後ろから彩の呼ぶ声が聞こえたけど、止まっている余裕はない。





DY
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2010年08月14日(土) 02時23分00秒 公開
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■作者からのメッセージ
どうも、DYです。
この作品は本来ならばデータさんの作品です。
けれども、本人の了承を得て、書かせてもらいます。
はっきり言ってストーリーをこうしてくれということは言われてないので自分流でいきます。
別にデータさんに頼まれたわけではないので。
私がやりたいからやるだけです。
詳しい事情は説明できませんが、色々あるようです。