ハイグレは戦いと共に



「起きてください。」
私は変な声に起こされた。
「今何時よ〜・・・まだ夜中の2時じゃないの・・・・・。」
私は再び寝ようとする。
「起きてください!!」
「ひゃあぁぁ!!」
一際大きな声に私は飛び起きてしまった。
「何よもう〜。」
私は目をこする。段々視界がはっきりしてくる。
「は・・・・・?」
「目を覚ましましたか。」
何だろう・・・・何か普通じゃないことが起きてる。
「ビー玉が喋ってる・・・・・・。」
私の枕元にあるのは青いビー玉だった。
「ビー玉ではありませんよ。私はアクションストーンタイプBです。」
私は正座してもう一度ビー玉を見る。
「・・・・・やっぱりビー玉じゃない。」
「違います!私はあなた方の星を守るために来たのです。」
さてはこのビー玉は誰かの悪戯だな・・・・。
私を夜中に起こす作戦なんだ。こんなおもちゃセットしちゃって・・・。
私・・・負けないわ。
「へぇ〜、この星をね・・・・凄いね。」
「わかっていただけましたか。」
「じゃ、頑張ってこの星守ってね♪おやすみ。」
私は再び布団に入る。
これは夢なんだ。さぁ、寝よう。
「あなたの力が必要なんです!!このままだとこの星は侵略されてしまいます。」
「・・・・・・・・・。」
私は黙って立ちあがる。
そして、ビー玉をつかむ。
「何を!?」
「うるさい。」
私は引き出しにビー玉を突っ込んだ。
「ダメです、話を聞いてくださ・・・」
『バン!!』
思い切り引き出しを閉めた。
「よーし、寝よっと。」
私は布団に入り、深い眠りにおちていった。





「う〜ん、いい朝〜♪」
私は伸びをして、朝日を浴びる。
『小川 美奈』これが私の名前だ。
黒髪のロングヘアですよ。
普通の高校1年生です。普通の。
「美奈〜?文子ちゃん来てるわよ〜。」
下からお母さんが私を呼ぶ声がする・・・・。
「へ?ヤバッ!もうこんな時間!!」
私は急いで制服に着替えて、鞄を手にとり部屋を出た。
「おやおや?今日も遅刻ギリギリになるつもりかな?」
玄関では女の子が待っていた。
かなり髪を伸ばしている少女『野村 文子』私の友達。
基本的に登校は一緒。
「ちょっと聞いて。夜中にさ、変なビー玉に起こされたのよ。」
「・・・・変なのは美奈じゃない?」
ちょっと酷いこと言われた・・・・・。
「ほら行くよ。遅刻なんて嫌だからね。」
「わかってるって。」
私と文子は学校に向かってダッシュ。



『キーンコーンカーンコーン』
「あぁ、鐘が鳴っちゃった。」
門をくぐったところで鐘が鳴った。
「間に合う間に合う。急げーーー!!」
教室へラストスパートをかける。
「小川、野村、遅刻な。」
「「はーい・・・・。」」
間に合わなかった。



「もう、何が間に合うよ。普通に遅刻じゃない。」
昼休み、文子とお弁当を食べながら会話中。
「今日の遅刻はビー玉のせいなんだって。」
「まだ言うの?ビー玉が何したって言うのよ。」
「夜中、たたき起されたのよ。」
私と文子が言い合っていると、ツインテールをした子が来た。
「隣・・・座ってもいい?」
「あ・・・うん、いいよ。」
同じクラスの『水澤 明』おとなしくて恥ずかしがり屋だからあまり話せていない子。
容姿は凄く美人さんなんだけどね。
「それで?ビー玉にたたき起されたって、どういうこと?」
「いきなり夜中に起こされたのよ。」
「美奈は嘘が下手だね〜。そんなの信じれないでしょ。美奈じゃなかったらバカにするなぁー!って怒ってたよ?」
文子が冗談交じりかどうかは知らないが、信じてくれない。
まあ当り前か。今度ここに持ってくれば信じるかな。
「ねぇ、あれ何?」
クラスの生徒達が窓際に集まってる・・・。
「どうかしたのかな?」
「わっかんない。」
私と文子は立ち上がり、窓の外を見る。
「うわっ!?何!?」
どう見てもパンストを被った人間がオマルかなんかに乗って飛び回っている。おまけに銃を持ってる。
『きゃあああ!!』
撃った!人を撃ったよ!?
衣服が透けて・・・・!?水着姿になった・・・・・。
「ハイグレッハイグレッハイグレッ。」
しかも・・・その姿になった後はコマネチって・・・・。凄く苦しそう。あの銃でおかしくされたの?
あの銃には人をおかしくしてしまう力があるの?
「・・・・・・・・・・。」
生徒達は絶句している。
・・・・パンスト人間がこっちに気づいて、飛んでくる。
「きゃあああ!!」
「うわあああ!!」
生徒達は慌てて逃げ出す。我先にと、教室を出て行った。
「ど、どうしよう、美奈!!私達も逃げないと。」
「うん、そうだね。」
私と文子は教室を出た。
「は、早く外に。」
階段を下りようとするが・・・・。
「待って、そこの人達!!」
教員ではない大人の女性がいた。
見た感じおっとりしているように見える。かなりスタイルもいいし、髪もサラサラ。
「今、外に出るのは危ないわ。こっちに来て。隠れれる場所があるの。」
その女性は走って上の階に。
「どうする?」
「今、外に出るよりはいいと思う。ついていこう。」
私が上に進み出すと文子もすぐ後をついてきた。
「この部屋よ。早く!!」
女性は小さい部屋に入って行った。
この学校にあんな部屋があるなんて、生徒ながら知らなかった。
私と文子が入るのを確認すると、扉を閉めて、電気をつけた。
「これでしばらくは安心ね。」
「あの・・・・何がどうなってるのか、わからないんですけど。」
文子は困った感じに言う。
私も同感だけど・・・。
「まぁ、簡単に言うと宇宙人の侵略かな。」

『このままだとこの星は侵略されてしまいます。』

あのビー玉がそんなことを言ってたような・・・。
「私はこの侵略活動を止めさせるためにここに来たの。でも、敵の勢力は予想以上だった。私達人間では歯が立たないの。」
「そ、それじゃ・・・・このままあの姿にされるのを待つの?」
文子の声が震えてる・・・・。
「今の状態では・・・・新しい武器の開発はすすんでいるから、それさえ完成すれば・・・・・。」
女性は諦めてるような感じがする・・・・そう言えば・・・・・。

『私はあなた方の星を守るために来たのです。』

ビー玉はこんなことも言ってた・・・・。
もしかして、この状況を解決させる方法を知ってるのかも・・・。
だとしたら、やるしかない。
「あの・・・・私、ちょっと行ってきます。」
私が部屋を出ようとすると、二人は止めてきた。
「ここを出るのは危険です。」
「そうだよ美奈。ここにいれば、すぐにはやられないんだよ。」
結局はやられる、ただやられるのを待つ・・・それだったらビー玉にでも賭けた方がいい。
「平気・・・・行ってくるね。」
「駄目だよ、美奈!!」
文子の声が聞こえてきたが、私は行かないといけない。
可能性があるなら・・・・。
「うわ・・・・・・。」
グラウンドはもう災害後だった。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
どこを見てもハイレグ姿の人達。
案の定、さっき飛び出して行った生徒達はハイレグ姿でコマネチをしている。
あの女性がいなかったら私達もこうなっていたのだろう・・・・。
でも・・・・なぜかみんな笑顔だったり幸せそう。
まさか、ずっとコマネチしてるとやめられなくなるの?
「急がないと、お母さん達が心配・・・・。」
私は駆け出す。自宅目指して全力疾走。





結構な距離を走った。
だけどもう少しのところでばてた。
「はあ・・はあ・・・・もうちょっとなのに。」
しかも最悪のタイミングでパンスト人間が飛んできた・・・・・。
「もうダメなの・・・?」
私が目を瞑った瞬間、パンスト人間は発火した。
「え・・・えぇー!!何なの!?」
とにかくパンスト人間はパニックになってる。
今のうちに逃げよう・・・・・。
私はやっとの思いで帰宅。
「・・・はあ・・・・・ただいま・・・。」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
お母さんが黒いハイレグ水着を着て、玄関でコマネチをしている。
遅かった・・・・。親が子供に向かってコマネチしてるって・・・何か異様。
でも、お母さん以外はいなかった・・・・。
「あ、そうだ。」
私は階段を駆け上がり、部屋の引き出しを開く。
「おぉ、やっと戦う気になりましたか。」
ビー玉は相変わらず喋ってる。
「そんなことより、なんとかしてよ。パンスト被った連中が追いかけてくるし、お母さんはおかしくされちゃったし・・・。」
「落ち着いて・・・これはハイグレ魔王の仕業です。」
「ハイグレ魔王?何それ・・・・?」
もう訳わからない。何?魔王って・・・。
「この星から言えば、宇宙人です。奴らはこの星を乗っ取ろうとしています。」
「だからそれを防ぐためにビー玉はいるんでしょ?」
「ビー玉ではありません。アクションストーンタイプBです。」
「わかったわよ、で?アクションストーンはこの星を守ってくれるんでしょ?」
「私だけでは無意味です。あくまで私は力の源です。本当のアクションストーンはアクション仮面を呼び、ハイグレ魔王を倒すのですが。」
「じゃあそっちにしてよ!」
「そうはいかないんですよ・・・。この星にアクション仮面を呼ぶことは不可能なんです。だから私は開発されたんです。」
「何しろって言うのよ!!・・・・って、きゃあ!!」
私は気づいてなかった。窓の外にパンスト人間がいた。窓を壊そうとしている。
「嫌あぁぁぁ!!」
私はビー玉を手に取り、玄関に向かった。
靴紐を結んでいるとビー玉が話しかけてくる。
「つまり、適合者が必要なんですよ。私の力を受け止められる器を持つ人間が。」
「その人探せっての?」
「あなたなんですよ!美奈さん。」
「はぁ!?私のわけな・・・・。」
玄関の扉を開けた時に私の動き止まった。
2体程、パンスト人間がいた。
「ひぃ・・・やられる・・・・・。」
「美奈さん、私を胸元に置いてください!」
「え・・・?」
「やられたくなかったら急いでください!!」
私は右手でビー玉を握り、胸元へ運ぶ。
「こ、こう・・・?」
「はい、そうです。」
まずい、パンスト人間が銃を向けてる・・・・。
「じゃあ変身しましょう。」
「は?」
「簡単です。アクションって唱えるだけですから。」
「えーい、どうにでもなれ!・・・アクション!!」
その瞬間、私を光が包んだ。
・・・制服姿だったはず・・・・私の服は手首から足首までを覆う、青いスーツになっていた。白いラインが所々に入っている。
髪の色はいつの間にか青くなっていて、ポニーテールにまとめられていた。そして頭には大きなリボン。
「うわ・・・何これ。凄く恥ずかしいんだけど・・・。」
「これでいいんです。今のあなたはアクションブルー。とてつもない力を内に秘めています。」
な、名前が・・・・。
「そんなこと言われても、見た目以外に何が変わったの?」
パンスト人間の銃から光線から放たれる・・・。
普通なら確実に命中する距離だった。だけど、当たってない。かわせた・・・・。
「凄い・・・・素早くなったの?」
「力も格段に上がったはずです。」
ビー玉の声は私の心に直接響く。
「よーし、お母さんの仇だ!」
私は上空にいるパンスト人間に向かってジャンプする。かなり高く跳べ、パンスト人間の顔面にストレートをいれた。
そのままパンスト人間は吹っ飛んで行った。
「もういっちょ!!」
二体目は光線放ってきたが、軽くかわし、今度はアッパーをくらわした。そのまま遥か上空へ・・・。
「やった!できたよ、私!!」
「まさか・・・肉弾戦で戦うとは・・・・。」
「え?そうするものじゃないの?」
「今は狭かったからいいですが、これが広い場所だと不可能です。」
「じゃあどうすればいいのよ。」
「地面に手のひらをつけてください。」
言われるままに右手のひらを地面につけた。
「技の解放は解放と言えばいいんです。」
「け、結構単純なのね・・・解放!!」
そう言った瞬間、私の10m先くらいで激しく水柱が立った。
「うわ・・・何・・・・。」
「それがあなたの力です。さあ、行きましょう。人々を助け、ハイグレ魔王を倒すんです。」
「こうなったらやってやるわよ。まず、学校に行くわよ!」
私は走りだす。これなら戦える。奴隷になんてなり下がるもんか!!



「でも、学校に行った後はどうするの?」
「まずは私が作られた研究所で詳しい事情を聞いてください。」
研究所?そんなものがあったなんて・・・・。
「どこにあるのよ。」
「この街の外れにあります。」
「いや、わかりにくいでしょ!」
ビー玉と会話していると、前方からパンスト野郎共が来た。
「来ましたよ!」
「任せといて!・・・・解放!!」
パンスト野郎は地面から現れる水柱によって青空に消える。
「あれ?しっかりと敵のいる場所から噴き上げてくれるんだ・・・。」
「なかなかの腕前です。」
「・・・って、急がないと文子が心配。」
また走り出す。だけど息があがらない。
変身していると、全体的に運動能力が上がるみたいだ。



「ふぅ、戻ってきた。」
学校に戻った私。だけど、グラウンドでは生徒達がずっとコマネチをしている。
「そのハイグレ魔王を倒す以外にみんなを元に戻す方法とかないの?」
「残念ながらありません。」
はっきりと言ってきた。
「とにかく、文子の隠れてる部屋に。」
私はさっきの小さな部屋に向かった。



「文子!平気!?」
扉を開けると、そこには文子と女性は座っていた。
「だ、誰・・・?」
「何言ってるの?私だよ、美奈。」
「美奈はそんな格好しないよ・・・・。」
ちょっと傷ついた・・・・。
髪型と格好だけで違うと思われるなんて・・・・。
「どうやって元の姿に戻るの?」
「これも簡単です。ただ、解除と唱えるだけです。」
「本当に簡単だね・・・解除!」
私はまた光に包まれた。
普段のブレザー姿。普通のスカート。
リボンも消え、髪は黒いロングヘアに戻っていた。
右手にはビー玉が握られていた。
「美奈・・・・?本当に美奈?」
文子は瞬きを繰り返している。
「まだ疑ってるの?」
「あ・・・疑ってごめん。でも、今の姿は何?」
「これ?そうだね・・・ビー玉、説明してあげて。」
私がビー玉をつまみ、文子の方に見せる。
「だから、ビー玉ではないです・・・・・。えっと、私はアクションストーンタイプBと申します。美奈さんが変身できるのは私の力によるものなのです。」
「それって誰でもできるの?」
「いいえ、これは私と相性のいい人でなければなりません。この星で私の力を使い変身できるのは美奈さんだけなのです。」
「ふーん、何か凄い。」
文子は物珍しそうにビー玉を見ている。
「アクションストーンタイプB・・・・そんなものがあるなんて・・・・・。」
女性は口に手を当てて何か考えてる様子。
「ねぇ、ビー玉。あなたが作られた研究所に行くんでしょ?街外れって言われてもわからないよ。もっと具体的に説明してよ。」
「だから、ビー玉じゃないと何回言えばわかるんですか・・・・。えっと、行きながら説明しますよ。」
「了解。文子と・・・・名前なんでしたっけ?」
女性の名前を聞いてないことを思い出した。
「そうね、自己紹介がまだだったわ。『津田 愛紗美』よ。」
「私の名前は・・・。」
「小川美奈ちゃんでしょ。文子ちゃんから聞いたわ。」
「あ、そうでしたか。よろしくお願いします、愛紗美さん。」
「美奈さん、そろそろ行きましょう。事態は一刻を争います。」
「うん、そうね。」
私と文子と愛紗美さんは部屋を出てグラウンドに向かった。



グラウンドにはパンスト野郎が何体も飛んでいた。
「多いな・・・・。」
「み、美奈・・・。」
「美奈さん!!」
「わかってる!」
ビー玉をつかむ。
「行くよ!アクション!!」
体は光に包まれ
私の姿は再びアクションブルーの格好になった。
「覚悟!・・・・解放!!」
水柱が次々にパンスト野郎を吹っ飛ばす。
「凄い・・・・美奈・・・・・・。」
「大したことないなぁ。」
「美奈さん、急いでください。援軍が来るかもしれません。」
「そうね、行こう、二人とも。」
私達は走りだす。とにかく今は研究所を目指す。





何体ものパンスト野郎を倒して、なんとか研究所の前に到着した。
まさか、スクラップ置き場に地下に続く階段があるなんて。
私はここに1度か2度来たけど、気がつかなかった。
「この中に私を作った方がいます。彼女の技術力はこの国でもトップクラスとのことです。」
「女の人が作ったの?」
「はい、そうですが。」
何か意外だった。
あれ?愛紗美さんが難しい顔をしている。
「愛紗美さん、どうかしたんですか?」
「美奈ちゃん、さっきは言わなかったけど、私は政府の者なの。」
「「えぇー!?」」
私と文子はつい大きな声をあげてしまった。
だって政府の人って・・・・そんな人が何で・・・・。
「でも政府の人達が集めた研究者の力ではあのパンスト被った奴ですら倒せないの。それなのに、ここにいる研究員は人を変身させる武器を開発できている。一体どういうことかしら。」
「その質問には私がお答えしましょう。」
階段をゆっくりと上がってきたのは白衣を着た、鋭い目つきをしている女性だった。
髪も少し荒れていて、研究に打ち込んでいるのがわかる。
「あなたはここの研究員ですか?」
愛紗美さんが研究員と思われる人に一歩近づき質問する。
「そちらは私を作り出した方・・・『大城』様です。」
「え?ビー玉を作ったの、この人なの?」
「び・・・ビー玉・・・・・・?」
私の言葉に大城さんは苦笑いをしている。
なぜだろう・・・・。
「とりあえず中へどうぞ。」
大城さんは階段をゆっくりと下りていった。
私達もそれに続いていった。



「うわぁ・・・・本当に研究所だ・・・・・。」
階段を下りた所は私が見たことのないものばかりで埋め尽くされていた。
忙しそうにフロアを移動している研究員ばかり。
「さぁ、こっちよ。」
大城さんは階段の近くにある部屋に入っていく。
「ここは私達がかなり前から用意していた研究所。こうなる日が来るんじゃないかって思ってた。」
大城さんは部屋の真ん中でこっちを向かずに話し続ける。
「それで、青髪の子。あなたがタイプBの適合者なのね?」
大城さんが私を指さす。
「はい、そうです。」
「あのぉ・・・ここの技術力が高いのはなぜなんですか?」
愛紗美さんはどうしてもそれが気になるようだ。
「簡単ですよ。ここにいるのは政府の雇っている研究員の数段上の人達。隠密に人材を集めていたのよ。」
「うわぁ・・・凄い徹底的。」
「そうでもしなければハイグレ魔王には勝てない。」
「な、なるほど・・・・。」
愛紗美さんは黙って一人考えだした。
「大城さん、アクションストーンって一体何なんですか?」
「アクション仮面の力を授かれる、知能を持った最終兵器よ。これを作るには地球の物質だけでは不可能なの。」
「最終兵器・・・・・。」
「青髪の子、一つ言っておくわ。アクションストーンは3つあるの。」
「3つ!?本当なの?ビー玉。」
「ビー玉ではないですって。・・・・3つあるのは本当です。私ことタイプB。他にタイプR、タイプGがあります。それぞれに適合者が必要なのです。」
「アクションストーンタイプB、Rにはそれぞれの適合者を探し出す力がある。そしてタイプBはあなたを見つけ、ここに戻ってきた。だけど、タイプRは戻ってこない。」
大城さんはため息をついている。
「タイプGっていうのは・・・?」
今まで黙っていた文子が質問する。
「タイプGは自己詮索能力をつけるのに失敗してしまったの。だから今はここに。」
大城さんが緑色のビー玉を見せる。
「あら?もしかしてここに私の適合者がいるんじゃないかしら?」
緑のビー玉も喋るんだ・・・まあ、それはそうか。
それに個性もあるんだね・・・・・。
「あぁ、それは言えてるわね。そこの二人はあの部屋に入ってきて。」
大城さんは奥の扉を指さす。
「あの中なら適合者かどうかを調べれるの。それに、潜在能力の確認もできるわ。」
「わかりました。ほら、愛紗美さん、行きましょう。」
文子と愛紗美さんが奥の部屋に入って行った。
そのすぐ後、研究員が入ってきた。
「大城さん、大変です!この付近にある倉庫から強い力を感知しました!!」
「かなり近くじゃない。その力は敵のものなの?」
「はい・・・おそらくは。」
「くっ・・・・今、この場所を知られる訳にはいかないのに。」
大城さんも研究員も動揺を隠せない。
拠点となるこの場所を落とされたら、終わりなのだろう。
だとしたら・・・・・
「私見てくる!行くよ、ビー玉!!」
「ま、待ちなさい!状況がいまいちつかめてないのに突撃するなんて危険よ。」
「平気ですよ。なんせ私は変身で凄い力を使えるんですから。」
私は部屋を飛び出し、階段を駆け上がって行った。





「あ、あれが倉庫かな。」
私はスクラップ置き場から5分ぐらいで倉庫に着いた。
周りに敵とかはいなさそうだけど・・・・?
「美奈さん、危険です。一度研究所に戻りましょう。」
「何?不安なの?大丈夫だって、私はパンスト野郎を一撃で吹っ飛ばせるんだから。」
「ですが・・・・・。」
「ほら、行くわよ。」
私は倉庫の前に移動する。
「中に何がいるかはわからないけど・・・開けるしかない!」
私は扉を開けた。
中からはかなり強い冷気が吹いてきた。
「うわぁ・・・寒いなぁ・・・・ここって何の倉庫なの?」
「おかしい・・・こんな街外れに冷凍倉庫なんて普通はないですよ。」
「必要だったんじゃない?・・・よし、入るよ。」
私はゆっくりと冷凍倉庫の中に入っていく。
「誰か・・・・いるのかな・・・・・?」
中はかなりシーンとしている。
ただ、中を冷やすために動いてる機械音だけが聞こえる。
「美奈さん・・・・気をつけて。」

『おほほほほ、かかったわね。』

「!?」
スピーカーから倉庫内に響くおかまの声・・・何事!?
「美奈さん!この声はハイグレ魔王です!!これは罠だったんです!早くここを出てください!」
「う、うん!!」
私は外へと逃げようとする。

『逃がさないわよ?』

『バタン!』倉庫の扉は閉まった・・・・。
「な・・・この・・・・。」
私は扉を開けようとするが開かない。

『まさかアクションストーンがあるとはね・・・・気付いてよかったわ。』

『ドンドン!』私は扉を叩くがびくともしない。
余程強度が高いのだろう。
「開いて!くっ・・・。」

『おほほほ、無駄よ。』

「美奈さん、技の解放を。」
「うん・・・かいほ・・・。」

『やらせないわよ?』

『キイイイイン!』
何か怪音波のようなものが耳に響く。
「嫌ああぁぁあああああ!!頭が・・・・痛い!!」
頭を押さえるが、痛みはどんどん強くなってくる。
「美奈さん!しっかりしてください!!」
「嫌あぁぁああ!!出してぇ!ここから出してぇ!!」
扉をひっかきながら私はその場に崩れた。

『おほほほ、まだまだこれからがお楽しみよ?』

突然寒くなってきた・・・・。
「寒い・・・・何で・・・・・?」
今まで寒く感じなかったのに・・・・。

『さぁて、そろそろ仕上げかしら?』

耳にあの音波が響く・・・・。
肌を突き刺すような寒さ・・・・。
「寒いよ・・・・痛いよ・・・・・。」
意識が朦朧としてきた・・・・。
「美奈さん!気をしっかり!!」
私に誰かが呼び掛けてる気がする・・・・でもハイグレ魔王の声しか聞こえない・・・・・。

『苦しいでしょ?救われたいでしょ?力になってあげましょうか?』

力になる・・・?
「何で?敵の私に?」
「美奈さん!耳を貸したら駄目です!!」

『そうよ、あたしはあなたの味方よ?』

「味方・・・・・。」
「美奈さん・・・混乱していて思考回路がおかしくなってる・・・・・どうすればいい・・・・。」
敵の私に救いの手を?

『そのためにはハイグレ人間にならないとダメよぉ?まずはポーズをとりなさい。』

なれば救われる・・・・。
ハイグレ人間になればこの痛みから解放される・・・・。
私は立ち上がる。自然と体が動いた。
「美奈さん!ハイグレ魔王の言いなりになってはいけない!!」
「言いなりなんかじゃない・・・・私は私の意思で・・・・。」
私は足を開いてガニ股になった・・・。







1時間ほど前・・・・・

「智美、奴が仕掛けてきたみたいだ。」
「それで、あの子は?」
「かなりヤバいかもな。どうする?」
「決まってるでしょ?」
「俺はいつでもいいぞ。」
あたしの名前は『藤田 智美』茶髪でショートヘア。
特に変わった奴ではないはず。
今は他人の家の庭に身を潜めている。別に変な理由はない。
「じゃあ・・・走りますか。」
あたしは走る。やらないといけない。
あたしが持ってるのは赤い飴玉・・・じゃなくて、アクションストーンタイプR。あたしの相棒。
「パンスト兵に気付かれたぞ。」
「そう、じゃあやるわよ。アクション!!」
あたしを光が包む。
光から解放された時には制服姿だったあたしは赤いスーツ姿で白いラインが2,3本入っている。
髪の色は赤く、ロングヘアになっている。
「変身完了。それじゃ・・・着火!!」
あたしは人差し指をパンスト兵に向ける。
その瞬間パンスト兵に火がついた。
あたしの技解放の言葉は着火。指さした相手に火をつけれる。
「智美、上達したじゃねぇか。」
「練習したからね。そんなことより急がないと手遅れになっちゃう。」
あたしはさっきより速度を上げて走り出す。





「智美、あの倉庫だ。」
「あの中ね・・・・。」
あたしは倉庫に近づく・・・。
「この扉・・・かなり頑丈よ。」
「拳で破壊しろ。」
「無理よ!!」
「急がねぇと、あいつがハイグレ魔王の手先にされちまうぞ!!」
「・・・仕方ない。」
『バキッ』扉を思い切り殴るが、壊れない。
「痛っ!!」
「智美!?お前・・・大丈夫か?」
「心配してくれて、ありがと。でも・・・あの子をハイグレ魔王に渡したらお終いでしょ。」
もう一度扉を殴るが・・・・ダメ、壊れない。
「う・・・・これは効くわ・・・・。」
「おい・・・・手がぶっ壊れるぞ?」
「だから・・・・やらないとダメなんだってば!!」
3発目・・・扉を破壊できた!!
『キイイイイン』怪音波が鳴り響く。
「くうっ・・・・何て酷い音・・・・。」
思わず耳を塞いでしまう。
堪えて、目を開けると女の子がコマネチの体勢に入っていた。
「まずい・・・止めないと・・・・でも、音がぁ・・・。」
「智美、スピーカーを破壊しろ!」
「え・・・・?わかったわ。着火!」
怪音波を出すスピーカーに火がつき、音が出なくなった。
「そこの子、しっかりしなさい。」
音が止まり、動けるようになったあたしは女の子の腕をつかむ。
「邪魔しないで!私は今から魔王様にハイグレを捧げるんだから!!」
女の子は催眠状態に陥ってる・・・。
「しっかりしなさい!あなたはアクションブルーでしょ!!」
「アクションブルー・・・・?あれ?何かおかしい・・・・。私どうしちゃってたの?」
「美奈さん・・・・よかった。正気に戻ったんですね。」
「あ・・・私、凄い恥ずかしいことしようとしてたよね?」
「・・・・はい、ポーズをとろうとしてました。」
「み・・・見ないで・・・・恥ずかしい・・・・。」
女の子は顔を真っ赤にして恥ずかしがってる。
まぁ、あのポーズは誰だってとりたくないだろう。
「まったく、心配かけて。これだから困るわ。」
「え?あなたは誰?」
「アクションレッド・・・かな。」





「ちっ・・・あと一歩だったのに。」
しかも、レッドとブルーが出会っちゃったじゃない。
まぁいいわ。最後の一人を抑えればいいんですもの。





「「解除!!」」





「それじゃあ、あなたがタイプRの適合者なんですか?」
「えぇ、藤田智美よ。よろしく。」
研究所に戻りながら智美さんから話を聞いている。
「タイプR、今まで何をしていたんだ?」
「智美と街の方を見回っていた。」
ビー玉同士で何か話している。
「智美さん、何で研究所に来なかったんですか?」
「・・・・さぁ?」
さぁ・・・って・・・・・・。



私と智美さんは研究所に到着した。
「青髪の子、平気だったのね。よかった。」
大城さんが迎えてくれた。とても心配していたみたい。
「あ、こちらはタイプRの適合者の智美さん。」
「藤田智美です。よろしくお願いします。」
「大城です。タイプRの適合者が見つかってよかった。タイプGの適合者は見つかってないけど、2人目が見つかったのはとても助かるわ。」
「あの、文子と愛紗美さんは?」
「今は部屋で休んでるわ。」
「あの、大城さんでしたよね。一つ聞きたいんですが、ハイグレ魔王がどこにいるかはわかっているんですか?」
智美さんが真剣な表情で質問をしている。
「えぇ、大体はわかっているわ。でも、タイプGの適合者がいなければ戦いは苦しく、いいえ、負けます。」
「つまりタイプGの適合者さえ見つかればいいと・・・・見つかるわけないじゃないですか!!」
「タイプGの適合者はこの街にいます。だからここに研究所を建てました。」
「えぇ!本当ですか!?」
大城さんはかなり先まで考えているのだろう。
私では到底理解できない。

『大変です!強い力を持つ者がこの街の上空に現れました!』

研究員の言葉を聞いて慌てて動き出す他の研究員達。
「強い力を持つ者って誰なんですか!?」
智美さんはかなり強く大城さんに質問をする。
「ハラマキレディースか・・・Tバック男爵か・・・・。」
「ハラマキ?Tバック?何なの一体・・・・。」
私の質問を聞いて大城さんは何か考えだす。
凄く難しい顔をしている・・・。
「このままだとタイプGの適合者もハイグレ人間になってしまうかもしれない。」
「大城さん、もうその子がハイグレ人間になっているということは?」
私は心配だった。
もう一人がハイグレ人間になっていたらどうなってしまうのだろう・・・・。
「平気よ。適合者がハイグレ人間になった時、そのアクションストーンは輝きを失う。」
なるほど・・・まだ無事なんだ・・・・。
「でも、奴を放っておいたらその子も危険かもしれない・・・行ってくれる?場所は青髪の子の通う学校よ。」
「あたしは構いません、だけど・・・。」
智美さんは私を見てくる。正直私は怖い。
さっき、あんな簡単に洗脳されそうになった。
私は自分の力を過信していた。
もう戦場に出たくない・・・・。
「青髪の子?どうしたの?」
「・・・・・・・・・・。」
本当は私も戦わないといけない。
でも私は下を向いてしまう。
ただの臆病者だ・・・・・。
「あたしとRで行きます。平気です、油断はしません。」
智美さんは研究所を出ようとする。
「ちょっと待ちなさい!!」
大城さんは止めようとするが、智美さんはこっちを振り返りもせず出て行った。
「幹部に一人で勝てる可能性なんて低い・・・・・。」
大城さんは私にも行って欲しいと思ってるはずだ。
だけど、行けない、怖い・・・・。
「美奈、どうしたの?」
文子が来た・・・そっか、私が外に行ってたのは知らないんだ・・・・。
「何でもないよ。」
「そう・・・?何か心配だけど・・・・。」
流石に私が元気ないって気付いているみたい・・・・。
「大丈夫、私は元気だよ。」
「うん・・・・・わかったわ。私、愛紗美さんに頼まれてることがあるから。」
文子は他の部屋に入って行った。
私・・・元気って言ったけど、やっぱり怖くて戦えない。
「美奈さん・・・・戦うのが怖いんですね。」
ビー玉が私に呼び掛けてくる。
正しいことを言われると少し悔しい。
「怖くなんかない・・・・・怖くなんか。」
「私がいます。私が美奈さんをお守りします。」
「ビー玉なんかに何ができるのよ・・・・。」
所詮戦うのは私・・・・。
でも・・・・・・少し嬉しかった。
以前私を励ましてくれた言葉を言ってもらえて・・・。
「B、私も戦いに行く。」
「やっと私の名前を呼んでくれましたね・・・・行きましょう!!」
「大城さん、行ってきます!!」
「お願いね・・・・。」
私は智美さんを追いかけ、研究所を飛び出した。





その頃智美は学校に到着していた。

「R、敵はどこにいるの?見当たらないけど・・・・。」
「智美、この学校って元々お前が通っていた・・・。」
「無駄口叩かないで。どこに敵がいるかわからないのよ。」
Rは知っている。
あたしの過去を・・・・・。

『おぉ?まだ人間がいたか。』

おっさんっぽい野太い声が聞こえる。
「どこ!?」
でも、周りにはハイグレ人間以外いない。
「智美!!上だ!!」
「上!?あっ!!」
上空には変な乗り物に乗ったおっさんらしき人が。
「あいつは何者?」
「奴がTバック男爵だ。相当厄介な相手だな・・・・。」
確かに乗り物は強そうだけど・・・・。

『おい、そこの野郎。おとなしくアクションストーンを渡せ。』

Tバック男爵はあたしを指さしている。
「冗談よね?あたしがあんたみたいな奴にRを渡すわけないでしょ。」

『ならば・・・・・。』

「智美!!逃げろ!!」
「え・・・?どうしたの?」
Rの焦り方は普通じゃない・・・・。

『ミサイル発射!!』

み、ミサイルが飛んでくる!?
「智美!!急げ!!」
あたしは門を出て走る。
「もう来てない?」
「そんなはずない!あのミサイルは追尾機能があるからな。」
「追尾機能!?それじゃあどうすれば。」
「過去の偉人は奴を倒した。何か方法があるはずだ。」
あいつに攻撃する余裕もないのにどうやって倒したのよ。
「智美!!もうすぐ後ろまで来てるぞ!!」
あたしの後ろにはミサイルが迫っていた。
ダメだ・・・やられる・・・・。



「解放!!」



ミサイルの下から水柱が立ち、軌道が少し変わって上空へ。
「美奈・・・?」
「智美さん、ケガしてない?」
美奈が変身状態であたしの前に立っていた。
「あ、ありがとう・・・・。」
「いいんですよ。私達は仲間ですから。」
「おい戻ってくるぞ!!」
Rの声に反応して上を見上げると、ミサイルが真上から迫ってきていた。
「智美さん、早く逃げましょう!!」
あたしと美奈は走る。
とにかく走る・・・けど、ミサイルはどこまでも追いかけてくる。
「何かいい方法はないの?追いつかれるわ・・・。」
過去の偉人があのミサイルを掻い潜り、本体を破壊した。
でも、奴を倒したところでミサイルは止まらない。
だとすると、ミサイルを破壊したはず。
だけど・・・・どうやって?

「美奈さん!!ミサイルがすぐ後ろに迫ってます!!」
「了解!・・・解放!!」
再び、水柱はミサイルを上空へ飛ばす。

このままじゃダメだ・・・何かいい策はないの?
美奈がなんとか凌いでくれているけど・・・・。
ただ上空に飛ばしても戻ってくるだけ。
・・・・・・飛ばす?
「R、あのミサイルをあいつに当てればいいんじゃないの?」
「確かに、それができれば奴を倒せる!!でも、奴は飛んでるぞ?」
「そのために美奈がいるのよ。水柱でミサイルをあいつの所に飛ばせば。」
「それならいけるかもしれないな!」
「美奈!あいつの真下に行くわよ!!」
あたしの言葉に美奈は驚いている。
「真下って、危険じゃ・・・?」
「いいから!!」
あたしと美奈は学校へと戻る。

『何だぁ?まだ生きてたのか。しぶとい人間達だな。』

Tバック男爵は余裕をかましてる。
その油断が命取りなのよ。
「ここでどうするんですか?」
なんとかTバック男爵の乗り物の真下に来た。

『ん?何だ、お前ら。俺様の下で何をしてやがる。』

「美奈!今よ!ミサイルを上に飛ばして!!」
「はい!・・・解放!!」
美奈が地面に手をつける。
ミサイルの下から水柱が立ち、上空へ。

『ま、まさか!?ぐわぁぁああ!!』

上空で激しい爆発が起こった。
黒い煙の中からTバック男爵が落ちてくる。
「やった!!」
「まさかTバック男爵を倒せるなんてな。」
過去の偉人もこんな風に戦ったのかな?
「智美さん、研究所に戻りましょう。」
「えぇ、そうね。」
あたしと美奈は研究所へ向けて歩きだした。

『詰めが甘い人間どもだ。』
Tバック男爵を倒し切れていないとは知らずに・・・。





その頃、研究所の小部屋にいる文子と愛紗美は・・・

「愛紗美さん、頼まれていたペンと紙を借りて来ましたよ。」
「あ、文子ちゃん。ありがとう。」
私がペンと紙を渡すと、愛紗美さんは真剣そうに何か書き始める。
「邪魔になると悪いんで、部屋を出ますね。」
私はそのまま部屋を出た。
ただ、私は少し気がかりだった。
美奈は戦っているのに私は戦えないことが。
美奈が危険な目にあっているのに自分はただ見ていることしかできない。
タイプGの適合者ではなかった・・・凄く悔しい。
「あれ・・・?」
何か大城さんが考え込んでいる。
「大城さん、どうかしたんですか?」
私が話しかけると大城さんはこっちに目だけを向ける。
「変だと思って・・・・。」
「何がですか?」
「どうやら学校に現れたのはTバック男爵だったみたいなんだけど、これといって目的がみえなかった。」
考えすぎにも見えるけど、確かにそう言われるとそうかもしれない。
「何か他の目的があったと言いたいんですか?」

「きゃあぁぁあああ!!」

「ひ、悲鳴!?」
私達が入ってきた階段がある部屋から悲鳴が聞こえてきた。
「メインルームからね・・・何が?」
大城さんがメインルームに繋がる扉を開けた。
そこにはハイレグ姿の研究員達とパンスト兵達がいた。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
「まさか・・・Tバック男爵は囮!?」

『『『その通り!!』』』

どこからか声が聞こえたかと思えば、頭上から青い肌をした女性が三人下りてきた。
ハラマキを捲いている・・・もしかして、この人達は・・・・。

『『『ハラマキレディース・・・参上!!』』』

「ここでハラマキレディースなんて・・・・もしかしてこの研究所の場所は気づかれていた!?」

『その通り。ただ、アクションストーンの適合者がいたから攻めるに攻められなかったのよ。』
『だけど今、アクションストーンの適合者達はTバック男爵と戦っているわ。』
『あなた達に抵抗する手段はない。ここでタイプGを手に入れれば人間の勝ち目は薄くなる。』

『さぁ、他の残っている人間もそこの二人もハイグレ姿にしておしまい!!』

マントをつけたリーダーが命令する。
パンスト兵達がこっちを向き、一斉に光線を放ってくる。
「部屋に戻って!!」
私と大城さんはもとの部屋に戻る。
「鍵を閉めて・・・と。参ったわね。」
大城さんは動揺を隠せていない。
それはそうか・・・。
「タイプGは私が持っているわ。でも、この扉も直に壊される。」
「じゃあ打つ手はないんですか?」
「平気よ。この部屋の奥に非常用脱出梯子があるから。」
大城さんが部屋にある小さく分厚い扉を開く。
部屋の中は真っ暗で梯子以外は何もない。
そこに愛紗美さんが部屋から出てきた。
「何があったんですか?」
「敵の襲撃よ。早くこっちに部屋に!!」
私と愛紗美さんは梯子の部屋に押し入れられる。
「ほら、あなたから登って。」
大城さんは愛紗美さんを一番最初に登らせる。
「次はあなたよ。早く!!」
大城さんは次に私を登らせる。
「大城さんも早く!!」
私は下を見るが大城さんは登ってこない。
「これを持って行って!」
私に緑色のアクションストーンを投げてきた。
「何で登ってこないんですか!!」
「見てわかるでしょ!!扉を押さえているのよ。」
大城さんは今にも壊れそうな扉を押さえていた。
「そんな・・・見捨てられませんよ!」
「ここで全滅したらそれこそ終わりよ。お願いだから早く行って!!」
もう扉はいつ壊れてもおかしくないほどだ。
「・・・・ごめんなさい。」
私は下を見ずに梯子を登って行った。
「この研究所も終わりか・・・・青髪の子達に賭けるしかないわね・・・・。」





「やっと戻って来れた・・・。」
私と智美さんはスクラップ置き場に戻ってきた。
「Tバック男爵ってかなり強かった。まだハラマキレディースって言うのもいるし、大城さんから詳しいことを聞かないとね。」
階段を下りていく・・・・下には研究員達と大城さんが待っていた。
「大城さん、帰って来ました。」
代表して私が報告をする。
「お疲れ、美奈ちゃん。帰ってきたところ悪いんだけど、タイプBとRを貸してくれる?」
大城さんはいつにない笑顔で手を突き出す。
「いいですよ。かい・・・。」
「ちょっと待って。」
私が変身を解こうとすると、智美さんが止める。
「どうかしたんですか?智美さん。」
大城さんが首を傾げている。
「・・・・・ハイレグが少し見えてますよ?」
「なっ!?さっき鏡で確認したはずなのに!!」
大城さんは慌てて自分の白衣を確認している。
でも・・・・私にはハイレグなんて見えてない。
「嘘ですよ。あなたが美奈のことを名前で呼ぶなんて変だと思ったので・・・正体を現してください。」
「・・・・・ちっ。」
大城さんは白衣を脱ぎ捨てる。
その下には紫色のハイレグを着ていた。
「そんな・・・大城さんまでハイグレ人間に・・・・。」
「うふふ、私はハラマキレディース様にハイグレの素晴らしさを教えていただいたの。ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!!」
大城さんは躊躇いなくコマネチをする。
その度に胸と荒れた髪が揺れる。
その様子を見て他の研究員達も白衣を脱ぎ捨てコマネチを始める。
そんな大城さんを智美さんは悲しそうに見ている。

『まったく失敗しているじゃない』

奥の部屋からハラマキを捲いた女性が3人出てきた。
きっとハラマキレディースと言う奴らだろう。
「ハラマキレディース様、申し訳ありません。ハイグレッ!ハイグレッ!」
大城さん含む研究員達はハラマキレディースに向きなおしコマネチをしている。

『まぁいいわ。パンスト兵達、その二人もハイグレ姿にしておやり!!』

ハラマキレディースの後ろから現れたパンスト兵が私達に向けて光線を放ってくる。
「やるしかないわね・・・・R、いい?」
「いつでも構わない。」
「・・・・・着火!!」
智美さんがパンスト兵達に火をつける。
「Bも・・・いける?」
「もちろんです。」
「行くよ、解放!!」
私が床に手をつけると同時に水柱がパンスト兵を上に飛ばす。
そして天井に頭をぶつけて落ちてくる。
ここだと威力が高いみたい。

『何をしているの!早くやっておしまい!!』

向こうはかなり焦っている。
「美奈、パンスト兵はほとんど倒したわ。」
「はい、智美さん。後はハラマキレディースですね。」
こっちが優勢。
智美さんと組んだ私はそう簡単に負けない。

『こうなったら、ハイグレ人間達、二人を捕まえなさい!!』

「「「ハイグレッ!」」」
「「!?」」
ハラマキレディースが命令すると大城さん達は私達に迫ってくる。
「智美・・・・・やれるか?」
Rの問に智美は首を横に振った。
「美奈さん・・・・・・。」
「できないよ・・・・みんな洗脳されているだけなんだから・・・・・。」
私も智美さんも攻撃できない。
「逃げましょう・・・美奈さん。」
私に選択肢はなかった。
私と智美さんは階段を駆け上がった。





文子と愛紗美は研究所を脱出したがパンスト兵に見つかってしまい、閑静な住宅街を走っている。

「ど、どうしよう・・・まだ追いかけてくる。」
後ろから3人程のパンスト兵が追ってきている。
「早く私の適合者を見つけて!そうすれば。」
緑のアクションストーンが何か言っているけど。
「そんな余裕はないの!愛紗美さん、どうしたらいいですか。」
「このまま走り続けても捕まるわ・・・どこかに隠れれば・・・・。」
だけど飛んでいるパンスト兵の目を欺ける場所なんてないし、あってもそこまで行けない。
「私が奴等を引きつける。」
急に愛紗美さんが足を止めた。
「愛紗美さん!?何言っているんですか!!」
「パンスト共!!こっちに来なさい!!」
愛紗美さんはパンスト兵を引きつけながら他の道へ走り去って行った。
「タイプGだっけ・・・・愛紗美さんは逃げ切れるよね?」
私は愛紗美さんの逃げて行った方を見ながら聞く。
「・・・・・・正直きついと思うわ。彼女、疲れてたし。」
「ねぇ・・・・どうして私は変身できないの?」
「どうしてって・・・・あなたが適合者じゃないからよ。」
「適合者、適合者って・・・どうして私は戦えないの?どうして・・・・。」
私が何もできず突っ立っていると後ろから声を掛けられた。
「あの・・・ここにいると危ないですよ・・・・・。」
「きゃっ!!」
突然だったので私は声をあげてしまった。
振り向くとそこには見たことある顔が・・・・。
「水澤・・・さん?」
紛れもなく水澤さんだった。
周りをキョロキョロしている。
かなり警戒しているみたいだ。
「今は平気ですね・・・・あなたは野村さんですよね?私は水澤明です。覚えていますか?」
「覚えているって、今日会ったじゃん。」
「この子よ!!」
緑のアクションストーンが叫んだ・・・・凄い声・・・・・。
「この子よって・・・・もしかして・・・・・。」
「えぇ、この子が私の適合者に間違いない。こう・・・ビビッてくるものがあるわ。」
「何ですか?適合者って・・・・。」
水澤さんは首を傾げている。
頭の上にクエスチョンマークでも出てきそう。
「そう、この石を握って。」
私は水澤さんにアクションストーンを渡す。
「??」
「その石を胸元に置いて。」
私がそう言うと水澤さんは石を私に返してきた。
「こ・・・怖いです。私にはできません。」
「そんなこと言わずに、折角私のパートナーに会えたのに。」
「と、とにかく無理です。」
涙目で今にも逃げだしそう・・・・。
「弱ったな・・・・どうする?」
「私も断られるとは思わなかった・・・・・。」
私とタイプGで相談する。
「あの・・・私・・・・急いでいるので。」
水澤さんはゆっくりと私から距離をおこうとしている。
多分、私のことを警戒している。

『アクションストーン見ーつけた!!』

背後から声がした・・・・。
「こいつは!?」
「Tバック男爵・・・・・。」
どうやらハイグレ魔王の手下のようだ・・・・。
「嫌ぁぁああ!!」
水澤さんは走り去っていく。
「ちょっと待って!!」
私の声なんて水澤さんには聞こえていなかった。

『おい、そこの人間。おとなしくアクションストーンを渡しやがれ!!』

Tバック男爵は私に向かって手を出す。
「に、逃げましょう・・・・文子ちゃん。」
「う、うん。」
私は走りだす。

『まさかこのTバック男爵から逃げ切れると思ってないだろうな?』

「きゃぁぁぁぁあああ!!」
Tバック男爵の足が異常に速い。
私が本気で走っても追いつかれるか追いつかれないか。

『おのれぇ、このままだとハイグレ魔王様にどんなお叱りを受けるか。』

Tバック男爵も本気のようだ。
短期決戦に持ち込むつもりだ。
全力疾走で私を追いかけて来ている。
だけど、私は何かに躓いて転んでしまった。

『もう遊びは終わりかぁ?』

私のすぐ後ろにはTバック男爵が迫っていた・・・・。





「・・・・平気ね。お母さんは外に行ったみたい。一度中に入りましょう。」
私と智美さんはなんとか私の家まで逃げきれた。
ただ・・・あの後、大城さん達は追いかけてこなかった。
追いつけなかっただけかな・・・・?
「ここが美奈の家か・・・・。」
「ほら、入ってください。」
私の部屋へと向かう。
「・・・・さて、この後どうすれば?」
「大城様まであんな姿にされてしまうなんて・・・・。」
私とBは絶望していた。
「だからハイグレ魔王を倒せばいいのよ。」
智美さんは勢いよく言う。
「でも、どこにいるかわからないよ?」
「あ・・・・うぅ、そうだ。」
そう、大城さんからハイグレ魔王の居場所を聞く前に洗脳されてしまった。
「Rも知らないの?」
「いちいち武器の俺達に話していると思うか?」
だとすると、誰かから聞き出すしかない。
でも、できるのかな?
「ハイグレ人間からは聞けるはずないわ。」
智美さんの意見は正しい。
どうすればいいか・・・・。
「しかしだな・・・俺の記憶が正しければ、奴がいるのは上空だったはず。」
「え?それって本当なの、R?」
「あぁ・・・記憶が正しければだがな。過去の偉人がそこで戦ったという話だけは聞いたことがある。」
Rの言うとおりだとしてもヒントが少なすぎる。
上空と一言で言っても範囲が広すぎる。
「その前に・・・タイプGのことなんだけど・・・・。」
私の言葉で沈黙が訪れる。
「研究所がやられたからね・・・・。」
「タイプGも砕かれただろうな・・・・。」
「そんな・・・。」
私達はまったくいい案が浮かばず、ただ時間が過ぎていくのを待つだけだった。





「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
私は研究所の中でハラマキレディース様、パンスト兵様にハイグレを捧げている。
他の研究員達と一緒にハイグレをすることでより一層気持ちいい。
だけど、私は情けない・・・与えられた仕事を失敗してしまった。
こんな素晴らしい姿にしていただいたのに、申し訳なくて悔しい。



そう・・・私がタイプGを持ち出させてしまったあの時・・・・



「うぅ・・・この扉も限界ね・・・・。」
私は必死に扉を押さえている。
少しでも時間を稼いで、文子ちゃん達が遠くに逃げられるようにしないと・・・・
だけど、無情にも扉は破壊された。

『やっと開いたわね。あら?何で一人しか・・・まさか、この梯子を使ったのね・・・・。』

ハラマキレディースのリーダーが私を睨む。
「残念だったわね、あのアクションストーンは人間達の最後の希望。そう簡単に渡すわけにはいかないのよ。私を洗脳するの?もう覚悟ならできてるわ。」
強がりを言うが逃げられるなら逃げだしたい。
あんな恥ずかしい格好したくない。
あんな恥ずかしいポーズしたくない。
でも・・・・私がこの研究を始めた時に決めたこと。
人類を勝利に導くためなら自分を犠牲にするのは惜しまない。
あの子たちをサポートするのが私の役目だった。
もう私の役目は終わる・・・・。

『そこのハイグレ人間、この女を縄で縛りなさい。』

「ハイグレッ!」
どうして?今すぐ洗脳するんじゃないの?
私は考える暇もなく縄で縛られ、メインルームの中央に座らせられた。
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
周りにはハイグレ人間にされてしまった研究員達が私の前で整列してコマネチをする。
今まで一緒にハイグレ魔王を倒そうと研究をしてきた仲間。
みんな嬉しそうにコマネチをしている。
見ていて辛い・・・・。

『あなたをハイグレ人間にする前に聞きたいことがあるのよね。あなたはどうやってアクションストーンを作ったの?』

「あんたなんかに教える訳ないじゃない。」
私が鼻で笑いながら言うとリーダーは不満そうに私を見る。

『洗脳すれば簡単にわかるのよ?おとなしく言えばハイグレ姿にするのをやめてあげるわ。』

「・・・・それでも言えない。私はあんたみたいな奴等に洗脳されたって従わない。」
そうだ・・・・私は研究員としての、人間としてのプライドがある。
絶対に洗脳されても奴等の言いなりにはならない。

『ふぅ・・・仕方ない、ハイグレ姿にしておやり。』

私は立たされ、縄が切られた。
一体のパンスト兵が私の前に立つ。
私は息をのむ・・・・。
「きゃぁぁあああああああ!!」
私は光線を浴びせられた。
私は両手足を広げて、大の字になる。
「・・・・・・っ!!」
私の体にフィットするハイレグができた。
それが体に触れた途端、あまりの衝撃で目を瞑ってしまう。
光から解放された私は紫色のハイレグを身に纏っていた。

『これでいいわね。さぁ、アクションストーンをどうやって作ったか教えなさい。』

「・・・・ふ、ふふっ、誰が・・・・・。」
私の返答を聞いたリーダーは黙って私を見ている。
少しでも気を抜いたらハイグレ人間の仲間入りだ・・・。

『いい加減にハイグレ人間になりなさいよ。』

「冗談でしょ?侵略者の奴隷なんて・・・・。」
私はハイグレをしたい衝動を抑えてハラマキレディースに向かって歩き出す。

『な・・・・まだ転向が終わらないの!?』

「あんた達の思い通りには・・・・させない・・・・・。」
だけど、ハラマキレディースの目の前まで来た時・・・
私は油断していた。
「・・・・うくっ。」
まだ私のハイグレは完成してなかった。
思ってもみなかった・・・これほどの締め付けとは・・・・・。
みんなこれにやられたのか・・・・。
つい内股になってしまい、一歩も動けなくなる。
その様子を見てハラマキレディースはニヤッと笑う。
私はこの締め付けに逆らえない。
腰を落としてガニ股になる・・・・。
「は・・・・は・・・・・ハイグレッ!!」
私はハイグレをしてしまった。
自分が凄く惨めに見える。
今、私は侵略者の奴隷になったという事実が悔しい。

『それでいいのよ。教えなさい、アクションストーンをどうやって作ったの?』

「お、教えないって言ってるでしょ・・・・ハイグレッ!!」
絶対に教えるものか・・・・。
あの子たちを裏切ったりはしない。
でも・・・・限界・・・・・・。
「は・・・・・・・ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私は何度もハイグレを繰り返す。
もうハイグレをやめられない・・・・・。
「・・・・ハイグレ人間大城、転向完了いたしました!ハイグレッ!ハイグレッ!」

『ふふふ、やっと終わったわね。』

ハラマキレディース様は満足そうに私を見る。
だけど・・・私は恥ずかしい。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハラマキレディース様、私はアクションストーンを作り、ハラマキレディース様やハイグレ魔王様に逆らってしまいました。もう私は生きているのも重罪です。」

『いいのよ。これからあなたには働いてもらうから。今までのことは忘れなさい。』

「ハイグレッ!ハイグレッ!なんてお優しい方。このハイグレ人間大城、身を粉にして働きます!!」
私は止めなくてはいけない。
アクションストーンなどという愚かな武器を。
ハイグレを受け入れない愚かな人間達を。

『ところでどうかしら?嫌がっていたハイグレは?』

ハラマキレディース様が私に一歩近づき聞いてくる。
「ハイグレッ!ハイグレッ!私は間違っていました!ハイグレがお股に食い込んで気持ちいいです!」
私は少し頬を赤らめてハイグレをする。
ハラマキレディース様が私のハイグレを見てくださっている。
凄く嬉しい。でも少し恥ずかしい。
私はこれからハイグレの世界を築く魔王様にために生きる。
こんなに素晴らしいハイグレの世界にしないなんてどうかしている。
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
私はハイグレ人間にならない愚かな二人が帰ってくるまで他の研究員達の横に並びハイグレをし続けた。



そうだった・・・それで私はタイプBとRを奪うように命令されたのに失敗してしまった。
なんとも不甲斐ない。
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
私がうっとりとした表情でハイグレをしているとハラマキレディース様に声をかけられた。

『いい?魔王様からの命令よ。あの二人を追いかけるのではなく、魔王様のもとに来いとのことよ。』

「は、ハイグレ魔王様のもとにですか!?」
なんて光栄なことかしら。
それに、今まで抵抗していたことを謝罪できる。

『それじゃあここの研究員達全員、魔王様のもとへ連れて行くわ。』

「「「ハイグレッ!!」」」
私達は力いっぱいハイグレをした。





『さて、アクションストーンをいただくぞ。』

転んで動けない私にTバック男爵の手が伸びてくる。
「そこをどきなさい!!」
どこからか声が聞こえてくる・・・・。

『俺様の邪魔をする奴は誰だ!!』

「私よ!!」
突然バイクが塀を越えて私の前に着地した。

『うぉわっ!!』

Tバック男爵がバイクの向こうに倒れた。
「文子ちゃん、大丈夫?」
「あなたは・・・?」
私が聞くと、女性はヘルメットを外す。
「あ、愛紗美さん!!」
「バイクを取りに行ってたんだけど・・・間に合ってよかったわ。早く後ろに乗って。」
愛紗美さんがヘルメットを私に投げる。
「はい!!」
私は後ろに乗って、愛紗美さんにしがみつく。
「しっかりつかまっててね。」
バイクが凄いスピードで走りだす。

『おのれぇ・・・・逃がすか!!』
『そこまでよ、Tバック。』
小型立体映像のハイグレ魔王がTバック男爵の前に現れる。
『は、ハイグレ魔王様!』
『今すぐ戻って来なさい。』
『しかし・・・・・。』
『これは命令よ。知っているわよ?機械が破壊されたの。これ以上勝手なことをしたら・・・・。』
『も、申し訳ありません・・・・・。』

バイクは駅前の人通りが激しい場所を走る。
「「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」」
街の人達は既にハイグレ人間になっていた。
「愛紗美さん、もう来てませんよ。」
「・・・・・・・。」
だけどバイクは止まらない。
「どこに行くつもりですか?」
「一度人気のない場所にね・・・」
「あの、美奈の家に連れて行ってください!もしかすると戻っているかもしれません。」
「・・・・・わかったわ。でも、後ろを見たらダメよ・・・・。」
「後ろ?・・・・・きゃっ!!」
私の後ろにはパンスト兵が追いかけてきていた。
光線銃を構えている。
「・・・・速度上げるわよ!!」
「はい!!」
バイクは更にスピードを上げた。





「ここを出よう。」
「美奈、急にどうしたの?」
私の意見に智美さんが不思議そうな顔をする。
「ここで待っていてもお母さんは帰ってきちゃうし、何の解決にもならない。」
「行くあてはあるの?」
「ない・・・・だけど、考えるよりまず行動!」
私は部屋を出ようとする。
「やれやれね・・・・。」
智美さんもついてきてくれた。
「それじゃあもう一度学校に行きましょうよ。もしかすると・・・文子が。」
「学校か。そうね、行きましょう。」
私は少しだけ期待をしつつ学校へ向かった。





『おほほほほ、ハラマキレディース、例のハイグレ人間達は連れてきた?』

「はい、この部屋の前で待機させております。代表の者をお連れいたしますか?」

『えぇ、早く入れなさい。』

私の前の扉が開く。
ハラマキレディース様が私を呼ぶ。
他の研究員はハイグレを繰り返している。
「失礼いたします。」
私はゆっくりと仮面をつけたハイグレ魔王様の座る玉座へ進む。
その前にはハラマキレディース様とTバック男爵様がいる。

『ふーん、あなたがアクションストーンを作った人間ね?』

「ハイグレッ!!ハイグレッ!!はい、そのことで私はハイグレ魔王様に謝らなければいけません。アクションストーンなどという愚かなものを作り出してしまい・・・・死罪も覚悟しております。」
私の言葉にハイグレ魔王様は軽く笑う。

『あたしがあなたをここに呼んだのはあなたの技術力が欲しかったから。』

「私の・・・・技術力・・・・・。」

『そうよ、あなたの腕があれば、あるものが作れそうなのよ。協力してくれるかしら?』

協力してくれるかしら?ですって?
「ハイグレッ!!ハイグレッ!!もちろんです!!私はハイグレ魔王様のためならば、どんなことでもいたします!!」

『おほほほほ、よろしい。それではハラマキレディース、報告。』

「はい、関東地方の人間はほとんどハイグレ人間への転向が完了いたしました。ですが、アクションストーンを持つ人間のハイグレ化は確認できず、部下との連絡も次々にとれなくなっています。」

『あら、そう。あんた達も失敗はしているけど、このハイグレ人間が手に入っただけいいわ。次、Tバック。』

「俺は・・・・。」
Tバック男爵様が何か言おうとすると、ハイグレ魔王様がTバック男爵様に迫る。

『あんたは何もできてないわねぇ。どうするつもりかしら?』

「アクションストーンを手に入れてきます。」

『今、あんたは戦う術がないでしょぉ?』

「うぐ・・・・。」
ハイグレ魔王様は玉座に戻る。

『Tバックはそこのハイグレ人間と外のハイグレ人間を研究室へ連れて行きなさい。ハラマキレディースはアクションストーンを回収して来なさい。』



その後、私と研究員達はTバック男爵様に連れられ、研究室に。
「いいか?ハイグレ奴隷共、魔王様に言われたとおりのものを作り上げろ。」
「「「ハイグレッ!!ハイグレッ!!ハイグレッ!!Tバック男爵様の仰せのままに!!」」」
私達はあれを作らなければいけない。
完成した時こそ、ハイグレ魔王様への御恩を返せた時。





「まだ追ってきてる?」
「かなり離してきてます。」
「よし、もっと速度上げるわよ!」
「は、はいぃ・・・。」
文子ちゃんは私の背中に強くしがみつく。
「で、美奈ちゃんの家はどこ。」
「もう少し先です。」
バイクはまた速度を上げる。
気づくと、パンスト兵は追ってきていなかった。
「ここが美奈ちゃんの家ね。」
「はい、中にいるかな・・・・愛紗美さん、私が見てきます。」
文子ちゃんは美奈の家に入る。
不法侵入とかは気にしたらいけない。
私が待っていると急に嫌な予感がした。
「!?」
さっきのパンスト兵がこちらに向かって飛んできていた。
「まだ完全にまいてなかったか・・・・。」
私はバイクに乗る。
逃げるわけじゃない。文子ちゃんを守るためだ。
そのままパンスト兵に向かってバイクを走らせる。
戦っているあの子たちの方が不安なはずなんだ・・・・。
私がしっかりしなくてどうするのよ!!





「・・・・学校か。」
私と智美さんは学校に着いた。
ただ、智美さんが複雑そうな顔をしている。
「智美さん、どうかしましたか?」
「別に・・・そんなことより文子ちゃんは逃げ込んでいるかしら。」
智美さんが校舎に近づいていく。
「待ってくださいよ。」
私が追いかけようとした時・・・。

『そこまでよ。』

上空から女性の声がする。
この声は・・・・・。

『ハラマキレディース参上!!』

オマルに乗って現れたのは研究所を襲ったハラマキレディースだ。
パンスト兵と同じのに乗っているのかな?
いや、アヒルが二匹ついている。
って、そんなのどうでもいい。
「B、いい?」
「美奈さん、こちらはいいですよ。」
「よし!アクション!」
私はアクションブルーの姿になる。
それにしても、このリボンだけはなんとかならないのかな。
「智美、奴等は空にいる。タイプBの技は無効化される。俺と智美で倒すぞ。」
「了解。アクション!」
智美さんも変身完了したみたい。
「いくよ!・・・解放!」
私は地面に手をつけ、ハラマキレディースの下から水柱を立てるが。

『あら、軽くかわせるわねぇ。この程度?』

リーダーは私をあざ笑う。
「むぅ・・・解放!!」
再び水柱で攻撃をするがあっさりとかわされてしまう。
その様子を見て、智美さんが私の前に出る
「美奈は下がってて・・・・着火!」
智美さんが攻撃を狙うが、相手は上空、簡単にかわされてしまう。
「智美、落ち着いて狙え。」
「わかってる・・・着火!」
だけど、またかわされてしまう。

『あんた達の実力はわかったわ。今度はこっちの番よ!』

奴等の乗り物についているアヒル計6匹が私達に向かって伸びてくる。
「美奈さん、かわしてください!」
「わかってるわよ。」
私と智美さんは校舎の中へ逃げ込もうとするが、アヒルに先回りされる。
「中に入る隙がない。」
「こんなアヒル、燃やしてやる。着火!」
智美さんがアヒルに火をつけようとするが、このアヒルはかなり俊敏であたらない。

『おほほほ、遅いTバック男爵とは違うのよ。』

「美奈さん!右からきてます。」
「え・・・?きゃっ!!」
Bが言った時には遅かった。
私の右脚にアヒルが絡みついてきた。
「美奈、今助ける!!」
智美さんが私の方に指を向ける。
「智美!1匹にとらわれるな!!」
「しまっ・・・。」
智美さんの首にアヒルが巻きつく。
「美奈さん、動けませんか。」
「ダメ・・・動けない。うぅっ!!」
私の首にもアヒルが巻きついてきた。
息ができない・・・・。

『どうやらここまでのようね。さぁ、変身を解きなさい。ハイグレ姿にしてあげるわ。』

ハラマキレディースは勝ち誇った表情で私と智美さんを見ている。
ダメだ・・・もう打つ手がない・・・・。
声も出せない。段々意識が遠のいていく。





「どうしよう・・・助けないと・・・・。」
私は木陰に隠れて遠くから様子を見ている。
美奈ちゃんが苦しんでいる・・・・。
でも私じゃあ、何もできない。
さっきも野村さんを見捨てて逃げてしまった。
私は最低な人間だ。
「水澤さん・・・違う、明ちゃん、逃げたらダメよ。」
「の・・・野村さん・・・・。」
私の前には文子ちゃんがいた。
「ごめん・・・・さっき、私だけ逃げて文子ちゃんを・・・・ごめんね・・・・・。」
「泣かないでいいよ。でも・・・お願いがあるの。」
私にさっきの緑の石のようなものを渡してきた。
「これって、さっきの・・・・。」
「お願い!美奈を助けてあげて!明ちゃん以外に美奈を助けられる人はいないの!!」
「そう、私のパートナーはあなたなの。協力して、明。私を胸元に運んでアクションって言うの。」
この緑の石が何かはわからない。
信じるのは怖い。
だけど、美奈ちゃんを見捨てるのは絶対に嫌!!
私は緑の石を握り、胸元へ運ぶ。
「美奈ちゃん達を守る力をかして・・・アクション!」
私を光が包む。
数秒後に私の姿は変わっていた。
いつもの制服姿から白いラインが入った黄緑色のスーツ姿になり
髪も黄緑色でツインテールがかなり長くなっていた。
「う、うわ、恥ずかしい・・・・。」
「そんなこと言っている場合じゃないわ。」
「そ、そうだね。行こう!」
私は木陰から出て、ハラマキレディースという人達の前に立つ。

『あら、最後のアクションストーンまで出てきてくれたわね。』

「あ・・・あか・・・・り・・・・。」
美奈ちゃん・・・苦しそう。
「G、私はどうすればいいの。」
「えっと・・・・。」

『早く捕まえなさい。』

私に向かって4匹のアヒルが飛んでくる。
「明!よけて!!」
私はなんとかアヒル達をかわす。
「手を重ねて!!」
Gに言われたとおり、手を重ねる。
「技解放の言葉はわかるね。」
「うん・・・頭に浮かんできたよ。・・・風よ!」
言葉と同時に木枯らしが現れハラマキレディースを襲う。

『『『きゃぁぁぁぁああああ!!』』』
『リーダー!機能停止直前です!!』
『もう保ちません!!』
『落ち着くのよ!まだ壊れてないわ!!』

ハラマキレディースが木枯らしによって痛手を負っている。
その拍子に美奈ちゃんともう一人がアヒルから解放された。
「げほっ・・げほっ・・・・。」
「美奈ちゃん、大丈夫?」
私は駆け寄る。
「うん・・・・ありがとう、明。」
美奈ちゃんはまだ苦しそうだけど笑顔を見せてくれた。

『まだ終わらないわよ、これで決めるわ!』

「明・・・美奈ちゃん達を苦しめたハラマキレディースにお礼をしてあげましょう。」
「そうね・・・私の友達を苦しめたこの人達は許せないね。」
私は手を重ねる。
「いきます・・・・風よ!」
再び木枯らしが起きて、ハラマキレディースを襲う。

『きゃぁああああああああああああ!!』

木枯らしが晴れると、そこにハラマキレディースの姿はなかった。
「さすが、私のパートナーね。完璧よ。」
「ありがとう、G。」
「明!凄いよ!かっこよかったよ。」
美奈ちゃんが私の手を握りキラキラした目で私を見ている。
ちょっぴり照れ臭い。
「あなたがタイプGの適合者ね。あたしの名前は藤田智美。タイプRの適合者よ。よろしく。」
智美さんが握手を求めてくる。
私はすぐに応じた。
「水澤明です。よろしくお願いします、智美さん。」
「美奈さん、これで全員揃いましたね。」
「うん!これならハイグレ魔王に勝てるよ。」
ハイグレ魔王?そういえば、私は美奈ちゃんを助けるために戦ったけど、それって何者なんだろう。
きっとみんなをハイグレ人間にした元凶なんだろう。
「明!智美さん!私達3人にしかできないんだよ。頑張ろう!!」
「「「オォー!!」」」
私達は右手を空に掲げた。





「3人にしかできない・・・・私はいらないんだよね。」
明ちゃんの力は凄かった。
私にあの力はない。
自分にも何かできないかと思ってたけど、美奈は私を必要としていない。
そう・・・あの3人の中に私の居場所はない。
私は学校を出る。
美奈達と話せることなんて何もない。



「あ、そうだ。美奈ちゃん、私に戦う勇気を出させてくれたのは文子ちゃんなんですよ。」
「文子?文子がいるの!?それなら早く言ってよ。私、心配だったんだから。」
「ごめんなさい。そこの木陰にいますよ・・・って、あれ?いない・・・。」



「私は不要・・・・力がないから不要・・・・・。」
私はただ住宅街を歩いていた。
あてもなく・・・・。
「文子ちゃん・・・・どうしたのかな?」
「お、大城さん・・・・・・・。」
私の前にいたのはTバック男爵と紫のハイレグを身に纏った大城さんだった。

『おい、ハイグレ奴隷。こいつなのか?』

「ハイグレッ!その通りです、Tバック男爵様。この子なら・・・・ふふっ。」
不気味に笑う大城さん・・・・。
怖い・・・だけど、動けない。
「文子ちゃん・・・あなたの居場所は私が作ってあげる。」
「居場所を・・・・作る?」
「そう、私が作ったこの力なら・・・・。」
私に黄色の石を投げてきた。
・・・でも、これは石じゃない。
「それが何か、わかったみたいね。」
「アクションストーン・・・・・。」
「違うわ・・・ハイグレストーン。アクションストーンよりも強い力を持っているわ。」
「これを・・・私に与えて何になるんですか。私はハイグレ人間になんてなりません。」
いくらなんでも・・・美奈を裏切れない。
「いつまでつまらない意地を張っているつもり?ハイグレ魔王様は素晴らしいことをしているのよ。あなたがみんなの目を覚ましてあげるのよ。」
大城さんが光線銃を私に向けている。
「あなたは立派な戦士になれるわ。」
「美奈・・・・助けて・・・・・。」





「文子・・・・。」
「美奈さん、彼女が心配なんですね。」
「うん・・・私の親友だから。」
私がさっき文子のいたという木陰にいると、智美さんが私を呼ぶ。
「ねぇ、あれ、文子ちゃんじゃない?」
「え・・・・?」
智美さんの指さす方を見ると、文子が歩いてスクラップ置き場のある方へ歩いて行った。
「美奈ちゃん、追いかけよう。」
「うん!!」
私達は文子の後を追った。



「どこ?文子ー!どこにいるの!!」
私達はスクラップ置き場までは着いたが、どこにも文子はいない。
「やっと来たね・・・待ってたよ。」
「!?」
いつの間にか文子が目の前に立っていた。
「ふぅ・・・よかった。文子、無事だったんだ。ほら、行こう。」
私が近づこうとすると、文子は一歩下がる。
「え?どうしたの?」
「待って、美奈。その子、様子がおかしい。」
智美さんが言っていること、よくわからない。
「文子・・・一緒に帰ろう。」
「・・・私の帰る場所は美奈のところじゃない。ハイグレ魔王様のもと。」
文子は服を脱ぎ捨てる。
その下には黄色のハイレグを着ていた。
「嘘でしょ・・・文子?」
「私はハイグレ人間。もう、美奈に劣等感を感じなくていいの。ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
文子は私の前でしてほしくないポーズを嬉しそうにしている。
「教えてあげるよ、ハイグレの素晴らしさを。」
文子は黄色のアクションストーンを取り出した。
「何それ・・・・・。」
「うふ・・・・。」
文子はその石を上に投げる。
「・・・・ハイグレッ!!」
文子がポーズをとると、石は光になり、文子に降りそそぐ。
光が晴れた時、文子の髪は黄色になり、手には鋭い爪が装備してあった。
「文子・・・それって、アクションストーン・・・・・・。」
「違うよ。これはハイグレストーン。美奈達を倒すためにハイグレ魔王様達からいただいた最高の力。」
これは・・・夢だ。
こんなのって・・・・こんなのって・・・・・・。
「美奈・・・・私と戦おう?」
文子は笑顔で言う。
「嫌だ・・・嫌だよ・・・・・・文子、どうしちゃったの。」
「ハイグレ人間になってわかったの。私は間違っていたって。ハイグレって凄く気持ちいいよ・・・・。」
文子は幸せそう・・・・。
ハイグレ魔王のせいで文子は変えられてしまった。
でも・・・戦えないよ・・・・・。
文子に攻撃なんてできない。
「それじゃあ、美奈・・・・いくよ。」
文子は戦う態勢に入っている。
どうしよう・・・・私、戦えない。
明も黙っている。
「・・・・あたしが相手する。」
智美さんが私の前に立つ。
「ダメ・・・智美さん、文子を傷つけないで。」
「何言ってるの、やらなきゃやられるのよ・・・着火!」
智美さんが文子に指を向けるが、文子はかがんでかわす。
「智美さん!文子を攻撃しないで!!」
智美さんはこっちを一度見るけど、すぐ前に向きなおす。
「美奈・・・あんたは甘すぎるよ。着火!」
智美さんは私の言葉を聞かず、攻撃を繰り返す。
だけど、文子は軽くかわす。
「もう終わりですか。じゃあこっちからもいきます。雷よ・・・・ハイグレッ!」
文子がハイグレする。
「うぁぁああ!!」
智美さんの体に電気が流れたみたい・・・・・。
その場に倒れこんでしまう。
これが・・・文子に与えられた力・・・・・。
「智美、平気か?」
「うん・・・・・何とか。」
智美さんはふらふらしているが立ち上がる。
「智美さん、私も・・・・戦います・・・・・・。」
明も前に出る。
今までは黙っていたけど、文子が智美さんを攻撃したのを見て、顔つきが変わった。
辛そうだけど、明は本気みたい・・・・。
「明まで・・・・。」
「美奈ちゃん・・・私達は大城さん達の思いを受け継いでいるんです。ここで、弱音は吐けません!・・・風よ!」
明は両手を重ね、木枯らしを起こす。
「明ちゃんもハイグレにしてあげたい。だから私もいくよ・・・雷よ・・・・ハイグレッ!」
文子を木枯らしが襲う前に明に電気が流れる。
「きゃぁぁああ!!」
かなり電気が強いのか、明も倒れこんでしまう。
「ハイグレッ!やっぱり魔王様が与えてくださった力の方が上ね。後は美奈・・・・戦わないの?震えてるけど。」
文子が私に近づいてくる・・・・。
優しい笑顔で。
私のことをどう思っているんだろう。
文子は心の底から笑っているのかな・・・?
どうしたらいいの・・・私は文子と戦うなんてできない。
「・・・本当は私も美奈を傷つけたくないよ。一緒にハイグレ人間になって生きていこう?」
「私だって文子と戦いたくなんてない。でも・・・ハイグレ人間にはなれない。」
私は真剣に言う。
だけど、文子は凄く悲しそう。
「そう・・・・私も嫌だな、美奈と戦うの。」
「だったら!!」
私が一歩前に出ると文子は両手に装備してある爪を構える。
「ごめんね、美奈をハイグレ人間にしないなんて我慢できない。」
「美奈さん・・・気をつけてください。」
Bが私に注意を促してくれる。
文子も本当はこんな戦い望んでないに決まってる。
文子を助けたい・・・・。
「私はこのまま美奈に間違った方向へ進んでほしくないの。だから、何が正しいのか教えてあげる。それは・・・私にしかできないから!」
文子は私をただ見ている。
その目からは何も感じない。
悲しいのか・・・それとも、本当に魔王に変えられてしまったのか。
「美奈さん!避けてください!!」
Bに注意されて避けようとする。
だけど、文子は逃がしてくれなった。
「美奈、焦ってるね。雷よ・・・・ハイグレッ!」
「きゃぁああああああああ!!」
体中に電気が流れてくる・・・・。
痛い・・・苦しい・・・・。
電気が止まった瞬間、私はその場に倒れてしまった。
「美奈・・・ごめんね。痛かったよね。今、ハイグレ人間にしてあげるよ。」
文子が近づいてくる。
文子が装備している爪が不気味に光っている。
地面に伏したまま、動けない・・・。
まだ、体が痛いし、痺れている。
もう・・・ダメかな・・・・。
「美奈さん・・・・。」
Bが心配してくれている。
・・・でも私は文子と戦うなんてできない。
私は何とか立ち上がる。
「美奈・・・・もう終わりにしようよ。これ以上美奈が傷つくのを見たくないよ。」
文子が悲しんでいる。
どうしたらいいの?どうすれば文子を助けられる?
「最後にもう一度だけ言うよ・・・・・美奈、ハイグレ人間になろう?」
「い、嫌!私は絶対に文子を助ける!」
それが私の答え。
文子を傷つけない。
でも、ハイグレ人間にもならない。
何か方法はあるはず。
「・・・・・・・・。」
文子は首を横に振ると、装備してある爪で私を攻撃しようとする。
「!?」
私の前に智美さんが立っていた。
「くっ!!」
鋭い爪は智美さんの左肩を切り裂く。
スーツが少し敗れてしまい、血が流れる。
このスーツが頑丈だったから多少のケガで済んだのだろう。
「本当に甘いな・・・美奈。」
智美さんは右手で肩をおさえる。
「おい、智美・・・血が。」
「R、どうしたの?もしかして怖いの?」
「冗談だろ。俺はお前の心配をしてやってんだ。」
「いいよ・・・汚れ役はいつもあたしなんだから・・・・着火!」
智美さんが文子に攻撃を行うが素早くかわされる。
「その技はくらわないわ。」
「そうね、技ならね。」
「!!」
智美さんは文子が攻撃をかわした後、すぐに文子の前に移動していた。
鈍い音が響く・・・・智美さんは文子の腹部を殴り気絶させていた。
「どうしてですか・・・・。」
私は智美さんに近づく。
「何とでも言いなさい・・・・・。」
智美さんはすぐに目を反らした。
「美奈さん・・・智美さんもお二人を守るために。」
「Bは黙ってて!・・・智美さんには文子は関係ないですもんね!だからこんなことができたんですよね。」
「美奈さん!そんな言い方はないですよ!!」
Bがなんと言ったって、私は智美さんがした行動は正しくても信じられない。
だけど、智美さんは表情一つ変えない。
「そうね・・・あたしは美奈の友達なんてどうでもいいもの。」
「お、おい、智美。」
許せない・・・・そんな考え方で文子を・・・・・。
「智美さん・・・見損ないました。」
「そう・・・じゃあ、あたしは勝手にさせてもらうわ。あなたが一緒にいると命がいくつあっても足りないわ。」
智美さんはこちらを見ずに街の方へ歩き去って行った。
「美奈ちゃん・・・・。」
明が立ち上がり、私に歩み寄ってくる。
つらそうな表情で・・・・。
「明も文子を・・・・。」
「ごめん・・・美奈ちゃんを守りたくて。」
「そうよ、明は美奈を守るために戦ったのよ。怒っちゃダメ。」
明もGもあの行為が正しかったって言うの?
文子を傷つけるのが正しい?そんなの違うよ。
「明、私はもう嫌なの。こんな戦いしたくない!嫌だよ・・・・もう嫌だよぉ・・・・。」
私はその場に崩れおちる。
もう頭の中がどうかしてしまっている。
よくわからない・・・どうしていいか、わからない。
「美奈ちゃん・・・私・・・・・。」
「私に近づかないで!明も智美さんと同じなんでしょ!だから文子を!」
「何よ!明だって戦いたくて戦ったんじゃないわよ!!」
Gが言うと明は静かに後ろを向く。
「ありがとうG。でも、美奈ちゃんの言うとおりだよ。私だって文子ちゃんを攻撃しようとしたんだから。」
明は街に向かって一歩進む。
「でも・・・私は美奈ちゃんのこと、大好きだからね。」
「!!」
明はそのまま走りだして街に向かって行った。
私はそんな明を見ていることしかできなかった。





あたしは街中を走っている。
「智美・・・お前、わざと美奈に。」
「R、何も言わないで。」
あたしは自分を汚してでも二人を守りたい。
あたしなんかを大切に思ってくれた二人が傷つく姿を見たくない。
だから、ハイグレ魔王はあたし一人で倒す。
「場所はわかるのか?」
「あたしの予想が正しければ、テレビでやってるんじゃないかって。」
あたしは自宅へと戻る。
自宅と言っても一人暮らしでアパート生活。
テレビをつけると、ハイグレ人間になったニュースキャスターが出ている。
『ハイグレッ!ハイグレッ!新宿にある魔王様の宇宙船に攻めてくる自衛隊は次々にハイグレ人間へと転向をしているようです。本当に危険ですね、人間は。』
「新宿・・・・・。」
「そこにあいつが。」
「行こう、R。これがあたし達にとって最後の戦いだ。」
玄関の扉が開いた・・・。
「明・・・・・。」
「私も一緒に行きます・・・美奈ちゃんのためにも協力させてください。」
「明は頑張っているんだからね。認めてあげてよ。」
明も本当にいい子。
あたしがリードしてあげないとね。
「行こう、明。二人でならきっと・・・いや、絶対に勝てる。」
あたし達は家を出る。
目指すは新宿。
そう、ハイグレ魔王の宇宙船。





私は気を失っている文子を日陰に移動させた。
でも、私の心は晴れない。
・・・・智美さんも明も私のために戦ってくれたのに。
このまま私は何もできないのかな・・・。
「美奈ちゃん、こんなところにいたのね。」
私の前には一台のバイクと愛紗美さんがいた。
愛紗美さんの服はボロボロで泥だらけになっていた。
「愛紗美さん、どうしたんですか、その格好。」
「少しドジっちゃってね。それより・・・文子ちゃんが着ているの・・・。」
愛紗美さんはかなり驚いた表情だ。
私は事情を話した。
「私・・・智美さんに酷いこと言っちゃった・・・・。」
だけど、愛紗美さんは優しく私の肩を叩く。
「いいのよ・・・美奈ちゃんは優しい子だから。みんなが笑顔でいてほしいって思ったのよね。」
「うん・・・・うん・・・・・。」
私は首を縦に振る。
愛紗美さんはヘルメットを私に渡す。
「愛紗美さん・・・これ・・・・・。」
「行きましょう。智美ちゃんも明ちゃんも話せばわかってくれる。このままでいいなんて思ってないでしょ?」
愛紗美さんはバイクに乗る。
そして手で後ろに乗れと合図している。
「はい・・・私は二人に謝らなくちゃ。それで、ハイグレ魔王を倒す。」
私は後ろに乗った。
文子・・・・待っててね。絶対に助けるから。





ハイグレ魔王様の宇宙船の玉座に私とTバック男爵様は呼ばれた。

『ハラマキレディースがやられたのね。次はあんたよTバック。』

ハイグレ魔王様はTバック男爵様を指さす。
「わかりました、魔王様。今度こそあのガキ共を捕えます。」

『よろしい。それで、そこのハイグレ人間。修理は終わったわよね?』

ハイグレ魔王様は私を指さす。
「ハイグレッ!ハイグレッ!もちろんです、ハイグレ魔王様。修理だけでなく改良もいたしました。」

『おほほほ、よくやったわ。それじゃあ、始めましょうか。あの三人をハイグレにしてやりなさい。』





「新宿まで後少しだ。明、もっと早く走るぞ。」
あたしと明は新宿を目指して走っている。
・・・美奈に酷いことを言いすぎた。
美奈だって親友がいたのに。
戦いに巻き込まなくて済んだのはよかったけど、傷つけてしまった。
「智美、敵だ。集中しろ。いつまでタイプBの適合者のことを気にしていやがる。」
Rの言葉で気をしっかりさせる。
目の前にはパンスト兵が大量にいる。





「智美、お前はさっきから心ここにあらずって感じだぞ。」
パンスト兵を倒した後、あたしにRがきつく言う。
「ごめん、ちょっと頭がどうかしちゃっているみたい。もう平気だから。」
明も心配そうにあたしを見ているし、しっかりしなくちゃ。
それにしてもパンスト兵の数が少なすぎる。
もし新宿が奴等の基地ならここまでガードが薄いはずはない。
誘っているのか・・・それとも・・・・・。
「智美、無理だけはするな。さっきの傷が痛むなら休んだ方がいいかもしれないからな。」
あぁ、肩の傷か・・・。
家で応急処置はしたから平気だろう。
こんな傷より美奈のことで動きがチグハグしているはずだ。
「智美さん!あれが宇宙船では?」
明が指さす先はビル。
それもビルの上・・・・あんな不気味なアートがあるだろうか。
「で、どうやって上るんだ。」
Rの意見はもっともだ。
あんな高い所に上るとなると、空でも飛べないときつい。
パンスト兵から乗りものを奪えばいけるかもしれないか。
「それしかないか。パンスト兵の乗ってるのを奪うわよ。着火!」
あたしは近くにいたパンスト兵を倒した。
そして、そいつが乗っていたオマルを見る。
「これか・・・操縦の仕方はわからないけど。まぁ、パンスト被ってる奴でも操縦できるんだから、きっと平気よね。」
あたしと明はパンスト兵から奪ったオマルに乗って、ハイグレ魔王の宇宙船へ





「愛紗美さん!そっちからでは遠回りです。」
愛紗美さんの運転するバイクは新宿から遠ざかる一方だ。
それにしてもこのパンスト兵の数は異常だ。
まるで私を新宿へ向かわせないような感じ。
「美奈ちゃん、敵が多いの。今は回り道をしないと囲まれるわ。」
愛紗美さんは前を向いたまま話す。
後ろからも横からもパンスト兵が飛んでくる。
「でも、急がないと智美さんと明が。」
「わかってるわ・・・じゃあ、本当に行くわよ。」
「え・・・?愛紗美さん!そっちに道はありません!」
「そんなこと言っている余裕はないわ!」





『おほほほ、予定通りにレッドとグリーンが来たわ。ブルーは今頃、パンストに手こずってるわね。』

「なぜ、青髪の子だけ、ここに来させないのですか?」

『あの子たちはハラマキレディースを倒したからよ。確実に勝てる方法でね。』





「ここか・・・・。」
あたしと明はパンスト兵のオマルを利用して、宇宙船に到着した。
幹部もいなかったし、完全に誘われているとしか思えない。
「智美、罠があるかもしれないから気をつけろよ。」
「言われなくてもわかってるわ。明、行こう。」
「はい。」
あたしと明は宇宙船の中に入って行った。
妙に静かだった。敵一人いない。
「きっと・・・どこかから監視されてると思います。」
明が言っていることは正しいだろう。
敵がいない以上、向こうはあたし達の行動を監視しているに決まっている。
『ウィィィィィン』
「「!!」」
突然、ピンク色の床からガラスのような壁が出てきた。
そして、あたしと明の間に壁ができてしまった。
「これは、罠・・・。」
「壊します・・・風よ!」
明が木枯らしを起こすが、まったく壊れそうにない。
「あたしも・・・着火!」
あたしの火も受け付けない。
「ダメだな、完全にはめられた。奴等の狙いはこれだったんだな。」
Rが言っていることは本当だろう。
「だとしたら、どうするのよ。」
このまま待っていても危険。
かと言って一人で行動するのも危険。
「何だ?最初は一人で行くって言っただろ?」
「R・・・・・。」
「智美さん、ここからは別行動で行きましょう。」
ガラス越しに明が提案してくる。
確かにそれしかないけど、平気だろうか。
いや、明だって不安のはずだ。
それにRがいる。
「そうしよう、明。絶対にハイグレ魔王を倒そう。」
「はい!!」
あたしと明はその場で別れた。
でも、ハイグレ魔王と戦うのはあたしであって欲しい。
明はメンタル的に苦しいだろうから。



「・・・・ふっ。」
Rが笑った・・・?
「どうしたの、R?」
「いや、俺が智美に会った時のことが昔に感じてな。」
「Rと出会った日・・・あの時か。」



「ただいま・・・・。」
あたしは自宅に帰ってきた。
電気も着いていない。
誰も待っていない。
いつも、家に帰ると孤独感でいっぱいになる。
リビングに入ると、机の上に見慣れない飴玉のようなものが置いてあった。
「お前が俺のパートナーか。」
突然、その飴玉は喋りだした。
「・・・・・・・・・。」
「俺はアクションストーンタイプR。信じられない話だと思うが、聞いてくれるか?」
「・・・・いいけど、あたしの話し相手になってくれる?」
「あ?話し相手って・・・・。」



「懐かしく感じるな。」
「そうね。Rはあたしのことを理解してくれた。守りたい人もできた。」
あたしが軽く笑うとRも少し嬉しそうにする。
「俺と智美はパートナーだ。どんなことがあっても。」

しばらく歩いていると、他の部屋とは違う
禍々しい力を感じる部屋がある。
「智美、どうやら俺達は招かれてるみたいだぞ。」
「この中に・・・・とうとう、あいつを倒せる。」
「行くぞ、智美!!」
あたしは中へ突入した。
そこには玉座に座る仮面をつけたハイグレ魔王がいた。

『ようこそ、アクションレッド。待っていたわ。』

ハイグレ魔王が仮面をとり、あたしに笑いかける。
明らかに見下しているような笑い方だ。
凄く気味が悪い。
「ハイグレ魔王!あんたの野望なんてぶっ壊してやる。」

『落ち着きなさいよ。あたしはあなたに話があるの。』

「あんたと話すことなんて何もないわ。着火!」
あたしはハイグレ魔王に人差し指を向け、火をつけるがマントに振り払われる。

『あら、随分な挨拶ね。あたしの話は聞かないのね?』

「聞く必要なんてない!あたしはあんたを倒す!!」
「智美・・・奴はかなり強いぞ。気を抜くな。」
Rが注意を促す。
妙に不安そう・・・・それほどあいつは強いの?
確かに威圧感は感じるけど。
「智美?あいつから何も感じないのか?」
「R?それはどういう・・・・。」

『いつまで待たせるつもりかしら?』

「!!」
Rと話しているうちにハイグレ魔王が指先から電撃を放った。
咄嗟に右にかわすことができたが、気を抜いたらやられる。
「智美、奴にも弱点はあるはずだ。落ち着いていくぞ。」
そうか、ハイグレ魔王にも弱点はある。
冷静さを失ったらやられてしまう。
攻撃が効かなくても、弱点になら効くかもしれない。
あのマントで火を振り払われるなら。
「R、あいつのマントの中は?」
「ありうるな。よし・・・・。」

『そろそろ終わりにしてあげるわ。』

ハイグレ魔王が指先から電気を放とうとしている。
「智美、今だ。」
「・・・・・着火!」
あたしが人差し指をハイグレ魔王に向けると
ハイグレ魔王は再びマントで振り払われる。

『まったく効かな・・・・。』

「着火!!」
あたしは再びハイグレ魔王を狙う。
今度はマントの中が狙いだ。
火は見事、魔王に着く。

『少し、あなたを見くびっていたようね。随分と厄介な炎の使い手だこと。』

「R、もう一度・・・・。」
あたしが攻撃態勢に入ろうとするがハイグレ魔王はマントを捨てる。
奴が着ている赤いハイレグ。
男なのにハイレグ着ているなんて・・・あたしから見れば気持ち悪い。
「智美、気をつけろ。来るぞ!」
「え・・・・?」
Rが注意を促した時にはハイグレ魔王があたしに電気を放っていた。
それも、さっきより早い・・・・。
「きゃぁああああああ!」
あたしは直接電気を浴びてしまった。
そのまま床に倒れこむ。

『おほほほほ、次はハイグレ姿にしてあげるわ。』

ハイグレ魔王があたしに近づいてくる。
「智美、一度奴から距離をとれ。」
でも、あたしは動けない。
「ダメ・・・体が痺れて・・・・・。」
「マジかよ。麻痺してるのか!?」
あの電撃は普通じゃない。
体中に激痛も走っているし、こいつは化け物・・・・。

『ここまでね。それじゃあ、始めましょう。』

「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」
あたしが入ってきた扉から二人のハイグレ人間が入ってきた。
あの二人・・・・研究所にいた研究員の二人だ。
大城さんがいないってことは、明の方にいるのだろうか。
「智美、動けないか?」
「足も震えて・・・かなり苦しい。」
「しっかりしろ、俺とお前はここでやられるような奴じゃない。」
「R・・・・。」
あたしは痛みを堪えて立ち上がる。

『さすがにアクションストーンに選ばれただけあって、アクション仮面みたいにしつこいわね。』

後ろから二人も近づいてくる。
あたしには走れるような余裕はない。
「この一撃で決めるぞ。」
「・・・・・・・・。」
あたしは人差し指をハイグレ魔王に向ける。
「・・・・・・着火。」
火はハイグレ魔王を襲う。
かなり苦しそうにしている。
「智美、よくやった。あいつもかなりの痛手を負うぞ。」
「勝てたの・・・・?」
「あぁ、あいつもあの炎に焼かれればな。」
「R・・・・・あたし、Rのこと・・・・。」

『さっきの一撃はあたしでも焦ったわ。』

「「!!」」
あたしの後ろからオカマの声がする。
こいつの声・・・ハイグレ魔王・・・・・。
あたしが後ろを向くと、そこにはハイグレ魔王が立っていた。
それも、無傷の状態で・・・。
「そんな・・・何で・・・・・。」

『残念だったわね。でも、あなたの実力は認めてあげる。これからはあたしの奴隷。』

ハイグレ魔王が光線を放ってくる。
こんな至近距離で撃たれたら・・・・・。
「智美!!!」
あたしは何もできず光線を浴びてしまう。
大の字なったあたしは服が変わっていくのを実感する。
あたしはハイグレ魔王に勝てなかった・・・・。
でも、ハイグレ魔王に従ったりはしない。
あたしは・・・・アクションレッドとして、人間としての誇りを忘れない。
気が付くとあたしは赤いハイレグを身に纏っていた。

『似合うじゃない。もっと早く着るべきだったのよ。』

「・・・・・・あたしは負けられない。」
あたしは人差し指をハイグレ魔王に向ける。
「着火!」
・・・・火が出ない。

『何を驚いているのかしら?ハイグレ人間のあなたがアクションストーンの力を授かれるはずないじゃない。』

嘘だ・・・あたしがハイグレ人間?
「違う!あたしはハイグレ人間なんかじゃない!着火!・・・・・着火!」
何度やっても火はあたしに力を貸してくれない。
「R・・・・嘘だよね?」
「・・・・本当だ。今のお前は戦う力がない。でも、諦めるな。ハイグレ魔王に服従しなければ、BやGが来る。俺はお前の味方だ。」
「・・・・そうだね、あたしはハイグレに負けはしない。」
そんなあたしを見てハイグレ魔王は笑う。

『最後まで諦めないねぇ・・・でも、あなたの体勢はハイグレ人間と同じになってるわよ?』

ハイグレ魔王に言われ、あたしは自分の体を見る。
無意識のうちにガニ股になっていた。
「違う!これは・・・・。」

『わかったわよ。そんなにハイグレしたくないなら・・・・。』

さっきの二人のハイグレ人間があたしを取り押さえる。
「は、放しなさいよ。何をするつもりよ。」
あたしは足と手を縄で縛られた。
「こんなことして何になるのよ。」
「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」
あたしを縄で縛ると二人はコマネチを始める。
何を言ってもハイグレッ!としか答えない。

『どうかしら?ハイグレ姿になった感想は。』

「はっきり言うけど、ここまで最低な気分になったのは初めてよ。あたしはあんたみたいなオカマを見ていると吐き気がする。」
あたしが言うと、ハイグレをしていた二人に蹴飛ばされる。
「うっ・・・・・。」
「ハイグレ魔王様になんて口のきき方。」
「あなた、そんなに素敵なハイグレ姿にしていただいたのに、恩をあだで返すなんて・・・・。」

『二人とも、止めなさい。』

ハイグレ魔王が言うと、二人は頭を下げて、再びハイグレを始める。
「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」
何でこんな変な気持ちになるのかな・・・・。

『あら?そわそわしてるけど、ハイグレしたいのかしら?』

ハイグレ魔王に言われてハッとする。
「だ、誰がこんな変態的ポーズをとるのよ。」
そうよ・・・・あたしは美奈や明と同じ
ハイグレ魔王を倒して大切な人を守るの。
こんな奴の奴隷なんて絶対に嫌。

『へぇ、かなり精神が強いのね。』

ハイグレ魔王がずっとあたしを見ている。
負けない・・・負けない・・・・・。
「「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」」
嫌でも聞こえてくるハイグレコール。
「う、うぅ・・・・・・・・・。」
「智美、負けるな!ここでやられたら・・・・。」

『おほほほ。さぁ、正直になりなさい。』

美奈、明・・・あたしはもう・・・・。
「ハイグレしたい・・・・・ハイグレさせて。」
「おい、智美。しっかりしろ!」
Rが何か言っているけど気にしない。

『ハイグレしたいの?逆らっていた割には随分ねぇ。』

ハイグレ魔王様の言うことはもっともだ。
ここまでハイグレ魔王様に迷惑をかけたのに、あたしは今更何を言っているんだ。
「ハイグレ魔王様、ごめんなさい!!あたしが間違っていました。ハイグレ魔王様はこんな素敵なハイグレ姿にしてくださったのに、あんな態度を・・・・。」

『おほほほ、じゃあ、あたしのお願いを聞いてくれるかしら?』

「はい、なんなりとお申し付けください。」
あたしは目を輝かせながら言う。

『アクションストーンをくれるかしら?』

「Rを・・・ですか?」

『えぇ、そうよ。』

「智美、ダメだ!奴の言いなりになんてなるな!」
Rが何か言っている。でも・・・
「ハイグレ魔王様のご命令でしたら喜んで。解除!」
あたしは変身を解除する。
髪がもとの茶髪のショートヘアに戻る。
そして、手元には赤色のアクションストーン。
「智美、お前はそれでいいのかよ。」
「R、あたしね、ハイグレ姿になってわかったの。ハイグレ魔王様こそが正しい存在。そして、あたしはハイグレ魔王様に従いたい。」
あたしはハイグレ魔王様にRを渡した。

『いい子ね。さぁ、消え去りなさい、アクションストーン!』

あたしの目の前でRは砕かれた。

『智美、御褒美よ。』

ハイグレ魔王様はあたしの首に首輪を捲いた。
ローマ字でSatomiと書かれていた。
「これは何ですか?」

『あなたはハイグレ奴隷。ハイグレ人間よりも下の者。本当だったら死刑よ?でも、許してあげる。さぁ、縄を解いてあげなさい。』

あたしは二人のハイグレ人間様に縄を解いてもらった。
あたしはハイグレ奴隷・・・・・。
腰を落とし、ガニ股になるあたし。
自分の手をXラインに持っていく。
「ハイグレッ!ハイグレッ!あたし、ハイグレ奴隷智美はハイグレ魔王様及び、ハイグレ人間様に一生の忠誠を誓います。」
あたしがハイグレを始めるとハイグレ魔王様は満足そうにしている。

『あと二人。あの子たちの首輪も用意してあるわ。早く奴隷にしてあげたいわねぇ。』

ハイグレ魔王様はあたしにMina、Akariと書かれた首輪を見せると、玉座に戻る。
あたしはハイグレ魔王様の前でハイグレをし続けた。




DY
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2010年09月05日(日) 10時49分52秒 公開
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一週間遅れになりましたが
まぁ、そこは大目に見てください。